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地価上昇で気をつけたい! 土地の相続税評価

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2023年7月 6日

地価上昇で気をつけたい! 土地の相続税評価

路線価が発表され、地価上昇が鮮明となりました。土地オーナーにとっては資産価値が高まり、資産運用の上ではメリットがありますが、気をつけなければならない点もあります。それは相続税の負担が大きくなるということです。路線価は、相続税や贈与税の土地評価をするために用いられる指標です。今回は地価上昇局面で気をつけたい土地の相続税評価について解説します。

時価との乖離が大きいと路線価が否定されることも

相続税を計算する上で土地の評価方法には「路線価方式」と「倍率方式」があります。都市部など多くの場合は路線価方式で評価するのですが、地方の郡部地域や市街化調整区域などで路線価が付されていない土地については倍率方式で評価する場合があります。

税法上では土地の評価は「時価により評価する」と定められているのですが、実勢価格を調べるのには労力も費用もかかりますし、評価する人によって評価にばらつきがあることを踏まえ、国税庁では課税の公平性を図る観点から、路線価を設定しています。
路線価は公示地価(実際の取引価格に近い価格)の80%を目安に算出されますので、それだけでも土地の評価を下げることになり、多くの場合、路線価を活用していると思います。しかし、これも絶対ではありませんので注意が必要です。
公示地価は実勢価格に近づくように設定されていますが、土地の上昇局面では公示地価が追いつかず、実勢価格と乖離が大きくなってしまうこともあります。

■地価の比較

■地価の比較

2022年路線価による相続税評価が否認された最高裁の判決が下り、大きな注目を集めました。
相続人は相続した2棟のマンションを路線価により約3億3,400万円と評価したのですが、国税局はこの評価が著しく不適当とし、不動産鑑定評価をしたところ路線価の4倍の約12億7,300万円だとし、これが認められました。問題は評価そのものというよりは、このマンションがあからさまな相続税の節税対策に用いられたという点です。

この判決から言えることは、節税だけを目的とした場合は、形式的な基準を満たしたとしても路線価による評価が否認される可能性があるということです。
不動産投資をする場合は、節税目的だけではなく、遺産分割や資産運用の一環として行うことを明確にすることが大切です。事前に専門家に「著しく不適当」とみなされる可能性がないか、相談することをおすすめします。

相続税算出のための土地評価は路線価となっているが、行き過ぎた節税対策が疑われると否認されることもあるので注意。

相続税評価額と遺産分割での不動産評価の違いに注意

不動産の相続税については、土地は路線価、建物は固定資産税の評価額を使い算出します。
ただし、遺産分割においては、その相続税評価額で考えればよいかというと、そうではありません。
土地の相続税評価は、実勢価格の8割である路線価を元に算出した上に、土地の利用状況によっては貸家建付地としての評価、小規模宅地としての評価など、特例が適用されるとさらに評価を下げることができます。昨今のように地価の上昇局面では、実勢価格との乖離がもっと大きくなる可能性があります。

相続税評価額を元に遺産分割協議をして、相続人全員が納得をすれば問題はありませんが、賃貸住宅など収益不動産がある場合は、なかなかそうはいかないでしょう。不動産を相続する相続人は、できるだけ低く評価したいでしょうし、不動産の代わりに代償金を支払ってもらう相続人はできるだけ高く評価してほしいと思うでしょう。

仮に遺産分割協議が合意に至らず裁判となった場合、裁判所は実勢価格で判断するようです。
実勢価格の求め方としては、まず不動産会社に査定してもらう方法があります。無料査定してもらえますので、数社に頼むのもよいでしょう。それで合意に至らない場合は、不動産鑑定士による鑑定があります。有料ですが、最も信頼できるものとなります。
賃貸住宅などの収益不動産の場合は、賃料収入も踏まえた査定をする必要がありますので、そこをどうプラスするかの判断になるでしょう。

■不動産評価の違い

不動産評価は、相続税評価と遺産分割のためでは違う。遺産分割協議の場合は実勢価格で評価し、賃貸住宅などの収益不動産の場合は、賃料収入も踏まえた評価が必要になる。

建物で土地の相続税評価は大きく変わる

土地の相続税評価は、その土地の活用状況で大きく変わります。
更地や自分で駐車場を運営している場合は、自用地として土地評価は高くなります。駐車場の場合、コインパーキングなどの運営会社に土地を貸している場合は、貸地となりますので、自用地評価額から賃借権の価額を引いて評価額を算出します。賃借権の価額は、賃借権の残存期間に応じた割合、5年以下で2.5%、15年を超えると10%などが決まっています。

自宅の土地の場合は、配偶者や子どもが自宅を相続して住み続ければ小規模宅地等の特例が使えて80%減となりますが、要件が厳しく、特に二次相続で子どもが相続して自宅に住まない場合は自用地の評価になります。小規模宅地等の特例が使えるかどうかは、大きなポイントです。

土地の資産価値を高め、かつ相続税評価額を下げる有効な方法に、賃貸住宅の建設があります。その土地は「貸家建付地」となり、更地の評価額から借地権割合と借家権割合(全国一律30%)をかけた分を引いて算出します。
仮に土地の評価額が1億円で、借地権割合70%、借家権割合30%の場合、借地権の土地評価額は7900万になります。

■賃貸住宅が建っている場合の土地評価(貸家建付地)

土地の相続税評価額は、その土地の利用状況で大きく変わる。賃貸住宅が建っている場合の土地評価は貸家建付地となり、借地権割合×借家権割合の分だけ減額となる。

貸家建付地で相続税評価を引き下げる

では具体的に賃貸住宅を建てた場合、どの程度、評価が減額され、資産全体で効果があるのかをシミュレーションしてみます。
評価額1億円の更地があるとします。更地のままだと評価額は1億円です。その更地に建築費1億円の賃貸住宅を全額ローンで建設します。

[例]更地評価額1億円、借地権割合70%、借家権割合30%の土地に、1億円(全額ローン)で賃貸住宅を建設

この場合、資産全体で見ると評価額1億円の資産(更地)が、2,100万円に圧縮され、7,900万円の資産圧縮効果が生まれたことになります。また、建設後は賃貸住宅の家賃収入を得られますので、資産運用としても大きなメリットがあります。
なお賃貸住宅をローンではなく、現金1億円で建てたとしても効果は同じです。年齢や資産の状況に応じて、資金については検討するのがよいでしょう。

また、二次相続で自宅に小規模宅地等の特例が使えない場合は、この土地で小規模宅地等の特例が使えます。貸付事業用宅地となるので、200㎡までの敷地の評価が50%減になります。上記のシミュレーションの場合、土地の評価額7,900万円がさらに50%減で3,950万円になります。

賃貸住宅による土地活用は、相続税評価圧縮する効果とともに、資産運用としても大きなメリットがある。

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