旭化成 繊維グローバル
産学連携プロジェクトGlobal Academia-Industry Collaborations

HOME > 旭化成 繊維グローバル産学連携プロジェクト > 産地の学校<ベンベルグ>ラボ > 【第4講】 <ベンベルグ>先染め裏地の生産地・富士吉田

ベンベルグ® ラボ 第4講
~ベンベルグ® 先染め裏地の生産地・富士吉田~

<ベンベルグ>ラボ4回目の講義は「富士吉田視察」です。高速バスで日本有数の機織り産地・山梨県富士吉田に遠征し、<ベンベルグ>裏地が織り上がるまでの生産工程を視察しました。
富士急ハイランド行きの高速バスに乗り込んだ受講生は、視察を前に気持ちも高まっている様子です。「このカーテンの素材はなんだろう?」「この座席シートにはナイロンパイルが使われているのかな?」など、現地到着を待たず繊維トークに花が咲くほど期待は高まっていました。
今回の視察のスタートとなる株式会社富士セイセンを訪問しました。 「おはようございます。富士吉田は先染め織物の伝統ある産地です。なかでも当社は高級裏地として知られる<ベンベルグ>の先染め裏地の染色・整理加工を行っています。

「ここ富士吉田産地は、織物の生産工程全てが分業化されています。弊社以外は個人の事業者がほとんどで、多くの作業工程を分担して生地を作っています。」と富士セイセンの中島さんから、この地域特有の生産形態の説明がありました。富士吉田の豊かな自然に加え、細かな分業制を敷くこの地域特有の環境が、数々の素晴らしい織物を生産する土壌となっていることを受講生にも十分に理解していただけました。

~現代に引き継がれる職人たちの技~

多くの職人さんが携わりながら織り上げる<ベンベルグ>裏地。今回の視察では、当社と関わりのある織工さんたちに協力していただき、工場視察を無事行うことができました。

撚糸 / 織工・羽田吾一氏
一見普通の住居のように見えますが、ご自宅と工場が一体化した"ハタオリマチ富士吉田"らしいアットホームな撚糸屋さんです。こちらでは75dと100dの片撚り、30dの双糸など、太さの異なる3種類の糸を生産しています。
撚糸は<ベンベルグ>裏地を織る全ての行程のスタートとなる重要な工程です。織り上がるまでに支障をきたさないためにも、細心の注意が必要な工程です。
織り上がりのイメージに合わせた微妙な撚り具合が求められるため、長年の経験がなによりも大切です。ボビンの回転数と巻き上げるスピードのさじ加減こそ、撚糸屋さんの力量が問われるところです。

染色・整理加工 / 株式会社 富士セイセン
染色工場を営む富士セイセンでは、高圧染め用の高圧釜や天然素材を染める噴射式の綛(かせ)染め機などを視察しました。真っ白い綛(かせ)が、一瞬にして美しく染め上げられる様子に、受講生からは感嘆の声があがりました。
富士セイセンは、山梨では規模も大きく、染色に加えて整理加工も行っています。織りあがった生地(生機)の幅を整える幅出機「テンター」や、生地に風合いを出すためロールに通す「カレンダー」、生地が汚染されていないかを調べる「マルチ」などを視察しました。

整経 / 織工・奥脇康氏
「綛(かせ)は糸の巻き始めと巻き終わりが結んであるので、この結び目から始めの糸を取ってボビンに引っかけます。」と奥脇氏。糸をボビンに引っかけるという何気ない所作ですが、受講生が何度やってもボビンに糸は引っかかりませんでした。
「整経で一番大切なのは、糸の配列を整える作業。そこで綾取筬(あやとりおさ)という装置を使って配列を整え経糸の綾を取ります。この綾がないと、機屋さんで経糸を順番通りに引き出すことができないのでとても重要です。」構造を理解するには慣れないと難しいかもしれませんが、とても大切な工程です。

機屋 / (有)オサカベ 専務取締役・刑部正之氏
「この工場では、<ベンベルグ>の袖裏や胴裏を専門に織っています。工場内は音が大きいので何かあれば大きな声でご質問ください。」と刑部氏。戸を開けるとけたたましく鳴り響く織機の音に受講生も驚いていました。高速ジャカード織機(高速で複雑な柄を織る)やドビー織機(無地やストライプを織る)の動きに釘付けの様子でした。
整経屋さんで巻かれた経糸を織機に通し、緯糸を打ち込んでいきます。天井を突き抜けぶら下がる紋紙と、ジャカード機を通してピンと張りつめる経糸の迫力に圧倒されます。

富士技術支援センターで富士吉田産地の歴史を知る

午後からは富士技術支援センターで富士吉田産地の歴史や文化についての講義がおこなわれました。「このセンターでは、織物産業の黎明期から100年近くにわたり、富士吉田産地の技術支援などのお手伝いをさせていただいております。今日は富士吉田の歴史や文化、最近はここでどのようなことが起こっているかをお話ししたいと思います。」と富士技術支援センター繊維技術部主任研究員の五十嵐哲也氏。
この地域で育まれたおよそ1000年にも及ぶ織物の歴史から、江戸時代に流行った甲斐絹、戦後の生産システムの移り変わり、現在の状況など、富士吉田の"機織り文化"についてユーモアを交えながら語っていただきました。
講義終了後には、資料として集められた貴重な「甲斐絹」を視察して第4講「富士吉田視察」は終了となりました。

富士吉田視察まとめ

記載した以外にも<ベンベルグ>裏地を作る工程はたくさんあり、貴重な技を持つ職人さんも数多くいらっしゃいます。人と人が密に協力しあいながら一つの製品を作り上げるという、現代に続く富士吉田の伝統のなかに、織物産業のさらなる進化に必要な手がかりがあるのではないでしょうか。各工場の視察を通して、受講生がどのように感じ今後に生かしいくのか楽しみです。

富士吉田産地の視察を終えての感想

富士吉田産地の視察を終えて、受講生や関係者の方々に感想をうかがいました。

<産地の学校主宰 宮浦さん>
これまで教科書やスライドで見てきたことを実際に見ることができました。旭化成さんがあってこその意義ある視察となりました。今日疑問に思ったことや実際に見て感じた経験が、受講生たちの今後の糧になると確信しています。

<受講生の声>
実際に見学することで、教科書とは違うことが分かりやすく学べたと思います。(大場さん・学生)

富士吉田には何度か来ていますが、<ベンベルグ>が作られている工場は初めてだったので、規模の大きさに驚きました。(八代さん・学生)

大きい工場は初めてだったので、管理体制などを含めて勉強になりました。また、家族で協力しながらやっている工場では、家庭的な温かさを感じることができて良かったです。(鈴木惟士さん・大学生)

TOPページに戻る

PAGE TOP