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平成28年度税制改正のポイント

税務・確定申告

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2016年1月 5日

平成28年度税制改正のポイント

昨年12月、平成28年度税制改正大綱が発表されました。今回は、法人実効税率20%台への引き下げと平成29年4月からの消費税10%への引き上げに伴う軽減税率導入が大きな話題となりました。アパート経営に関する改正としては、建物附属設備の減価償却方法が定額法に一本化されることや、期限切れとなる特別措置の延長などがあります。アパート経営や相続など、土地オーナーが注目すべき税制改正のポイントを整理します。

法人税率引き下げ、アパート経営でも影響はあるか?

今回の税制改正の焦点の一つは「法人実効税率」の引き下げです。法人実効税率とは、主に法人税、法人住民税、法人事業税からなる実質的な所得税負担率のことです。現在の32.11%から、平成28年度に29.97%、30年度に29.74%に引き下げられます。企業の負担を軽くして設備投資や賃上げを促し、成長戦略に弾みを付けるのが狙いのようです。
ただし、日本経済の課題は、成長戦略と財政再建を両立させることです。減税した分の財源をどこかで相殺する必要もあります。法人税に限っていうと、会社の規模などに応じて納める「外形標準課税」を拡大することになり、赤字企業でも課税されます。

これら法人実効税率に関する一連の税制改正は、特に資本金1億円を超える大企業に関係するものです。賃貸オーナーの中には経営を法人化している方もいると思いますが、ほとんどは中小企業の範囲だと思います。
中小企業の法人実効税率はもともと優遇されており、大企業より抑えられていました。課税所得が400万円までは21.4%、400万円超〜800万円まで23.2%、そして800万円を超えると34.33%です。
このうち今回の税制改正で、800万円を超える34.33%が平成28年度から33.80%、30年度から33.59%に引き下げられます。大企業より税率が高いのは、外形標準課税がかからないことが理由です。課税所得800万円を超える、アパート経営法人のオーナーにとっては減税となります。

報道で取り上げられる法人実効税率の引き下げは、資本金1億円を超える大企業が対象。中小企業は、課税所得が400万円まで21.4%、400万円超〜800万円まで23.2%、800万円を超えると平成28年度から33.80%、30年度から33.59%に引き下げられる。

軽減税率よりも消費税の引き上げ時期に注意

もう一つの大きな焦点が、消費税10%引き上げ時に導入する軽減税率でした。これについては、様々な議論があり、線引きがこれからのものもあります。
家賃にはもともと消費税はかかりません。しかし、建物や設備には消費税がかかります。賃貸オーナーとして気をつけなければならないのは消費税10%の導入時期です。現在の予定では、平成29年4月1日となっています。

新築する場合は、契約をその半年前までに結ぶなどのルールがあります。今後、新たな建て替えや設備投資を計画している場合は、そのタイミングに注意してください。

賃貸オーナーとしては、消費税10%の導入時期をしっかりチェックすること。新たな建築計画やメンテナンス計画は増税前に実施したほうが得策。

設備の減価償却方法が定額法に一本化

アパート経営に関する税制改正で、今回最も影響があると思われるのが減価償却制度の見直しです。今までは、建物附属の設備および構築物の減価償却方法が定率法と定額法の選択制でしたが、改正後は定額法のみとなります。構築物とは、アプローチや植栽などです。
定率法も定額法も最終的に償却できる総額は同じですが、定率法は初年度から数年は多額の減価償却費を必要経費として計上できるので、取得当初の節税メリットが高く、定率法を選ぶ人も多かったと思います。
建物が定率法から定額法に限定されたのは平成10年4月1日以降です。これで、設備も含めて定額法に一本化されます。平成28年4月1日以降に取得したものから適応になります。
特に新築の場合は、採算シミュレーションが大きく変わってきます。今年の4月以降に新築計画があるオーナーで定率法を採用する予定だった場合は、採算シミュレーションの見直しが必要です。
また、大きな設備投資などを考えている場合で、定率法を選択したい場合は今年の3月31日までが期限となります。

平成28年4月1日以降に取得したものから、建物附属設備・構築物の減価償却方法が、定額法のみに一本化される。4月以降の新築計画や大きな設備投資計画がある場合は注意が必要。

30万円未満の少額減価償却資産の損金算入の特例は延長

設備の減価償却方法が定額法に限定されましたが、30万円未満の設備投資(減価償却資産)であれば、一括して必要経費にできる特例は2年間延長され、平成30年3月31日までになりました。青色申告をしていることが要件になります。
ただし、取得した減価償却資産の合計が300万円までとなっています。つまり、一個29万円であれば、10個が限度です。

三世代同居改修と空き家対策

住宅関連では二つの新しい特例が創設されました。

■三世代同居のためのリフォームで所得税額控除

これは世代間の助け合いにより子育てを支援することが目的です。三世代が暮らしやすいように、キッチン、浴室、トイレ、玄関のいずれか二つ以上を増設することが要件です。
適応する工事費の限度額は250万円。ローンの場合は年末残高の2%を5年間控除でき、自己資金の場合は工事費の10%を所得税から控除できます。平成28年4月1日〜31年6月30日まで。

■空き家売却の譲渡所得の特別控除

目的は、今、問題になっている空き家対策です。実家の親が亡くなり、そのまま空き家になるのを防ぐためです。
相続人が、家屋を解体して土地を売却する場合、または耐震改修を行った上で家屋・土地を売却した場合に、譲渡所得から3,000万円を控除できます。相続から売却まで賃貸や居住をしていないこと、昭和56年5月31日以前に建築された家屋などが条件です。平成28年4月1日〜31年12月31日までの譲渡が対象です。

結婚・子育て一括贈与制度の使用対象を拡充

この制度は子や孫に、結婚・子育て資金を1,000万円(結婚資金は300万円)まで一括して贈与した場合に非課税となるものです。範囲の対象に、不妊治療のために薬局に支払う医薬品代も認められるようになります。

その他の土地・住宅税制など

その他の土地・住宅税制に関する改正は、特例の延長がほとんどです。いずれも土地の流動化を促進することが狙いです。主な改正は以下の通り。

・サービス付き高齢者向け賃貸住宅の割増償却制度1年間延長

サービス付き高齢者向け賃貸住宅については、5年間、建物の減価償却費に上乗せして割増償却することができます。耐用年数35年未満のものは14%から10%に、耐用年数35年以上のものは20%から14%に引き下げた上で1年間延長。平成29年3月31日まで。

・新築住宅に係る固定資産税の減額措置、2年間延長。

新築住宅のうち、一般の住宅は3年間、中高層のマンションは5年間、固定資産税が2分の1になる減額措置が2年間延長されます。平成30年3月31日まで。

・認定長期優良住宅の特例措置、2年間延長。

耐久性、耐震性、維持保全容易性などに優れた認定長期優良住宅を取得した場合の登録免許税、不動産取得税、固定資産税の優遇措置が2年間延長されます。平成30年3月31日まで。

・リフォーム(耐震・バリアフリー・省エネ)した場合の固定資産税の減額措置延長

耐震改修した場合、固定資産税が1年間2分の1になる特例措置が2年3カ月延長されます。平成30年3月31日まで。
バリアフリー・省エネ改修した場合、固定資産税が1年間3分の1になる特例措置が2年延長されます。平成30年3月31日まで。賃貸住宅は不可。

・マイホームの買換え等に係る特例措置、2年間延長。

自宅を買い換えに係る譲渡損や譲渡益に関して、優遇される特例措置が2年間延長されます。平成29年12月31日まで。

・加算金制度、罰則強化

税制全般についてですが、所得税の隠蔽などで過少申告すると加算税が課せられます。その割合が10%上乗せされ、最大で50%になります。

今後の焦点と注意すべきポイント

今回の税制改正は、全体的には減税と言われていますが、個人事業主にとっては減税の恩恵はほとんどありません。今後も、個人事業主や小規模事業者に関しては、増税となる可能性がありますので、注意が必要です。

今回、先送りされたものに「配偶者控除」があります。いわゆる103万円の壁をなくし、女性が働きやすくするというものです。以前から廃止の声が出ていましたが、単純に廃止となるとこれまで38万円の配偶者控除を受けていた人にとっては増税です。代わりに夫婦控除のような形にするという案も出ています。

また、いよいよ消費税10%導入の時期が近づいてきました。軽減税率の内容に議論が集中していますが、それに合わせた消費税課税のあり方も見直しが検討されています。現在、課税売上が1,000万円以下の個人事業主や法人は、消費税の納税義務は免除されています。
これについては不公平感が指摘されていますので、何らかの改正があるかもしれません。賃貸経営は、もともと非課税業者ですので影響はありませんが、前述したように、建物設備には消費税はかかります。賃貸経営にとっても、間接的な影響はあると言わざるを得ません。

相続税に関しては、昨年増税されたばかりですが、贈与税については、今回も一部緩和措置がありました。贈与を促進することで、資産を次の世代に流通させる狙いがありますので、今後も緩和策等があるかもしれません。

いずれにせよ、個人事業主を含む小規模事業者への税制の見直しが検討されています。賃貸オーナーにとっては、その時々の税制をうまく活用することが、資産運用に欠かせません。今後も税制改正に注意が必要です。

※今回のマンスリーレポートは平成28年度税制改正大綱に基づいて作成しています。正式には今後の国会審議を経て決定されます。場合によっては、その内容が変わる可能性もありますので、ご注意ください。

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