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インタビュー

モリリン株式会社 水谷理事。ものづくりの原点「糸」の開発に情熱を傾けた、セルロースニットブームの立役者。

ベンベルグの短繊維を使った糸の開発に携わり、「セルティス」や「リーナ」など次々にヒット商品を生み出してきたモリリン株式会社の水谷理事に、糸づくりの魅力や開発秘話を伺いました。

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「イトからはじまる、すべてのコトへ」モリリン株式会社は、綿糸・綿織物の販売から起業した繊維専門商社で、350年以上前の歴史があります。尾州産地として知られる愛知県一宮市に本社を構え、日本国内だけでなく海外にも複数の拠点を置いています。現在6事業グループの組織体制をとっており、私はその中でマテリアルグループを担当しています。衣料のもととなる糸づくりや生地づくりを手掛ける部門で、当社の祖業でもあります。会社全体ではOEMやODMをメインとしたアパレル製品、ミシン糸やカーシートなどの繊維資材、寝装品やインテリアのリビング製品、ブルーシートや建築用シートなどの産業資材、漁網まで、一口に繊維といっても非常に幅広い事業を展開しています。「イトからはじまる、すべてのコトへ」というコンセプトの下、各分野に精通したプロフェッショナルが在籍し、それぞれが高い専門性を持っていることが当社の強みです。 私自身は入社以来30年以上、様々な糸や生地の開発・販売に取り組んできました。

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ベンベルグの短繊維で新しいものづくりに挑戦 約20年前に私が開発に携わった「セルティス」というベンベルグの混紡糸があります。旭化成の方から「ベンベルグのスパン(短繊維)を使って何か開発ができないか」とご相談いただいたことがきっかけでした。当時"ベンベルグといえばフィラメント(長繊維)"というイメージが一般的だった中、やるなら徹底的に挑戦してみようと腹を決め、お引き受けしました。
中国の奥地に優れた紡績設備を持つ工場があると聞き、私はすぐに現地へ飛んで行きました。現地の紡績では当然ベンベルグ自体を知りません。「コットンの種のうぶ毛でできている」という説明から入り、素材の特徴、紡績の方法など、責任者と綿密にディスカッションを重ねました。そしてこの工場の設備を使い、20点ほどの糸を試作。新しいことをあれこれ試してつくったたくさんの糸を日本へ持ち帰り、今度はこれらを使った織物やニットの試作をこれまで永く商売を続けてきた地元尾州のコンバーターさんにお願いして回りました。そんな中、最初に成果が上がったのが後にセルティスとなる、ベンベルグ・モダール糸を使ったニットです。当時、セルロースニットは斜行とピリングの問題で、百貨店ブランドには使いづらいと言われていました。ところがセルティスのニットは、優れた紡績性により斜行が出ない上に、抗ピリング性にも優れていることがわかったのです。セルティスは販売開始されるや否や右肩上がりに売り上げが増え、これをきっかけに業界ではセルロースニットブームが起こりました。このことは今でも私の誇りですね。 セルティスの成功をきっかけに、その後もベンベルグスパンを使ってどんどん新たなものづくりを展開していきました。産地の特色を生かしたものづくりに使えないかと、福井の合繊織物、西脇の先染めシャツ地、和歌山の無地染めなど、各地の様々なアイテムと接点を持ち、その中からもたくさんのヒット商品に恵まれました。

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メイド・イン・ジャパンの素晴らしさを世界へ 近年は昔のようにものが売れなくなってきています。そんな世の中の変化に合わせて、我々も変わっていかざるを得ません。今後はメイド・イン・ジャパン素材の素晴らしさを世界に向かって発信していこうと、当社でも海外への展開を積極的に進めているところです。
昨年、イタリアの3大繊維素材産地の1つであるPratoで、当社の素材を紹介する機会をいただきました。目の肥えた現地の方々にも、当社のベンベルグスパンへの反応は非常にいいものでした。中でも最も高く評価されたのが、ベンベルグスパン100%のサイロコンパクト糸「リーナ」です。 スパン素材は短繊維ですから、「毛羽があって温かみのあるものがいい」とされていたのですが、リーナは全く逆の発想でつくられました。短繊維でありながら毛羽は少なく、コンパクト感や接触冷感があり、糸染めしてもきれいな色がでる長繊維ライクな糸です。もともとベンベルグスパンの素材開発は複合を前提に展開していたのですが、「何かシンプルで新しいものを」とベンベルグ100%でつくってみると、図らずも価値の高い糸ができたのです。決して安くない糸ですが、国内でも好評を得て織・編み用途でたくさんのお客様に使っていただきました。 プラトーの目利きの方々から「是非リーナでサンプルをつくりたい」「仕立ててみたい」と言っていただき、我々のものづくりが世界にも通用するんだと大きな自信になりましたね。

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糸づくりの魅力、仕事への情熱を若い世代に伝えたい実を言うと、これまで手掛けてきた開発の多くは、頭を悩ませて苦労を重ねて...というよりも、どこか遊び感覚で楽しみながら進めていました。この業界ではその方がうまくいくことも結構あるんです。セルティスがヒットしたとき「これは面白い、売れるな」と開発にのめり込んでいくと、アイデアが次から次へと湧き出てくる感覚がありました。「今度はこの素材と組み合わせてみよう」「次はこの紡績方法を試そう」と、思いつくままにチャレンジして、それがうまくハマるとまたヒットする。どんどんバリエーションが広がってくわけですね。そんないい流れに乗れていたので仕事をしていて本当に面白かったですよ。何でも夢中になる性格がいい方向に作用したのかもしれませんね。「儲けのためだけに」とクールに割り切っていたら恐らくうまくはいかなかったでしょう。
私も管理職となり、現場のことは若い世代に任せるようになりました。素材の知識や生い立ちをしっかりと引き継いではいるものの、時代や環境が違いますので昔と同じような成果を上げるのはなかなか難しいのが現実です。しかし果たしてそれだけが原因だろうか、と歯がゆく思うこともあります。私自身は長年携わったベンベルグスパンに並々ならぬ思い入れがあり、熱意を持って突っ走ってきました。この"情熱"も一緒に伝えてバトンをつなぐことが、私の大きな使命だと感じています。 残念ながら今、業界全体で糸づくりに携わる若者は減ってきています。どうも繊維事業では川下が華やかで、川上である糸づくりは地味なイメージがあるようですね。でも、糸は"ものづくりの原点"です。すべてのものが、糸づくりや生地づくりからはじまるのです。長年糸づくりに携わってきた者としては、若い人にも糸づくりからはじまる新しい可能性に挑戦する喜び・楽しみを感じてほしいと思いますね。

水谷 智廣(みずたに・ともひろ)

モリリン株式会社 理事
マテリアルグループ統括部長兼2部部長
1985年 モリリン株式会社入社。素材グループにて30年以上に渡り、糸の開発に携わる。 2010年 原糸グループ1部部長。2013年 素材グループ副統括部長。2014年 素材 グループ統括部長。2015年 理事マテリアルグループ統括部長。2018年より現職。休日 は地元の少年野球チームの監督を20年以上努める。

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