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老老相続の問題点とは?

相続

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2016年11月 1日

老老相続の問題点とは?

高齢化社会を迎えた昨今、老老介護の問題がよく話題になりますが、相続においても老老化問題に伴う新たなトラブルが増えているといいます。今回は、老老相続の何が問題なのか、またその対策について考えてみたいと思います。

老老相続が日本経済の成長の障害になっている

高齢者が高齢者を介護する老老介護が、高齢社会の進展とともに問題視されてきました。厚生労働省の調べによると、在宅介護で要介護者と介護者が共に75歳以上の世帯が29%、共に65歳以上の世帯が51.2%もいます。つまり、在宅介護の半数は老老介護なのです。介護者は配偶者の場合もあれば、子どもの場合もあるでしょう。今は様々な介護サービスがあるとはいえ、子どもの場合でも90歳の親を65歳の子どもが介護するケースで考えれば、その生活はかなり厳しいと思われます。

実は、同じことが相続の現場でも起きているのです。財務省がまとめたデータによると、相続発生のとき「年齢80歳以上」の被相続人は、平成元年では38.9%でしたが、平成25年には68.3%になっています。しかもそのうち90歳以上が23.7%です。長寿社会を考えると、被相続人の高齢化は、さらに進むかもしれません。

相続する子どもの年齢を想定すると、被相続人が80歳以上で50代、90歳以上で60代です。これでは、資産を受け継いだ子世代の多くが子育ても終わり、老後の人生を考え始めるころです。そうなると、せっかく受け継いだ資産が消費されず社会に出回らないという社会的問題が考えられます。
住宅購入や子どもの教育費にお金のかかる、30代、40代のうちに資産の移転があれば、資産は積極的に消費され、経済が活性化します。よく企業の内部留保の資金を設備投資などに回して経済を活性化させようと、政府が呼び掛けていますが、個人資産も同じです。日本経済の成長のためには、とても重要なファクターなのです。

■相続税の申告から見た被相続人の年齢の構成比

老老相続の割合が、年々増えている。高齢の子どもが相続しても、使い道が限られお金が社会に回りにくいため、日本経済の成長にとって障害になっているとも言える。

国は早期の資産移転を促す生前贈与の特例を実施

日本経済を活性化するには、相続発生まで資産の移転を待っているわけにいきません。そこで政府は、若い世代に早めに資産が移転されるよう、相続税対策にもなる生前贈与の特例を次々に施行しています。

まず以前からあるものとして、住宅取得資金の贈与に関するものがあります。住宅購入は金額も大きいため、その増減は、日本経済を占う上でも重要なバロメーターになります。住宅取得資金贈与の非課税枠を活用すれば、一度に大きな資産が移転できるでしょう。住宅取得資金贈与については、相続時精算課税制度の中にも非課税枠がありますので、併用すればかなりの金額を非課税で贈与することができます。

そして、平成25年度から創設されたのが「教育資金の一括贈与制度」です。教育資金に関しては、その都度、贈与しても非課税なのですが、一度に1,500万円まで非課税で贈与できるとあって、孫への贈与に活用が進んでいます。利用するには信託銀行等に預け、利用する度に領収書等が必要になるなど、いささか煩雑なのですが、さらになる活用促進に手続きの簡素化が進むかもしれません。
教育資金の一括贈与制度については、バックナンバー「今どきの相続対策ー教育資金ー括贈与制度を活用する」を参考にしてください。

また、平成27年度から創設されたのが「結婚・子育て資金の一括贈与制度」です。受贈者一人あたり1,000万円まで(結婚資金は300万円まで)が非課税になります。
そして、今年からは「ジュニアNISA」制度が創設されました。対象年齢は0歳〜19歳です。年間80万円まで株や投資信託で得た売却益や配当金が非課税になる制度です。ポイントは、投資口座は親権者が管理し、投資資金は原則18歳になるまで引き出すことができないことです。暦年贈与として、ジュニアNISAを活用することも考えられます。

これらの優遇制度は、孫への生前贈与として活用が期待されるものです。相続税対策としても、資産の移転を一世代飛ばすことになる生前贈与は有効でしょう。これらの特例は、期限が決まっており、活用には注意が必要ですが、恒久化されるのではないかとの見方もあります。
相続税対策としては、国が経済活性化のために行っているこれらの制度をいかにうまく活用し、有効な資産の移転を考えるかがポイントとなってきます。
様々な相続対策としての生前贈与は、バックナンバー「相続対策の選択肢が増えた"かしこい贈与"」「これからの生前贈与(相続税対策)のポイント」でも解説しています。

■様々な生前贈与の特例措置

経済の活性化のため、早めに若い世代に資金を移転させる贈与は、税務上の優遇措置が多数用意されている。うまく活用すること。

2025年、高齢者の5人に1人は認知症。

老老介護の最悪のケースが、認知症患者が認知症患者を介護するという「認認介護」に進展することです。認認介護の実態把握は難しいのですが、認知症の人と家族の会では、80歳頃の老老介護世帯の11組に1組が認認介護ではないかと試算しているようです。

このリスクは、相続にももちろんあてはまります。長寿・高齢社会での相続対策は、相続発生時の対策だけでなく、被相続人の意思能力が衰える前に対策を講じておくことが重要となるのです。
今「2025年問題」が懸念されています。団塊の世代が2025年頃までに後期高齢者(75歳以上)に達することにより、介護・医療費等社会保障費の急増が懸念される問題です。厚生労働省の推計によれば、2025年には認知症患者数は700万人前後に達し、65歳以上の高齢者の約5人に1人を占める見込みです。認知症は、とても身近な病気なのです。
老老相続の推計で見たように、被相続人、そして相続人が配偶者、子どものどちらでも、認認相続の可能性が十分にあるということです。

被相続人の意思能力がなくなると、資産は事実上凍結され、遺言も残せません。相続発生時に、遺言の作成時の意思能力の有無が問題になることもあります。もちろんその時に認知症だったことが判明すれば、その遺言は無効になります。つまり、相続対策は、被相続人の意思能力がなくなってからでは手遅れなのです。そして、それは、予兆もなく急にやってくることを覚悟しなければなりません。

老老相続の問題点は、被相続人、相続人共に認知症になるリスクがあること。認知症になると相続対策は難しいため、早めの対策が必要。

家族信託、遺言信託、土地活用など早めの対策を

老老相続の本格化が近づく中、注目されているのが「家族信託」です。家族信託は、依頼する「委託者」、資産の利益を受ける「受益者」、資産の管理・運用を託す「受託者」から成ります。家族や親族など信頼できる人を「受託者」として選任することができます。また、委託者が死亡した後でも効力を持続させることが可能ですので、受益者である相続人が財産管理できない場合でも、資産の管理は引き続き受託者が行うことができます。
老老相続の場合、被相続人だけではなく、相続人の配偶者も認知症の場合があります。その場合は、「家族信託」で資産の管理・運用を託す「受託者」に子どもを決めておくことで、配偶者の生計維持や二次相続まで含めた対策が可能になります。
詳しくはバックナンバー「今注目の家族信託は相続対策になるか!?」をご参照ください。
家族信託はまだ始まったばかりで、設計が自由なだけに、今後様々なケースで問題や課題が発生することも考えられます。信託契約の内容は、ケースバイケースで設計をすることになります。遺言や成年後見制度との組み合わせも考慮しつつ、司法書士、税理士、弁護士などの専門家とよく相談することが必要です。

この他、前述の生前贈与や土地活用などの相続対策は早めに計画することが必要です。これらの対策や計画の検討・実施には、気力や体力が必要です。そういう意味においても、心身共に元気なうちに着手することをおすすめします。

■委託者と受益者が同じ自益信託型でアパート等を信託するケース

老老相続への対策として、家族信託が注目されている。制度が新しいだけに、専門家によく相談することが必要。

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