化学装置材料の基礎講座

第27回 第23回の講座で、運転中に腐食を把握する方法としてセンサーによる腐食モニタリングが紹介されていますが、代表的なモニタリング方法である電気抵抗法の実施例や注意点を教えてください。

   センサーによる腐食モニタリングとは、環境中に目的に応じたセンサーを挿入し、センサーの電気的な出力で腐食状態を把握する方法です。電気抵抗法、分極法、電気化学ノイズ法などの原理があり、捉えたい腐食現象や環境条件により適切な方法を選択する必要があります。

   この中で全面腐食の代表的なモニタリング手法である電気抵抗法について、実際の測定例を交えて紹介します。電気抵抗法は第23回の講座で図示しているように、測定したい環境に曝露した試験材料を含む電気回路に減肉が生じると抵抗が上昇することを利用し、腐食状況を把握する方法です。配管などにノズルを付け、フランジやねじ込みで腐食状況を知りたい材料製のセンサーの先端を環境中に挿入します。

   ある環境での測定例を図に示します。横軸は時間、縦軸は抵抗変化から換算される減肉量です。時間に対し抵抗が徐々に上昇し、減肉が進行している様子がわかります。また、曲線の傾きが腐食速度に対応します。図より、このケースでは曲線が徐々になだらかとなり、腐食速度が経時的に低下していることがわかります。腐食速度の低下は、測定後のセンサー観察で皮膜形成によるものであることが明らかになりました。

   図より、この測定では数μmの減肉を数十時間の測定で把握できています。測定の精度はセンサーの種類や測定環境にも依りますが、試験片を環境中に浸漬する方法や超音波肉厚計による定点肉厚測定より、高い精度で腐食状況を把握できます。

   この例でわかるように、電気抵抗法は高精度でほぼリアルタイムで減肉の状態を測定できます。原料が切り替わる場合、温度や濃度などの運転条件を変更する場合や成分変動がある場合など、環境変化がある場合の腐食状況の変化を把握するのにとても有効な手段です。

   ただし、電気抵抗法には、以下の点に注意する必要が有ります。

  • 全面腐食の評価は可能であるが、局部腐食の評価には使用できない。
  • センサー位置のみの腐食状況を評価している。

   前者については、測定後のセンサーの腐食状況の観察、開放検査による実機の腐食状況の観察や試験片による腐食形態の把握することで全面腐食であることを確認する必要があります。後者については、例えば、温度などの環境の分布、エロージョン・コロージョンや局所的な腐食性の過酷化などで減肉が部分的に進行する可能性がないか、また、測定位置が測定点として妥当かに関して、環境条件からの推定や実機の観察、他の非破壊検査との併用などで検討することが必要です。

    なお、電気抵抗法におけるこれらの注意点、すなわち、測定方法が測定したい現象と対応しているか、測定位置が測定点として妥当かなどは、他の原理の腐食モニタリングでも注意すべき重要な点です。

付図 電気抵抗法による減肉状況の測定例

付図 電気抵抗法による減肉状況の測定例

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