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賃貸経営のサブリースがなぜ危ないのか
   〜借入金の返済だけではない事業リスク〜
第34号
住宅・不動産企画室長 川口 満

 

 女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営するスマートデイズの破綻に端を発し、投資したオーナーに巨額の貸付を行っていたスルガ銀行の不正行為がマスコミを賑わせています。金融庁の立ち入り検査に続き、外部の弁護士を入れた第三者委員会の調査も入り、不正行為というより犯罪といえる実態は次々明らかになっています。ここでは問題となったシェアハウスのサブリース商法のリスクについて、不動産投資として何が問題となるのか、確認してみましょう。

 

・スルガ銀行の経営破綻につながった危ないアパート融資

 わずかな自己資金で大きな不動産投資を可能とし、高収益ビジネスモデルと謳われた、シュアハウスのサブリースは、潤沢に不動産融資を受けられることが前提となります。そんな借入が可能だった背景には、地方銀行の金余り、融資先不足があります。下図の金融レポートが示すように、地域銀行(地銀、第二地銀)の「個人による貸家業」向け貸出金は高い伸びを示し、都銀などの主要行とは対照的でした。急増を放置できない金融庁は融資動向の監視を公表し、昨年からアパートローンは急減速しています。

不動産業向け貸出金増加額(前年同期比)の内訳の推移 クリックして拡大表示

それでも18年3月末のアパートローン残高は22兆9千億円にのぼり(銀行協会調べ)、その内地域銀行は14兆6千億円を占めています。金融庁が説く、アパートローンへのリスク管理は、債務者の実態を適切に把握し、融資に見合った審査・管理体制を整備することですが、スルガ銀行の不正な融資を防ぐことはできませんでした。貸出金利が低下し企業の資金調達も低調で地銀の収益源が乏しい中で、怪しい審査内容でも目をつむって実行する不正融資を止められませんでした。
 不動産でバブルが話題になるときは、必ず過剰な資金供給があり、それに絡んだ犯罪も発生してきた歴史があります。不動産投資を検討する立場からすれば、銀行が融資するからといって、計画の資金繰りにお墨付きが得られた訳ではないのです。賃貸経営のリスクについては、投資家が事業主体となるので自ら材料を集め検討し判断すべきでしょう。


 

 

 

 

 

 

 

・サブリース商法はなぜ危ないのか

 スマートデイズの破綻では、多くの投資家が多額の債務を抱え、返済ができない事態に追い込まれました。それは、スマートデイズがサブリース契約で家賃保証をし、運営、管理を引き受け、オーナーには安定した収益が見込めると勧誘していたからです。実際にはサブリースした業者が破綻し家賃保証が無効となり、共用スペースもない狭小な貸室だったため入居者が集まらず賃料収入があがらないため、たちまち借入金の返済が滞り、銀行から返済を迫れられる事態となってしまいました。
 そもそもサブリース契約で賃貸経営を不動産業者に任せっきりなのが危ないのです。入居者の募集、家賃の集金などは委託しても、住戸を借り上げた不動産業者との賃貸借契約についてオーナーである投資家は検討できているでしょうか。実はサブリースを規定する法はないので、借家借地法により又貸し(転貸借)となります。不動産業者は入居者に対して貸主ですが、オーナーに対しては借家人です。借家人は賃料減額請求権を持っていますので、不動産業者から家賃引き下げを要求することが可能です。家賃引き下げに応じなければ解約することもできます。貸主のオーナーからは簡単には解約できません。一応下表のように、オーナーとサブリースする不動産業者との契約をマスターリースと呼ぶことはできますが、法の規定があるわけではないので、効果は当事者の交渉内容次第ということになります。

マスターリースとサブリース

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 国土交通省は、このような曖昧な契約内容ではオーナーの法的立場が弱くなるため、マスターリースにあたる「サブリース住宅原賃貸借標準契約書」を12年から提供しています。18年3月に改定され、@賃料改定時期の明確化、Aサブリース業者から契約を解約できない期間の設定、B転貸条件項目への民泊の可否に関する事項の追加などが加わっています。一括借上げ契約を不動産業者任せにしないため、標準契約書の利用は有効ですが、内容はあくまでも必要最低限度の条文です。不動産オーナーにとって譲れない条件、賃料や期間などについては、契約の際に交渉することが必要になるでしょう。
 サブリース契約している賃貸事業で破綻した事例は、シェアハウス以外にもみられます。入居者の需要が乏しい地域での強引な賃貸住宅建築が一番多いのですが、ほかにも外国人居住者向け高級賃貸住宅や、大手企業の社宅に特化した集合住宅などさまざまなバリエーションがあります。それぞれ計画段階では、魅力のある賃貸物件に見え、しかも竣工したら不動産業者にすぐ借り上げてもらい、希望すれば家賃保証も付けられる、といった美味しい話なのです。こうした特定の需要層を狙った賃貸物件は、本来しっかりとしたマーケティング調査をし、需要予測、競合状態の把握などが必要なのです。外国人向けや大企業の社宅向け賃貸住宅は、企業の撤退、統廃合の激しい業種では不安定な需要とみなされます。

 

 

 

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