ホーム > 住宅不動産通信

最新の住宅不動産通信

「コンパクトシティ」の実現に何が必要か
   〜空き地・空き家が大きな障害となっている〜
第33号
住宅・不動産企画室長 川口 満

 

 人口減少・高齢化が進む中、地方地域の活力を維持しながら、人口の集中する都市において医療・福祉・商業等の生活機能を確保することは、大きな政策課題となっています。国土交通省ではコンパクトなまちづくり(コンパクトシティ・プラス・ネットワーク)を謳っていますが、この方針の住宅分野に及ぼす影響は大きなものがあります。この場で紹介してみます。

 

・東京は世界都市ランキング3位だが、東京圏では世界一の人口をかかえる

 世界の大都市については、その機能、例えば経済、研究・開発、文化・交流、居住、環境、交通・アクセスなどの評価により、世界都市ランキングが毎年発表されています(森記念財団都市戦略研究所)。東京はロンドン、ニューヨークに次いで3位(2017年)となっています。しかし人口集積度という点では、隣接する市街地までを含めた東京圏が断トツの1位なのです。都市戦略研究所の都市イメージ調査でも、東京から連想する単語はCROWDED(混雑した)でした。実際下図のように人口増は続いています。

東京都の都内人口の推計(15年国勢調査に住民票移動数を加算)

クリックして拡大表示

 

 東京の人口集中は世界的にみても突出していますが、上図のように、東京都区部では一層の増加傾向を示しています。江東区のように、人口急増のために保育所、小学校の整備が追い付かず、原因となるマンション建設の抑制(条例制定)をするほどです。ただし、人口増に悩む自治体というのは、日本においては例外です。晩婚化、少子化の進む日本では、子供が生まれる自然の増加はわずかなものです。東京の人口の増加は、進学や就職にともなう社会的移動によるものです。東京の人口増が、周辺地域、地方からの人の流入で成り立っているとすれば、人が地域に住み家族を育て生産に従事することで産みだされる経済的な活力が奪われるのではないか、という懸念がうまれてきます。

 

・都市のスポンジ化がコンパクト・プラス・ネットワークの重大な障害に

 人口が都市に集中するのは、自然な流れです。それにともなう、地方地域の地盤沈下をいかに抑えるかが大きな課題なのです。国土交通省では、人口の集中と今後の高齢化に備えて、医療や介護など様々な生活支援サービスが日常生活圏で提供されるようなコンパクトなまちを目指すとし、さらに周辺地域の活力を保つため、公共交通網を設けることによりサービスの提供を可能とする、プラスネットワークの存在が必要となってくるとしています。
 東京都と神奈川、埼玉、千葉を含む東京圏は、公共交通網が発達しすでにコンパクト・プラス・ネットワークが達成されているかのように思われますが、実態はそうではありません。都市のスポンジ(空洞)化ともいえる空き地、空き家の急増がさまざまな生活支援サービスの提供を困難としているのです。下図にあるように、東京区部こそ空き地の数は少ないのですが、近県の通勤圏の範囲では東京圏といえども空き地が広がっていることを示しています。

進む都市の「スポンジ化」(空き地、空き家の急増)

クリックして拡大表示

 

 

 都市のスポンジ化とは、都市の内部で空き地や空き家がランダムに数多く発生し、多数の小さな穴を持つスポンジのように都市の密度が低下することをさします。 都市のスポンジ化の進展は、サービス産業の生産性の低下や行政サービスの非効率化、地域コミュニティーの存続危機、治安や景観の悪化などにつながり、都市の衰退を招く恐れがあると懸念されています。個々の空き家、空き地でも問題となりますが、周辺の住宅地に広がれば、都市における生活を支える機能を維持することに支障がでます。空き地、空き家の問題は都市政策として対処しなければなりません。低未利用地の利用、処分の働きかけ、流通市場の整備も重要ですが、まずは都市計画において空き地、空き家の増加を防ぐための「都市のマネジメント」が求められているのです。それはどのようなものでしょうか。

 

 

 

→次のページへ

 



印刷用PDF