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認知症になったら、アパート経営はどうなるのか?

経営ノウハウ

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2017年9月19日

認知症になったら、アパート経営はどうなるのか?

相続対策など、資産管理の面でも認知症リスクがあることは、このコーナーでも何度か取りあげています。今回は、アパート経営を行っているオーナーが認知症になった場合、その後の経営はどうなるのか、また、その対策について解説したいと思います。

入居者と賃貸借契約を結ぶことができなくなる!?

2025年、認知症患者は700万人を超えると推測されています(厚生労働省)。これは、65歳以上の5人に1人の計算になりますから、決して人ごとではありません。
賃貸アパート・マンションのオーナーが認知症になった場合、その後のアパート経営はどうなるのでしょうか?

認知症になると、意志能力がないと判断され、様々な社会行為、法律行為ができなくなります。例えば、預金の引き出しや遺言書の作成などです。中でも、トラブルになりがちなのが契約の締結です。
意思能力とは、法律上の判断において、自己の行為の法的結果を認識・判断できる能力のことです。この意志能力がないと判断されると、あらゆる契約行為はできなくなります。今年、120年ぶりの大改正となる改正民法が国会で可決成立しましたが、意志能力については「重度の認知症など、意志能力がない状態で行った契約は無効である」と明記されることになりました。

つまり、アパート経営では、入居者とオーナーの賃貸借契約が結べなくなるということです。それ以外にも、契約の更新・解除や入居者退出時の原状回復の工事などでもオーナーの意思の確認ができないと、それらの業務が滞ってしまうことになります。
現状では、親族が代わって各種の手続きをしていることが多いと思われますが、厳密に言うと、法的には無効ということになります。
そのままでは、アパート経営を継続することができなくなりますので、認知症発症後の対処法としては、成年後見制度を活用することになります。

■オーナーが認知症になると、賃貸借契約が結べなくなる

アパートオーナーが認知症になると、賃貸借契約、契約の更新・解除ができなくなり、やがては経営そのものができなくなる可能性もある。

成年後見制度の活用までには数カ月必要

成年後見制度は、認知症などにより意思能力が低下し、契約の締結ができない人に代わって、成年後見人が契約の締結や財産の管理を行う制度です。
アパート経営において、オーナーが認知症になった場合は、配偶者や子どもを含む親族が家庭裁判所に成年後見人選任の申し立てをすることになります。

その後は、家庭裁判所の調査官による事実関係の調査、審判、審判の告知と通知といった手続きがあります。また、提出書類も親族関係図、財産目録、収支報告書など複数の書類を提出します。ほとんどのケースでは、専門家に依頼されると思いますが、申し立てから法定後見の開始まで通常2〜5カ月程度かかると言われており、その間、アパート経営の管理が滞ることになります。
また、成年後見人を誰にするかですが、資産が多いと親族ではなく司法書士や弁護士が選任されるケースが多いようです。

オーナーが認知症になったら、成年後見人の申し立てをする。しかし、成年後見人が選任され法定後見の開始までに数カ月かかり、その間、経営に支障が出る。

代理権を授与する「委任状」を活用する

成年後見人が選任されるまで、滞りなくアパート経営を継続する方法として、公益財団法人 日本賃貸住宅管理協会(以下、日管協)では、「管理業務委任契約」を締結することを勧めています。
「管理業務委任契約」は、アパートなど賃貸借契約(サブリース含む)の締結・解除、修繕等の「代理権」をオーナーが親族等の代理人に授与し、万が一認知症になった場合でも、代理人に意思確認することができるものです。実際の意思の確認は、間に入っている賃貸管理業者と代理人である親族がやりとりをすることになります。

委任契約は難しい手続きはなく、書面1枚で完結します。ぜひ締結しておき、管理会社にもその旨を伝えておくとよいでしょう。
日管協は委任状のひな型を作成しています。以下、一部を紹介します。

■管理業務委任契約の委任状(一部)

このあとに、物件概要、賃貸管理業者概要、委任者のオーナーの署名捺印で完成します。

この契約は委任契約ですので、いつでも取り消すことができます。また、委任契約後、認知症になるまではオーナー本人によるアパート経営は可能です。成年後見人が選任されるまでの数カ月間、この委任状があれば、アパート経営は円滑に継続することができるでしょう。

■「管理業務委任契約」による代理権の授与

注意したいのは「管理業務委任契約」は、財産管理全般を委任しているわけではないということです。やはり、認知症になった場合は成年後見の申し立てをする必要があるでしょう。成年後見人が選任されたとしても、「管理業務委任契約」の代理権は消滅せず、引き続き代理行為が可能ですが、日管協では「管理業務委任契約は、あくまでも成年後見人が選任されるまでの間に所有者の意思確認を補完するためのものとして位置づけることが適切」としています。

「管理業務委任契約」の詳細につきましては、日管協のホームページをご覧ください。

万が一、認知症になったときのために「管理業務委任契約」を締結していれば、代理権が親族に授与され、成年後見人が選任されるまで、賃貸借契約などアパート経営業務を円滑に進められる。

認知症対策には、家族信託が有効

賃貸住宅など資産のある方が、認知症対策を何もしていない場合、最終的には成年後見制度を活用することになるでしょう。「管理業務委任契約」も賃貸借契約などの代理権で、老朽アパートの建て替えなどはもちろんできません。
資産管理・運用については、成年後見人に委ねられることになりますが、成年後見制度の目的は「本人の保護」です。資産を売却したり運用したり、相続人のために相続対策をしたりすることは認められません。例えば相続対策を考慮して老朽アパートを建て替える、などという運用はできないのです。

そこで、今注目されているのが「家族信託」です。信託と聞くと敷居が高いように感じるかもしれませんが、家族信託は信託報酬を目的としない「民事信託」の一つで、信託銀行などが資産を管理する「商事信託」とは違います。
家族に資産管理を託すことで、本人が認知症になってもスムーズな資産運用・管理が継続してできます。また、家族信託の仕組み、スキームの組み方も様々で、家族構成や資産の内容に合わせて柔軟に設計できるのも注目されている理由の一つです。

■家族信託のメリット
・家族構成、資産内容に合わせて、柔軟な資産管理・運用ができる。
・遺言ではできない二次相続以降の資産承継もできる。
・トラブルの多い不動産の共有化を防ぐ。

■信託の仕組み

家族信託の詳細については、マンスリーレポート・バックナンバー「今注目の家族信託を上手に活用する」で、専門家に仕組みと活用の仕方を伺っています。ぜひ、ご覧ください。

土地・アパートオーナー等資産家にとって認知症対策は必須の相続対策。万全を期すには家族信託も対策として取り入れたい。

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