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吉田先生のペットコラム

ペットの品格


プロフィール
吉田眞澄
吉田眞澄
(よしだ・ますみ)

元 国立大学法人帯広畜産大学理事・副学長。
ペットの法律と社会システム研究の第一人者で、ペット六法、動物愛護六法(いずれも誠文堂新光社)、ペットと暮らす(人文書院)、NHKペット相談・知って安心ペットのトラブルQ&A(NHK出版)など多数の著作やテレビ・新聞等を通じ、人とペットの共生社会の実現に向け社会に働きかけ続けている。

第57回 犬種の発生と特徴
●犬種の特徴を考えた犬種選び

家畜の歴史は約1万5千年前に小型のオオカミを飼いならしたのが始まりとされ、約1万2千年前に家畜化され始めた羊より前と考えられています。この家畜化された小型のオオカミこそが現在の犬の直接の祖先であるとともに、人が家畜にした最初の動物です。つい最近、現在の「ヒト」の直接の祖先になり得る現生人類(ホモ・サピエンス・サピエンス)が従来説より10万年遡る30万年前に進化を遂げていたことを示す証拠が発見されたとの報道がありましたが、人と犬の祖先の関係も、新たな遺跡の発掘や考古学の進歩発展状況によって更に遡る可能性はあります。人の進化の歴史が遡れば遡るほど、他の動物に対する人の優位性の歴史が早まる可能性が高くなり、犬の家畜化の時期がさらに遡る可能性もあるからです。最初は、偶然の機会に仲間からはぐれた幼齢のオオカミが、人の生活圏内に迷い込み、人に育てられたものと推測されます。人の祖先は、そのような偶然の機会を通じ、オオカミには自分たちが備えていない種々の能力があり、それが人のために役に立つことを認識し、その能力を多方面で積極的に活用するようになり、現在の人と犬の関係が築かれたと考えられます。犬の習性、能力、行動様式などから考えると、最初は番犬や防御犬の役割を担ったと思われますが、犬に対するヒトの飼養管理能力が高まるにつれて、犬の役割や仕事が増え、多種多様な役割を担う犬が育成されるようになりました。特に20世紀以降は、それまでとは比較にならないほど合理的且つ適正に犬の特殊な能力を引き出す特別の訓練法が確立され、身体障害者補助犬や麻薬探索犬、更には癌探知犬など、特種用役犬としての仕事の対象範囲が拡大するとともに、仕事の内容が細分化・精密化され、新種の仕事が現在も増え続けています。動物種の種内分類が犬ほど多い動物は外にありませんが、この種内分類の多さこそが、犬の仕事や役割の多さを物語っているのです。現在では、圧倒的多数の犬が、家族の一員(コンパニオン・アニマル)として人と共に暮らし、特別の仕事を持っているわけではありませんが、1万5千年に及ぶ犬の歴史からすると非常に特殊な状況にあります。
ただ、仕事がないからといって甘やかしてばかりいると、色々と問題のある行動をとり、家族のみならず周囲の人々にとって悩みの種になることさえあります。犬は社会性を備えた動物であるとの理由から、完全室内飼養の小型愛玩犬の多くは、軽度の散歩の習慣を身に付けていますが、今もって排泄のために散歩をさせているとの意識を持つ飼い主は少なくありません。また、児童公園など子供が遊ぶ場所でリードをはずして遊ばせている飼い主もいます。トラブルの原因になる可能性もあるので注意が必要です。現在は、小型愛玩犬ブームで、中には緊張感の不足する飼い主もいると思いますが、これまでの事故例を見ると、小型愛玩犬であるからといって決して安心できません。

 
  ニューヨークの中心地のひろびろとした歩道を散歩中の犬

わが国の人気犬種御三家は、いずれも小型愛玩犬ですが、先祖をたどれば違いが見えてきます。まずは犬種名から分かるように、プードルはフランス、チワワはメキシコ、ダックスフントはドイツで育種されました。特にわが国で人気の高い小型のプードルとチワワは、犬の重要な役割である人と財産の警護や狩猟に用いられた犬種ではなく、神事や愛玩用に育種されました。それに対し、ダックスフントは、穴熊狩りの役割を担う狩猟犬でした。ダックスフントの短足胴長と垂耳鼻長は、灌木の茂みの下を這うように逃げる獲物の小動物を追うには打ってつけの身体構造で、自由自在に獲物を追って、見失えば優れた嗅覚で獲物の足跡をたどり、獲物が巣穴に逃げ込めば胴長の体で巣穴に潜り込んで獲物を捕えます。垂耳は聴力を衰えさせますが、足跡をたどる嗅覚を発達させ、そこに神経を集中させることができるように造られています。巣穴に入れない場合には、ときに吠えたて、また、気長に巣穴の前で獲物が出てくるのを待ち続けます。ダックスフントの自立性、臨機応変、忍耐力等は、与えられた役割を適切に行うために求められる性質で、そのような先祖の血は、特別の役割を失った現在でもかなり色濃く残っています。ダックスフントの飼い主がよく経験する「不思議な行動」、「意味不明な行動」の多くは、狩猟犬として育種されたことに関係し、それが飼い主にとって大きな魅力になっているのです。他方で、躾・訓練を怠れば、祖先の癖が出て飼い主や周囲に迷惑をかけることもあります。また、ダックスフントだけでなくチワワをはじめとする極小の犬種は、骨格そのものが非常に細く出来ていますので、何かあった場合の骨折の可能性は高く、特に高低差には注意が必要です。犬の高齢化が益々進む中、骨格に問題を生じ易い犬種の高齢犬は、飼い主家族の不注意による骨折等の事故が生じないよう細心の注意が求められます。

 
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バックナンバー


第57回 犬種の発生と特徴(2017/7/31)
第56回 犬種別登録から見る流行と飼い主の意識(2017/5/19)
第55回 犬や猫の飼養状況の変化(2016/12/20)
第54回 動物愛護管理行政の新たな動き(2016/9/20)
第53回 「ねこまんま」は死語?(2016/3/1)
第52回 完全屋内飼養猫の「おうち」(2016/1/5)
第51回 猫ブームはどこまで続くか?(2015/12/4)
第50回 窮鼠(きゅうそ)猫を噛む?(2015/9/17)
第49回 家猫の犬化(2015/5/15)
第48回 共生の意味(2015/3/13)
第47回 飼い猫・野良猫・地域猫(2015/2/5)
第46回 飼い主の究極の義務―終生飼養(2014/12/1)
第45回 もう一つの飼い主支援―ペット産業(2014/11/21)
第44回 適正飼養管理支援策の具体的内容(2014/9/4)
第43回 飼い主責任強化と適正飼養管理支援策(2014/8/12)
第42回 コミュニケーション力の大切さ(2014/4/3)
第41回 犬の飼い方の変化(2014/2/3)
第40回 地域猫?のお出迎え(2013/8/15)
第39回 世界一犬の住みやすい都市(2013/6/6)
第38回 飼い主責任強化の動き(2013/1/9)
第37回 番犬と危険犬(2012/10/1)
第36回 犬の「飼養免許」(2012/9/10)
第35回 動物愛護・飼養環境整備税(2012/8/6)
第34回 犬税議論の飛び火(2012/7/17)
第33回 ペットの終生飼養と社会の支え(2012/6/4)
第32回 ペットの健康管理(2012/5/1)
第31回 飼い主の責務(2012/4/12)
第30回 ペット先進国への歩み(2012/4/5)
第29回 ペット税を支える基盤整備(2011/5/20)
第28回 ペット税の政策的要素―その3(2011/4/1)
第27回 ペット税の政策的要素―その2(2011/3/15)
第26回 ペット税の政策的要素―その1(2011/3/4)
第25回 我が国のペット税論議(2011/1/20)
第24回 ペット税論議―ドイツの犬税(2010/12/21)
第23回 ロンドンの朝の風景2題(2010/4/2)
第22回 イギリスの犬と飼い主(2010/3/8)
第21回 ペットとの接し方(2010/1/6)
第20回 マナー違反・配慮不足(2009/12/17)
第19回 大切な飼い主の判断(2009/12/7)
第18回 人社会と犬(2009/11/12)
第17回 犬の社会進出の基盤(2009/11/5)
第16回 ペットの目線で街を見る(2009/10/22)
第15回 ヨーロッパのペットショップ事情(2)(2009/7/23)
第14回 ヨーロッパのペットショップ事情(2009/7/21)
第13回 フランス・ドイツにおける危険犬の飼養規制(2009/6/12)
第12回 ヨーロッパにおける闘犬用犬種の飼養禁止の流れ(2009/4/16)
第11回 ペットに開かれた社会(2009/3/27)
第10回 ロンドンの犬用社会資本(2009/3/6)
第9回 糞処理用ポリ袋スタンドと犬専用の公衆トイレ(2009/1/30)
第8回 花の都パリの糞害と対策(2008/12/19)
第7回 五番街のドッグラン(2008/10/28)
第6回 ニューヨークのペット事情(2008/9/30)
第5回 ドイツの公共交通機関と犬(2008/9/1)
第4回 犬の学校の教育内容(2008/8/29)
第3回 ベルリンの「犬の学校」(2008/7/3)
第2回 ペットが友を呼ぶ(2008/6/27)
第1回 人とペットの共生探求の旅半ば(2008/5/27)

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