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どこまで広がる不動産テック
   〜 新サービスで住宅流通を促進させる 〜
第28号
住宅・不動産企画室長 川口 満

 

 金融の世界では、仮想通貨と共に名前を聞かない日は無いほどに、普及した「フィンテック」ですが、新たに産みだされるサービスの広がりは、金融業にとどまらず住宅・不動産の世界にも影響を及ぼし始めています。「不動産テック」と呼ばれる新たな動きをこの通信で紹介してみましょう。

 

・不動産テックはいつから注目を集めたか

 不動産テックに類する用語が使われ始めたのは最近です。国土交通省で注目されたのは野村総合研究所の谷山氏が2015年11月の研究会で提出してからで、その後も何回か取り上げられています。16年には不動産テックという用語がネット上で頻繁にみられますが、明確な定義がされたものではありません。

不動産テックに関する「野村総合研究所」谷山 智彦氏の提案内容

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  金融業界でフィンテックが騒がれ始める前から、米国での様々なベンチャー企業の取り組みの中で、不動産に関連するインターネットを使ったサービスはすでに存在しています。日本ではバブル期の不動産を担保とする不良債権の処理に関連して、不動産の証券化手法が米国から導入され、不動産と金融の融合が言われ始めましたが、もともと金融資産と不動産は資産運用の対象として近いものなのです。 金融の革新が不動産業に影響を与え、日本では不動産テックと呼ばれるサービスを産みだしました。
 上記の谷山氏は2016年の不動産経営者向けの講演「人工知能とビッグデータは不動産業界を変えるのか?」で今後の進展を示唆し、従来の不動産業界の「情報囲い込み」に価値が無くなり、独自のテクノロジーに基づいて、どのようにデータを活用するのかが今後の課題となると述べていました。

 

・米国流のITビジネスへの期待と限界

 不動産テックはフィンテックに続き普及してきた用語であり、フィンテックと同様に、米国で盛んにイノベーションを起こす、ベンチャー企業の新サービスとして紹介されてきたものです。米国、英国、カナダなどでは16年時点で680社(米マーケティング会社調べ)存在するといわれています。内容を私見で分類してみると下図のようになります。(参考のためのもので厳密な区分ではない)

米国における不動産テックサービスの全体像(参考)

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 米国のベンチャー企業の取り組みは多方面に広がっており、不動産テックの分野についても、建物のハードにつながるものから、ネット上の情報処理で完結するものなどさまざまです。先の谷山氏の分類によれば、不動産テックの方向性には@不動産の評価を支援、A不動産の取引を支援、B不動産業務の効率化の三方向があるといわれます。また不動産の需要者であるユーザーの側に役立つサービスなのか、あるいは不動産の供給者である事業者の側に役立つサービスなのかによっても大きく分かれます。
 米国でのさまざまなサービスの中には、大量のデータを迅速に処理することで市場調査や投資判断をサポートする、すぐ日本に持ち込めるサービス(主に@の分野)もありますが、その一方で不動産の取引そのものをネット上で完結できる(Aの分野)ような、日本では法律(宅地建物取引業法)で認められていないサービスも混じっています。日本のITベンチャー企業は、米国の例に負けない情報処理機能を持っているはずですから、不動産の分野で活躍してもらえるよう、宅地建物取引業法などの規制の緩和が必要ではないでしょうか。不動産業務の効率化(Bの分野)による市場拡大、収益向上をめざす日本における主役は、既存の不動産業者、それも開発投資能力のある大手デベロッパー等になりそうです。また、ハウスメーカーも自社で供給した賃貸物件の運営管理をオーナーから委託を受けています。例えば、積水ハウスではその顧客データ管理にブロックチェーンを導入します。入居者のスマートフォンにアプリを導入してもらい、本人確認の手間を減らし、個人情報を管理できるようになります。

 

 

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