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2020年「路線価」とコロナ禍における地価動向

市場動向

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2020年7月21日

2020年「路線価」とコロナ禍における地価動向

7月1日、国税庁より、相続税・贈与税の土地評価の算定基準となる路線価が発表されました。路線価は、毎年1月1日の評価額であり、今回発表された路線価も、新型コロナウイルスの影響をまだ受けていません。しかし、主要都市は7、8年連続の上昇となりました。コロナ禍の影響が出始めると考えられる、令和2年第1四半期、今年1~3月までの動向も併せて見ていきたいと思います。

主要都府県では7、8年連続上昇するも、コロナ禍の影響が未知数

予想通り、路線価は上昇しました。というのも今回の路線価は2020年1月1日の公示地価がベースになっているからです。まだ、コロナ禍の影響を受ける前です。上昇は全国平均で5年連続、東京都、大阪府は7年連続、愛知県は8年連続の上昇です。

ここまで、連続して公示地価などの指標価格が上昇すると、実勢価格は勢いに乗って指標価格を上回って上昇しているケースが見受けられます。今後、コロナ禍の影響が出始めるとすると、まず実勢価格が公示価格に向かって収束していくことが予想され、すぐには公示地価等が大きく下がることはないという見方もあります。

また地価が下落トレンドの時は、指標価格より実勢価格が低い場合があります。相続税評価は路線価ではなく、実勢価格で評価してもよいことになっていますが、その場合は不動産鑑定士に鑑定してもらうなどの費用と手間がかかります。
国税庁では、コロナ禍の影響で想定外の実勢価格の下落が起こり、路線価を下回るようなことになれば、路線価を補正する方向で検討するとしています。具体的には9月に発表される7月1日時点の基準地価などの状況を踏まえ、今年の1月から概ね20%以上地価が下落した地域があれば検討するとのことです。

■主要都府県の標準宅地の対前年変動率の平均値推移(単位:%)

東京圏の動向-上昇続く。「鳩居堂前」は過去最高更新

東京都の上昇率は5%で大都市圏の中ではトップの上昇率でした。話題の東京銀座「鳩居堂前」は、今年も上昇し、1m2あたり4,592万円で、昨年に続き過去最高を更新しました。グラフを見ても分かるとおり、「鳩居堂前」の路線価は2017年よりバブル期を超えています。価格は35年連続日本一と、象徴的な地点だけに今後の動向が注目されます。

この他、訪日外国人で賑わっていた浅草「雷門通り」が33.9%と大きな上昇を見せています。このエリアのように特にインバウンド需要で地価を押し上げていた観光地が今後どの程度影響が出るのかが懸念されています。
東京国税局内で上昇率トップだったのは、横浜駅西口で、今年6月に開業した「JR横浜タワー」の地点です。このエリアの最高地点は高島屋横浜店でしたが、約40年ぶりに入れ替わりました。

■「鳩居堂前」最高路線価推移

■東京圏の最高路線価上昇率トップ5(1平米あたり)

名古屋圏の動向-上昇に一服感、リニア延期も懸念材料

名古屋圏では愛知県が1.9%上昇し、8年連続の上昇となりましたが、コロナ禍とは別に新たな懸念材料が浮上しています。2027年開業予定だったリニア中央新幹線開通の延期です。まだ先の話とはいえ、名古屋駅西側周辺を中心に、全国で最も早く地価が上昇してきた要因の一つがリニア中央新幹線だっただけに、コロナ禍に加えて不動産市場の停滞が懸念されます。

JR名古屋駅前「名駅通り」の上昇率は昨年の10.4%から13.0%と上昇幅は拡大しました。一方、昨年、上昇率トップだった名古屋三越栄本店前「大津通り」は23.5%から10.4%に、金山地区「新尾頭金山線通り」は21.9%から9.8%と鈍化しています。
依然、栄地区、金山地区では大規模な再開発が進行していますが、地価上昇には一服感が見られます。

■名古屋圏の最高路線価上昇率トップ5(1平米あたり)

大阪圏の動向-インバウンド需要で上昇してきただけに反動に懸念

大阪圏もインバウンド需要の影響で、繁華街を中心に地価上昇を牽引してきました。
2018年には公示価格の最高価格で、ミナミとキタが逆転したと話題になりました。今回の最高路線価では、キタの「阪急うめだ本店前・御堂筋」が2,160万円35.0%上昇、次いでミナミが「戎橋ビル・心斎橋筋」2,152万円で44.6%上昇。ほぼ同じ水準で、上昇率は依然高く推移しています。

これまで、急上昇を続けてきただけにコロナ禍の影響の反動がどの程度なのか懸念されています。特に訪日外国人に関しては、関西国際空港の5月の国際線旅客数は前年同月から99.8%減の4597人と、当分は戻ってこないと思われます。繁華街では飲食店などのテナントがすでに撤退の動きが出始めているといいます。また、利用客がほぼ訪日外国人だった民泊も撤退を始めています。

京都市内も上昇はしているものの、上昇率は前年を下回っています。大阪を含めホテルや民泊などの建設ラッシュで供給過剰感が出始めていましたので、このコロナ禍で地価に下げ圧力がかかることは間違いないといわれています。

■大阪圏の最高路線価上昇率トップ5(1平米あたり)

今後の動向-4月緊急事態宣言以降の地価動向に影響か

国土交通省では、主要都市の高度利用地地価動向報告「地価LOOKレポート」を四半期毎に調査発表しています。現在の最新のものは、令和2年第1四半期 (令和2年1月1日~令和2年4月1日)の動向です。4月7日の緊急事態宣言前の動向になりますが、新型コロナ感染者数がピークを迎えていたころです。

この時点では、地価下落に転じるほどの影響は出ていません。レポートによると「上昇が 73 地区(前回 97)、横ばいが 23 地区(前回3)、下落が4地区(前回0)となり、全体として緩やかな上昇となったが、これまでの傾向に変化が見られた」とのことです。変化としては6%以上の大きな上昇地点が見られなかった(前回4)ということです。
加えて「新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、多くの地区で需要者の様子見など取引の停滞が見られ、地価の上昇傾向が鈍化した。地価動向の変化が大きかった地区では、特にホテル、店舗需要の比重が高く、感染症の影響が大きい」としています。

大きな影響が出始めるとすると、4月以降だと思われます。レポートにあるとおり、まずホテル、店舗の需要が大きく影響するでしょう。また、先頃大手電機メーカーが原則テレワークに移行すると発表しました。このトレンドが増えてくれば、懸念されるのがオフィス需要です。オフィスの賃料や空室率がどの程度変化していくのか、こちらも注目したいところです。

路線価は、賃貸住宅・土地オーナーにとって、将来の相続税の負担に大きく影響するものです。地価や経済状況の変化にうまく対応し、資産管理をしていく必要があります。今後も地価動向、経済動向に注視していきたいと思います。

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