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インタビュー

Brunello社 Elisabetta Gabri氏。 伝統を重んじて〝Made in Brunello"に誇りを持ち、創造と革新を続ける

イタリアのヴァレーゼ県の"BRUNELLO"で1927年に操業し、マーケットリーダーとして市場を牽引するヨーロッパ最大の裏地機屋「Brunello」。PresidentのElisabetta Gabri氏にものづくりや素材選びへのこだわりを伺いました。

若干24歳で会社を継ぎ、基礎を築いた母 Brunello社は1927年、イタリアのVarese "Brunello"で私の祖父Giuseppeと祖母Mariaによって、主に女性服用のコットン生地を生産する外注機屋として創業しました。まだ世の中にプレタポルテ(既製服)がなく、一般消費者が自分で生地を買ってテーラーに仕立てを頼む時代でした。第二次世界大戦が始まると、規制の影響でコットンだけで生産するのが難しくなり、イタリア産の “Canna Gentile(カンナジェンティーレ)”と呼ばれるバンブーレーヨン短繊維を使い始めました。これが、弊社がのちに再生繊維のスペシャリストとなる第一歩でした。
1950年頃から裏地の生産を開始。ビスコースをドイツのEnka社から、ベンベルグをイタリアのBemberg社から継続的に購入し、長繊維の再生繊維を使った裏地のスペシャリストとしての地位を築いていきました。
1956年に先代が急死し、3人兄弟の長女で既にBrunello社員として働いていた母Anna Mariaが会社を継がざるを得ない状況になりました。当時24歳の女性が社長を務めることがいかに困難であったか、想像に難くありません。しかし母は献身的な働きによって、祖父の時代に織機80台2屋だった工場を、400台以上5屋の規模にまで拡大し、現在のBrunelloの基礎を作ったのです。若くして会社を継ぎ必死に働く母を支えたのが、叔母のRosanna(ロザンナ)でした。仕事人間で機械的ですらあった母の心を温かい人柄で癒し、会社に安心感をもたらしました。二人の組合せは会社にとって必要不可欠なものでした。

イノベーションを継続的に起こし、世界に進出 70年代に入るとアパレルと直接仕事をするようになりました。イタリアを代表する大手生地コンバーター、Marzotto(マルゾット)グループの購買責任者から「直接生地を購入したい」と要望を受けたことをきっかけに、弊社にとって初めてのBtoBビジネスが始まりました。
その後のGruppo Finanziario Tessile(GFT)の主力ブランド「Facis(ファーチス)」とのビジネスは、弊社のグローバル化を大きく推進しました。同社はイタリアで初めてメンズジャケットのドロップを生み出し、スーツやジャケットの商業生産、つまりプレタポルテを生み出したのです。当時アメリカのボストンと中国北部に工場を展開しており、弊社はそこに生地をデリバリーするために必要な営業や流通網等、社内の整備にも着手しました。これがその後の海外進出の足掛かりとなりました。更に、GFT出身者が世界中にスーツ・ジャケットの商業生産の手法を伝授して回ったため、各社から裏地の仕入れ先として弊社にオーダーが入るようになっていきました。
80年代には、世界で初めてジャカード(以下JQD)を搭載したエアージェット織機を購入、商業生産化に成功しました。これによってデザイン力の高い生地を商業的に生産できるようになりました。母が成功した要因の一つに、このような技術的イノベーションを継続したことが挙げられると思います。母は、常に品質・生産性の向上を図りながら未来を見据えていました。これは、“最高品質のものを最高水準で”という考え方と共に、私が母から学んだ最も大切な教えの一つです。

想いを「共有」するチームで、複雑な時代を乗り切る 1997年、大学を卒業した私はBrunello社に入社しました。生地の生産から検査まですべての部署で研修を積み、営業として初めて、世界的ブランドであり最重要顧客の一社でもあるZegna(ゼニア)社を担当しました。そして2007年、正式に社長に就任しました。近年、世の中の変化のスピードは著しく、かつ日々複雑になっています。こうした時代を乗り切るキーワードは「共有」です。責任者一人で事業を推進できた時代は終わり、いかに同じ想いを持つチームを形成し、情報や想いを共有して密接なコミュニケーションが取れるかが、組織の勝敗を左右します。Brunello社のファミリービジネスの勝因のキーワードは、チームの共有、情熱、そして確固たる価値観の確立です。
現在、私が積極的に進めているのは生産工程のシステム化です。全ての織機をITで管理し、製織の生産性から検査のロス率まで全ての工程を一元管理できるようになりました。これにより問題点をあぶり出し、生産性の向上に繋げることができました。今後も継続的な設備投資は行いますが、今後は使用エネルギーの削減や更なるロス率の低下やIT化の促進といった、より生産的かつ効率的な生産体制の構築に注力します。これまでの知見を活かし、自分達の強みを出しながらビジネスを維持、発展させていきたいと考えています。

コアビジネスと新たなマーケット、どちらにも欠かせないパートナー 弊社は、裏地をコアビジネスとしながら常に新たなマーケットも探索してきましたが、長年成功には至っていませんでした。そんな中、アフリカからコットン100%のJQD生地の依頼がありました。弊社では設備上、経糸に天然繊維を使うことができないため一度は断ったものの、興味深い案件だったため試しに経糸にベンベルグを使用してみました。試作品をクライアントに見せたところ、その立体感や風合いに高い評価を受けました。そこからアフリカの民族衣装“BAZIN(バジン)”について研究開発を重ね、“BemBAZIN(ベンバジン)”として生地の特許を取得しました。主力素材であるベンベルグをアピールする名前をつけて社名とセットで打ち出すことで「Brunello社のベンベルグを使用した生地は高品質な製品である」というイメージを定着させ、今後アフリカで裏地を販売する際に知名度を活かせればと考えています。BemBAZIN専用の織機は今後50台程度まで増やす予定です。しかし、それ以上拡大する計画は現時点ではありません。なぜならコアビジネスはあくまで裏地であり、自分たちができることを着実に継承していきたいと考えるからです。
フォーマルウェア市場は、この20年で10分の1程度にまで縮小したと言われています。これはファストファッションの台頭だけの問題ではなく洋服の文化や、消費者の購買マインドそのものの変化によるところが大きいと思います。ただ、今後もジャケットがワードローブから完全になくなることはないと考えています。むしろこれからは、よりこだわりや独自性、ともすればより高品質なものを求める顧客が増えるのではないでしょうか。その場合、弊社の開発力や品質はお客様に支持されると信じています。
将来を検討するためには、信頼出来るパートナーの存在が必要不可欠です。我々がベンベルグとの取組みを強化しているのは、その歴史や品質だけではなく、この先10年、20年と旭化成がベンベルグの生産を継続し続けると、パートナーとして強く信じているからです。

裏地トップメーカーとしての誇りと情熱を胸に 顧客からのサステナビリティへのニーズは日々高まっており、環境認証はもはや付加価値ではなく、品質やサービスと同様に“当たり前のもの”になりつつあります。ただし川上と比較すると、川下での普及や消費者への訴求、特にアパレルから消費者への訴求はまだまだ一般化しておらず、そこが今後の課題だと思います。
認証以上に本質的な価値が高いものとしてLCA(Life Cycle Assessment)があります。各生産工程における環境へのインパクト、特にどのようなエネルギーをどれだけ使用しているかを、正しく把握・共有・開示することが求められています。また、最終消費者にとって今後より重要となるのはトレーサビリティでしょう。食品と同じように、どこでどのように作られた素材が、どのようにして生地になり、どのような流通で製品となって消費者のもとへ届くのか、明確にトレースできることの重要性が高まっていると感じます。
Brunello社は、ただ製造・販売をするだけではなく、”Made in Brunello”、”Made in Italy”のものづくりに誇りと情熱を持ち、これまで築き上げてきた歴史と伝統、創造と革新を継続し、裏地のトップメーカーとして今後もビジネスを拡大していきます。

Elisabetta Gabri

1997年 大学卒業後Brunello社に入社。生地の生産、検査、営業を経験した後、2007年 CEOに就任。チームの共有や確固たる価値観の確立、生産工程のシステム化を推進。使用エネルギーの削減や更なるロス率の低下やIT化の促進など、より生産的かつ効率的な生産体制の構築にも取り組む。

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