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吉田先生のペットコラム

ペットの品格


プロフィール
吉田眞澄
吉田眞澄
(よしだ・ますみ)

元 国立大学法人帯広畜産大学理事・副学長。
ペットの法律と社会システム研究の第一人者で、ペット六法、動物愛護六法(いずれも誠文堂新光社)、ペットと暮らす(人文書院)、NHKペット相談・知って安心ペットのトラブルQ&A(NHK出版)など多数の著作やテレビ・新聞等を通じ、人とペットの共生社会の実現に向け社会に働きかけ続けている。

第56回 犬種別登録から見る流行と飼い主の意識
●犬種の特徴を考えた犬種選び

 猫は、同一猫種での個体間格差は大きいのですが、異種間では、最少のシンガプーラと最大のメインク―ンやベンガルの体重差は2倍から3倍程度と左程大きくありません。それに対し、犬の場合は、最少のチワワと最大級のマスティフでは、25倍から30倍程の差があります。その間に小型犬、中型犬、大型犬に大別される非常に多くの純粋種が分類されているのです。犬種間の差に比べ個体間の差は、左程大きなものではありません。純粋種の場合には、多少の違いが有りはしますが、個体間の差はそれほど大きくありませんので、子犬から飼養を始めても、かなり正確に成犬時の状況を把握することができます。犬を初めて飼う飼養初心者にとって、雑種の場合はどのような成犬になるか分かり難いところがあるので、成犬の大きさが管理規約などの自治規則や契約で制限されているマンションや賃貸住宅では、純粋種を選ぶのが無難です。雑種が多く飼養されている猫に対し、犬について純粋種を選ぶ人が多いのには、それなりの合理的理由があるのです。そのような問題がなく、自由に犬種を選べる場合、わが国では、ともすれば流行や好みが重視され、相性を二の次にする傾向があるように思います。ジャパンケンネルクラブ(JKC)の犬種別年間登録数の推移を見ると、犬種を始めとする犬の流行の様子がよく分かります。

基本的には、プードル、チワワ、ダックスフントの小型犬御三家を筆頭に海外で育種された犬種に対する人気が高く、小型犬が更に小型化される傾向も続いています。プードルやダックスフントなどの犬種内分類でも、トイ、ミニチュアと呼ばれる小型の種類に人気が集まっています。他方、大型犬退潮の象徴はリトリーバー種、特にゴールデン・リトリーバーで、JKC犬種別年間登録数公表開始の1999年には、ゴールデン・リトリーバーが3位、ラブラドール・リトリーバーが4位にありましたが、翌2000年には両者の順位が逆転したうえ、ラブラドール・リトリーバー5位、ゴールデン・リトリーバー7位、3年後の2002年にはゴールデン・リトリーバー9位、4年後の2003年には11位以下に、ラブラドール・リトリーバーも6年後の2005年に11位以下に下落し、その後は2016年に至るまで大型犬の復活はなく、1位から10位までを小型犬が独占しています。わが国固有の犬種では、唯一小型犬に分類される柴犬が、2003年に10位入りを果たした後、翌2004年から2007年までの4年間は11位以下に下落したものの、豆柴や小豆(あずき)柴など小型化への取組みの貢献などもあり、2008年には10位以内(9位)に復帰、翌2009年に6位、2014年に5位に上昇し、現在までその順位を確保し続けています。欧米育種の小型犬ブームに押され、後退を重ねて一時は存続さえ危ぶまれた中型の日本犬は、犬種保存意識の高まりもあり、増加傾向にありますが、四国犬を筆頭に北海道犬や紀州犬の犬種保存は今も重要課題であることに変わりありません。日本犬では唯一大型犬に分類される秋田犬は、既に危機的状況は脱しましたが、海外育種の大型犬におされ気味です。そのような一般的状況の中で、日本犬では唯一の小型犬である柴犬の人気が際立っています。たこ唐草の風呂敷がトレードマークになっている柴犬を用いたテレビコマーシャルの影響と共に、豆柴、小豆柴と、小型化の寄与度も大きいと思います。わが国の住宅事情や住環境、更には高齢化等を考慮すると、小型化には合理性もありますが、あまりにも急速な育種に問題がないかどうかの点検は必要です。

 
  国際犬になりつつある柴犬-ニューヨークの中心部-

勿論、欧米にも犬種の流行らしきものはありますが、わが国ほど極端ではありません。例えば、アメリカ合衆国では、ラブラドール・リトリーバーが2000年以降1度もアメリカンケンネルクラブ(AKC)犬種別年間登録数首位の座を明け渡したことはなく、不動の1位を占め続け、アメリカにおける家庭犬の象徴的存在になっています。大型犬を飼養できる住宅事情やラブラドール・リトリーバーの犬種としての飼養管理のしやすさなどの客観的事情に加え、大きなもの好きのアメリカ人の好みに合っているようにも思えます。住宅事情など犬種限定の条件の少なさに加え、何でもできる賢さや、人懐っこくおおらかな性格など、家族の一員として最もふさわしい犬種であることがよく理解されているようです。さらに、2012年以降はジャーマン・シェパードが2位、ゴールデン・リトリーバーが3位と、人気の大型犬3種が上位を独占するとともに、ほぼ同じ時期から今日に至るまで、油断をすると「暴れ者」になりかねないロットワイラ―とボクサーが上位10位以内に入っています。日本では考えられないことですが、アメリカ合衆国における大型犬に対する根強い人気が窺(うかが)えます。ちなみに、わが国の人気犬種、チワワ、ダックスフントは下落傾向が続き、ダックスフントは15位、チワワに至っては30位にまで下がっています。小型犬御三家の中では、唯一プードルが7位に踏みとどまっているのが実情です。「小さいことは良いこと」とするわが国の風潮に対する警鐘かもしれません。

 
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第56回 犬種別登録から見る流行と飼い主の意識(2017/5/19)
第55回 犬や猫の飼養状況の変化(2016/12/20)
第54回 動物愛護管理行政の新たな動き(2016/9/20)
第53回 「ねこまんま」は死語?(2016/3/1)
第52回 完全屋内飼養猫の「おうち」(2016/1/5)
第51回 猫ブームはどこまで続くか?(2015/12/4)
第50回 窮鼠(きゅうそ)猫を噛む?(2015/9/17)
第49回 家猫の犬化(2015/5/15)
第48回 共生の意味(2015/3/13)
第47回 飼い猫・野良猫・地域猫(2015/2/5)
第46回 飼い主の究極の義務―終生飼養(2014/12/1)
第45回 もう一つの飼い主支援―ペット産業(2014/11/21)
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第43回 飼い主責任強化と適正飼養管理支援策(2014/8/12)
第42回 コミュニケーション力の大切さ(2014/4/3)
第41回 犬の飼い方の変化(2014/2/3)
第40回 地域猫?のお出迎え(2013/8/15)
第39回 世界一犬の住みやすい都市(2013/6/6)
第38回 飼い主責任強化の動き(2013/1/9)
第37回 番犬と危険犬(2012/10/1)
第36回 犬の「飼養免許」(2012/9/10)
第35回 動物愛護・飼養環境整備税(2012/8/6)
第34回 犬税議論の飛び火(2012/7/17)
第33回 ペットの終生飼養と社会の支え(2012/6/4)
第32回 ペットの健康管理(2012/5/1)
第31回 飼い主の責務(2012/4/12)
第30回 ペット先進国への歩み(2012/4/5)
第29回 ペット税を支える基盤整備(2011/5/20)
第28回 ペット税の政策的要素―その3(2011/4/1)
第27回 ペット税の政策的要素―その2(2011/3/15)
第26回 ペット税の政策的要素―その1(2011/3/4)
第25回 我が国のペット税論議(2011/1/20)
第24回 ペット税論議―ドイツの犬税(2010/12/21)
第23回 ロンドンの朝の風景2題(2010/4/2)
第22回 イギリスの犬と飼い主(2010/3/8)
第21回 ペットとの接し方(2010/1/6)
第20回 マナー違反・配慮不足(2009/12/17)
第19回 大切な飼い主の判断(2009/12/7)
第18回 人社会と犬(2009/11/12)
第17回 犬の社会進出の基盤(2009/11/5)
第16回 ペットの目線で街を見る(2009/10/22)
第15回 ヨーロッパのペットショップ事情(2)(2009/7/23)
第14回 ヨーロッパのペットショップ事情(2009/7/21)
第13回 フランス・ドイツにおける危険犬の飼養規制(2009/6/12)
第12回 ヨーロッパにおける闘犬用犬種の飼養禁止の流れ(2009/4/16)
第11回 ペットに開かれた社会(2009/3/27)
第10回 ロンドンの犬用社会資本(2009/3/6)
第9回 糞処理用ポリ袋スタンドと犬専用の公衆トイレ(2009/1/30)
第8回 花の都パリの糞害と対策(2008/12/19)
第7回 五番街のドッグラン(2008/10/28)
第6回 ニューヨークのペット事情(2008/9/30)
第5回 ドイツの公共交通機関と犬(2008/9/1)
第4回 犬の学校の教育内容(2008/8/29)
第3回 ベルリンの「犬の学校」(2008/7/3)
第2回 ペットが友を呼ぶ(2008/6/27)
第1回 人とペットの共生探求の旅半ば(2008/5/27)

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