ホーム > 住宅不動産通信

最新の住宅不動産通信

悩み深き所有者不明の土地 〜相続登記を進めたい〜 第29号
住宅・不動産企画室長 川口 満

 

 所有者不明の土地は、不動産活用の相談の中でよく出てくる話です。6月に発表された「所有者不明土地問題研究会」(増田寛也元総務相を座長とする民間団体)の報告では、全国の私有地の2割にあたる410万ヘクタールにものぼるという推計値があげられていました。この所有者不明の土地はさまざまな問題をかかえており、今後とも影響が広がると見込まれますので、ここで概括します。

 

・登記簿調査でもクローズアップされる土地所有者の不明化

 まず所有者不明の土地とは、上記研究会の定義によれば不動産登記簿により、所有者が直ちに判明しない、または判明しても所有者に連絡がつかない土地のことをいいます。登記簿を見て持ち主が誰か分からないだけではなく、連絡がつかない場合も含まれることに注意してください。法務省が実態を調べるため登記簿記載を調査した内容は以下の通りです。

(法務省2017年6月不動産登記簿における相続登記未了土地調査よりARCにて作図)

クリックして拡大表示

  注目点は、登記簿記載の自然人名義(国、地方公共団体、法人を除く)がいつ所有権登記されたのかを調べその経過年数を把握したことです。自然人には世代交代する時期が必ずあるので50年以上所有権の名義が変わっていないものを、相続が発生しかつ未登記のものと推定します。実際はより短い期間で世代交代する方が多いでしょう。それでも大都市以外の中小都市・中山間地域では四分の一の登記が50年以上放置されています。大都市では地価が高いため、そこまで放置されるものは少なそうです。
 一方、国土交通省の地籍調査の際には、境界確定のため土地所有者の立会を求めるので、その通知が届かなければ所有者不明となりますが、約2割といわれています。さらに所有者を捜して戸籍・住民票で追跡し実態を調べた結果は、この所有者不明の土地のうち三分の二が相続による所有権移転未登記、三分の一が住所変更の未登記でした。

 

・どうして所有者不明地が増えるのか

 所有者不明の土地は、思いのほかに多いのです。身も周りでも故人の名義のまま放置されている不動産を所有している人はすぐ見つかるでしょう。そしてそういう不動産を所有している人は、その土地をこれからどうすればよいのか、途方にくれている場合が多いのです。土地の所有者名義を変えないままの現状に対し、下記のような問題点が指摘されています。

(2017年6月「所有者不明土地問題研究会」中間整理より引用しARCにて作表)

クリックして拡大表示

 どうしてこれほど所有者不明の土地が増え続けているのでしょうか。
 先の国土交通省の地籍調査の例によれば、所有者不明の土地のうち三分の二が相続による所有権移転未登記によるものでした。これは、土地活用相談の現場で出てくることですが、所有者名義が相談者と一致しないケースは、まず親の土地であることがほとんどです。なかには亡くなって長期経過した祖父母のものも出てきますが、現時点での土地所有者を特定することは大変です。親の名義の土地を使っている子供たちは多いのですが、わざわざ名義を変えようとはしないのです。
 親の土地を使う場合、通常地代も払わずに親の承諾だけで自宅を建てたりすることになります。借地権を設定登記することはありませんが、土地を使用し、自宅を建てることに支障はありません。また、親の許可を得て土地を使っていても、さらに土地の所有権名義を変えることは、贈与であれ譲渡であれ多額の税金負担を伴いますので、現実的ではありません。(例外的に相続対策のためにあえて名義を移すことはありますが)土地を利用するだけなら、所有権の名義変更は不要です。
 結局、個人の所有権の名義変更が問題となるのは、相続代替わりの際ということになります。そして親の不動産を誰が引き継ぐかが問題となり易いのです。地価が高いと相続人の関心は高いのですが、財産の分割を巡り争いが生じることも多く、そうなると土地の名義変更には手が付けられません。逆に、遺産分割でトラブルはなくとも資産価値の乏しい不動産(場合によっては債務が付随している)では、引き継ぎ手がいないこともあります。相続に際して、遺産分割に従い相続人の名義で所有権移転されることは当然ではないのです。率先して引き受ける相続人がいなければ、所有者不明の土地になります。

 

 

→次のページへ

 



印刷用PDF