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アパート経営における青色申告の節税メリットの活用

税務・確定申告

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2015年2月 3日

アパート経営における青色申告の節税メリットの活用

今年も確定申告の時期がやってきました。準備は進んでいるでしょうか。アパート経営には、様々な税制優遇制度がありますが、自分に適用されるのか、節税効果があるのかどうか分からないと、制度を活用せずに確定申告しているケースも少なくありません。税制をよく理解し、活用することで、驚くほどの税制メリットが期待できることがあります。今回は、あらためてアパート経営の節税効果について解説します。

必要経費が65万円増えると、いくらの節税効果があるのか?

65万円と聞いて、ピンときた方はすでに税制を理解して活用していることでしょう。青色申告の対象者に与えられる所得控除に「青色申告特別控除」という税制優遇制度があります。その控除額が65万円なのです。
アパート経営の場合は、事業的規模の場合に限られます。事業的規模とは、概ね5棟もしくは10室以上の規模でアパート経営を行っている場合です。また、事業的規模でなくても青色申告特別控除は10万円が認められます。
これは青色申告の大きなメリットの一つであり、青色申告を勧める理由がここにあります。

しかし、この所得控除が65万円あるということが、具体的にどのような節税効果をもたらすのか、よく分からない方もいらっしゃることでしょう。所得控除とは文字通り、所得(収入−必要経費)から控除、つまり差し引くことができるものです。いわば必要経費と同じ節税効果があるということになります。

■節税効果シミュレーション

所得税は累進課税となっていて、所得が増えれば増えるほど税率が高くなる仕組みになっています。詳しい税率は下の表をご覧ください。今年から、最高税率が上がり、その区分が新設されています。
この税率の見方を説明します。例えば所得が400万円の場合は税率が20%になっています。しかし、全てに20%の税率がかかるわけではありません。195万円以下の部分に5%の税率がかかり、195万円超〜330万円以下の部分に10%、それを超えた70万円に20%がかかるのです。これを計算すると次のようになります。
195万円× 5%=9万7500円
135万円×10%=13万5000円
70万円×20%=14万円
合計37万2500円
この計算を簡単にするためには、国税庁のホームページにも載っている「控除額」を使用します。所得総額に該当する税率を一旦掛け、控除額を差し引けばよいのです。
上記の所得が400万円の場合は、次のようになります。
400万円×20%−42万7500円(控除額)=37万2500円

■所得税の税率と控除額(平成27年分以降)

課税される所得金額

税率

控除額

195万円以下の部分

5%

0円

195万円超〜330万円以下の部分

10%

9万7500円

330万円超〜695万円以下の部分

20%

42万7500円

695万円超〜900万円以下の部分

23%

63万6000円

900万円超〜1,800万円以下の部分

33%

153万6000円

1,800万円超〜4,000万円以下の部分

40%

279万6000円

4,000万円超の部分

45%

479万6000円

 

では、青色申告特別控除65万円の節税効果を必要経費が65万円増えたとしてシミュレーションしてみましょう。
所得が195万円以下の場合は、最低税率5%がかかりますので、
65万円×5%=3万2500円の所得税が節税できることになります。
この他に住民税があります。住民税も所得に対して税金がかかり、税率は一律10%です(所得割)。加えて「均等割」といって一律4000円かかります。つまり、65万円×10%=6万5000円+4000円=6万9000円の住民税が節税できることになり、合わせると、10万1500円です。これだけでも、大きな節税効果があることが分かります。これ以外に所得にかかる税金は、復興税、健康保険、個人事業税があり、さらに節税効果は大きくなります。

■所得税率が5%の場合の所得税と住民税の節税効果

上記は、所得税が最低税率の5%ですが、所得が上がると税率も高くなるのに伴い、節税効果も大きくなります。

しかし、この青色申告特別控除65万円を受けるには、超えなければならないハードルがあります。
それは、複式簿記により帳簿を作成し、確定申告書に貸借対照表と損益決算書を添付することです。簿記の知識がない人にとっては、高いハードルに見えますが、例えば1万円程度の会計ソフトを使えば、簿記の知識がさほどなくても割合簡単に必要書類を作ることができます。

事業的規模の場合、申告の書類が必要となるが、青色申告特別控除の65万円を適用させることで節税効果がある。

専従者給与はいくら払えて、どんな節税効果があるのか?

もう一つの青色申告のメリットの一つに、青色事業専従者給与があります。これも青色申告特別控除の場合と同様に、事業的規模の場合に限られます。青色申告者と生計を一にする親子や夫婦など親族が事業に従事している時に、その家族従業員に給与を支払うことができますが、ほとんどのケースは配偶者に給与を支払う形になると思います。
これは、一般的にいうと、所得の分散効果を期待する節税方法です。先ほども説明したように、所得税は累進課税で、所得が増えれば増えるほど、負担が大きくなります。大きくなった負担は、所得を家族などに移転することで、その分節税できるというものです。

大規模なアパート経営の場合は、個人事業ではなく法人化して経営を行う方法がありますが、その一番のメリットは所得の分散です。法人化すれば、家族を従業員にして給与を払うことで、結果的に所得の税率を低くすることができます。青色事業専従者給与もイメージとしては同じです。

■所得分散のイメージ

青色事業専従者給与は、支払った分がすべて所得から差し引けます。つまり、その分必要経費が増えたのと同じことになりますが、注意したいのは、給与なのでもらった方に所得税・住民税などの税金が課せられる場合があるということです。
では、いくらの給与から所得税や住民税がかかるのか?ですが、よくパートの103万円の壁といいますが、これは所得税がかからない限度額を指します。つまり、103万円までは所得税がかからないのです。住民税は自治体によって変わりますが、およそ100万円まで税金がかかりません。

そして、もう一つの注意点。仮に100万円を専従者給与として支払った場合、全額100万円分が必要経費となりますが、節税効果は100万円分ではありません。
配偶者の場合は、配偶者控除38万円がありますが、青色事業専従者給与を支払うとその対象から外れてしまいます。つまり、節税効果としては、100万円−38万円=62万円です。逆に年間の専従者給与が38万円以下だと、節税効果はなくなるということになります。

ここで、注目しておきたい税制改正の検討課題があります。それは、配偶者控除の廃止です。これが決定すれば、青色事業専従者給与の節税メリットが大きくなりますので、来年度以降の税制改正にも注目しておきましょう。

■専従者給与と配偶者控除

 

■専従者給与の支払額はどう決めればよいか?

専従者給与を支払う際に、気をつけておきたい点がいくつかあります。
まずは、いくら支払うかです。専従者給与の支払額に関しては、限度額は規定されていません。労働実態に妥当性があれば、いくらでも構わないということです。ただし、税務署は、その労働実態を厳しくチェックします。

特に、一括借上げの場合、経営実務はほとんどありません。物件の外構の清掃や経理業務にとどまるでしょう。その場合は、一般的な労働の賃金と比べて高すぎると税務署から指摘される可能性が大きいので注意しましょう。

また、月々の給与を8万8000円以上支払うと、源泉徴収をしなければなりません。これは、一般の会社が社員に対して、税金を差し引いて給与を支払っているのと同じことです。先に所得税を国に納めるのです。徴収した税金は金融機関等を通じて、原則毎月納めます。そして、年末に精算して払いすぎた税金は、年末調整で申告して還付されます。
この経理業務は、いささか面倒です。慣れていない場合は、税理士に依頼したほうがよいでしょう。

青色事業専従者給与は支払った分が全て必要経費となる。
ただし、配偶者控除との併用はできない。
配偶者控除は、廃止が検討されているので今後の税制改正に注意。

設備投資は少額減価償却制度の活用がおすすめ

設備投資は、減価償却の対象となります。しかし、金額によって次のような償却方法があります。

■10万円未満の設備投資
一括して必要経費に算入できます。
■20万円未満の設備投資
取得費用が10万円〜20万円未満の場合は、定額法や定率法でなく、3年間で均等割して必要経費に計上することができます。
■青色申告の少額減価償却資産は30万円まで一括償却
青色申告をしている場合は、30万円まで一括して必要経費に計上できます。但し、年間の合計が300万円と限度額が決められています。例えば、30万円の設備なら、10個が限度ということです。
この範囲内なら、専用部分の様々な設備投資に対応できるでしょう。これも青色申告のメリットです。
この制度には期限があり、平成28年3月31日までとなっています。

設備投資の場合は、青色申告特別控除や専従者給与と違って、支出を伴います。仮に所得税率が40%の場合は、住民税10%と合わせて50%の節税効果があります。つまり年間100万円の設備投資をしても、必要経費で50万円を税額から控除できるため、結果的に半額の50万円でできたということになります。これは、投資効率としてはかなり良いほうでしょう。ただし、むやみに行うのは採算面で効率が悪くなりますので注意が必要です。
設備投資は、あくまで競争力強化のための投資と考えたほうがよいでしょう。

最後に、今年の確定申告期間は、2月16日(月)〜3月16日(月)です。期間終了間際は、税務署が大変混み合いますので、税務署に相談のある方は早めの申告をお勧めします。

青色申告の少額減価償却資産制度を活用すれば、1個30万円、年間合計300万円までの設備投資が一括で必要経費に計上できる。

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