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路線価上昇の兆しと今後のゆくえ

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2013年7月23日

路線価上昇の兆しと今後のゆくえ

7月1日、国税庁より相続税・贈与税の土地評価の算定基準となる路線価が発表されました。今年3月に発表された公示地価の発表からおおよその予測はついていたものの、下げ止まりの傾向がみられました。全国平均ではまだマイナスが続いているものの大都市圏では上昇傾向もみてとれます。

三大都市圏ではほぼ横ばい、路線価下げ止まり顕著

路線価の全国平均は前年比─1.8%で、5年連続の下落でした。しかし、下落率は1ポイント改善し、全ての都道府県で下落幅が改善しています。まだ、マイナスですが、これはあくまで全国平均、エリアを大都市圏に絞っていくと、路線価は上昇に転じていることが分かります。
エリア特性として景気のバロメーターとも言われる愛知県では変動率が+0.1%、東京都は−0.3%、再開発エリアの多い神奈川県は−0.2%、大阪府は−0.8%と大都市圏ではほぼ横ばいといったところです。
さらにエリアを絞り、都道府県庁所在地の最高路線価をみると、上昇したのは前年の2都市から7都市に大幅に増えました。上昇したのは、横浜、金沢、那覇、札幌、さいたま、名古屋、大阪の各都市です。

マスコミ各社も“路線価下げ止まり、都市は上昇の兆し”“大都市中心に底入れ感”と路線価の下げ止まり、大都市圏の上昇を取り上げました。地価の底入れ感は公示地価発表時でも大きく報じられましたが、路線価は1月1日時点での価格であり、安倍政権が発足してから6日後です。つまり、アベノミクスの影響はまだ反映されていません。それでも改善が見てとれるということです。その後もアベノミクスへの期待感から、株価同様、不動産市場へ資金が回っているとのことで、特に不動産投資信託(REIT)の動きが活発になっているようです。

■主要都府県の標準宅地の対前年変動率の平均値(単位:%)

都道府県

平成25年分

平成24年分

東京都

▲0.3

▲1.2

神奈川県

▲0.2

▲1.1

千葉県

▲1.1

▲2.0

埼玉県

▲1.3

▲2.4

愛知県

 0.1

▲0.5

大阪府

▲0.8

▲1.7

兵庫県

▲1.3

▲2.0

東京圏の動向─都心部が地価上昇をけん引

東京都では、税務署管内の最高路線価が上昇したのは、8地点。前年より5カ所多くなりました。中でも浅草の雷門前の通りは前年比9%もの上昇です。浅草はスカイツリー効果に加え、観光客の増加によって賑わいを見せているようです。
続いて上昇したのが足立区北千住駅前で4.6%の上昇です。北千住は行政の政策で大学誘致を積極的に行い、2006年以降周辺に大学が増えています。東口の東京電機大学だけでも5千人が通っていて、「文教地区」としてイメージアップにつながっています。賃貸ニーズも顕著で1Kの家賃相場は約8万円。学生にとっては高めの家賃相場となっています。
その他の上昇地点は、麹町、目黒、西新井、立川、麻布、豊島です。立川を除く7地点が23区で、都心が地価の回復を引っ張っていると言えます。

神奈川県では、川崎+5.7%、溝の口+5.4%、横浜+5.1%と東京圏の最高路線価上昇率トップ5のうち3地点がランキングされました。また、神奈川県の最高路線価上昇地点は10地点。昨年の3地点から、大幅増です。
川崎は、西口のショッピングモール「ラゾーナ川崎プラザ」の開業(2006年)以来、賑わいを見せ、最近では東口が再開発されるなど、この7年間でイメージが一新、活況を呈しています。昨年も1.6%上昇しましたが、今回さらに上昇幅を広げました。
その他の上昇地点は、鶴見区、保土ケ谷区、緑区、川崎西区、横浜南区、戸塚区、神奈川区です。

■東京圏の最高路線価上昇率トップ5(1m2あたり)

順位

 所 在 地

対前年増減率(%)

平成25年

平成24年

1

 台東区浅草1丁目 雷門通り(※)

9

▲1.5

2

 川崎市川崎区駅前本町 川崎駅東口広場通り

5.7

1.6

3

 川崎市高津区溝口1丁目 溝口駅前広場通り

5.4

0.9

4

 横浜市西区南幸1丁目 横浜駅西口バスターミナル前通り

5.1

▲0.5

5

 足立区千住3丁目 北千住駅西口駅前広場通り

4.6

3.6

※ 浅草署は最高路線価の所在地を変更しています。

名古屋圏の動向─愛知県は唯一上昇したが、まだ回復は一部

都道府県別で見ると、復興特需のある宮城県を除き、唯一上昇したのが愛知県です。前年は0.5%下落でしたが、0.1%上昇とほぼ横ばいの結果となりました。

名古屋圏(東海3県)で、最も上昇したのが一宮市栄3丁目の尾張一宮駅前通り。昨年11月に高級スーパーや飲食店などが入居する再開発ビルの開業などが、影響したとみられています。しかし、地価の上昇はピンポイントに過ぎず、二極化が進んでいるようです。

■名古屋圏の最高路線価上昇率トップ5(1m2あたり)

順位

 所 在 地

対前年増減率(%)

平成25年

平成24年

1

 一宮市栄3丁目(尾張一宮駅前通り)

5.6

0

2

 名古屋市熱田区金山町1丁目(新尾頭金山線通り)

3.8

6.7

3

 伊勢市宇治今在家町(館町通線通り)

2.8

2.9

4

 名古屋市中村区名駅1丁目(名駅通り)

2.4

0.9

5

 豊田市喜多町2丁目(豊田市駅前通り)

2.1

0

大阪圏の動向─上昇率トップ3は阿倍野、キタ、天王寺

全国524カ所の税務署管内の最高路線価上昇率トップ3が大阪でした。
来年グランドオープンを迎える日本一高いビル「あべのハルカス」が影響した阿倍野は前年の3.6%から35.1%の大幅上昇です。同エリアの天王寺は10.4%上昇。再開発が進んだ大阪駅キタは17.4%の上昇。全国でも二ケタの増加はこの3地点です。いずれも大規模開発による、今後のポテンシャルを期待しての上昇でしょう。

しかし、大阪府全体では0.8%減少ですので、この3地点が突出していたとも言えます。また、税務署管内の最高路線価が上昇したのは11地点。東京、名古屋と同様の傾向を見せています。

■大阪圏の最高路線価上昇率トップ5(1m2あたり)

順位

 所 在 地

対前年増減率(%)

平成25年

平成24年

1

 大阪市阿倍野区阿倍野筋1丁目 (あべの筋)

35.1

3.6

2

 大阪市北区芝田1丁目 (国道176号線)

17.4

0.9

3

 大阪市天王寺区悲田院町 (谷町筋)

10.4

▲2.0

 大阪市北区角田町 (御堂筋)

4.7

0

 神戸市灘区森後町2丁目 (山手幹線)

2.9

0

今後の動向はアベノミクスの実体経済への効果次第!?

大都市圏では路線価は下げ止まり、一部では上昇傾向もみてとれますが、それらは実際のところ一部の都心のみで、郊外に行くとまだまだ上昇傾向はみてとれません。大阪のようにピンポイントで大幅に上昇している地点もあれば、下落基調の続く郊外や地方もあり、二極化が進んでいます。
今年に入ってからは、アベノミクスの期待感から都心部の不動産市場に資金が活性化しているようです。都心部に関しては、今後上昇基調に転じる可能性が高いのですが、その鍵はやはりアベノミクスが実体経済にどれだけ効果を出せるかです。

また、路線価は相続税算出の際の土地評価となるものですが、相続税については路線価の動向以上に平成25年の税制改正が大きな影響を及ぼします。首都圏では、路線価が下落していても、相続税の基礎控除の引き下げにより、相続税対象者が増えるとみられています。
今後、路線価が上昇となるとさらに負担は増すということです。もちろん、一時の資産デフレの状況よりは良い傾向だと思いますが、今後も動向に注意が必要です。

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