2006年4月19日

各 位
旭化成の住まい

「戸建て住宅の侵入被害開口部に関する実態調査」結果について
〜自社供給建物の修理依頼記録から見る侵入被害の実態〜

 旭化成ホームズ株式会社・ロングライフ住宅研究所(所長:熊野 勲)は住まいの防犯性能に対する関心の高まりを踏まえ、明治大学理工学部 山本俊哉助教授と共同で、自社が供給した住宅の修理依頼記録から侵入被害に関する記録を抽出し、建物図面と照合・分析することで、被害実態を明らかにしました。このような調査は、これまでに極めて少なく、住宅設計時の防犯対策を検討する際の貴重なバックデータとして活用が見込まれることから、広くお知らせするものです。
  今回の調査の結果、侵入被害を受けた開口部の場所は9割が1階に集中し、被害の7割以上がガラス割りによるものでした。残りの半分以上が開いていた窓と推測され、面格子を壊されることなどの被害にあっていました。また、敷地条件から見た侵入被害開口部の位置は、道路から見て背面が約半数を占めました。また側面に位置する開口部の被害を見ると、道路から6m以上離れた開口部の被害が側面被害の85%を占めることが判明するなど、奥にいくほど被害が多くなる傾向が定量的に確認できました。
  一昨年、「防犯性能の高い建物部品(CP部品)」が公開され、本年4月からは住宅性能表示制度においても評価の対象となるなど、建物の開口部強化の視点からの防犯対策に関心が高まっています。旭化成ホームズでは、このような対策に加え、防犯環境設計の視点から敷地内を「来訪者の立ち入り範囲」と「道路からの見通し」の観点から3つに分ける「ゾーンディフェンス」という設計手法を平成16年より提唱してきました。今回の調査により住まいの防犯性を考える際に必要とされる定量的な基礎資料を得ることができたと考えており、今後も継続的に調査を行うとともに「ゾーンディフェンス」の設計手法をより実効性の高いものになるように活用して参ります。
 
I. 背景
   侵入被害のあった住宅に関する全国的な統計データは、警察庁が「犯罪統計書」として公表しています。ただし、その内容は被害住宅が存在する地域、侵入口の種類、侵入手口などに限られています。従って、本調査のように居住環境と住宅侵入の関係を明らかにするには、警察や関係団体の協力を得るか被害住宅を直接調査するなどの必要があり、本調査と同種の研究は極めて少ない状況にあります。
  「ロングライフ住宅の実現」を目指す旭化成ホームズでは、供給した住宅の修理依頼の記録などのメンテナンス履歴をデータベース化して保有することで、お客様へのアフターサービスの充実や商品の改善に活用しています。今回の調査は、この建物履歴情報に含まれるガラス破りをはじめとした破壊行為を伴う侵入犯罪被害による修理依頼の記録に着目し、被害内容を実際の建物設計資料と照合して分析することで、防犯環境設計を行う際に有用な基礎資料の提供を目指すものです。
   
II. 調査の概要
 
1.
調査名称:「戸建て住宅の侵入被害開口部に関する実態調査」
 
2.
調査目的:本調査の目的は、侵入被害を減少させ、安心して暮らせる住まいを実現するために、住宅侵入犯罪の実態を把握し、それに基く対策を提案することにあります。 
 
3.
調査時期: 2004年1月から2005年12月までの2年間
 
4.
調査方法:ヘーベルハウスのアフターサービスはホームサービス課を窓口として、引き渡し後60年間定期点検サービスを実施するとともに、修理依頼の受け付けを随時行っています。この修理依頼の内容は記録されており、また竣工時の図面も保管されています。本調査はこの修理依頼の中から侵入被害に関連するものを抽出し、被害箇所と図面を照合することにより、分析を進めたものです。 すなわち、弊社ホームサービス課への修理依頼内容の記録のうち、
1) 1994年以降の完成物件    かつ
2) 被害箇所の特定が可能な事例 を抽出し被害内容を分析しました。
被害年20042005
被害棟数123153276
被害件数126161287
   
III. 明治大学理工学部 山本俊哉助教授略歴(ご参考)
   昭和34年生まれ。千葉大学大学院修士課程(建築学専攻)修了。 (株)マヌ都市建築研究所取締役主席研究員を経て、平成17年4月より明治大学理工学部建築学科助教授。文部科学省「学校施設の安全管理に関する調査研究協力者会議」、国土交通省「防犯に配慮した共同住宅に係わる設計指針」などに携わる。
   1998年 「安全・安心まちづくりハンドブック」(共著)ぎょうせい
   2001年 「共同住宅の防犯設計ガイドブック」(共著)創樹社
   2004年 「防犯セキュリティガイド」(共著)日経BP社/「狙われない防犯住宅」(共著)日経BP社
   2005年 「安全・安心のまちづくり」(共著)丸善/「防犯まちづくり〜子ども・住まい・地域を守る」ぎょうせい
   
IV. 旭化成ホームズ株式会社 ロングライフ住宅研究所について(ご参考)
   旭化成ホームズ株式会社では平成10年2月に、 地球環境保全や少子・高齢化の進展などを背景とした社会のニーズに応えるべく 「ロングライフ住宅(長期耐用住宅)の実現」を事業戦略ビジョンとして宣言し、推進しています。 その一環として、同年4月に「旭化成・ロングライフ住宅研究所」を設立し、 生活者の視点に立った住まい方の研究を行い、その成果を発表するなど積極的に活動を行っています。
   
  <ロングライフ住宅研究所によるこれまでの主な研究発表>
  シニア世代における住替え意識・実態調査
  1.調査名称 「シニア世代における住替え意識・実態調査」
  2.調査目的 本調査はシニア層における住宅ニーズ・行動の解明を目的に、
(1)住替えシニア層の行動・意識の把握
(2)住替え予備軍シニア層の意識・ニーズの把握
を明らかにすることを課題とした。
  3.調査発表 2004年11月
   
  中古一戸建住宅購入者・売却者から見た住宅ストックの現状
  1.調査名称: 中古一戸建住宅購入者・売却者から見た住宅ストックの現状
  2.調査目的: 大都市圏における一戸建ストック(中古)住宅市場における売り手(売却者)と買い手(購入者)を対象に、 その意識と実態を把握することにより、今後の日本における一戸建ストック住宅のあり方や課題を考える資料とする。
  3.調査発表: 2003年1月
   
  長期居住者と建替え者の住まい維持管理に関する比較調査
  1.調査名称: 長期居住者と建替え者の住まいの維持管理に関する比較調査
  2.調査目的: 建替え後、築5年以内の首都圏の戸建て住宅居住者を対象に、 建替え前の住まいの維持管理の実態や意識を尋ね、平均築23.8年で住み続けている前回調査の長期居住者との比較を 行なうことで、今後のロングライフ住宅のあり方を考える資料とする。
  3.調査発表: 2000年2月
   
  建築20年を超える住宅居住者調査
  1.調査名称: 建築20年を超える住宅居住者調査
  2.調査目的: 建築20年を超え、建替え期を迎えつつある首都圏の戸建て 住宅居住者を対象に、住まいの満足度や問題点、メンテナンスやリフォームなど住居管理の実態や意識、 および将来の建替え意向を尋ね、今後のロングライフ住宅のあり方を考える資料とする。
  3.調査発表: 1999年3月

以上




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