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礼金・敷金の最新動向

市場動向

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2015年11月 2日

礼金・敷金の最新動向

礼金や敷金は、年々減少する傾向にあるといいます。礼金も敷金も取らない“ゼロゼロ物件”という言葉も頻繁に見かけます。実態はどうなっているのか、日本賃貸住宅管理協会の『日管協短観』から見ていきます。

礼金・敷金に影響を与えた近年の動向

まず礼金と敷金の意味をおさらいます。
礼金は、文字通りお礼の意味で、戦後の住宅難の時代に入居者が大家に対して謝礼として支払っていた商慣習の名残と言われています。
敷金は、家賃の滞納があったり、故意過失による破損があった場合などの費用を保証するものです。退去時に家賃の滞納や室内の破損があった時には、相当な額を敷金から差し引いて入居者に返還されます。

賃貸市場が売り手市場から買い手市場になってから、空き室対策として礼金・敷金なしのゼロゼロ物件などが登場しはじめました。
特に、敷金に関して大きく影響したのが1998年の国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」、2004年の「東京都の賃貸住宅紛争防止条例(東京ルール)」の施行です。これは、退去時の原状回復トラブルをなくすために施行されたものです。入居者は原状回復義務を負うものの、通常損耗・経年劣化による破損等では原状回復の義務はなく、オーナー負担で原状回復しなければならないというガイドラインを作成、入居者への説明を義務付けました。実際、これにより原状回復トラブルは年々減少しているようです。

そして現在、120年ぶりと言われている民法の大改正が進んでいます。その中に原状回復のルールが盛り込まれました。敷金の定義(原案要約)も次のように定められています。
「家賃など金銭債務を担保する目的で、契約終了時に返還しなければならない」
原状回復についても、内容は前述のガイドラインの内容とほぼ同じです。施行は2018年が目途ということですが、施行されるとガイドラインではなく民法で原状回復のルールが定められることになります。

敷金は民法の改正で定義が明文化される予定。原状回復は通常損耗や経年劣化による破損等はオーナーが行う。

礼金はなくなるのか?

これらの動向がどう影響してくるのか、『日管協短観』からこの数年の礼金・敷金の相場の推移を見ていきたいと思います。『日管協短観』とは、日本賃貸住宅管理協会が上半期と下半期の年2回、賃貸住宅市場の景況感調査をしたものです。今回は、繁忙期となる下半期(10月〜翌年3月)のデータで見ていきます。

礼金の意味合いからすると、礼金はなくなるのではとの意見がこの数年ありますが、減ってはきているものの完全にはなくなってはいません。
2009年からの推移を見ると首都圏ではゆるやかな減少傾向があり、2011年上期からは1カ月を下回っています。2014年下期には0.76カ月まで下がりました。数値は平均ですので小数点で表されていますが、実際にはたいがい2カ月、1カ月、0カ月のいずれかです。グラフの推移を見る限り、礼金ゼロ物件が増加傾向にあるのは確実です。
この傾向を見る限り、いずれ礼金はなくなっていくようにも見えますが、競争力のある物件や新築物件では、礼金2カ月でも十分にニーズがあるようです。礼金の慣習自体が完全になくなってしまうということはないと思われます。

関西圏も同様に減少傾向が見られ、2014年下期は1.33カ月です。
首都圏より関西圏の礼金が高いのは商慣習の違いです。そもそも関西圏では、礼金・敷金制度はなく、保証金による敷引き制度が商慣習としてありました。これは保証金を半年分以上収め、退去時に半分以上を敷引きとして差し引いた金額を返還するというもので、関西圏のほうが、入居時の初期費用が高かったのです。これが2001年に消費者契約法が施行され、この敷引き制度に違反性があるのではと言われはじめたこと、そして、東京ルールが施行されたあたりから、徐々に関西圏でも礼金・敷金制度に切り替わってきています。それでもまだ、敷引き制度の名残で礼金・敷金が首都圏より若干高くなっています。

■礼金の推移(平均月数)

礼金はなくならないものの、首都圏の平均月数は1カ月を下回ったまま微減を続けている。

敷金は全額返還がスタンダードに

敷金は首都圏では徐々に減少する傾向にありますが、関西圏では2014年下期に上昇に転じました。その他のエリアを含む全国平均でも上がっています。2014年下期で、首都圏1.15カ月、関西圏で1.24カ月です。関西圏は、昨年1カ月未満に下がった反動もあって、2014年下期は大きく上昇したように見えます。

東京においては東京ルールが条例化されてから、退去時には敷金を全額返却するのが標準になっています。ただし、クリーニング費用だけは別途もらったり、敷金から差し引いたりしています。結果、敷金は家賃滞納の担保としての意味合いが強く、1カ月に設定することが多くなっているようです。一方、競争力が低下している物件では0カ月に設定していますので、この1カ月と0カ月の割合で、平均値が推移しているようです。

今後は、民法の改正により東京以外のエリアも敷金1カ月で全額返還するのが一般的になっていくと思われます。敷金は滞納家賃や故意過失による破損など、金銭債務を担保する目的がありますので、賃貸管理面からみても全くなくなることは考えにくいでしょう。

■敷金の推移(平均月数)

民法改正の影響もあり、敷金は1カ月、全額返還がスタンダードになりつつある。

今後の動向ー礼金・敷金も家賃相場と同じ二極化傾向に

礼金・敷金ともに平均値で見てきましたが、首都圏と大阪圏の商習慣の違いのように、都府県で商習慣の違いが、まだまだ残っているケースもあります。例えば神奈川県では、さほど東京ルールが浸透していないエリアもあります。

商習慣だけでなく、礼金・敷金には家賃相場と同様にエリアによって相場があり、エリアの相場と物件の条件を照らし合わせて設定されるものです。また、金額的負担を減らして入居してもらいやすくするために、空き室対策として礼金・敷金を下げることもあります。同じエリア内でも、新築物件は2カ月・2カ月だが、築年数が経った物件ほど礼金・敷金を少なくする傾向にあります。
敷金は預り金ですので基本的には返還しますが、礼金は家賃同様、収入になりますので、あるかないかで採算にも関わるでしょう。リフォームや設備投資で競争力を維持し、礼金を取れる状態を長くキープしたいところです。

ただし、実際は礼金・敷金だけではなく、家賃、共益費などのトータルバランスで、どう設定するかを考えることになります。例えば、初期費用となる礼金・敷金を抑えて、家賃と共益費に多少プラスする。または、家賃そのものを抑えて、礼金・敷金はしっかり取るといった考え方があります。このあたりの設定はケースバイケースですので、不動産会社がエリアの相場やニーズを見極めながら設定してきます。最終的には、礼金・敷金の設定は、現場を熟知した不動産会社によく相談するのがよいでしょう。
なお、一括借上げの場合は礼金・敷金はオーナーには直接関係してきませんので、礼金・敷金の相場変動とは関係なく安定した収益が見込めます。

礼金・敷金も家賃相場同様二極化傾向にある。礼金があっても入居者に選ばれ続けるために、リフォームや設備投資で競争力を維持することがポイント。

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