「暮らしの『場』を重ねる二世帯同居とエネルギー消費の関係」調査結果について
〜親子同居のかたちとエネルギー消費の実態〜

2013年1月24日
旭化成ホームズ株式会社

 旭化成ホームズ株式会社(本社:東京都 新宿区、代表取締役社長:平居 正仁)は、親子同居での暮らし方が、生活エネルギー消費量にどのように影響しているかの調査研究を行い、その成果をまとめた調査報告書「暮らしの『場』を重ねる二世帯同居とエネルギー消費の関係」を作成しました。

 今回の調査報告書では、両世帯の生活分離度(住宅の形態)や生活パターン(暮らし方)とエネルギー消費の関係について実態を調査してまとめています。その結果、それぞれ単世帯で別居する家族に比べて、暮らしを完全に分離した二世帯住宅では生活エネルギー消費量が約2割少なく、より暮らしの「場」を共用するような二世帯住宅では3割程度少なくなることがわかりました。またその違いを詳細に調査した結果、今回の調査項目では「夕食の場」を家族が共にすることが、エネルギー消費量に最も大きく影響を及ぼす要因であることや、同居家族のライフステージに応じて暮らしの「場」の重なり方が変化し、エネルギー消費量も変化することなどがわかりました。

 今回の調査で改めて、二世帯住宅においても家族が共に過ごすことがエネルギー消費に関係することが明らかとなりましたが、二世帯同居家族は経年と共に暮らし方や交流の在り方が変化していくことも特徴です。それらの変化を含め、各ライフステージで両世帯が自然に交流できるような提案や工夫をこれからも提案して参ります。

I.背景

 近年、エネルギー問題への関心が高まり、住宅分野ではHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)をはじめ種々のエネルギー対応機器が普及し始めています。当社もこれらの動きを踏まえ、昨年には先進のエネルギー対応機器をラインアップに加えるなど積極的な対応をして参りました。一方、当社は以前よりこのような設備機器によるエネルギーコントロールに加え、人が健康で快適に住まう場所という住まいの本質から、建設地における「光・風・緑」といった自然の住まいへの取り込み方や、そこで営まれる暮らしの在り方という視点からの研究を、くらしノベーション研究所を中心に行って参りました。同研究所では2002年に誰でも登録可能なECO生活支援WEBサイト「EcoゾウさんClub」を開設することで自社ユーザーを含め広く一般家庭のエネルギー使用の実態を調査するなど積極的な活動をして参りました。このような中、2008年には単世帯家族の暮らし方とエネルギー消費の関係の調査により、家族が集まって過ごすことが生活エネルギー消費量を減少させていることが明らかとなり、単世帯における家族の集まる「場」としてのLDKの在り方をプランニングノウハウに落とし込むことなどの成果を得ています。更に、これまでの調査から、親世帯と子世帯が別々の2軒に暮らす場合に比較して、二世帯住宅では生活エネルギー消費量が2〜3割少ないことがある程度判明し、昨年5月に発売した二世帯住宅「ヘーベルハウス &NiCO(アンド ニコ)」のコンセプトにも取り入れましたが、同居家族の暮らし方との関係の実態までは調査できていませんでした。今回の調査により、今後の二世帯住宅のプランニングノウハウの展開の参考になることはもちろん、同居の魅力が更に新しい視点から広がっていくことも期待しています。

U.調査概要

調査目的 二世帯同居家族の生活分離度・生活パターンとエネルギー消費の関係を、両世帯の暮らし方(「場」の重なり方)に着目して調査し、その特長を明らかにすること。
調査対象 ヘーベルハウス居住者で二世帯同居家族(親と子夫婦同居の家族)
(関東圏・中部圏・関西圏)693件 ※築1〜11年
調査時期 2012年1月〜2月(第1回),2012年9月〜10月(第2回)
調査方法 Web調査と郵送調査を併用

V.調査結果の概要

1.二世帯同居家族と単世帯別居家族のエネルギー消費量比較

 6人家族が一緒に二世帯住宅に暮らす場合と、2人家族(親世帯)と4人家族(子世帯)が別々に2軒の住宅に暮らす場合のエネルギー消費量を比較すると、二世帯住宅で2〜3割少ないことがわかりました。

 ここで注目すべきは、すべての生活空間を分け、各世帯が独立して暮らす二世帯住宅であっても、エネルギー削減に大きな効果があるということです。二世帯同居が、生活エネルギー消費量の削減に寄与する理由として、建物が1つになることでの壁面積の減少に伴う熱損失の減少や床面積の減少による照明や冷暖房・家電の減少が考えられます。しかし、1戸の家に2つの家族が暮らすことで自然と生活が近づき、家族で時間や空間を共にすることが増える(=「場」の重なりの増加)ということが、大きく影響していると考えられます。

単世帯別居家族との年間エネルギー消費量比較
単世帯別居家族との年間エネルギー消費量比較

2.二世帯同居における暮らしの「場」の重なりの実態

 二世帯同居の暮らしを玄関・キッチン・浴室の数をパターン別に分類し、その暮らし方の実態を調査しました。その結果、玄関・キッチン・浴室の数が増えるほど、世帯別の場所で暮らす傾向が見られました。しかし一方では、玄関を共有している二世帯住宅では、メインキッチンが2つあっても、家族全員が同じ場所で夕食を食べたり、家族の一部が世帯混合で食べる割合が約2〜3割存在することも明らかになりました。このように、建物形態の分離度と実際の暮らしの分離度は、必ずしも一致しないことがわかりました。

3.二世帯同居家族の暮らしとエネルギー消費の関係

(1)建物形態とエネルギー消費量の関係

 二世帯同居家族の建物形態と、エネルギー消費量の関係について調査したところ、エネルギー消費量は、玄関・キッチン・浴室の数と関係があることがわかりました。具体的には、浴室が2つから1つになることで8.3%少なくなり、キッチンが2つから1つになることでは13.0%小さくなることがわかりました。

(2)暮らしの「場」の重なりとエネルギー消費の関係

 実際に両世帯がどのように暮らしているのか、「夕食・入浴の場の重なり」とエネルギー消費量の関係についても調査しました。その結果、平日に家族が同じ場所で食事をする家族はエネルギー消費量が21.2%少ないことがわかりました。これは、食事行為そのものに付随する設備・家電の使用にとどまらず、食事後にLDで共にくつろぐなど、その後を含めた「場」の重なりが増えるためと考えられます。一般的に浴室を共用することがエネルギー消費量削減に繋がると想像されがちですが、それ以上にキッチンの共用が大きく影響することがわかりました。夕食後、家族が一緒に過ごす二世帯同居家族は、暮らしや家族関係に対する満足度が高くなることもわかっており、一緒に過ごすことが豊かさとエネルギー消費量削減を両立する1つの方法と言えそうです。

(3)二世帯同居家族のエネルギー消費量に影響を及ぼす要因

 二世帯同居におけるエネルギー削減の要因として、建物形態とくらしの「場」の重なり以外の要因も含めて影響の度合いを分析しました。その結果、今回検証した項目の中では、両世帯の夕食の「場」の重なりが最も大きく影響していることがわかりました。

4.二世帯同居家族の「場」の重なりとライフステージ変化

 二世帯同居家族の暮らしは、両世帯の交流頻度や暮らし方がライフステージによって大きく変化していくものです。具体的には、子世帯の子が幼少のころは子育てサポートなど親世帯LDKを中心に暮らしの重なりが見られ、その年齢が上がるにつれ暮らしの場は各世帯に分散し、親世帯が高齢になったり片親になったりすれば再び両世帯が夕食を一緒に食べる、などのケースが想定されます。

 そのため、二世帯同居の住まいは、ライフステージに合わせていつでも自然に暮らしの「場」を重ね、家族を繋ぐことができる必要があると言えます。「二世帯住宅」ではこれまでも、同居家族が自然に交流して暮らすプランの工夫を提案して参りましたが、今回の調査データを参考に、暮らしの「場」とエネルギー消費量の関係についての研究をより一層深め、今後の提案に活かして参ります。

以上


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