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人と動物の関わりの歴史 日本女子大学大学院後期博士課程 尾崎裕子 動物の分類 私たち人間の生活は今も昔も、多くの動物たちの暮らしと関わってきました。人と動物との関係を考えるとき、動物は大きく2つにわけることができます。1つ目は、自然に山野で生育する野生動物です。そして2つ目は、繁殖、給餌などを人間の完全な支配下におかれた家畜です。さらに家畜のなかでは、人の共同社会の経済的利潤を目的として飼養されてきた牛、豚、鶏といった産業動物と、家庭で飼育される愛玩動物(ペット)とに分類できます。 共生の始まり 人と動物の共生で最も古いのは、犬の祖先であるオオカミとの共生で、約3万年前にはじまったと考えられています。これは、オオカミが人から食物をもらい、人の住居に近づく他の猛獣に対し吠えるという、お互いにほぼ対等に利益のある共生関係でした。この関係は、その後家畜化された犬が人の狩猟を助けることでさらに強まっていきます。 犬の歴史 なかでも犬は家畜として長い歴史を持ち、旧石器時代末期の北イスラエルの遺跡で発見された犬の遺骨は、約1万2000年前にさかのぼるものだといわれてきました。ここでは、人と犬がともに埋葬された形跡があり、両者の絆を物語るように、人の腕が犬の肩に置かれていました。その後も、より古い化石が次々と発見されています。イエイヌ(Canis
Familiaris)となった犬の遺骨は、ロシアやアメリカ、ヨーロッパなどから発見されていますが、西アジア周辺から発見されたものが多いので、犬の家畜化はこのあたりで始まったものと考えられています。その後、人間が選択的繁殖を行い、現在では400種以上にのぼる品種が作られており、猟犬、牧羊犬、番犬、軍用犬、警察犬、盲導犬など、多くの用途に使われています。 猫の歴史 犬と並んで愛玩動物として代表的な猫は、家畜化されたのは約4000年前のエジプト時代にさかのぼりますが、それがエジプト以外の地域に流出したのは紀元後のことです。日本に入ってきたのは、奈良時代初期か、その少し前のことであろうとされています。その後、支配者層の、とくに女性たちの間で、愛玩動物として飼育され、次第に繁殖するにつれ、一般へと広がっていきました。 その他の動物 金魚、小鳥、鈴虫といった他の小動物も、近世の日本ではひろく飼育されています。金魚は室町時代に中国より渡来し、当初は貴重で高価であったため、支配階級や富裕層で観賞される対象でしたが、江戸中期の元禄時代になると上方や江戸といった都市では、一般大衆の間で飼育が大流行しています。 日本の動物観 戦国時代末期から江戸時代初期にかけて、布教のため来日していた、イエズス会宣教師のルイス・フロイスは1585年、当時の日本の風俗とヨーロッパの風俗とを比較した『ヨーロッパ文化と日本文化』を著しました。そのなかで、「われわれの間では人を殺すことは怖ろしいことであるが、牛や牝鶏または犬を殺すことは怖ろしいことではない。日本人は動物を殺すのをみると仰天するが、人殺しは普通のことである。」と、日本とヨーロッパの文化の違いを克明に指摘しているように、多神教、仏教思想や農耕生活の影響から、日本では独特の動物観が形成されてきました。 愛玩動物の飼育 愛玩動物の飼育とは、先進国の人々の生活が豊かになることによってもたらされた新しい現象ではなく、貧富の差、年齢、性別、人種や社会の発展とは関係なく、あらゆる人間に人気のある広範囲にみられる、人間社会に深く根ざした現象といえるでしょう。しかし、珍しい愛玩動物に費用をかけるというのは、基本的には一部の富裕層にすぎませんでした。人と動物の関係は、時代により違いはありましたが、日本では欧米文化が入ってきた明治時代以降、一般の人々が飼育するというスタイルが生まれたといえます。 |
