永久磁石には様々な材料がありますが、大別すると、合金系、フェライト系、希土類サマリウム・ コバルト(Sm-Co)系、希土類ネオジム(Nd-Fe-B)系に分類できます。
合金磁石は、鉄・ニッケルにコバルト・チタン等を加えた複数金属よりなる合金でMK磁石やアルニコ磁石などがありますが、最近はフェライト系磁石等に取って代わられ用途は限られてきています。
フェライト系磁石にはバリウムフェライト磁石、ストロンチウムフェライト磁石があります。酸化鉄を主成分としており、安価で生産性が高いことから、現在最も大量に生産されています。セラミック磁石と呼ばれることもあります。
1970年代になると、より強力な希土類サマリウム・コバルト(Sm-Co)磁石、1980年代には希土類ネオジム(Nd-Fe-B)磁石が登場しました。材料が高価なことからフェライト系磁石に比べ高価ですが、ともに大変高性能な磁石であるため、近年急激に数量が拡大しています。ネオジム磁石はネオジウム磁石とも呼ばれ、高い残留磁束密度を誇り、サマリウム・コバルト磁石は良好な温度特性を持ってい ます。
主な磁石の特長を下表に示します。磁石の詳細な情報については磁石メーカのホームページや専門書をご覧下さい。
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<焼結磁石>
原料となる磁性体粉末をプレス成形し、高熱で焼き固めたもの。フェライト磁石やサマリウム・コバルト磁石、ネオジム磁石などがあります。円柱や直方体など標準的な形状に向いています。
<ボンド磁石>
磁性体粉末をゴムやプラスチックなどのベース材に混ぜて、プレス・押し出しなどで成形したもの。特殊な形状に向いていますが、焼結磁石に比べると体積当たりの磁性体の量が少ない分、磁力も弱くなります。
<その他>
鋳造法や鍛造法もあり合金磁石の製造に適用されます。
異方性・等方性は磁化容易軸の配向性を表します。
ボンド磁石等で、磁性体粉末をそのままプラスチックなどのベース材に混ぜて成形すると、磁化容易軸(材料の結晶組織において磁化しやすい方向)がばらばらになっています。このような磁石を等方性磁石と言います。等方性磁石では、どの方向へも同じように着磁できます。
一方、成形の過程において磁性体粉末の磁化容易軸が一定方向に揃えたものを異方性磁石と言います。異方性磁石は磁化容易軸方向に着磁することでより強力な磁石を製造することができます。磁化容易軸を揃える方法としては、成形の際に磁界を利用する方法や機械的に圧力を加える方法などがあります。
永久磁石も温度変化や経時変化により磁力が弱くなることがあり、これを減磁と言います。特に(2)不可逆温度変化は磁力が復帰しないので注意が必要です。
<(1)可逆変化>
温度を変化させた場合、材質固有の温度係数に従い磁気特性も変化し、温度を元に戻すと磁気特性も戻る変化を言います。
<(2)不可逆変化>
温度を変化させた場合、材質固有の減磁特性に従い磁気特性も変化し、温度を元に戻しても磁気特性が戻らず減磁してしまう変化を言います。フェライト磁石では低温域に、ネオジム磁石では高温域に不可逆変化領域を持つものがあります。不可逆領域は材質だけでなく形状で決まるパーミアンス係数にも依存します。詳細は磁石メーカにお問い合せ下さい。
<(3)経時変化>
永久磁石といえども全ての磁石は、熱エネルギーの影響により、わずかながら徐々に減磁します。磁石材質やパーミアンス係数、環境温度などによって減磁の度合いは異なります。その他、物理的応力(加工による歪みなど)や化学的変化(錆など含む)なども経時変化の原因になります。しかしながら現在は製造技術の進歩など十分な対策により、実用的にはほとんど問題にならないレベルです。
可逆範囲と不可逆範囲においては挙動が異なります。
まず可逆範囲での考え方を述べます。磁石材料には固有の温度係数Ktがあり、このKtによって変化します。例えば、20℃時の残留磁束密度Br(20)=1200mT、Kt=−0.12%/℃の磁石が60℃環境下に置かれた場合の残留磁束密度Br(60)は次のようになります。
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なお、温度が戻れば特性も元に戻ります。次に不可逆変化について述べます。
<高温減磁>
磁石は一般的に負の温度係数を持つため、高温になるに従って磁力が弱くなりますが、ネオジム磁石など希土類磁石の中には、高温域に不可逆変化があるものがあるため注意が必要です。高温での不可逆減磁は、材質特性とパーミアンス係数に依存し、パーミアンス係数が小さいほど減磁しやすくなります。判断には、その磁石材料の減磁曲線が必要ですので磁石メーカへお問い合せ下さい。
なお温度上昇により磁石が完全に磁力を無くしてしまう時の温度を、キュリー温度と呼びます。一旦キュリー温度に達した磁石は、常温に戻しても磁力は回復しません。
<低温減磁>
負の温度特性を持つ磁石は、基本的に温度が下がると磁石磁力は大きくなります。しかしフェライト磁石には、低温域に不可逆変化があるものがあります。
低温での不可逆減磁は、材料特性とパーミアンス係数に依存し、パーミアンス係数が小さいほど減磁しやすくなります。判断には、その磁石材料の減磁曲線が必要ですので磁石メーカへお問い合せ下さい。
「ある材質・サイズの磁石について表面中央から○mm離れたところの磁束密度○○mTを知りたい」という場合に便利な式を図1,2に示します。
磁石のサイズと残留磁束密度 Br、及び磁極面からの距離
を代入すると、その位置での磁束密度が得られます。(ここで使用するのは“残留”磁束密度であり、“表面”磁束密度ではないので注意してください。)
これらの式は磁極面に磁化が一様に分布しているという前提で電磁気学の方程式を解くことによって得られたものですが、上記3種類の磁石では磁石の至近距離を除いて、たいていの場合は非常に良く一致します。 (磁束密度計算のためのExcelシート)
| 【図1.角柱状磁石の磁束密度計算の方法】 |
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| 【図2.円柱状磁石の磁束密度計算の方法】 |
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磁石の形状によっては、高温 or 低温において不可逆減磁する場合があるので、磁石の形状を決定する時は注意が必要です。
詳しくは磁石メーカにお問い合わせください。
永久磁石やコイルによって空間に発生する磁束密度を求めることを磁場解析といいます。
上記のような単純な磁石ではなく複雑な形状をしたものや、ヨーク等の存在する多数の磁性体を同時に取り扱う場合は電磁気学の方程式を直接に解くことは困難です。
この場合は『有限要素法』や『積分要素法』という数値解析手法を用います。複雑な形状の磁性体を小さな磁性体要素の集まりとみなして最適解をコンピューターによって求めます。
弊社では磁場解析を用いてお客様の要望に合わせた最適な磁気設計のサポートもしています。