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今注目の家族信託は相続対策になるか!?

相続

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2015年7月 7日

今注目の家族信託は相続対策になるか!?

相続税の増税により、相続に不安を抱える人が増えています。しかし、超高齢社会では、相続時だけでなく、病気などにより判断能力が低下するリスクにも備えなければなりません。そこで、最近注目されているのが、家族信託という手法です。家族信託とは何か、そのポイントを解説します。

銀行ではなく家族に信託する「家族信託」

そもそも信託とは何か? まずは、基本的な仕組みについて解説します。
信託の仕組みを理解するには、誰がどんな役割を担うかを知ることが大切です。
基本的な信託の仕組みは、以下3人の関係者等と役割からなります。

基本的な信託の仕組み

例えば、Aさん(委託者)に、障がい者の息子C(受益者)さんがいたとします。Aさんには、資産はあるのですが、高齢のため今後の資産管理に不安があります。そこで、Aさんの妹Bさん(受託者)に資産管理を信託し、Bさんは信託契約に従って資産を管理・運用などをしながら、息子Cさんに資産を生活費として少しずつ渡します。
このように、「委託者」が何らかの理由で、信頼できる「受託者」に財産管理を託し、受託者は管理を行い、その資産を契約内容に従い「受益者」が受け取ります。これが信託の基本的な仕組みです。

■信託の仕組み

この場合、財産の所有権は受託者に移転しますが、受託者は自由に財産を管理できるわけではなく、委託者が信託契約などで定めた目的や方法に従って管理しなければなりません。

信託といえば、信託銀行などに資産を管理してもらうことをイメージされると思います。資産を預かり管理する受託者が、信託銀行など事業者の場合を「商事信託」といいます。一般的には、大口資産家が利用するもので、敷居が高いと感じる方も少なくありません。
しかし、信託にはもう一つ、受託者が事業者ではなく、営利を目的としない人がなる「民事信託」があります。そのうち親族などが家族・親族のために資産を管理・承継する手法を総称して「家族信託」と呼ばれています。2007年に新信託法が施行され、活用しやすくなっていたのですが、信託そのものに馴染みがなかったせいか、話題にはなりませんでした。しかし、最近、家族のニーズに合った信託設計が可能だと、注目が集まっています。

信託とは、「委託者」が、信頼できる人や事業者に財産を預け、「受託者」がその財産の管理を行い、その財産は信託契約に従って「受益者」が受け取る仕組み。

家族信託が注目される理由とは?

家族信託が注目されている主な理由は、超高齢社会に見られる長寿化です。相続対策だけでなく、病気によるリスクにも備える必要が出てきたのです。特に心配されているのが認知症です。今年、厚生労働省が発表した推計によると、10年後の2025年には認知症患者が700万人に上り、65歳以上の実に5人に1人が認知症ということになります。
認知症や脳梗塞などで本人の判断能力が低下すると、資産は凍結されてしまい、相続対策も着手しにくくなります。この対策として知られているのが、任意後見制度です。任意後見制度は、本人が元気な内に財産を管理する後見人を選定することができる制度ですが、実際に機能するのは判断能力が低下してからです。財産は裁判所の監督下に置かれ、原則は財産保全が求められますので、現実的には活用しづらい面もあると指摘されています。
家族信託の場合は、信託契約をした時点で受託者による資産の管理・運用が始まりますので、資産の管理や運用状況を見届けることができるのがメリットの一つです。自分が元気な内に、資産が承継できるという安心感があるようです。

また、任意後見制度は本人が生存中に限られ、本人の死亡と同時にその業務は終了しまいますが、家族信託は、本人が死亡した後も効力を持続させることが可能ですので、冒頭の例のように受益者である相続人が財産管理できない場合でも、資産の管理は引き続き受託者が行うことができます。
ただし、受託者には身上監護権がありません。例えば、施設への入居の際、本人に代わって契約手続きを行うことができないのです。その点、任意後見制度には、身上監護権が認められていますので、場合によっては家族信託と任意後見制度を併用して活用することも必要です。

長寿社会では、病気のリスクにも対応する必要がある。家族信託は、自分の生存中から死亡後まで、資産の管理・運用について柔軟に信託内容が設定できるメリットがある。

家族信託をどう活用するか【ケーススタディ】

家族信託の特徴は受益者を設定できるという点です。また一般的な信託は、委託者、受託者、受益者がそれぞれ別人ですが、委託者と受益者が同じ「自益信託」など、組み合わせはさまざまです。受託者や受益者が複数人の場合もあります。このあたりが信託を分かりづらくする仕組みでもあるのですが、これにより、さまざまな活用法が可能となるのです。

では、アパートなど不動産の管理について、家族信託を活用するケースを考えて見ます。

【ケーススタディ】

Aさんは、木造アパートと遊休地を持っています。今後の相続を考えると、いずれはアパートの建て替えや遊休地の土地活用を考えなければなりません。しかし、Aさんは高齢で今後の資産管理や運用に自信がありません。万が一認知症などになれば資産は凍結され、相続対策はできなくなってしまいます。息子への生前贈与も考えましたが、贈与税もかかるし、生活費となるアパートの収益がなくなるのも困ります。それに、自分が元気なうちは資産の状況は把握しておきたいのです。そこでAさん自身が委託者・受益者となり、資産管理を行う受託者を息子とした自益信託型の家族信託を活用することにしました。もちろん、信託内容には「相続対策として不動産の建て替えも認める」や「そのための資金借り入れも認める」など、受託者の権限の範囲を細かく定めました。

■委託者と受益者が同じ自益信託型でアパート等を信託するケース

この場合のメリットをまとめると次のようになります。
1.将来の病気リスクに備えることができる。
将来、認知症などで判断能力が低下しても、資産の管理を信頼できる人に託すことが容易にできる。
2.自分の生存中から死亡後まで、資産の管理について柔軟に設計できる。
信託は、元気なうちから死亡後までの資産承継を決めることができ、その内容は契約によって柔軟に設計できる。一方、成年後見制度は、判断能力が低下してから亡くなるまでで、積極的な資産運用がしにくい。

その他にも、ケースによっては以下のようなメリットがあります。
・不動産の共有化を防ぐ
不動産を複数の相続人が相続する場合、とりあえず共有名義にしてしまうケースがあります。しかし、そうなると不動産を活用する時に全員の同意が必要になるため、活用ができなくなるケースがあります。そこで、家族信託を活用し、受益権を相続人で共有し、管理・運用は受託者に託すことで、この問題を解決することができます。

また、税金に関しては、信託財産の所有権は受託者(Aさんの息子)に移りますが、税制では、受益者が財産を所有していると“みなし”ますので、賃料収益のあるAさんが所得税を支払います。土地・建物の固定資産税も同様です。
仮に、委託者と受益者が違う場合は、受益者に信託財産が移転したと“みなし”、受益者に贈与税が課せられ、その他の税も受益者に課せられます。
家族信託そのものには、節税のメリットはありません。また、将来の建て替えや土地活用の際の融資についても、権利関係が複雑ですので、金融機関の理解も必要となるでしょう。

アパートなどの不動産を、将来の建て替えや土地活用などの相続対策も考慮した上で信託できる。

受託者の見張り役(信託監督人)や信託内容の設計などに注意

家族信託を活用する場合、受託者を誰にするかというのがポイントになります。民事信託の場合、受託者は個人でも法人でも問題ありません。前述のケースなど、家族が受託者になる場合は、外から資産の管理・運用の実態が見えません。そこで、家族信託の内容が正しく実行されているかを監視し監督するための、信託監督人を設定することが大切です。また、受託者を一人ではなく、二人設定することも可能です。そうすれば、お互いが相談しながら財産を管理・運用していくことになりますので、相互のチェック機能が生まれます。

家族信託は、本人が元気なうちに資産の承継をスムーズに行えるというのがメリットです。つまり、資産に関するご自身の想いを次世代に引き継ぐことができるということです。被相続人と相続人が契約を結ぶわけですから、将来の相続がその資産に関しては明確になります。それだけに、相続人全員の理解も必要となってきますので、家族間でしっかり話し合いが必要です。
この他、家族信託には、遺言を使わずに信託の契約で財産分割を決めておく、遺言代用信託もあります。家族信託の活用を機に、遺産分割について生前の内にはっきりとさせておくことができるのです。

家族信託はまだまだ始まったばかりで、設計が自由なだけに、今後さまざまなケースで問題点や課題が発生することも考えられます。信託契約の内容は、ケースバイケースで設計をすることになります。遺言や成年後見制度との組み合わせも考慮しつつ、司法書士、税理士、弁護士などの専門家とよく相談することが必要です。

受託者の監督や信託内容の設計などは専門性が高い。家族信託は、新しい手法でもあるので、専門家と相談して進める必要がある。

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