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インタビュー

伴繊維 伴氏インタビュー「糸を撚ってから織る」先染めにしか出せない風合いが、 ベンベルグの魅力を最大限に引き出す。

山梨県の富士吉田地区で生産されるベンベルグの先染め裏地。その一番はじめの工程であり、織物の仕上がりを左右する重要な「撚糸」を手掛ける伴繊維の伴氏にお話をお伺いしました。

繊細なベンベルグ原糸から、織りやすい双糸へ 山梨県で生産される「先染め裏地」は、原糸を先に染色してから織るのですが、ベンベルグの原糸そのままでは、細すぎて糸として使うことができません。そこで、まずは撚糸屋が糸に撚りをかけて織物に対応できるような加工糸に仕上げます。原糸1本ずつを撚ったものを単糸と言い、単糸2本を引き合わせて縄のように撚ったものを双糸と言います。うちの工場ではベンベルグ原糸を双糸にして、1ケ月に約1トン出荷しています。

ベンベルグはとても繊細な素材なのでどうしても傷がつきやすいのですが、傷ついた糸を出荷してしまうと後の工程に大きな影響が出てしまうため、常に細心の注意を払っています。
仕入れた原糸そのものに傷がないか、見落とさないよう細かくチェックしたり、撚糸機の中を点検したり、機械を調整したり。いかに織りやすい糸を提供するか、ということをいつも大切にしていますね。
長年そんな風に丁寧にやってきたことが信頼につながって、おかげさまで今でもこうして続けられているように思います。

「産地のために」という使命感を持って 実はうちは単なる撚糸屋というより、産地の問屋のような役割も担っています。
どういうことかと言うと、機屋(はたや)さんから注文が入ってから撚るのではなく、注文がなくても常に一定の原糸を仕入れて双糸にした上で、在庫しておくんです。自社工場以外に4軒の外注工場を抱え、そちらにも撚糸をお願いしています。
山梨産地は個人で運営されている小さな機屋さんが多いので、その方たちが問屋さんから注文を受けられたとき、必要な量の双糸をすぐに提供できるようにしているんですね。

産地は高齢化しており、後継者の育成が大きな課題です。辞めていかれる方も多い中、「伴さんに辞められちゃ困るよ」と頼りにしていただいてることもあり、途切れさせてはいけないと使命感を持ってこの仕事を続けています。今は別の事業も手掛けていますが、あくまでも親から受け継いだ繊維の仕事に軸足を置いて、何とか次の世代にバトンタッチできるよう続けていきたいですね。

「先染めのベンベルグの価値」を伝えることが重要 ベンベルグ本来の良さは、何といっても独特の風合いや滑りのよさであり、「糸を撚ってから織る」という先染めの工程だからこそ発揮できるものだと私は思ってます。

産地見学ツアーでうちに来られた方には、よくこんな例え話をしているんです。
「スーパーの安いカマボコと、名産地で丁寧に作られた少し値の張るカマボコを食べ比べてみてください」って。安い方は歯でカチンとすぐに噛み切れてしまうけれど、高い方はゴムのように弾力のある歯ごたえで、何とも言えない贅沢な味わいなんですね。
「同じように、手間暇がかかる先染めによって生まれるベンベルグの風合いも、合繊や後染めとは全然違うでしょう」と言うと、皆さん「なるほど」と深く納得されるんです。

先染め裏地は手がかかる分、どうしても値段は高くなります。しかし、それだけの価値や魅力が確かにあるのだということを、消費者やアパレル関係の若い人たちにしっかりと伝えて理解してもらう努力が必要だと感じています。
産地の未来のためにも、問屋さんやメーカーさんには、どうか力を貸していただきたいですね。

有名ブランドの袖裏を、すべてベンベルグに変えさせた言葉 今から20年以上も前のことですが、こんなことがありました。

あるアメリカの有名ブランドの日本人向けジャケットの裏地をつくる仕事の依頼がありました。いつも通りベンベルグを使ったところ、アメリカ本社からチェックが入ったのです。「アメリカでは裏地にレーヨンを使っているのだから、ブランドの統一感のために同じようにレーヨンでつくってもらわないと困る」と。
そこで、言われるままにレーヨンでやってみたのですが、どうにもバサバサしてしっとり感に欠けるんですね。デニール数を変えたり色々と試してみても、ベンベルグとは全然違う仕上がりになってしまう。これ以上どうにもできないよと問屋さんに伝えると、「そのことを生産者の1人としてブランドの担当者に説明してほしい」と頼まれたんです。困ったなぁと思いながら私は問屋さんと一緒に東京まで一緒に行き、ブランドの担当者にこんな話をしました。

「レーヨンよりも安い素材を使っているならともかく、ベンベルグの方が滑りもよく風合いもいい。このジャケットはアメリカでは売らず日本人だけに売るんですよね?日本人は、懐石料理のように器と料理の調和を大切にしたり、庭の鹿威しの音に癒されたりするような、繊細な感性を持った民族なんです。それなのにわざわざアメリカ人と同じレーヨンを使えというのはおかしい、バサバサした裏地は日本人の感性には合いませんよ。」
すると、担当の方は「伴さん、最高です!確かにそうですね。私が責任を持ってアメリカでその説明をしてきますから、このままベンベルグで進めてください」とおっしゃったのです。

それ以降、このブランドの袖裏には、20年以上ずっとベンベルグが使われています。
物の良さや価値をきちんと伝えることは大切なんだなと実感した、今でも忘れられない出来事です。

工場内の様子

伴繊維 伴 実悟

50年前より山梨富士吉田産地にて糸商として繊維業に従事、撚糸業も手がける。現在山梨向けベンベルグの約3割を取り扱う。自身の役割を『産地のダム』と認識し、情熱を持って産地を下支えしている。

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