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相続対策としての成年後見制度

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2012年12月 6日

相続対策としての成年後見制度

2000年4月に成年後見制度ができてから12年が経ちますが、内容が難しく、制度のしくみを勘違いしている方も少なくありません。特に相続対策として活用するには注意が必要です。なぜなら、相続対策にはならないケースもあるからです。では、どのように活用すれば良いのか、ポイントを解説します。

そもそも成年後見制度とは?

この夏、厚生労働省は「認知症高齢者の日常生活自立度」レベル2(※)以上の高齢者が、2015年には345万人に達すると発表しました。これは高齢者の10.2%、つまり10人に一人です。初期症状のレベル1や介護認定を受けてない人を含めれば、さらに増えると見てよいでしょう。今や認知症は特別な病気ではなく、身近な病気です。

心配なのが、認知症など判断能力のない高齢者を狙った悪徳商法による犯罪です。そうした犯罪から守るため、成年後見制度が整備されました。大まかにいうと、後見人に選ばれた人が本人に代わって財産の管理や介護サービスの契約などを行う制度です。

成年後見制度には、本人の判断能力がなくなってから利用する「法定後見制度」と元気なうちに利用する「任意後見制度」の2つがあります。

しかし、制度の内容が難しく、まだまだ有効に活用されているとは言えないのが現状です。中には、制度の内容を大きく間違えている方も少なくありません。特に、相続対策に活用しようと考えている場合は注意が必要です。

※日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが多少見られても、誰かが注意すれば自立できる状態。

認知症は身近な病気に。
判断能力がなくなった人に代わって後見人が財産管理等をするのが成年後見制度。

相続対策にはならない法定後見制度!

例えば、相続対策として土地活用を進めている途中で、認知症や脳疾患などで本人の判断能力が失われると、銀行の融資が下りなくなったり、引き渡しの段階で裁判所から許可が下りなくなったりするケースがあります。この場合、法定後見制度を利用すれば、後見人が本人に代わって計画を進められると思っている方も少なくありませんが、それはできません。

本人の財産を保全することが後見人の役割ですから、贈与・寄付、投資、利益相反行為は原則できないことになっています。そして相続対策も、相続人のためのもので本人の利益になることではないので、できなくなってしまうのです。

また、居住用不動産についても、本人が住んでいる、いないに関わらず、売却、賃貸借、抵当権の設定、建物の取り壊しなども、本人にとって具体的な必要性がなければ認められなくなってしまいます。
つまり、本人の意思とは別に、資産がほぼ凍結されることになります。 こうならないために、備えとして事前に活用するのがもう一つの「任意後見制度」です。

判断能力がなくなってから、法定後見制度を利用すると資産は事実上凍結される。

任意後見制度で“万が一”の備えを!

まず「任意後見制度」が「法定後見制度」と違うのは、それを利用する時期です。

「法定後見制度」は本人の判断能力がなくなってから、「任意後見制度」は本人の判断能力があるうちに利用します。そして「法定後見制度」では、事実上資産が凍結してしまうのに対して、「任意後見制度」では、自分で選んだ後見人に、財産の保存・管理・処分について、自分の意思を託すことができるのです。居住用不動産についても、処分の許可を任意後見契約の内容に明記していれば処分ができます。

一般的には契約書に代理権目録を作成して細かい内容を書きます。ここには、財産の管理、相続対策の他に、医療、介護に関わることなどを記載していきます。

後見人には監督人のチェックが入ります。違法性はないか、妥当性はあるかといったことです。例えば、アパート経営を始める際に組むローンの金額が妥当か、といったことです。これには、税理士によるシミュレーションを付けるなどしておけば分かりやすいでしょう。内容に関しては、途中で変更があれば書き換えることもできます。任意後見制度は、将来の“万が一”に備えることのできる制度なのです。

判断能力があるうちに「任意後見制度」で財産管理や相続対策を委任する!

違いを理解し、上手に活用する

任意後見制度では、代理権目録の他に、ライフプランのような将来設計を明確にした書類を作成することも大切です。相続対策として、アパート経営をしてほしいといった具体的な内容を書いておくことで自分の意思を託すことができます。遺言と組み合わせて活用すれば、有効な相続対策になるでしょう。

法定後見制度との違いを表にまとめましたので、上手に活用してください。活用には、弁護士や司法書士などの専門家に依頼すると良いでしょう。

 

成年後見制度

法定後見制度

任意後見制度

利用時期

判断能力が低下した後

判断能力が低下する前

後見人は誰か

裁判所が選ぶ

本人が選ぶ(家族も可)

後見人の指導・監督

裁判所・後見監督による直接的な指導

任意後見監督人を通じた間接的な監督

財産の管理

保全型の管理で、事実上の凍結

任意後見契約書の内容によって本人の意思による活用型の管理が可能

相続対策

原則できない

任意後見契約書に記載されていれば可能

居住不動産処分の許可

本人にとって必要性がなければ認められない

任意後見契約書に記載されていれば可能

選挙権

喪失

継続

印鑑登録

抹消

継続

後見人報酬

裁判所に報酬付与の申し立て

契約による

 

任意後見制度は遺言と合わせると有効な相続対策となる。

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