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インタビュー

青文テキスタイル株式会社 鈴木常務。歴史ある米沢産地を、"継承"と"発信"で守りたい。

創業140年、山形県米沢産地の青文テキスタイル株式会社。同社で企画営業としてテキスタイルデザインを手掛ける鈴木常務に、産地への想いや繊維産業の未来について伺いました。

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受け身ではなく、発信することが不可欠青文テキスタイル株式会社は、明治10年の創業で、一昨年140周年を迎えました。呉服から始まって、昭和40年頃に婦人服地の製造に切り替え、現在に至っています。社内に織物と丸編みの2部門の工場があるのですが、1つの会社でどちらも手掛けているのは、日本でも世界でもかなり珍しい体制のようです。織物は長繊維、丸編みは短繊維をメインに、多種多様な糸を扱っており、主にファッションと礼服の分野で採用されています。
年に2回、東京で展示会を開き、海外視察で得たトレンド情報などをもとに自社で企画した生地を春夏100点、秋冬100点ほど提案しています。毎回非常に頭を悩ませています。昔と違って今は、受け身で言われた通りにつくるだけではビジネスが成り立ちません。こちらから発信することが重要で、実際そこで展示した柄をもとにお客様の好みや要望を伺うことからビジネスにつながっていくことが最近は多いです。
世界的なファッション素材見本市「ミラノ・ウニカ」のジャパンパビリオンブースにも、これまで6度参加しました。ここでは多くの学びがありました。外国の方が日本に望んでいることや、海外でのビジネスの厳しさがよくわかりました。日本の人口が減り続ける中、必ず海外に目を向けなければならない時がやってきます。このために作戦を立てて準備を始めています。

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産地の高齢化問題に立ち向かう 数年前、年配の職人さんがまとまって引退されるのを機に若い世代を複数採用しました。そのため当社は従業員の平均年齢が40歳と、機屋としては若い方です。経験不足な面はあるかもしれませんが、社内の風通しも現場の雰囲気もよく、円滑なコミュニケーションが取れていると思います。昔のような職人気質の「技術は見て盗め」は当社では禁止して、きちんと教えることを徹底しています。逆にベテランが若手から学ぶことも多々あって、親子ほど年の離れた社員間の会話は、微笑ましいものがあります。私が言ったら突っぱねるような無理難題も、若手から頼まれたら「やってみようか」と引き受たりと言ったことも起こります。そういった積み重ねは会社の発展にもつながるはずだと思っています。若い力と熟練の技量、どちらも必要ですし、互いにリスペクトし合うことを大切してほしいと思っています。
社内は若返りましたが、"外注先の高齢化"という大きな課題があります。生地が出来上がるまでには細かな手作業を要する工程がいくつもあり、これまではその多くを外部に委託していました。しかし今、お願いしている方々の引退が間近に迫っています。ほとんどの方が後継ぎがいないために廃業を余儀なくされる。続けたくても続けられないという状況です。そうなると、当社のようなメーカーは仕事が回りません。そのため自社で完結できるよう、内製化に向けて動きはじめました。
幸い「自分がやります」と手を挙げてくれた若手がいて、外注先から技術も快く教えいただけることになりました。でもすごく忍耐のいる仕事です。例えば1万本以上の糸を1本ずつつなぐという普通なら3~4日かかるような作業を、70代の職人さんは1日で終わらせてしまう。内製化は急務ですが、このような工程が他にいくつもあります。当然、一朝一夕でできることではありません。少しずつでも進めてくしかないと思っています。

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生き残りをかけて"ブランディング"をこの先、会社や産地が生き残っていくためには、これまで通りアパレルメーカーさんに反物(ロール)で生地を卸すだけでは厳しいと感じています。例えば野菜は、産地や農家の方の名前や顔を載せて安全をアピールしていますよね。でも服地に表記されるのは「Made in Japan」「中国製」といった最終縫製地まで。基本的に米沢の名前は表に出ません。作られた生地がどこでどのように使われているか、米沢市民でさえわかっていないのが現状です。このままでは産地が消滅してしまうのではと危機感を抱いてしまうほどです。
この状況を打開するためには、 "ブランディング"が不可欠だと私は思っています。江戸時代から続く歴史や高度な技術・品質を武器に、米沢産地の価値を最大限アピールし知名度を上げていきたいと思っています。そのためには今後は生地を作るだけでなく、自分たちで製品にまで落とし込んで消費者に直接アピールしていくことも必要だと考えています。 今私が着ているこのジャケットは、自分でデザインして作ったものです(写真)。パッチワークのように見えて、実は縫い目の入っていないジャガードなのですが、生地だけで見るよりも、こうして形になっていた方がイメージしやすいですよね。今はファッションの好みも多様化していますので、こういった少し個性のあるものなら、大量生産品で満足できないこだわり層に受け入れられるのではないかと考えているところです。
米沢という産地を残したい、自分たちの世代で絶対になくしてはいけないという強い気持ちと焦りに駆り立てられています。米沢にはシャイな人が多く、アピールが得意ではありませんが、そう言ってもいられません。とにかく発信し続けるしかないと思っています。

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未来のため、魅力ある産業に昨年、東京の美大を出た県外出身の新卒生が入社しました。いわゆる"Iターン"ですね。テキスタイルの仕事に就きたいと全国の機屋をまわり、その中から当社を選んでくれたそうです。やりたいことを求めてゆかりのないところで働くという覚悟にこちらが驚かされましたが、働き手が減っている地方の産地に自ら来てくれたことは、本当にありがたいことです。今は現場を経験するなど基礎の勉強中ですが、大学でしっかり勉強してきている分、初速が速いんですね。既に来秋エンドユーザー向けに販売を目指すストールの開発にも携わってくれています(写真)。自分が考えたものがこうしてすぐに形になることで、彼女自身もやりがいを感じてくれているのではないでしょうか。
ちなみにこのストールは、ハサミで好きな形に切ってカスタマイズを楽しめる体験型アイテム。例えば親子で使うなら、片方をお子さんのマフラーに、残りをお母さんがひざ掛けにしてみたりなど、愛着を持ってもらえるような使い方も一緒に提案したいと考えています。
彼女を含め、やる気をもって取り組んでくれている若い社員達のためにも、目先のことだけでなく"未来へつなぐ"ということにも真剣に取り組んでいかなければいけません。それが私の使命だと思っています。今後も新しく人が入ってくるような、魅力のある、そして夢を与えられる産業にするためにはどうすればいいか、考えていきたいと思います。

鈴木 健太郎(すずき・けんたろう)

青文テキスタイル株式会社 常務取締役
1976年、山形県米沢生まれ。1997年 青文テキスタイル株式会社に入社。織物、丸編みの製造現場を経験後、企画営業を担当。織物・丸編み両方のデザインを手掛ける他、国内・海外ブランドへの営業、海外視察も行う。2015年より現職。

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