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相続対策の決め手"小規模宅地等の特例"の活用法

相続

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2015年8月 4日

相続対策の決め手

相続対策の一つに、「財産評価の引き下げ」があります。その中でも、まず活用したいのが「小規模宅地等の特例」です。要件を満たせば、自宅の土地評価が80%も下がるからです。この特例をどう使うかによって、相続税の負担に大きな違いが生まれます。そこで、今回は「小規模宅地等の特例」についてわかりやすく解説するとともに、その活用方法や使えない場合の対応策について考えます。

自宅やアパートの土地の評価が下がる「小規模宅地等の特例」とは?

相続税は、現金での一括納付が基本です。しかし、相続財産が自宅など不動産の場合、相続税が支払えないというケースも少なくなく、仕方なく住み慣れた自宅を売却して納税することにもなりかねません。そんな悲劇がないよう創設されたのが小規模宅地等の特例です。

この特例を使えば自宅の土地評価が80%も下がり、相続税を大幅に減額できます。仮に自宅の土地評価が1億円であっても相続財産の評価額は2,000万円になるということです。配偶者が存命の場合、配偶者控除により、1億6,000万円か法定相続分のうちどちらか多い方までは相続税がかからないため、比較的心配はないのですが、一次相続の後は「小規模宅地等の特例」の効果が大きく現れます。

例えば、相続人が子ども1人で土地評価1億円の自宅を相続する場合、基礎控除の3,600万円(3,000万円+600万円×1人)を引いた6,400万円に対して相続税がかかり、税額は1,220万円になります。「小規模宅地等の特例」を使えば、土地の評価額は2,000万円となり、基礎控除額を下回わるため、相続税を払う必要がありません。特例を使うか使わないかで、これだけ大きな差が出てくるのです。

この特例は、自宅の土地(特定居住用宅地等)だけでなく、お店や工場などを営んでいた事業用の宅地(特定事業用宅地等)や賃貸住宅用の宅地(貸付事業用宅地等)にも適用でき、それぞれに上限面積と減額割合が決められています。
また、複数の土地を相続した場合は、この特例を組み合わせて使うこともできます。居住用と事業用は併用でき、合計で730m2までが減額の対象となります(2015年1月1日以降の相続により適用)。居住用と賃貸住宅用を組み合わせる場合は、適用面積を調整して使うことになります(詳細は後述)。

■3種類の小規模宅地等の特例

宅地等の利用区分

上限面積

減額割合

特定居住用宅地等

330m2

80%

特定事業用宅地等

400m2

80%

貸付事業用宅地等

200m2

50%

併用可能合計730平米まで

※表は左右にスクロールします。

要件に合えば、自宅の土地評価は80%減額できる!
自宅の土地の相続評価に「小規模宅地等の特例」が適用されれば、80%減額される。この他にも、特定事業用宅地等として80%減額、貸付事業用宅地等として50%減額がある。

「小規模宅地等の特例」は要件に注意!自宅に適用できる要件とは?

相続税を大幅に減額できる「小規模宅地等の特例」ですが、自宅の土地に適用させる場合には、その要件に注意しなければなりません。主な要件は次の通りです。

相続人

要件等

(1) 配偶者が相続する場合

なし

(2) 同居している親族が相続する場合
例:同居している子ども

相続開始の時から相続税の申告期限まで、その自宅に居住し、その宅地を所有していること。
二世帯住宅にも適用可能。2014年1月1日以降、建物内部で行き来ができない完全分離型の建物でも土地全体が適用対象になった。

(3) 同居していない親族が相続する場合
例:別居している子ども

相続開始前3年以内に、日本国内に自己所有の家屋、または配偶者の所有する家屋に居住したことがないこと。つまり、持ち家ではなく賃貸住宅に住んでいること。亡くなった被相続人に配偶者がいない、同居している法定相続人である親族が他にいないこと。

(1) 配偶者が相続する場合
なし
(2) 同居している親族が相続する場合
例:同居している子ども
相続開始の時から相続税の申告期限まで、その自宅に居住し、その宅地を所有していること。
二世帯住宅にも適用可能。2014年1月1日以降、建物内部で行き来ができない完全分離型の建物でも土地全体が適用対象になった。
(3) 同居していない親族が相続する場合
例:別居している子ども
相続開始前3年以内に、日本国内に自己所有の家屋、または配偶者の所有する家屋に居住したことがないこと。つまり、持ち家ではなく賃貸住宅に住んでいること。亡くなった被相続人に配偶者がいない、同居している法定相続人である親族が他にいないこと

 

配偶者が相続する場合は問題ありませんが、二次相続で子どもが相続する場合は、同居しているか、別居していても3年以上自宅を持っていない(賃貸住宅に住んでいる)ことが要件になります。
また、親が老人ホーム等に入っていた場合でも、自宅を賃貸住宅として貸していなければ、居住用宅地の80%減額が使えます。

小規模宅地等の特例の要件は厳しく、子どもが相続する場合は、同居しているか、別居でも3年以上自宅を持っておらず賃貸住宅に住んでいることが条件となる。

実家の相続の問題点、特例が使えない場合はどうする?

昨今では、子どもは結婚すると実家を離れ、やがて自分たちで購入した家に住むケースが多いと思います。その場合、要件にあるように「小規模宅地等の特例」は使えません。実は今、相続問題で心配されているのが、このケースです。
特に東京都などの都市部では地価が上昇していますし、税制改正で今年から相続税の基礎控除が減額されました。これにより、実家を相続する時に、これまで相続税とは関係なかった人たちも課税対象となるケースが増えると予想されているのです。

例えば、2015年の東京都区部住宅地の公示地価平均は1m2あたり518,600円です。相続税評価の基準となる路線価がその8割ですので、約41万円となります。自宅の土地が150m2あったとすると、その土地の相続税評価額はおおよそ6,150万円です。
これを子ども一人が相続する場合、実家の土地だけで基礎控除3,600万円を超えますので、相続税が発生します。

では、どう対策すべきか、いくつか対策を考えてみます。想定としては、一次相続後、実家に親一人が住み、子ども世帯が独立しているケースです。

【対策1】二世帯住宅に建て替えて同居する

「小規模宅地等の特例」を受ける要件の基本は、同居していることです。しかし、築年数が経ち、間取りも変えないとなると二世帯同居は難しいかもしれません。そこで、新たに二世帯住宅に建て替えて、子ども世帯と一緒に住むという方法です。
「小規模宅地等の特例」を受ける場合の注意点は登記です。敷地全体に特例を適用させるためには、共有登記にすることです。区分登記にしてしまうと、親の持ち分の土地にしか特例が適用されません。

【対策2】アパート併用の自宅に建て替える

「小規模宅地等の特例」は、自宅の土地だけではなく、賃貸住宅の土地でも使えます。減額割合は50%になりますが、それでも大きな負担減になることは間違いありません。そこで、自宅をアパート併用住宅に建て替えることで、土地の一部が50%減額になります。具体的には、建物のアパートの割合分の土地が50%の減額になります。加えて、その土地は貸家建付地となり、評価額が下がります。

■引き継ぐ相続人がいない実家の対策

これらの対策については、マンスリーレポート「知っておきたい実家の活用法〜空き家になる前に考える〜」でも解説しています。参考にしてください。

子どもが独立して自宅を持っていると、「小規模宅地等の特例」が使えない。特例を活用するには、二世帯住宅か賃貸併用住宅への建て替えの検討が必要。

自宅とアパートの土地、どちらを優先させるか?

先に解説した通り、「小規模宅地等の特例」における宅地の利用区分は3種類で、上限面積の範囲内であれば組み合わせて活用もできます。複数の土地を相続する場合、具体的にどう活用すればよいのかを考えてみます。ポイントは次の2つです。

(1) 評価減が80%の自宅の宅地、または特定事業用宅地等を優先させる。
(2) 土地の評価額(路線価)が高い方を優先させる。

例えば自宅とアパートを持っているケースでシミュレーションしてみます。
・自宅220m2/相続税評価額8,800万円(40万円/m2)
・アパート210m2/相続税評価額8,295万円(50万円/m2)
※貸家建付地評価割合:1−借地権割合70%×借家権割合30%×賃貸割合100%=0.79として計算

自宅を優先すると、8,800万円×80%=7,040万円が減額になります。さらに、上限面積330m2に達していませんので、上限面積に対して余った割合、
1−(220m2÷330m2)=3分の1をアパートの敷地に適用できます。
210m2×3分の1=70m2
70m2×50万円×0.79(貸家建付地)×50%=1,382.5万円。
自宅分と合わせると、8,422.5万円が減額になります。
仮にアパートの敷地を上限面積いっぱいに活用した場合は、200m2×50万円×0.79(貸家建付地)×50%=3,950万円が減額になります。

■自宅とアパートの土地の評価額は1億7,095万円

■自宅とアパートの土地の評価額は1億7,095万円
■小規模宅地等の特例による評価減の比較

自宅分の減額分

アパート分の減額分

減額合計

A 自宅優先の場合

7,040万円

1,382.5万円

8,422.5万円

B アパート優先の場合

0円

3,950万円

3,950万円

※表は左右にスクロールします。

 

このように減額割合の大きい自宅を優先した方が、節税対策になります。ただし、自宅が郊外で地価が安く、アパートが都心の駅前で地価が高い場合は、アパートを優先させた方がよい場合もあります。地価と土地面積の兼ね合いで判断することになるでしょう。この計算は複雑なので、専門家に相談するのがよいでしょう。

土地が複数ある場合は、減額割合の高い自宅を優先するのが原則。ただし、土地評価が高いアパートの土地があればそちらを優先させた方が、節税効果が高い場合がある。

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