価値創造の実例と将来に向けて

価値創造の実例―電子コンパス―

地磁気を測定する磁気センサと旭化成が持つLSI、ソフトウェアの技術を組み合わせて、携帯電話やスマートフォンの機能を飛躍的に高める電子コンパスを発明しました。
これにより、歩行者ナビゲーションなどの地図サービスが充実し、その普及に大いに貢献しました。

――電子コンパスとは?

電子コンパスは、地磁気を測定して方位角を計算する半導体電子部品です。スマートフォン等で、歩行者ナビゲーション等の地図サービスに使用されます。旭化成は、磁気センサ(ホール素子)とセンサ信号を増幅するLSI、情報を処理するアルゴリズム(ソフトウェア)を組み合わせた電子コンパスを開発し、電子コンパスの世界市場で圧倒的なシェアを持ちます。

――開発のきっかけは?

2000年頃、携帯電話にGPSが標準搭載される時代になってくると「カーナビ」同様に「歩行者ナビゲーション」が求められると推測しました。車に比べて移動速度が遅い歩行者の場合、GPSでは進行方向を正確に推定できないため、地磁気を測定して方位角を計算する電子コンパスのニーズが生まれると考え、開発検討が始まりました。

――電子コンパスの開発に見られる旭化成ならではの強みとは?

まずセンサ、次にLSIをつくり具体的な使用法を考える「シーズアウト」ではなく、センサ、LSI、その他の要素技術・製造技術を社内に持ち、技術全体を俯瞰しつつ、アプリの側から「マーケットアウト」の発想で電子コンパスを開発しました。その際、多様な製品で培った営業ルートを活かし、初期から顧客の要望を取り込み多くの提案を行いました。これらの一つひとつが旭化成の強みであり、それを統合したビジネスモデルが電子コンパスと言えます。

――なぜ旭化成の電子コンパスは強い競争力を発揮できたのか?

競合他社はコストと時間をかけて高感度センサの開発に注力しましたが、旭化成は既に磁気センサを量産する技術・設備を持ち、信号を増幅するLSIの技術や、製品を販売する営業ルートも持っていました。また、他社が「高感度」にこだわる中、旭化成は「センサ+LSI+アルゴリズムによる“ソリューション”を提供」することで、ユーザーの「使い勝手」にこだわりました。時間やコストをかけずに、スピーディに「売れる」製品をつくりました。

将来に向けての価値創造

ホール素子は、電装化がますます進む自動車用途において、また新しい柱として人感センサ、ガスセンサなどへの活用が期待されています。

自動車用途

これまでのパワーステアリング、パワーウインドウ、エアコンファンなどのモータ制御に加え、今後、環境規制や燃費向上のために、ダウンサイジングエンジンの採用、トランスミッションの多段化が進展し、パワートレイン向けセンサの需要の拡大が見込まれています。さらに、グローバルで自動運転システムの普及・拡大が見込まれるため、車載用センサの世界市場は高い伸びが期待されています。

赤外線センサ

磁気センサで培った化合物半導体薄膜形成技術をベースに開発した赤外線センサは、住宅等の室内で使用可能な人感センサに使用できます。また、高層のオフィスビルや密閉度の高い住居の空調制御において、外部の空気をどれだけ取り入れるかによりその冷暖房効率は大きく変わりますが、室内環境のCO2濃度を空気質の基準として測定し空調の換気システムの動作を最適化することで、快適な室内環境と空調の省エネルギー化を実現するガスセンサとしての役割も期待されています。

CO2排出量削減に貢献するホール素子

当社は中期経営計画「Cs for Tomorrow 2018」で、社会課題の一つに掲げる「クリーンな環境エネルギー社会」について、多角的な事業を通じて貢献することを目指しています。その中でホール素子という磁気センサは、省エネルギーの実現に向けて大きな役割を果たしています。人びとのくらしにおいてあらゆる家電にモータが使われていますが、磁気センサによってモータの回転位置や速度を正確に把握することで、必要最低限の電気でモータを動かせるようになります。消費電力の低減により、世の中のCO2排出量削減に大きく貢献します。

当社では「温暖化配慮製品に関するガイドライン」を作成しており、エアコンDCモータ用ホールICおよびホール素子を温暖化配慮製品と認定し、事業活動を通じて環境への貢献を続けています。