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2025年に向けて動き出す地域包括ケアシステム No.31
主幹研究員 秋元 真理子

◆地域包括ケアシステムとは、保健・医療・介護・福祉の連携

 2012年4月から始まった診療・介護報酬同時改定は、「施設から在宅(地域)へ」と本格的に舵を切った内容となった。国が目標とするのは、住み慣れた地域で医療や介護、生活支援などを受けられる「地域包括ケアシステム」の確立だ。
 地域包括ケアシステムの先進事例としては、広島県公立みつぎ総合病院を拠点とした尾道市御調町の包括ケアシステムが知られている。「地域包括ケアシステム」の最初の提唱者でもある同病院の山口昇医師は、74年から、「寝たきりゼロ作戦」を開始し、保健・医療・市の連携による御調町の地域包括ケアシステムを構築した。山口氏は「地域包括ケアシステムを一言でいえば、保健・医療・介護・福祉の連携システムであり、また施設ケアと在宅ケアとの連携でもある」と説いている(「地域包括ケアシステム」オーム社2012年)。



◆地域包括ケア構築の背景に「団塊世代の高齢化」

 高齢でひとり暮らしになり、医療や介護が必要になっても、住み慣れたまちや家で暮らし続けられる環境整備は、生活の質を高める意味でも重要な政策だ。しかし、国が「地域で」「在宅で」と取り組む背景には、13年後の2025年に、いわゆる団塊の世代が全員75歳以上(後期高齢者)になり、75歳以上人口が史上空前の2,167万人に達する、という理由があるからだ(図1)。10年に1,422万人だった75歳以上の高齢者数は、25年までの15年間で745万人も増えることになる。したがって、現在のような病院や介護施設中心の体制では追いつかず、抜本的な改革が必要となる。


図1.高齢化の推移と将来推計
図1.高齢化の推移と将来推計
   資料:平成23年版 高齢社会白書(内閣府)


◆都市部で急上昇する後期高齢者人口比率

 さらに、今後の高齢者数の増減は、全国一律ではなく、地域で大きく異なる。05年頃から、都市部の高齢化が加速し、逆に、地方の高齢化率の伸びは緩やかになる。75歳以上人口だけでみても、埼玉、千葉、神奈川、大阪、愛知、東京などの都市部で、増加の度合いが大きくなる(図2)。したがって、これから2025年に向けてとくに重要なのは、都市部における地域包括ケアシステムの構築だ。


図2.都道府県別75歳以上人口の見通し
図2.都道府県別75歳以上人口の見通し
   資料:「日本の都道府県別将来推計人口(平成19年5月推計)について」
   (国立社会保障・人口問題研究所)


◆地域包括ケアシステムを支えるサービス

 地域包括ケアシステムを構築するためには、在宅での要介護状態に対応できる医療・介護サービス体系の構築が課題となる。
 今回の診療報酬改定でも、在宅医療を強化した。たとえば、病院の入院日数が短縮されるなか、退院後の受け皿となる在宅療養支援診療所などの機能を強化した上で、緊急時や夜間の往診の報酬などを引き上げた。訪問看護も医療の必要性が高い患者への往診の報酬をアップした。
 一方、介護報酬改定では、新たに「24時間対応の定期巡回・随時対応サービス」が創設された。要介護高齢者の在宅生活を支えるため、日中・夜間を通じて、訪問介護と訪問看護が密接に連携しながら、定期的に巡回し、24時間対応で電話を受付け、相談援助や随時訪問を行う。従来の介護サービスは、一定の時間をかけないとサービスとみなされず、使い勝手がよくなかった。新サービスでは、食事介護や服薬確認、床ずれの対処や血圧・体温のチェックなどのケアを24時間体制で提供する。
 従来の介護サービスと異なり利用者の自己負担は介護度に応じた定額制で、原則、1日に何度利用しても負担額は変わらない。
 課題は、何と言っても担い手をどう確保するかだ。夜間対応型訪問サービスを導入し、都内など7自治体でモデル事業を展開しているジャパンケアサービス(東京都豊島区)は、4月以降、同サービスを全国展開していく計画だが、人材確保が追いつかないという。もともと不足している介護の担い手、夜間に働く人の確保はさらに難しくなっている。
 また、新サービスには訪問看護の充実も欠かせないが、訪問看護事業所は00年以降、ほとんど増えておらず、規模も小さい。さらに、訪問看護師は病院勤務と異なる能力が求められるが、小規模な事業所には人材育成の余裕がないことも課題になっている。



◆オランダのBuurtzorgに学ぶ専門職チームによる在宅ケア

 在宅ケアのサービス体系を考える上で、現在、オランダ全土に拡がりつつあるBuurtzorg(ビュルツォグ)という在宅ケア事業者の事例が参考になる。
 オランダでは、日本の介護保険にあたる特別医療費保険(AWBZ)が68年に発足しており、高齢者の6割近くが在宅ケアを利用している。90年代になると、利益優先の在宅ケア事業者が増加し、それまでの地域看護師を中心とした在宅ケアから、効率優先の事業者が増えていった。その結果、在宅ケアの品質低下が問題になると同時に、ケアが細切れのため、利用者の全体像が把握できず、スタッフの不満も増大するようになった。
 こうした状況を脱却すべく、Buurtzorg代表のヨス・デ・ブロック氏は、地域看護師としての実践と、介護事業者でマネジメントに取り組んだ経験をもとに、さまざまな利用者に対応できる新しい在宅ケア事業所を開設した。Buurtzorgでは、看護師・介護士が、最大12人の独立チームをつくり、利用者50人前後に対し、利用者に必要な訪問看護、身体介護など、トータルなケアを提供する。高い教育を受けたスタッフにより、高品質のケアが提供でき、利用者、スタッフ双方の満足度を高めることができた。また革新的なマネジメントや独自に開発したICTによるネットワークを活用することで、管理・事務経費を最小限に抑え、人件費の高さをカバーすることができた。すでにオランダ全土で約430チームが活動するまでに成長し、オランダ政府もBuurtzorgの仕組みに注目して政策に組み込めないか検討しているという。
 日本でも、革新的なビジネスモデルによる、地域包括ケアを支えるサービス事業が生まれることを期待したい。

 

(2012.04.18)

 

 



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