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アパート経営の節税対策-専従者給与編

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2015年5月12日

アパート経営の節税対策-専従者給与編

アパート経営には、さまざまな節税ノウハウがあります。その一つが、家族に給与を支払うという方法です。支払った給与は必要経費となりますので、その分節税効果が期待できます。ただし、条件などいくつかの注意点があります。節税ポイントと注意点を解説します。

家族に給与を払うと、大きな節税メリットがある

節税対策の一つに、家族に給与を支払うことで、所得税などを抑える方法があります。所得を分け合うことで所得税率が下がる「所得の分散効果」が得られるのです。

所得税は課税所得が増えるに従い、税率も高くなっていく累進課税になっています(下表参照)。控除額とは、所得税を計算する際に用いるものです。

■所得税の速算表・税率と控除額(平成27年分以降)

課税される所得金額

税率

控除額

 195万円以下

5%

0円 

 195万円超〜330万円以下

10%

9万7,500円 

 330万円超〜695万円以下

20%

42万7,500円 

 695万円超〜900万円以下

23%

63万6,000円 

 900万円超〜1,800万円以下

33%

153万6,000円 

 1,800万円超〜4,000万円以下

40%

279万6,000円 

 4,000万円超

45%

479万6,000円 

注:今年から最高税率が45%に増税されました。

仮にアパート経営の課税所得が500万円の場合は次のように計算します。

(A)課税所得500万円×税率20% − 控除額42万7,500円=所得税57万2,500円


給与を受け取る方には給与所得控除と基礎控除があります。給与所得控除の額は給与の支払額によって変わりますが、最低で65万円の控除があります。さらに、誰でも控除を受けられる基礎控除38万円と合わせると103万円になります。つまり、給与をもらう人は103万円までは所得税が無税、103万円を超えると所得税が発生するのです。よく話題になる「パート収入の103万円の壁」とは、このことを指しています。

仮に、先ほどの課税所得500万円で専従者給与として100万円を支払った場合は、必要経費として差し引けるので、以下のようになります。

(B)課税所得500万円 − 専従者給与100万円=課税所得400万円
   課税所得400万円×税率20% − 控除額42万7,500円=所得税37万2500円


専従者給与を支払わない場合との差額は、(A) 57万2,500円 − (B) 37万2,500円=20万円となり、20万円の節税になります(※配偶者控除は考慮していません)。
100万円の給与をもらった方には税金はかかりませんので、この場合は100万円の必要経費が増えたと考えることができます。しかも、所得税だけでなく、その100万円にかかるはずだった10%の住民税なども節税できることになります。

課税所得が1,000万円を超えるような場合、法人を作ることがよくありますが、これも所得分散による節税メリットを期待してのことです。

家族に給与を支払うことで、所得が分散でき、節税のメリットがある。給与をもらう側も103万円までは、所得税はかからない。

家族に支払った給与を必要経費にできる「青色事業専従者給与」

前述の例のように、個人事業主の場合、「青色事業専従者給与」の条件を満たせば、家族に支払った給与を必要経費とすることが可能です。
アパート経営の場合は、確定申告で青色申告を選択し、事業的規模(原則、5棟10室の規模)の場合に活用できる制度です。配偶者もしくは子どもに給与を支払うことができますが、正確には次の条件を満たしている必要があります。

(1) 青色申告者と生計を一にする配偶者、その他の親族であること。
(2) その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること。
(3) 年間6カ月を超える期間 (開業年度などで1年に満たない事業期間であれば、その期間の2分の1を超える期間)、その青色申告者の営む事業に専ら従事していること。


特に、(3) については注意が必要です。専従者という名の通り、アパート経営に専従していなければなりません。他に本業がある人は、もちろん専従者にはなれません。また、他のパート・アルバイトとかけ持ちできるかも、よく問題になりますが、原則できないと考えた方が良いでしょう。多少は許されるケースもあるようですが、その場合は、税理士や税務署に確認した方が良いでしよう。

もう一つ注意したいのが、月額の給与が8万8,000円以上の場合は、源泉徴収をしなければならないということ。源泉徴収とは、給与・報酬などの支払者が、給与・報酬などを支払う際にそれから所得税などを差し引いて国などに納付する制度です。アパート経営では、オーナーが妻に専従者給与を支払う場合に、源泉徴収を差し引いた分の給与を支払い、徴収した税金を納税するということになります。
毎月、納税しなくてはいけませんが、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出すれば、年2回まとめて納税することができます。
この業務は、経理業務に慣れていないと少し難しいので、源泉徴収しなければならないような給与額を考えている場合は、税理士に依頼した方が良いでしょう。

また、青色事業専従者給与を支払うには、届出が必要です。期限は、給与を支払うその年の3月15日まで。1月16日以降に開業した場合は、開業した日から2カ月以内です。

青色事業専従者給与を支払う場合は、その条件に注意。給与を受け取る専従者は、アパート経営に専従する必要がある。

給料は、いくら支払えばよいか?

では、いくらの給与を支払えばよいのか? これもよくある質問です。青色事業専従者給与の届出にも、いくら支払う予定かを明記しなければなりません。
支払う金額は、妥当な労働の対価であれば、いくらでもかまいません。
妥当な対価かどうかは、その地域での相場と照らし合わせる方法があります。例えば、清掃を頼んだ場合、相場が時給1,000円だとしたら、時給3,000円は妥当とは言えないかもしれません。適性でない高額な給与を支払うと、否認されてしまいます。

特に、一括借り上げをしている場合は、日常的な業務はほとんどありません。帳簿整理などの経理業務と建物周辺の見回りや簡単な掃除(これも基本的には管理会社が行います)くらいです。帳簿付けは、一括借り上げの場合は収入が1カ所でシンプルなので、一月分の帳簿付けをまとめてやってもさほど時間はかかりません。つまり、一括借り上げで月に数十万円の給与は、他にさしたる労働がない限りは、否認される可能性が高いでしょう。

次に節税の観点から見てみます。
給与を受ける方は、年間100万円を超えると住民税、103万円を超えると所得税が発生し、さらには130万円を超えると自分で健康保険に入らなければなりません。これを一つの目安にするとよいでしょう。
また、青色事業専従者給与を配偶者に支払うと、配偶者控除の38万円が受けられません。つまり、配偶者に給与を年間100万円支払った場合の節税効果は、100万円 − 38万円=62万円の必要経費計上と同じことになります。逆に38万円より低い給与では、配偶者控除を受ける方が得になりますので注意してください。
ただし、配偶者控除については、廃止の議論も出ています。そうなると青色事業専従者給与の節税効果もより高くなりますので、今後に注目したいところです。

青色事業専従者給与の支払額は、労働の対価として高すぎると認められないこともあるので、給与を受け取る方の住民税、所得税などと勘案して見極めることも大切。

白色申告では「専従者控除」の制度

白色申告でも、青色事業専従者給与に似た制度があります。こちらは「専従者控除」と言い、控除の一つという捉え方をします。確定申告の時に、控除欄に記入します。節税効果は、必要経費が増えるのと同じことです。
専従者にとっては、もちろん収入になりますので、注意してください。また、青色事業専従者給与と同じで、給与を支払うと配偶者控除や扶養控除の対象から外れてしまいます。

条件は、次の3つです。
(1) 白色申告者と生計を一にする配偶者、その他の親族であること。
(2) その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること。
(3) 年間6カ月を超える期間、その白色申告者の営む事業に専ら従事していること。年の途中から従事しても6カ月間を超えなければなりません(ここは、青色申告よりも条件が厳しくなっています)。

青色事業専従者給与と大きく違うのは、支払額に限度があるということです。
具体的には、以下の2つの条件の低い方の金額となります。
(1) 事業専従者が、事業主の配偶者なら86万円、配偶者以外なら専従者一人につき50万円。
(2) この控除を行う前の事業所得等の金額を専従者の数に1を足した数で割った金額。


専従者控除額のシミュレーションをしてみます。
収入300万円 経費150万円 専従者が配偶者の場合
300万円 − 150万円 = 150万円(事業所得)
150万円 ÷ (1 + 1) = 75万円
この場合の専従者控除額は最高額の86万円よりも低い75万円になります。上記の計算で86万円以上になる場合は86万円まで認められます。

注意点は、青色事業専従者給与と同じように、給与が労働の対価として妥当かどうか、節税の観点からいくら払えばよいかなどを考慮して支払うことです。また、専従者控除の場合、届出は必要ありません。

白色申告の場合は「専従者控除」という制度がある。節税効果は青色事業専従者給与と同様であるが、配偶者86万円、配偶者以外は50万円の上限額がある。

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