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アパート経営の節税対策-帳簿作成編

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2017年2月 7日

アパート経営の節税対策-帳簿作成編

節税対策の基本中の基本は、まず収支を正確に把握することです。そのためには正しい記帳が必須になります。しかし、経理業務などの経験がないと、どんな帳簿を備えればよいのか戸惑ってしまいます。また、聞き慣れない簿記の用語に嫌気が差す方も少なくないでしょう。今回は、会計ソフトを使った帳簿作成の基本を解説します。

備えておきたい帳簿の種類とその役割

アパート経営を始めるにあたって、まず経理上やっておきたいことがアパート経営専用の口座をつくることです。家賃は、ほとんどの場合は銀行振り込みです。また、様々な費用も口座から振り込んだり、引き落としたりするケースが多いでしょう。それを個人の口座で行うと、アパート経営とは関係ない家事消費などと混在し、分からなくなってしまいます。家事消費とはっきり区別するためにも、専用の口座をつくることをお勧めします。

アパート経営で、必要な帳簿は主に次の5つです。家賃収入があったり、修繕費を支払ったり、お金のやりとりを「取引」と言いますが、すべての取引を帳簿に記帳することになります。また、主な取引の多くは、その取引ごとに2つの帳簿に記帳すると覚えておいてください。

(1) 現金出納帳
現金で、経費を支払ったり、収入があったりした場合に記帳します。ほとんどが、備品などの経費の支払いだと思います。仮に経費を支払った場合は、(4)の経費帳にも記帳します。

(2) 預金出納帳
預金口座に入金や出金があった場合に記帳します。多くの場合が、家賃、礼金、更新料などの売上です。また、経費が引き落とされることもあるでしょう。売上は収入帳(売上帳)、経費は経費帳にも同時に記帳します。一方、敷金は基本的に退室時に返却するものなので、預り金として扱い売上帳には計上しません。

(3) 収入帳(売上帳)
アパート経営の主な売上は、家賃、礼金、共益費、更新料です。仮に家賃が振り込まれなかったとしても、契約日に未収入家賃として売上に計上します。これを発生主義と言います。また、敷金は売上には計上しません。

(4) 経費帳
アパート経営にかかわる費用はすべて経費として記帳します。現金から支出した場合は現金出納帳、口座から引き落とされた場合は預金出納帳にも同時に記帳します。

(5) 固定資産台帳
建物本体や付帯設備について、取得価額や減価償却費等を記帳します。これは期末に決算書と同時に記帳すればよいでしょう。対象は、耐用年数が1年以上または取得価額が10万円以上の減価償却資産です。30万円未満の少額減価償却資産については青色申告を提出している中小法人と個人は、一括して必要経費に算入できる特例があります。

以上は、簡易簿記といってさほど簿記の知識は必要ありません。ただし、事業的規模で65万円の青色申告特別控除を受ける場合は、複式簿記による「総勘定元帳」が必要になってきます。

●総勘定元帳
すべての取引を勘定科目ごとに記帳する帳簿です。「借方」「貸方」に分けて記帳するなど簿記3級程度の高度な知識を必要とします。簿記の知識のない方が始めようと思っても、かなりハードルが高いと言えます。しかし、会計ソフトを使えば知識がなくても「総勘定元帳」は作成できます。

アパート経営に必要な主な帳簿は「現金出納帳」「預金出納帳」「収入帳(売上帳)」「経費帳」「固定資産台帳」の5つ。青色申告特別控除を受ける場合は、さらに「総勘定元帳」が必要。

帳簿作成は会計ソフトが簡単便利

帳簿の作成は、パソコンの操作ができるのであれば会計ソフトが、とても簡単で便利です。市販のソフトなら、1万円程度のもので十分に活用できます。また、簿記の知識がなくても簡易帳簿に記帳すれば、複式簿記による「総勘定元帳」を自動で作ってくれますので、65万円の青色申告特別控除も受けることができます。
また、確定申告書の作成も可能です。パソコン上で入力して出力すれば簡単にできあがります。

例として「やよいの青色申告」を見てみます。
この会計ソフトでもいくつかの記帳方法がありますが、オーソドックスな方法を見ていきます。まず、様々な帳簿が表示される「取引」画面を開きます。いくつかの帳簿が並んでいますが、実際に入力するのは上段の「現金出納帳」と「預金出納帳」だけです。前項の帳簿の種類の説明で、取引は該当する帳簿に同時に入力すると言いましたが、会計ソフトの場合、入力した取引は、すべて該当する帳簿に自動で転記されます。

やよいの青色申告

家賃が振り込まれた場合、預金出納帳を開きます。ここで迷うのが勘定科目(費目)を何にすればよいかということです。このソフトの場合は、アパート経営でよく使うフレーズがあらかじめ用意されています。初期設定で不動産所得を設定するだけで利用可能です。下の画面のように「家賃収入が預金口座に振り込まれた」をプルダウンから選べば、勘定科目は「賃貸料」と記録されます。

やよいの青色申告(預金出納帳)

預金出納帳に家賃の振り込みを入力すれば、複式簿記の総勘定元帳にも自動で転記されます。また、貸借対照表、損益決算書といった確定申告に必要な決算書類も自動で作成してくれます。これなら、簿記の知識がなくても複式簿記の帳簿が作成できるということです。

やよいの青色申告(総勘定元帳)

帳簿作成は、現金や預金の出入りを入力するだけで複式簿記の帳簿も決算書も、自動で作成できるので、会計ソフトがお勧め。

これだけは理解しなければならない"簿記用語"

会計ソフトを使えば、帳簿の作成は簡単なことがお分かりいただけたと思います。
ただし、いくつかの簿記用語については理解しなければなりません。それらは、一般的にはない概念だったり、言葉が似通っていて間違えやすかったりします。青色申告に踏み切れない人の中には、この簿記用語に拒否反応を示して前に進めない方も少なくありません。いくつかご紹介しますので、参考にしてください。

●「減価償却」
例えばアパートを建築した場合、その費用については、取得した年に全額を必要経費にすることはできません。一定の年数を通して毎年、価値が目減りした分だけを必要経費として計上していきます。それが減価償却です。一定の年数とは、法定耐用年数といって、資産ごとに定められており、建物の場合は構造などによって違います。

●「事業主借」「事業主貸」
これは、個人事業主特有の勘定科目です。65万円の青色申告特別控除を受けるため「総勘定元帳」を作成した場合に、貸借対照表の中に登場してくるものです。
「事業主借」は事業主が事業のために個人のお金を用意したり、支払ったりしたときに使う勘定科目です。例えば、事業用の経費を個人の現金や預貯金から支払った場合などに使います。
一方「事業主貸」は事業の資産を事業主に移動した場合に使う勘定科目です。個人事業の場合、事業主への給与という概念はありませんので、事業主が生活費等として個人へお金を移動した時は「事業主貸」として扱います。
事業主個人のお金と事業の経費を明確に分ける必要があるためこの勘定科目を使います。

●「所得控除」「税額控除」
言葉が似ているので、間違いやすいのですが、「所得控除」は税額を計算する際に、所得から差し引くことができます。例えば青色申告特別控除の65万円などがありますが、税額が65万円まるまる減るのではなく、所得から65万円を差し引いて税額を計算するということです。
一方、「税額控除」は最終的に算出された税額から、差し引くことができるものです。住宅ローン控除などがありますが、こちらは控除額が10万円なら税額が10万円減ることになります。

会計ソフトを使えば、帳簿作成は簡単だが、いくつかの専門用語は覚える必要がある。そのハードルを越えれば、複式簿記ができ青色申告特別控除を受けることができる。

節税対策、青色申告のメリットのためにも正確な帳簿作成を

青色申告は帳簿作成が大変だから、白色申告にしているという方もいらっしゃいます。しかし、白色申告でも帳簿の作成や保存は義務づけられています。これは、平成26年からで、それ以降、会計ソフトメーカーも白色申告用の会計ソフトを販売し始めました。
しかし、賃貸経営は他の事業に比べ取引がシンプルですから、これまで説明したように、青色申告でも会計ソフトを使えば、簡単に帳簿作成ができます。

青色申告なら、複式簿記の採用で青色申告特別控除65万円を受けることができます(事業用的規模の場合)。65万円が所得控除されれば、仮に所得税が最低税率の5%の場合でも、所得税は32,500円、住民税は10%で65,000円の節税効果、さらに国民健康保険や、事業税などにも節税効果が期待できます。

青色申告のメリットには、この他「青色事業専従者給与の必要経費算入」「30万円未満の少額減価償却資産の一括損金算入」「純損失の繰越控除と繰戻し」があります。これらのメリットも会計ソフトを使うことで簡単に受けることができます。また、正確に記帳することで事業の財務状態を正確に把握しやすくなれば、より一層の節税対策を図ることも可能となります。青色申告のメリットについてはバックナンバー「アパート経営の節税対策ー青色申告編」を参照ください。

申告は青色申告がお勧め。正確に記帳することで、事業の財務状態を正確に把握し、節税対策にもつながる。

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