化学装置材料の基礎講座

第14回 配管の内面環境からの劣化や損傷現象について、どんな手順で管理を行えば信頼性を確保できるか、教えてください。

   配管は、管理すべき長さが膨大であること、内表面の目視等による検査がほとんど不可能であること、および単に流体を流すだけとは言え流速の変化や滞留など種々の環境条件が存在すること、など多くの管理上の課題があります。このため、化学プラントにおける漏洩等の事故の半分程度は、配管で起こっているのが現状です。

   配管の管理を適切に行うためのステップは、以下のとおりです。

  • 第一段階:配管系について漏れ等が生じた場合のリスク評価を行い、これに従って配管系毎の管理レベル(保全方式)を決める。
  • 第二段階:予防保全方式を適用する配管系について、各配管で発生する可能性のある現象とそれに対応する検査部位や検査方法を明確化する。
  • 第三段階:検査計画(周期、部位、検査方法)を決め、検査を実施する。
  • 第四段階:スプール図など用いて、検査部位情報とともに検査結果を記録する。また、その記録(板厚測定等)の経時変化(腐食速度)と使用条件(必要肉厚等)を基に寿命予測を行う。併せて、発生可能性のある現象や検査計画の見直しを行う。

   ここでは、第二段階の劣化や損傷現象の発生可能性の絞込み、およびそれらの現象に該当する部位の明確化ための考え方を紹介します。配管に発生する材料の劣化、損傷現象を整理して図1に示します。

図1.配管内面環境からの劣化や損傷現象の分類

※SCC : Stress Corrosion Cracking  (応力腐食割れ)

図1.配管内面環境からの劣化や損傷現象の分類

   該当配管系について、図1に示した各現象について、その発生可能性を評価する必要があります。しかし、特に配管系で漏洩等の事故に繋がる可能性の高い現象が、エロージョン・コロージョンなどの「局部的減肉加速」現象です。

   局部的減肉加速現象に関しては、表1に示す様に発生部位に特徴があります。このため、各現象の発生可能性がある場合は、その現象に対応する部位の検査を行ない、その発生可否やその程度の評価を行う必要があります。



表1.配管の内面環境からの局部的減肉加速現象とその特徴
現  象 発 生 原 因 部  位
エロージョン・
コロージョン
高流速や渦の影響で皮膜破壊や腐食性成分の供給加速で、減肉加速 エルボ部、オリフィス部、バルブ部、T等の合流部 炭素鋼製の給水配管、プロセス蒸気配管
凝縮部(腐食) 凝縮した溶液の腐食性が大きく、 その部分でのみ腐食進行 ガス配管で、温度が低下すると凝縮の生ずる条件 排気ガス中での硫酸露点腐食
滞留部、閉止部
(腐食)
滞留すると液性が変化して 腐食性増大する場合 バイパスライン、ドレイン抜きノズル 有機酸含有配管
気相部(腐食) 水平配管で、液相部と気相部の 腐食性が異なり、気相の腐食が 大きい場合 気相部のある水平配管 炭素鋼製の濃硫酸配管
異種金属接触腐食 耐食性の異なる金属を接触状態で 使用した場合。電位差が生じ、卑な金属の腐食が加速 異種金属を接触させた部位 ステンレス鋼容器と炭素鋼製配管の接続部
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