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アパート経営の防災と減災-大地震に備えて

経営ノウハウ

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2016年9月 6日

アパート経営の防災と減災-大地震に備えて

今回はアパート経営の防災と減災について考えてみたいと思います。特に大地震の場合、アパート経営において注意したい点はどこか、万が一の場合オーナーの責任はどうなるのか気になるところです。最新の地震予測データなども併せて紹介していきます。

耐震性とオーナーの管理責任

万が一、地震でアパートが被災し、入居者や通行人に被害がおよんだ場合、オーナーの責任は問われるのでしょうか? 通例では、地震などの大災害で建物が倒壊した場合は、不可抗力としてオーナーの責任は問われません。
しかし、管理が十分にいきとどいていなかったと判断された場合は、オーナーの管理責任が問われることもあります。特に木造の老朽アパートや耐震基準を満たしていない建物の場合です。

阪神・淡路大震災では、鉄筋コンクリート造のマンションも多く倒壊しています。実は、阪神・淡路大震災で倒壊した建物の10%が、新耐震基準を満たしたものでした。新耐震基準は昭和56年に定められたもので「震度6強から7程度の大規模の地震動で倒壊・崩壊しない」レベルです。新しい耐震基準を満たしていても、築年数が経てば劣化等の影響は避けられません。ある判例では、賃貸住宅が大地震に対して十分な構造強度をもっていなかったことの責任がオーナーにあると判断され、損害賠償の一部支払いを命じられたケースがあります。

アパートの防災対策は、まず耐震性を満たすことからです。築年数が経っている場合は、耐震診断を受けたほうが良いでしょう。耐震診断は、自治体で行っている場合もありますので、確認してみてはいかがでしょうか。
また、建物に限らず、ブロック塀などの外構物や共用の外階段でも管理責任が問われます。ちなみに、施設の安全性の維持・管理の不備などで、入居者などにケガをさせた場合の損害補償保険「施設賠償責任」は、地震は免責になっていますので、注意が必要です。

阪神淡路大震災からはすでに21年が経過しています。ヘーベルメゾン・ヘーベルハウスの全壊・倒壊・半壊は0棟でしたが、周囲の木造アパートなどが被災して、ヘーベルメゾンに被災者を受け入れたケースもありました。オーナーもまた被災者です。この震災についても風化させることがないよう、あらためて教訓を学びたいものです。
当時のオーナーの体験談をまとめた「阪神・淡路大震災の教訓ヘーベルメゾンオーナーが語る1.17」ご希望の方は、こちらから。

大地震で万が一のことが起こると、耐震性を含め、日頃の安全管理の責任がオーナーに問われる可能性がある。

都市部で怖いのは、二次災害としての火災

東日本大震災は、沿岸部の津波被害が甚大でした。阪神・淡路大震災は、都市部で起き、建物の倒壊に加えて大きな被害をもたらしたのが、地震によって引き起こされた火災です。長田区など木造住宅密集地ではあっという間に延焼が広がり、多くの建物が焼失しました。

今後発生すると言われている南海トラフによる地震や首都直下型地震で、最も懸念されるのが、この地震による火災です。東京の都市部でも、木造住宅密集地帯は思った以上にたくさんあります。中央防災会議では、マグニチュード7級の首都直下型地震が起きた場合、首都圏全体で死者最大23,000人、そのうち約7割は火災によるものと予測しています。
いかに震災での火災の延焼をくい止めるか。その重要事項の一つが建物の不燃化の促進です。これは「防災」というよりは「減災」の考え方と言えるでしょう。耐震性のある倒壊しない建物であると同時に燃えない建物であることが重要なのです。

木造住宅密集地帯の老朽化した木造住宅・木造アパートは、倒壊の危険性とともに、火災の危険性を含んでいます。被害を最小限にするため、建替えなどの対策が急がれているのです。

都市部では、過去の教訓による防災と減災の見知から対策が必要。特に、不燃化促進が重要とされている。

東京都の不燃化10年プロジェクトとは?

東京都の最大の弱点とも言える木造住宅密集地域は、山手線外周部を中心に広範囲に広がっています。これまでも、東京都では不燃化対策を進めてきましたが、これらのエリアは、敷地が狭かったり、権利関係が複雑だったりで、建替えが進みにくいという現状がありました。
そこで、平成24年に「木密地域不燃化10年プロジェクト」が立ち上がりました。これまでの取り組みに加え、特に改善を必要としている地区に焦点をしぼり、区と東京都が連携しながら、手厚い助成を講じて踏み込んだ施策を行うというものです。

特に甚大な被害が想定される整備地域、約7,000ヘクタールを対象に、以下の目標が定められています。
○市街地の不燃化を促進し、延焼による焼失ゼロの「燃えないまち」を実現
⇒整備地域における不燃領域率を2020(平成 32)年度までに70%に引上げ(既定計画の5年前倒し)
○延焼遮断帯の形成を促進し、「燃え広がらないまち」を実現
⇒整備地域における主要な都市計画道路の整備を2020(平成32)年度までに100%達成

特区は現時点で18区、計52地区で事業を推進しています。(下図参照)
具体的な助成内容は、老朽化した建物の除去費(解体費)、戸建の建替えの際に設計費の一部を助成、そして、固定資産税および都市計画税の5年間減免です。
また、老朽化したアパートの建替えについては、特区外でも除去費、設計費、共同施設整備費に対して助成制度がある場合があります。また、23区以外でも、不燃化促進のための独自の助成制度を設けているところがあります。詳細は、各自治体にご確認ください。

木造の老朽アパートを耐火性の高い賃貸住宅に建て替えることは、都市の不燃化を促す役割を担うことでもあります。2020年の東京オリンピックへ向けて、防災上「東京を世界一安全なまち」にするためにも、不燃化は欠かせません。

■東京都不燃化特区一覧表(図) ■東京都不燃化特区一覧表(表)

都市の不燃化を促すため、不燃化特区では老朽アパートの建替えなどに助成金が出る。建て替えを検討する際はぜひ利用しよう。

地震保険が2017年1月から再値上げ

今年の6月に発表された最新の地震予測「全国地震予測地図2016年版」によると、関東から四国までの太平洋岸は、2年前のものと同様に大地震の発生確率が高いのが分かります。
地震調査研究推進本部調査「全国地震動予測地図2016年版」
さらに、今後30年間に「震度6弱以上の揺れに見舞われる確率」や「震度6強以上」の確率があるエリアを、ピンポイントで確認することもできます。それが「地震ハザードカルテ」です。
スポット検索が可能で、主要都市の駅で検索してみると、「今後30年間に震度6弱の揺れに見舞われる確率」は、東京駅で44.9%、新宿駅44.7%、渋谷駅64.0%、名古屋駅67.0%、大阪駅53.7%となっています。

こうやってみると、日本各地で大地震の可能性があることがわかります。そこで、アパート経営における災害対策として、改めて確認しておくべきなのが地震保険です。地震保険の重要性は、広く周知されていますが、付帯率は全国平均で60.2%(2015年損害保険料率算出機構資料より)となっています。
注意したいのが、来年2017年1月に地震保険料が値上げされるということです。地震保険料は2014年の7月に値上げがあったばかりなのですが、最新の地震災害における被害予測シミュレーションなどの結果から、今回の再値上げになりました。
保険料の改定は都道府県別になっていて、中には北海道や愛知県、大阪府など下がったところもあります。関東圏は、埼玉県が14.7%、東京都、神奈川県、千葉県が11.4%のアップです。今年の12月末までが加入・見直しのタイミングとなります。最長契約期間は5年ですので、検討してみてください。

そしてもう一つ、大きな改定があります。地震保険の損害区分が細分化されました。これまでは、全損・半損・一部損の3区分でしたが、これが全損・大半損・小半損・一部損の4区分に改定されます。半損が2区分に分かれたのです。半損か一部損かで10倍もの開きがあり不公平感もありましたが、それも緩和されるでしょう。

■地震保険の損害区分の改定 (2017年1月1日より)

昨今、数年の短いサイクルで、日本のあちらこちらで、大震災が起きています。あらためて、日本は地震大国だということを思い知らされます。アパートの防災と減災への対応は、都市部においては必須です。保険も含めて、様々な検討が必要です。

地震保険が2017年1月1日より改定される。加入・見直しは、今年の12月末までに。

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