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賃貸住宅の防災機能を高めるには?

経営ノウハウ

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2013年9月 3日

賃貸住宅の防災機能を高めるには?

9月は防災月間です。東日本大震災以降、賃貸住宅においても防災の意識は高まっています。しかし、防災対策として具体的に何かを実践している賃貸住宅は、さほど多くはないでしょう。それだけに、防災機能を高めることができれば、それは入居者へのアピールポイントとなるに違いありません。賃貸住宅として何ができるのか、この機会に考えて見ましょう。

大震災だけじゃない、この時期はゲリラ豪雨、台風に注意!

政府の地震調査委員会によると、M8〜M9の南海トラフ地震が起きる確率は、20年以内に40〜50%、30年以内に60%〜70%、50年以内では90%以上と予測されています(2013年5月24日発表)。マスコミでも度々、被害想定が取り上げられ注意が呼び掛けられています。
アパート経営においても防災対策をいかに講じるかは、大きなテーマの一つです。特に東日本大震災以降、建物の耐震性などを気にする入居者も増えています。防災については、もはや持ち家も賃貸も同じ意識で取り組む必要があるでしょう。特に都心部では賃貸世帯の比率が高く、東京では半数以上が賃貸世帯で、防災対策が社会的テーマとも言える状況になっています。

さて、防災対策といえばまず大地震への備えが頭に浮かびますが、もちろん、それだけではありません。今年は、東京都でも局地的なゲリラ豪雨で花火大会が中止になるなど、日本各地で記録的な集中豪雨による被害が報告されています。最近は毎年ゲリラ豪雨に悩まされるようになりました。これからは台風シーズンに入りますので、風雨による注意も十分に警戒する必要があります。
賃貸住宅で想定される被害としては、暑いのでつい窓を少し開けて外出したり、飛来物で窓ガラスが割れたりして、雨が室内に侵入し水漏れを起こすことが考えられます。また、ベランダの排水口や側溝にゴミが詰まり、辺りがあっという間にプール状になり、室内に侵入することも考えられます。
これらに対しては、窓にシャッターを付ける、ペアガラスにするといった建物側の対策の他に、日常の清掃を怠らずにしてもらうために入居者への注意の呼び掛けが有効です。掲示板があれば、張り紙等で注意を喚起、または夏はゲリラ豪雨や台風に注意するよう、特別にチラシを配布してもよいでしょう。

豪雨の他にも、竜巻など日本では考えられなかった自然災害も発生しています。想定外の自然災害に対応することは困難ですが、防災だけではなく、いかに被害を最小限に食い止めるかという"減災"の観点からも対策を考えたいものです。

大震災の他、集中豪雨などの自然災害もある。防災、そして減災の観点から、いろいろな方面から対策を考える。

まずは耐震・耐火性、住宅密集地は特に火災に注意!!

賃貸住宅の防災対策としては、第一に建物自体の安全性を高めること。つまりは耐震性です。東日本大震災の場合、仙台市では建物の損壊などの被害が少なかったのは、やがて来ると言われていた宮城県沖地震に備えて耐震化等の対策が進んでいたからといわれています。
また、建物だけではなく外階段、ブロック塀などにも注意が必要です。例えば、震災でブロック塀が倒れ、通行人がケガをした場合、オーナーの管理責任が問われるケースもあるからです。震災による被害が出た場合、オーナー責任や家賃がどうなるかは、過去のマンスリーレポート「震災でどうなる!?アパート経営Q&A」でも解説していますので、そちらをご覧ください。
老朽アパートの場合は、耐震補強か建て替えかの選択に迫られると思いますが、耐震補強の場合は、入居者へのアピールのインパクトが弱く、かえって不安をあおってしまいかねません。耐震性の高い建物に建て替えた方が入居者へのアピール度は高く、競争力もアップするでしょう。費用と効果のバランスを考えて判断しましょう。

また、大震災の場合、気を付けたいのは揺れによる損壊だけではありません。阪神・淡路大震災でも大きな被害を出したように、火災への注意が必要です。特に住宅密集地では、火災が一度起きると、被害が予想以上に拡大する恐れがあります。東京でも住宅密集地でかつ木造住宅が建ち並ぶ、木造住宅密集地域が多く存在します。特に中野区、豊島区などが代表的で、その他の地域でも路地裏がひしめくようなエリアは、火災発生時には消防車が入れず、大規模火災につながる危険性があります。
多くの自治体では、このような木造住宅密集地域に対して、不燃化促進事業を行っていて、木造アパートの建て替えには助成金が出たり、固定資産税などの優遇措置があるケースもあります。老朽アパートの建て替えを検討している場合は、活用するとよいでしょう。

耐震・耐火性能の高さは、入居者へのアピールポイントにもなる。木造アパートで住宅密集地域の場合は、自治体の助成制度を活用した建て替えも検討するとよい。

防災マンションに学ぶ備え

最近では、防災型マンションをうたう分譲マンションも少なくありません。
まず耐震性ですが、最新の建物であれば建築基準法で定められた耐震性が確保されているので、まず問題はないでしょう。
ポイントは、災害時のライフラインの確保です。電力は太陽光発電に蓄電設備を備え、停電時にも非常用電源として使用できたり、各戸にあらかじめカセットボンベで発電できる小型の発電機を配布していたりします。次に水とトイレ。大きな設備では、川の水を飲料水に浄化できる災害対策用小型造水機を設置しているケースもあります。多くの場合は、備蓄倉庫、雨水貯水槽(生活用水用)などに水・食料を確保しています。トイレも簡易トイレや非常用マンホールトイレを備蓄しています。

自治体でも、マンションの防災については防災マニュアルを作成して配布していますので、賃貸住宅でも参考になるでしょう。
また、総合的な防災対策について一定の要件を満たしたマンションを自治体が認定する制度もあり、賃貸住宅も対象になっています。例えば、墨田区では、今年の4月に「すみだ良質な集合住宅認定制度」をスタートさせました。防災型の認定要件は、災害発生から3日間避難所に行かずに生活できる住宅です。具体的には、備蓄倉庫に飲料水や食料を準備し適正に管理することや、防災用品を各住戸に配備すること、年に1回以上の防災訓練の実施などが条件になっています。
管理上、賃貸住宅では負担がありますが、認定されれば、入居者へのアピールにもなりますし、条件を満たせば整備費の一部の補助が出るなどのメリットがあります。

飲料水などの防災グッズは、本来各戸で用意するものですが、あらかじめ用意されていると安心感があるのでしょう。賃貸住宅の場合は、まずオーナーと管理会社の意識を高めること、そして、入居者の防災への意識を喚起することが大切です。

防災型マンションとしての備えは、電力・水・トイレの確保がポイント。入居者へ備えを呼び掛けるとともに、賃貸住宅としてもできるだけ備蓄したい。

最新!防災・防犯型賃貸住宅、いざという時のコミュニティも確保!

阪神・淡路大震災で多くの人命を救ったのは、消防隊や自衛隊だけではなく、コミュニティ、つまり近所の人々の存在が大きかったといわれています。しかし、分譲も含め集合住宅ではコミュニティの形成が難しいのが実体です。特に単身者用の賃貸住宅では、入居者同志の関わりはほとんどないでしょう。仙台市では、東日本大震災のとき地元の人々はコミュニティによる助け合いがありましたが、単身者の集合住宅では、普段コミュニティとの付き合いがないため助け合いの中には入れなかったと言います。

賃貸住宅では、コミュニティをつくったり、町のコミュニティに参加したりするのは、実際難しいでしょう。しかし、少しずつ賃貸住宅でもゆるやかなコミュニティを求めるニーズも増えています。例えば、ペット共生賃貸や子育て支援賃貸では、入居者同士のコミュニケーションもあり、ゆるやかなコミュニティが形成されています。これは防災面でも機能することは言うまでもありません。ルームシェアに一定のニーズがあるのも、コミュニティが求められてのことでしょう。

旭化成ホームズでも、防災・防犯をコンセプトにした新しい賃貸住宅の取り組みを始めました。耐震・耐火性能にすぐれたヘーベルメゾンに、"いざという時には協力し合える"、そんなコミュニティを持たせた賃貸住宅です。
1階には、防災ステーションを設け、水・食料・携帯トイレを備蓄しています。また、共用部には太陽光発電と蓄電池により、停電時には携帯電話等の充電ができるほか、インターネット無線LAN、あるいはテレビなどから情報が得られるようになっています。普段のコミュニケーションは少ないかもしれませんが、万が一の時には、防災ステーションに集まって情報を共有できるというコミュニティの存在が入居者に大きな安心感を与えます。集合住宅では難しかったコミュニティを、災害時に機能するように配慮した賃貸住宅です。
また、各戸には防災避難セットを配布しています。加えて、ALSOKホームセキュリティが導入され、「火災監視」「非常通報」が基本プラン、オプションで「侵入監視」もできるようになっています。

賃貸住宅でも、ゆるやかなコミュニティを求めるニーズもある。コミュニティは、防災面でも機能する。

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