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もてはやされる「終活」 〜人口減少時代の冷ややかな現実〜 第30号
住宅・不動産企画室長 川口 満

 

 何かと話題であった「シュウカツ」(就職活動)は、売り手市場の今、厳しさが緩和されています。ところで同じシュウカツでも高齢者の方は「終活」に注目しています。筆者も終活に関連したテーマで講演を頼まれることもあります。終活に注目が集まる背景についてここで紹介してみましょう。

 

・終活ブームにはどういう背景があるのか

 終活とは、雑誌(週刊朝日)で使われ始めた言葉のようで、葬儀や墓などの手配をし、人生の最後に始末をつけるさまざまな準備のことです。人生のエンディングを控え、決めておかねばならないことは多々ありますが、まずは残った家族が困らないようにしなければなりません。昔「家」を守るのは当然とした時代では、家長が引き継がれ、家業、家産が保たれれば家族は安心でした。しかし「家」制度は戦後の民法改正とともに廃れてしまいました。現在に至っては親との同居さえ減っているのです。

(出典:総務省統計局2015年国勢調査結果よりARCにて作表)

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  上図のように国勢調査の結果では、親と同居している人口はずっと減り続けています。さらに世帯でみれば、親と子と孫がともに住む三世代世帯は5.9%(2016年厚生労働省国民生活基礎調査)まで低下しています。逆に単独(単身)世帯と夫婦のみ世帯では50.6%に達します。一方、親の世代が、老後の生活を子供に頼ることも減っており、無理に同居を求めることもなさそうです。親子が同居していれば、その子にとって先祖代々の家族の墓を守ることに抵抗はないでしょうが、独立して家を継がない子供となれば、離れた墓を継ぐことに熱心でなくとも責めることはできないでしょう。
 また、少子高齢化が進み、夫婦が配偶者先を含めて四人の親の老後をみるような事態も生じていますから、ますます自分が死んだ後のことを子供に任せて安心とはいえません。親の世代が、自分たちの葬儀や墓の手配を子供に任せず、あらかじめ準備しようというのが、終活の流れなのです。

 

・なぜ遺言、エンディングノートが普及しているのか

 終活が注目されるようになる頃から、信託銀行などで遺言作成を相談する方々も増えてきました。遺言書は法律で書式、体裁などが決められていますが、もっと簡便な形式で、金融機関の口座情報やさまざまな会員登録状況など、実務的な情報を記録できるエンディングノートも書店で売り出され、人気をよんでいるようです。信託銀行を中心に専門機関での取扱い件数は下記のように伸びています。

(出典:一般社団法人信託協会HP内、遺言関連業務取扱状況よりARCにて作表)

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 遺言書の作成を必要とする事情は、相続の際に遺産が高額で遺産分割にあたって相続人の間でもめる心配があることが大きいようです。相続税申告された相続財産の金額は、総額で5兆円(2015年国税庁相続税の申告状況についてより)を超え、内訳をみると現金・預貯金と有価証券があわせて43.9%もあり、遺産分割協議さえまとまれば、すぐに現金を手にできる財産が増えてきているのです。しかし遺産分割でもめ、相続人間で話がつかなければ、家庭裁判所に持ち込まれることになります。遺産分割についての家事調停の受付件数は、15年で12,971件(司法統計)にのぼります。同時期に相続税申告した被相続人数は12,326人(国税庁同資料)ですから、その人数に匹敵します。税金の申告と家事調停の申し立ては別の話ですが、裁判沙汰になる相続が思いのほかに多いのは確かです。
 遺産を巡って骨肉の争いとなることを避けるためには、被相続人である親の意思を子供たちに明確に示すことが必要であり、その手段が遺言書ということです。さらに遺言書だけでは、書式に縛られて、気持ちが伝わりにくいとの意向もあり、エンディングノートなども併せて使われるようになりました。実際のところ、遺言書の書式にこだわるよりは、体裁はどうであれ、親の意向が明確に示され、それに対して相続予定者の間でコンセンサスができていることが、もめ事を避ける最良の方法なのです。
 エンディングノートがはやる要因のひとつに、財産内容をもれなくチェックし、管理番号やパスワードのような付帯情報を書き込むことができる点があります。財産の評価額も、預貯金や保険金額など金額が明示されているものなら、個人でも記入することに難しさはありません。ところが、財産の中には評価が難しいもの、相続人が引き継ぐことを望まないものもあります。その代表が土地、建物の不動産なのです。しかもその評価額が占める相続財産の中での割合は、15年で46.2%(国税庁同資料)もあり、上記の現金・預貯金、有価証券と並んで多いのです。したがって、終活にあたって財産の遺産分割予定を考えるのなら、まずは不動産をどうするか、を決めなければなりません。

 

 

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