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はじめに
都市居住者にとって、ペットと暮らすということはどういうことなのでしょうか。大都市圏でのペット飼育率が増加しており、都市部では30%近い、というデータもありますが、ペットと人とのコミュニケーションや、ペットを飼っている人と飼っていない人の意識の違い、またペットと共生するための「住まい」とはどういうものか、などについて調査を行いました。
ペットとの共生を考える視点
今回の調査にあたって、「ペット」「家族」「住宅」および「近隣・社会」のそれぞれの関わりについて考えてみました。
まず「ペット」と「家族」に関しては従来の単なる「ペット」から「家族の一員」「心の支え」といった新しい関係が生まれてきており、高齢化や少子化といった社会背景の中で「ともに生活する仲間」としての存在がクローズアップされつつあります。
また「ペット」と「住宅」、「家族」と「住宅」に関してはそれぞれ「ペットが暮しやすい住宅のあり方」、「ペットと共生する住宅のあり方」を考えていく必要があります。実際ペットを飼う上での住宅に関する不満は決して低くなく、様々な面での打開策が求められています。
さらに、それぞれの「近隣・社会」との関わりを考えますと、「家族」にとってはペットがいることによって近隣とのコミュニケーションが促進される、といった側面が考えられます。一方「ペット」との関わりを考えますと当然、ペットを飼う上でのマナー、躾、ある種の規制などが必要になってきます。また「住宅」としても住まいができる配慮や規制が求められます。
これらのことを前提として、調査結果を見ていきたいと思います。
調査概要
| - 調査方法: |
郵送調査 |
| - 調査対象者: |
ヘーベルハウス入居10年
1都3県在住
ペットオーナーおよび非ペットオーナー |
| - 調査期間: |
平成11年6月 |
| - 回答数: |
オーナー149s(犬110、猫39)
非オーナー154s |
ペットの所有率について
調査に先立ち、ヘーベルハウスの入居10年以上のお客様にお電話にてプレ調査を行い、ペットを所有しているかどうかの調査を行いました。
これによると、犬を飼っているオーナー(以下犬オーナー)22%、猫を飼っているオーナー(以下猫オーナー)6%、両方飼っている人を含むその他のペット、5%、飼っていないひと67%となっており、一般データの都市圏における数値とほぼ同じでした。
ペットオーナーについて
ペットを飼っているオーナーの平均値です。

調査結果
■ペットを飼い始めた理由

■ペットの効用

この二つのグラフを見ると、ペットを飼い始めたきっかけとしては「子供が欲しがった」「好き」「かわいい」といった理由が上位を占めていますが、ペットの効用を尋ねたところ「ホッとする/安らぐ」「家庭内コミュニケーション」「家族が増えた感じ」などが多くなっている。決して「家庭内コミュニケーションを増やすために」あるいは「安らぐために」ペットを飼い始めたわけではないが、結果としてそのような効用が得られていることがわかります。
■ペットと近隣コミュニケーション

ペットを飼うことで近隣とのコミュニケーションがある、と答えた人の割合を見ますと、ペットを預ける・預かる、という項目を除いて、どの項目も高いことが わかります。
■非ペットオーナー(1)

■非ペットオーナー(2)

ペットを飼っていない人にその理由や、将来の飼育意向などを聞いてみました。
まず、現在ペットを飼っていない人でも2割以上の 人がペットを飼ったことがある、と答えています。
現在飼っていない理由としても「ペットが嫌い」というのではなく、「世話が大変」「行動が規制される」などが目立ちました。
飼っていない人に「ペットに対する好意度」を聞いたところ、犬に対しては62%の人が好き、と答えています。それに対し猫は好き、という人が24%と少なく、飼っていない人には猫はとっつきにくい存在なのかもしれません。
また、将来ペットを飼いたいかどうかを聞いたところ、犬を飼いたいという人が30%となっており、先ほどの「ペットを飼っていない人」67%×30%=約20%強の人が将来犬を飼いたいと思っており、実際に飼っている22%の人と合わせ、潜在的には約半数の人が犬を飼いたい人、ということになります。
■ペットを住宅で飼う問題点

■ペットによって傷つく部位

■ペットを飼う上での住宅の不満

実際にペットを飼っている人にその実態を尋ねてみました。
ペットから住宅に受ける問題点としては、汚れ、傷、においがワースト3、また犬に特有の問題として「声」 というものがありました。
具体的に住宅のどの部分が傷つくか、ということをお聞きしたところ、床に関しては犬の方が傷つけるよ うですが、それ以外の部位(柱、ドア、壁など)は猫の被害が圧倒的です。概して犬を飼っている場合は 「水平面」、猫を飼っている場合は「垂直面」が傷つくと言えそうです。
ペットを飼う上で住宅に不満があるかどうかをお聞きしたところ「かなりある」+「少しある」を合わせて約3割の方が何らかの不満をお持ちのようです。これはむしろ「仕方ない」と思う人が多いということでしょうか。
■ペットオーナー宅を訪問したときに感じること
次にペットオーナーと非ペットオーナーの意識の違いを比較してみました。
まず、ペットを飼っているお宅に伺ったときに嫌なこと、迷惑なことを経験したことがあるか、について は「外で飼っている犬」「家の中で飼っている犬」「猫」による違いはほとんどなかったものの、ペットオーナーと非ペットオーナーの間にはあきらかな意識の差がありました。これは、受けている「経験」は同じだとしてもそれを「嫌だ」「迷惑だ」と感じるかどうかが現れていると思われます。
また、ペットを飼っている家の第一印象として、「ペットによる汚れ・傷・雑然とした感じ」をもったかどうかを伺ったところ、こちらもペットオーナーと非オーナーではっきりした意識の違いが見られました。

■近所への迷惑加害意識

■具体的にかけていると思う迷惑

■近所からの苦情経験
実際にペットオーナーが近所へどの程度迷惑をかけていると考えているか、お聞きしてみました。 犬オーナーと猫オーナーに分けて聞いたところ、全般に犬オーナーの方が加害者意識が強いことがわかりま す。これは、猫の場合はまったく外に出さずに家の中だけで飼っているか、逆に外に出している場合でも犬 と違ってその行動を把握できないためではないかと思われます。
具体的にかけていると思う迷惑をお聞きすると、犬の場合は圧倒的に「鳴き声、吠え声、唸り声」になり、全体のほぼ半数の方が感じているようです。それ以外の項目は全体に猫の方が多く、特におしっこ、ふん、庭・ベランダへの侵入が顕著です。一方、「迷惑・被害はかけていない」と感じている方も多く、特に猫オーナーにその傾向が見られます。
これは前述のように外に出さずに飼っている猫オーナーの方の意識かと思われます。
■近所からの苦情経験
今までに近所の方から注意や苦情を受けたことがあるかどうかをお聞きしたところ、犬・猫両オーナーとも ほぼ10%程度の方が苦情を受けたことがあるとのことでした。
■近所のペットからの迷惑
次にペットオーナー、非ペットオーナーそれぞれに近所のペットからの迷惑について聞いてみました。 これを見ると犬オーナーは犬よりも猫に対して、逆に猫オーナーは猫よりも犬に対してより迷惑を感じて いることがわかります。さらに非オーナーはオーナーに比べてかなり迷惑を感じていることがわかります。

■近所への苦情経験
そこで実際に近所へ苦情を言ったことがあるかどうかをお聞きしたところ、苦情を言った経験がある人は全 体に少ないものの、「言ったことはないが言いたい」という人はかなり多く、特に非ペットオーナーに顕著で あることがわかります。苦情を言ったことはなくても、潜在的に苦情を言いたいと思っている人が多いことがわかります。

■飼主は迷惑を気づいているか
前項の「苦情を言ったことはないが言いたい」という方に「飼主は迷惑や被害に気づいていると思うか」を 尋ねてみました。「気づいていると思う」人がペットオーナーで31%、非オーナーで24%でした。逆に 「気づいていないと思う」人はペットオーナーで39%、非オーナーで45%となっており、大きな差はありませんがやはり、非オーナーの方が「気づいていない」と思っている人が多いのがわかります。

■近所でのペット飼育
最後に近所でペットを飼うことについてお聞きしたところ「飼って欲しくない」と思う割合は次の通りでし た。
ペットオーナーが「ペットを飼って欲しくない」と思う割合は非常に小さいものの犬オーナーで「猫を飼 って欲しくない」と思っている人がかなり多いのがわかります。 また、非オーナーでは犬を飼って欲しくない、と思う人が38%、猫になると何と57%もの人が飼って欲しくない、と思っているようです。
■課題(1) 〜近隣への配慮
以上の結果から課題をまとめてみました。 まず「近隣への配慮」ですが、今までに見てきた結果からペットオーナーは非オーナーがどう感じているか、たとえ口に出さなくてもどんな気持ちでいるか、をわかってあげないとならない、ということです。ペットを飼っている自分自身は嫌だと思わないことでも、もしかしたら他の人(ペットオーナー、非オーナー含め)は嫌だと思っているかもしれない、ということに配慮すべきでしょう。
表にまとめましたが、犬についての3つの問題のうち、「吠える・唸る」についてはある程度住まいが解決できるかもしれません。しかし、「おしっこ」「ふん」については飼主のマナーの問題になってきます。
猫については6つの問題点をあげましたが、これはすべて放し飼い(外へ自由に出す)の猫の問題点だと思われます。
■課題(2) 〜住まいへの配慮
一方、住まいへの配慮に関しては表のようなことが課題として考えられます。
内装に関しては仕上材である程度解決できそうです。
設備に関しても臭い対策として換気扇、傷対策としてコンセントカバーなどが有効でしょう。
この他、間取りを作る上でのペットの動線への配慮が必要です。
■ペットに関する意見評価
最後にペットに関する意見・評価をペットオーナー、非オーナーに伺ってみました。(表のオーナーは代表 して犬オーナーの数字を出しています。)
まず、「住ハードへの要望」としてはどの要望も高いものの特に非オーナーの「近隣に迷惑をかけない家づくり」への要望が高いのが目立ちます。
個人や家族とのリレーションについても全体に数字が高く、非オーナーも含め「ペットとの関係が今後重要になる」と考えている人が多いことが顕著に表れています。
また、ルールやソフトなどのシステムに関しては「ペットを飼うルール作りが必要」と考えているのが特に非オーナーに多いことがわかります。一方、保険などを含めた医療制度の遅れやペットのための施設づくりについてはペットオーナーの要望が高くなっています。
| ■住ハードへの要望 |
| |
非オーナー |
オーナー |
| 近隣に迷惑をかけない家づくりが必要 |
83% |
67% |
| ペットの住みやすい家づくりが必要 |
60% |
61% |
| ■リレーション(個人・家族) |
| ペットは家族の一員という意識強まる |
68% |
88% |
| ペットには人を癒す力がある |
67% |
86% |
| ペットと人との関係はますます重要になる |
47% |
74% |
| ペットを飼う人が多い社会になる |
52% |
59% |
| ペットには人格があり、愛玩物にしてはならない |
61% |
75% |
| ■システム(ルール、ソフト) |
| ペットを飼うルールづくりが必要 |
84% |
66% |
| 医療制度が遅れている(保険など) |
59% |
76% |
| ペットのことを考えた施設づくりなどが必要 |
47% |
64% |
■住宅メーカーとしてのペットの捉え方
これらの課題や評価を踏まえ、ロングライフ住宅としての視点から考えるとき、これからの少子・高齢化社会やストレス社会の中で、ペットの果たす役割はますます大きくなることが予想され、ペットと飼主と近隣がともに快適に暮らせる「ペットとの共生を配慮した住まい」が重要であると考えています。
まとめ
近年、様々なところで集合住宅におけるペットと近隣の関係はクローズアップされています。その裏返しとして「ペットを飼えるマンション」などが注目を集めていることもご存知の方も多いと思います。では、ペットと近隣の問題は集合住宅だけの問題でしょうか。一戸建ての住宅では問題にならないのでしょうか。 今回の調査からは、たとえ一戸建てでも都市居住である限り、やはり近隣への配慮は必要だということがわかりました。
今後特に都市部ではペットを飼う人の割合が増加するものと思われます。ペットを飼うことが当たり前の世の中になって来た、とも言えるでしょう。そんな中、「ペットと共生する家」は決して「特別な家」ではなくなってきています。社会全体が「ペットと共生する社会」であることを前提として住まいづくりをすることが必要とされてきます。
現在誰でもが知っている「高齢社会」を迎えていますが、その高齢者の比率は約16〜17%です。ペットを飼っている比率は高齢者の比率より高いのです。たとえ自分がペットを飼っていなくても、ペットを飼っているお宅を訪ねたり、ペットを飼っている友人が訪ねて来たりするかも知れません。周りにペットがいることが当たり前の世の中になってくるのです。ですから、住まいづくりにあたってはペットのこと、ペットと人との関わりのこと、もちろん、近隣や、中にはペットが苦手な人のことまで考えて住まいづくりをすることが必要なのです。
最後に繰り返しになりますが、ポイントは次の2つです。
★「家」ができることは「キズ」「汚れ」「臭い」を排除する工夫です。
★たとえ一戸建てでも近隣、特にペットを飼っていない非オーナーに対しては特別な配慮が必要です。
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