賃貸アパートの入居者ニーズも二極化が進み、低家賃を求める一方で分譲マンション並みのグレードを求める入居者もいます。今回は2011年度賃貸入居者調査(リクルート)から、最新の入居者ニーズの動向を見てみます。これまで、見られなかった新たなニーズも浮上していますので注目です！
ネットで部屋探し！不動産会社の役割は？
今やアパートの部屋探しは、ネットで行うのが当たり前。ネットで検討するというよりは、むしろネットで決めてしまう傾向が年々強くなっています。その傾向を裏付けるデータが、不動産会社への訪問数。平均では、調査以来最低の1.9店舗。単身者の52.5％が1店舗と回答しています。また、部屋探しの期間(探し始めてから契約までの期間)も平均23.5日、4割が10日未満と短期化が進んでいます。
ネットでは、物件情報に加えて街の情報などの周辺環境もリアルに入手できます。かつて不動産会社は、ネットはあくまで集客のためで、決めるのは営業マンとの交渉次第と言っていましたが、もはや、サイトが営業マンの代わりを務めていると言えるでしょう。
オーナーとしては、不動産会社の客付け能力を見極める際には、サイトの充実度も十分検討する必要があります。とはいえ、全体では「PCサイトで探す」が70.3％、「直接不動産会社を訪問」も40.7％(複数回答)と、営業マンの力量が試される場面もまだまだあります。
不動産会社の客付け能力は、サイトの充実度も影響する。
震災の影響か、耐震性ニーズが急上昇！
東日本大震災以降、住まいに対するニーズが大きく変わりました。その一つが耐震性です。賃貸アパートでもその傾向は現れているようです。
部屋探しの重視項目は、１位「家賃」、２位「路線・駅やエリア」、３位「駅からの時間」と定番のニーズが続き、順位もこの3年変わりません。一方、「構造〈耐震性・耐火性など〉」のニーズが昨年の13.8％に比べ、17.7％と、他の項目より大きな伸びを見せています。合わせて通勤・通学時間も50.1％から54.1％と伸びています。これも災害時の帰宅を考慮した現れかもしれません。
耐震性については、不動産会社も最近入居者によく聞かれることが多い、と言います。募集の際は、耐震性もしっかりとアピールしたいところです。
世帯別には学生が「通勤・通学時間」、女性社会人では、「設備・仕様〈キッチン・お風呂・トイレ〉」「最寄り駅からの時間」「路線・駅やエリア」「セキュリティ」の重視率が高い傾向があります。
募集の際は耐震性もしっかりアピールする。
宅配BOXに見る、最新宅配事情！
ネットショッピングが普及した昨今、問題なのがその受け取り。そこで、便利な設備が宅配BOX。「使ったことはないが、次に引っ越す時はほしい設備」の問いに、1位「太陽光発電などの省エネ機器」、２位「宅配ボックス」、３位「床暖房」と上位にランキングされています。
旭化成ホームズでは、（株）フルタイムシステムとネットスーパーとの業務提携により、宅配の利便性をさらに追求した新宅配ＢＯＸシステム「ゆとりふる」を共同開発しました。これは、宅配BOXとネットスーパーを連携させ、生鮮食品などの食材も宅配できるシステムです。しかも、「食材配達お知らせメールサービス」があるため、外出中でも、食材が届いたことが分かります。今や、スーパーの買い物もネットで注文する時代なのです。
シングル、ワーキングカップル、子どもが生まれたばかりの夫婦など、買い物の時間がない、お米や水などが重くて負担になるなどの「都会に暮らす忙しい現代人」のニーズに応え、賃貸マンションの付加価値を高めます。現在、東京都目黒区で賃貸業界初のこの新宅配BOXシステム付き賃貸マンションが、建設中です（2013年3月竣工予定）。
スーパーの生鮮食材も受け取れる、新宅配ＢＯＸシステム登場！
今、注目のカスタマイズとは？
“釘やフック等の取り付けは禁止”。これが、今までの賃貸アパートでの常識でした。では、入居者はいったいどう思っているのでしょうか？
“原状回復しなくてよいならやってみたいカスタマイズ”について聞いたところ、１位「壁に棚板をつける」、２位「照明を好みのものに変える」、３位「壁にフック、コートハンガーを取り付ける」となりました。その他、「部屋のサイズに合う作り付け収納をつける」「収納内部仕様を変える」などがあり、壁に収納設備を取り付けたいという希望が多く見られました。入居者のカスタマイズ意識が、潜在ニーズとしてあることが分かります。
最近ではこのニーズを満たすため、新規の入居者が壁紙、飾り棚、床材などを入居前に選べる物件も出てきました。かつては、築30年以上の木造アパートなどでよく見られたカスタマイズですが、今は空き室対策としてカスタマイズを積極的に取り入れる物件もあるようです。
壁紙、飾り棚など入居者が選べる物件が人気。
