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インタビュー

ファッションジャーナリスト 藤岡篤子さん。長年のコレクション取材を通して感じる、一流デザイナーの共通点や日本の素材の魅力とは。

日本一の来場者数を誇るファッション・トレンドセミナーや、幅広いメディアでの執筆を手掛けるファッションジャーナリストの藤岡篤子さん。これまでのキャリアや世界から見た日本の素材について伺いました。

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素材開発からファッションジャーナリストの道へ私は元々、ウールを扱う外資系の会社でファッションディレクターとして素材の開発に携わっていたんです。人気デザイナーと組んで、外部の機屋さんや紡績さんと一緒に新しいテキスタイルを開発し、それを使った洋服を売り場に出す、というプロジェクトを手掛けていました。他にも繊維やファッションに関する記事を書いたり、ファッションショーを開いて司会や解説をしたりしていましたね。そういったキャリアを6年ほど積んで、フリーになりました。会社員時代に、ものづくりについて染色さんや機屋さんなどの職人の方々からたくさん勉強させていただいたことは、その頃のキャリアで一番の宝物です。素材から服づくりまでの流れや、売り場の様々な事情などを知った上でファッションジャーナリストに転向できたことは、とてもよかったと思っています。
年に二度開催している「ファッション・トレンド速報セミナー」は、はじめてからかれこれ20年以上が経ちます。会社員時代の活動を知る方からお声掛けいただいたことをきっかけに小さな規模からスタートし、今では毎回非常にたくさんの方に来ていただいています。雑誌編集というトレンドを発信する立場の方々や、アパレルやセレクトショップなどの作る・売る立場の方々に、そのシーズンのポイントをわかりやすく伝えられるよう構成しています。
いつも大切にしているのは、聞いている人の頭の中に服のイメージが浮かび上がるよう、単に服のことだけでなく、その服やコレクションが生まれた背景をトータルで捉えて伝えることです。私自身、何かを吸収しようとするとき、そこに様々なストーリーがあった方がおもしろいと感じるタイプ。ですからセミナーでも、例えば文化的背景や、デザインにイマジネーションを与えた人の話など、具体的なエピソードも交えて話すようにしています。また、難しい言葉や専門的なカタカナ用語は使わず、なるべく平易な言葉に置き換えて伝えるよう心掛けていますね。

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一流デザイナーの本音を引き出す独自のアプローチ パリ、ミラノ、ロンドン、ニューヨークの4大コレクションには毎回足を運び、数多くのブランドのショーや展示会を取材し、デザイナーに直接インタビューもしています。インタビューでは、デザイナーがそのシーズンで一番意識していること、イマジネーションしているもの、コレクションのコアが何なのかを引き出すために、様々な角度から探るようにしています。そのために、その人がどういうことに興味があるのか事前取材をしっかりして、できるだけたくさんの情報を仕入れて行くんです。例えば音楽について、あるいは、ある女性のことを気に入っているとしたらどういうところが好きなのかなど、人によってアプローチを変えて聞いています。デザイナーも「みんなは服のことばかり聞くけれど、キミは僕の好きな音楽のことまでよく知ってるね」とノリ良く答えてくれることが多いですね。このアプローチ法は超大物と呼ばれるような方の印象にも残るようで、「あぁ、キミだね。この人は面白いから大丈夫、中に入れてあげて」と覚えてくれていることも。ある種の信頼を得られているのかなと思っています。
一流のデザイナーたちと接していつも感じるのは、とてもスマート、つまり頭がいいということですね。皆さん服だけでなく、それを取り巻く歴史的・文化的なものごとへの知識が本当に豊富です。しかも決してそれをひけらかすことはなくシンプルに話すんです。一つの服を作るためにどんな知識をそこに集約したかという話を聞いているうちに、いかにマルチな感覚を持っていて様々な方向にアンテナを張っているか、その背景にあるものが自ずと伝わってくるんですよね。これはトップクラスのデザイナーに共通している点だと思います。また、作りたいものが非常にはっきりとしていて、思想的なことも服に落とし込まれている、自分のスタイルが確立されていることも共通点の一つに挙げられますね。

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シビアな環境に身を置くことの必然性 4大コレクションの中でも、規模も影響力も一番大きいのはやはりパリです。世界中から集まった実力のある人々が平等にショーを開くその在り方に、私は本当のダイバーシティってパリコレクションからはじまったのではないかと思いますね。多種多様な国の文化を飲み込み、その中から素晴らしい人を全世界にアピールするのが、パリコレクションの本質であり伝統です。
近頃、「東京コレクション」や「Amazon Fashion Week TOKYO」など、日本でも若いデザイナーが表現できる場が増えてきたことは、とてもいいことだと思います。ただ、なかなかグローバルに広がっていかないことに対しては、取材をしている側からすると少し歯がゆさを覚えます。身内の多い日本の会場で温かい拍手を送られるのと、世界を相手にするのとでは大きな違いがあります。パリでは、実力が認められれば大きな称賛を浴びる一方で、そうでない場合は極めて辛辣です。いくら東京で人気があっても通用するとは限らないシビアな環境で、良いことも悪いことも全て受け止めることは、世界に出ていくために避けて通れない第一関門。ですから新しい世代の日本人デザイナーたちには、ぜひ失敗を恐れずに挑戦し、個性を磨いていただきたいと思いますね。日本は世界有数のストリートファッションの発信地です。リッチで清潔感のあるセンスは先進国の中でも独特のもの。特にメンズは面白くなってきているので、ここからどのように発展していくのかとても楽しみです。

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世界のブランドが認める日本の素材最近は多くのブランドに日本の素材が採用されていて、様々な場面で"メイド・イン・ジャパン"のキーワードを耳にするようになりました。ただ残念ながら契約上の事情などから、日本製であることを明確に表示していたり、特定のメーカーの名前を出したりしていることはほとんどありません。でも、デザイナーと話していても展示会でも、「こんなに素晴らしい繊維はないよね」「これは日本製なんだよ」などと話題に上ることはたくさんあるんです。日本人の繊細な発想、織機の文化、独特の織地、糸の風合い、着物文化から洋服に応用している技術、そういう点に注目しているデザイナーはとても多いと思いますね。
一時期は、大量生産の中国や台湾、韓国の勢いに押されていた日本の繊維業界ですが、工房単位で技術を脈々と受け継いでいるところが、やっと世界の名のある人の目に留まり、グローバルな仕事に広がりつつある時期にきているのではないかと感じます。プルミエール・ ヴィジョンでも、数々の日本の素材がグランプリを取っていますよね。ですから、もっと自信と誇りを持って自分たちの持つ伝統的な技術を大切に磨いてもらいたいですね。今後、より花開いていくことを期待しています。
ベンベルグも一流のデザイナーたちがよく採用しています。毎シーズン購入している大好きなデザイナーの服にも使われているので、実は私も何着か持っているんです。美しいプリントや試着したときの肌ざわりの良さなど、総合的に気に入って買ったのですが、何といっても発色がとてもいいですよね。それにナチュラルでしっくりと肌になじむテクスチャーは他の素材にはないものです。一流デザイナーが、裏地だけでなく表地にベンベルグを使うことが多いのは、彼らの表現したいコンセプトとうまくマッチする唯一の質感を持っているからではないでしょうか。

藤岡 篤子(ふじおか・あつこ)

ファッションジャーナリスト f プロジェクト代表
国際羊毛事務局(IWS)婦人服ファッションコーディネーターを経て、ファッションジャーナリストとして活動開始。新聞からファッション誌まで幅広いメディアに執筆。専門用語を分かりやすく解説する原稿には定評があり、家電、化粧品など異業種企業、団体等の講演も多い。年2回開催される「藤岡篤子ファッション・トレンド速報セミナー」は、編集者、アパレルのバイヤーやデザイナーなどを中心に高い評価を受け、日本一の動員数となっている。2016年度より神戸芸術工科大学芸術工学部ファッションデザイン学科客員教授に就任。

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