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老朽アパートの建て替え-立ち退き交渉のコツ

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2014年11月 4日

老朽アパートの建て替え-立ち退き交渉のコツ

老朽化したアパートは、採算の悪化や防災・防犯の面でも課題が多く、相続財産としては不良資産となってしまいます。特に都市部では、いつ来てもおかしくないと言われている大震災に備える意味でも、老朽アパートの建て替えを検討されているオーナーも多いことと思います。建て替えにあたって、大きなハードルとなるのが立ち退きです。昨今の不動産事情を踏まえながら、立ち退きについて考えてみたいと思います。

老朽アパートは相続資産としては不良資産

築30年、40年の老朽化したアパートの場合、すでにローンの返済も終わっているので、一つ二つ空き室があっても収支的には問題ないと、そのままにしているケースも少なくありません。しかし、適切なメンテナンスをしていなければ、空き室が出た場合に、次の入居者が決まるまでに時間がかかったり、家賃を下げたりしなくてはならず、採算は悪化の一途をたどっていきます。

さらに問題なのは、防災上の問題です。昨今、さまざまな天災が猛威を振るっており、地域全体の課題にもなっています。その中でも今後、特に備えなければならないのが、南海トラフなどの大地震です。耐震基準に達していない場合は、早急に耐震補強等の対策が必要なのは言うまでもありません。メンテナンスが行き届いていないせいで、建物が一部損壊し、入居者などに被害が及ぶと、オーナーの管理責任を問われるケースも出てきます。
また懸念されているのが、二次災害の火災です。木造住宅の場合は、近隣にも広がる可能性があるからです。都心部の木造住宅密集地では、自治体が不燃化促進事業に力を入れています。自治体によっては、木造アパートの建て替えには助成金を出したり、無料耐震診断を行っているところもありますので、利用されると良いでしょう。

このように、老朽化したアパートには、空室による採算の悪化、耐震・耐火など地域を含めた防災性が、大きな課題と言えます。そして、もう一つの課題は、これらの課題を克服しないと、相続資産としても不良資産となってしまうということです。
課題の多い老朽アパートを相続しても、そのままアパート経営を継続するのは、引き継ぎを行っていたとしても、相続人の仕事や家庭の事情もあり難しいでしょう。老朽アパートの相続の問題点は、以前このコーナーでも紹介しています。(不良資産の継承は頭痛の種。どうする?「老朽化したアパート」)

老朽アパートの課題

では、どうやってこれらの課題を克服するか? 耐震補強をし、最新の設備を導入するなどのリフォームには、大きな費用負担を強いられますし、それに見合った高い家賃が取れるかどうかも疑問です。また耐火性能を高めるリフォームは容易ではありません。そこで、検討したい一つの選択肢が、建て替えです。耐震・防災性の高い賃貸住宅に建て替えることで、良質な資産となり、地域社会への貢献にもなります。
しかし、賃貸の建て替えの場合、まず対処しなければならないのが、立ち退きです。この立ち退きがネックで、建て替えを躊躇しているオーナーも少なくないと思います。次に、立ち退きについて考えて見たいと思います。

老朽化したアパートを相続資産として見ると、不良資産である場合が多い。また、地域にとっても防災上の問題を抱える。解決方法の一つが建て替え。

老朽化を正当事由に立ち退きはできるのか?

立ち退きがスムーズにいくかどうかは、まさにケースバイケースです。建て替えのための立ち退きは、オーナー側から賃貸借契約を解約するということで、そのためには「正当事由」が必要です。借地借家法では「正当事由なくして解約はできない」としています。

では、その「正当事由」は、どういうものなら認められるのか? これには、明確な基準はなく、個々の事情で判断されますが、それ相応の理由がなければ正当事由としては認められません。単に採算が悪いからというだけでは、難しいでしょう。もちろん、立ち退き料に入居者が納得すれば、すんなりと退去してもらえるケースもあります。

老朽アパートの場合、立ち退きの正当事由として考えられるのは耐震性です。「建物の築年数が古く耐震基準を満たしていないため、倒壊の危険がある」といった場合は、正当事由として認められる可能性が高くなりますが、加えて立ち退き料なども正当事由の一つとして判断されます。耐震性だけだと、補強工事で対応できる場合もあり、その場合は建て替える必要はないと判断されかねません。

もちろん、しっかりとした耐震補強を行うには、それなりの費用がかかり、補強工事自体が現実的でない場合もあります。平成25年に、東京地裁立川支部で「耐震不足で立ち退きを認めた」という報道がありました。このケースは、耐震補強工事自体が現実的でなく、立ち退き料など入居者へのフォローも十分に行き届いていることなどで、正当事由が認められています。詳しくは、耐震強度不足が正当事由に!建物明渡しに勝訴! をご覧ください。
一般的に考えれば、入居者も耐震強度が不足して倒壊の危険があるとわかれば、他に転居したいと思うでしょう。地域への影響も考えての建て替えであると真摯に話し合うことがまずは大切です。
立ち退き交渉、つまり賃貸借契約の解約交渉は法的には6カ月前からとされていますが、余裕を持って1年前には交渉を始める方が良いでしょう。

「耐震基準を満たしておらず、倒壊の危険がある」「相応の立ち退き料を用意している」場合は、正当事由として認められる可能性が高い。

立ち退き料を払ってでも建て替えるのは得策か?

先に説明した通り、正当事由を補うものとして考慮されるのが立ち退き料です。正当事由が弱い場合は、立ち退き料を多く支払うことで補うことができると考えられています。逆に、しっかりとした正当事由があれば、立ち退き料は必要ない場合もあります。

では、立ち退き料の相場とはどのくらいでしょうか?
立ち退き料の算定の仕方としては以下の3つの要素があると言われています。
(1)引っ越しに関わる費用。引っ越し代、敷金・礼金、仲介手数料など。
(2)立ち退くことで、入居者が「事実上失う利益」の補償。店舗の営業権など。
(3)立ち退くことで、「消滅する利用権」。いわゆる借家権。主に戸建ての場合。
特に店舗や事務所などのテナントの場合、(2)の営業権の補償が大きな金額となりますが、一般的な居住用賃貸の場合は、おおよそ家賃の5〜6カ月が目安と言われています。しかし、これもあくまで目安で、立ち退き料に相場はないというのが実態です。

立ち退き料を全世帯に支払うには負担が大きく、建て替えた方が得策なのか迷う方もいると思います。建て替えるには多額の建築費用も必要で、そのローンを抱えることの不安、また、新築の賃貸住宅を建てても10年、20年経てば古くなって空き室が出るのではと不安を感じる場合もあるでしょう。

しかし、今は30年一括借上げシステムを利用すれば30年間空き室の心配はなくなり、常に安定した収益を得ることができます。一括借上げは、管理も全てお任せできますので、日常の煩わしい管理業務からも解放されるというメリットがあります。また、立ち退き料は支払った年の必要経費になります。
賃貸経営は、20年、30年と続く事業です。中長期の視点で見れば、採算上でも得策となり、冒頭に解説した通り、優良資産として次世代に引き継ぐことができるのです。

建て替え後に30年一括借上げシステムを利用すれば、煩雑な日常の管理も必要なく、中長期の視点では採算上も得策となる。優良資産として次世代に引き継げることが大きなメリット。

引っ越し先を斡旋するのが大きなポイント

立ち退きをスムーズに進めるためのもう一つのポイントが、入居者に引っ越し先を斡旋することです。昨今の立ち退きの現場で、一番困っているのが、実はこの問題かもしれません。
老朽アパートには、古くから入居していて、低い家賃の方が多いと思われます。高齢者や収入が少ない方で、今と同じ家賃水準で近場の物件が見つからないというケースがあるようです。エリアによっては、建て替えが進み、入居者の転居先に見合った物件が減少しているのです。これでは、たとえ立ち退きを承諾しても、現実的に引っ越すことができません。

これについては、不動産会社と連携して、探してもらうのが良いでしょう。立ち退き交渉が成立したら、不動産会社に引っ越し先の候補を探してもらい、直接部屋に訪ねていくなどのフォローも必要かもしれません。

賃貸住宅と言えども、入居者にとって自分の都合ではなく、住み慣れた部屋を住み替えるのは、大変な労力を強いられるものです。入居者の引っ越しの負担を少しでも軽減できるよう、さまざまなフォローを考えることも、スムーズな立ち退きを進める上で大切です。

不動産会社と連携して入居者に転居する部屋を斡旋することも場合によっては必要。

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