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2021年度税制改正のポイント

税務・確定申告

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2021年1月 5日

2021年度税制改正のポイント

2021年度税制改正大綱は、コロナ後の経済成長を支えるための減税重視となりました。コロナ禍での経済の低迷は、今年も続くと見られています。賃貸経営に直接関係する大きな改正はありませんでしたが、相続やデジタル化に対する改正がいくつかあります。土地オーナーが注目すべき税制改正のポイントを整理します。

住宅ローン控除の特例が2年延長、床面積要件が「40m2以上」に緩和

住宅業界は自動車業界と同じく、裾野が広い産業です。コロナ禍で経済が落ち込む中、住宅需要を下支えするための減税策は、大きな効果が期待されます。
住宅ローン控除は、10年間にわたり、年末ローン残高の1%(最大40万円)を所得税から差し引く税額控除ですが、消費増税対策として、控除期間を3年間プラス(最大26.66万円)していました。従来の要件は2020年末までに入居することでしたが、2年延長し2022年末までの入居になります。契約日については、新築住宅が2021年9月末、マンション・中古住宅は2021年11月末までとなります。
これに合わせ、床面積の要件が「50m2以上」から「40m2以上」に緩和されます。ただし、「40m2以上50m2未満」の物件については、所得制限が1,000万円以下と厳しくなります。

固定資産税は据え置き

固定資産税は3年に一度、評価替えが行われます。2021年度は評価替えの年にあたりますが、基準は2020年1月1日の公示地価です。しかし周知の通り、1月はまだコロナ感染拡大前です。7月の基準地価を見ると、三大都市圏や地方圏の一部では地価はまだ上昇していますが、全国的には下落に転じています。つまり、実勢価格は下がっているのに、評価額の上昇で、固定資産税評価が上がってしまう可能性があるのです。
この状況を踏まえ、2021年度の固定資産税は1年限りの特例として2020年度の税額で据え置かれることになりました。

【相続・贈与関係】
住宅取得資金贈与の非課税限度額 引き上げ

父母、祖父母等の直系尊属から、住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税限度額が引き上げられます。期間は2021年4月1日から同年12月31日までの契約です。

■住宅取得資金贈与の非課税限度額

また、受贈者の所得税に係る合計所得金額が1,000万円以下の場合は、床面積要件の下限が50m2以上から、40m2以上に引き下げられます。同様に「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税制度の特例」についても、40m2以上に引き下げられます。

教育資金一括贈与制度は、課税強化し2年延長

「教育資金一括贈与制度」は、特に祖父母から孫への贈与に、非課税で贈与(上限1,500万円)できるとして活用されていますが、期間が2年間延長され、2023年3月31日までとなります。

一方、贈与者死亡時における相続税の課税が強化されます。
(1)贈与者死亡時における相続税の課税拡大
贈与者死亡時に、贈与資金に残額がある場合、これまでは「贈与者死亡前3年以内の贈与」に係る残額についてのみ相続税の対象でした。これが、改正後は贈与時期にかかわらず残額が相続税の対象となります。
ただし、受贈者が23歳未満、学校等に在学中、教育訓練を受講している場合は対象外です。
(2)受贈者が孫・ひ孫の場合、相続税額の2割加算
さらに、受贈者が孫・ひ孫の場合、贈与者死亡時に残額があると、これまで対象外だった相続税額の2割加算が適用されることになりました。
(1)(2)は2021年4月1日以降の贈与について適用。

結婚・子育て資金一括贈与制度は、課税強化し2年延長

こちらの制度も適用期限が2年延長され、2023年3月31日までとなります。
また、教育資金と同様に、受贈者が孫・ひ孫の場合、贈与者死亡時に残額があると、これまで対象外だった相続税額の2割加算が適用されることになります。こちらも教育資金と同様、2021年4月1日以降の贈与について適用されます。
加えて、成人年齢が引き下げられる2022年4月1日以降、受贈者の年齢要件が、「20歳以上50歳未満」から「18歳以上50歳未満」に引き下げられます。こちらは、成人年齢が引き下げられる2022年4月1日以降に適用されます。

【納税環境整備】
電子帳簿保存制度の見直し

最近では、クラウド会計ソフトの普及が進んでいますが、経理の電子化による生産性の向上やペーパーレス化の観点から、電子帳簿保存制度、スキャナ保存制度の手続きや要件が大幅に緩和されます。経理・税務関係者は、この改正が最も影響が大きいと注目しています。データ化で最も懸念されるのがデータの改ざんですが、要件を緩和する代わりに、不正に対しては重加算税を課す等の措置がとられています。

(1)承認制度廃止
電子帳簿保存制度を適用するには、事前の煩雑な申請が必要でしたが、承認制度が廃止されます。
(2)システムの要件緩和
使用する会計ソフトについても、真実性の確保・可視性の確保として、訂正履歴の確認や検索機能など高度なシステムが要件でしたが、一定の書面の備え付け等の要件を満たせば可能になります。
(3)修正申告・更生の過少申告加算税を5%軽減
従前の要件の厳しい電子帳簿保存制度を採用し、修正申告や更生があった場合、通常課税される過少申告加算税の額から5%に相当する額を控除した金額になります。

また、領収書等をスキャニングしたデータで保存するスキャナ保存制度も、承認制度が廃止されました。あわせて改ざん防止のための、運用フローの様々な要件が大幅に緩和されました。その一方で、改ざんが発覚した場合、重加算税が10%重課されます。

電子帳簿保存制度、スキャナ保存制度、どちらの改正もまだ詳細が明らかになっていない部分もありますが、経理の効率化やペーパーレス化は進んでいくと思われます。

税務関係書類に係る押印義務の見直し

テレワークの浸透で印章の是非が話題になりましたが、税務関係書類に関しては、認印で可とされてきた書類については、押印が廃止になります。例えば確定申告書、修正申告書等です。
一方、実印と印鑑証明が求められていたものについての押印は存続します。例えば、遺産分割協議書などです。

【特例等延長】
登録免許税、不動産取得税の特例措置等の延長

土地の売買による所有権の移転登記等に対する「登録免許税」の標準税率(本則2%)を1.5%とする軽減措置の適用期限が、2 年延長され、2023年3月31日までとなります。

宅地評価の土地の取得に係る不動産取得税の課税標準を価格の2分の1とする特例措置と、住宅及び土地の取得に係る不動産取得税の標準税率(本則4%)を3%とする特例措置の適用期限が3 年延長され、2024年3月31日までとなります。

セルフメディケーション税制延長

セルフメディケーション税制は、市販されているスイッチОTC医薬品の購入額の合計が年間1万2千円を超えるときに、超える部分(8万8千円が限度)が所得から控除される制度です。この適用期限が5年延長され、2026年12月末までとなります。
医療費控除との併用はできませんので、どちらがより節税になるか、よく検討してください。

今後の焦点

まだまだウィズコロナの時代は続きそうです。低迷した経済をどう下支えするか、税制面でも様々な対策が講じられると思います。

賃貸住宅オーナーの大きな仕事の一つに、経理・確定申告の業務があります。日々の帳簿付けや確定申告においては、電子帳簿保存制度の改正にあったように、今後ますますデジタル化が進展すると思われます。
「令和3年度税制改正大綱」によると、個人事業主で正規の簿記の原則(複式簿記)による記帳を行っているのは、約3割にとどまっているとのことです。複式簿記は知識がなくても、会計ソフトを使えば自動で作成できます。複式簿記は青色申告特別控除(最大65万円)の要件でもあります。まだ、活用していない方は、ぜひチャレンジしてみることをお勧めします。

そして土地オーナーとして注目しておきたいのが、相続税・贈与税のあり方です。
以前から、問題視されているのは、超高齢社会となり、相続による資産の世代間移転の時期が高齢期にシフトしていること。いわゆる老老相続です。結果、若年世代への資産移転が進みにくい状況になっています。「高齢世代が保有する資産が早いタイミングで若年世代に移転することになれば、その有効活用を通じた経済の活性化が期待される。資産の早期の世代間移転を促進するための税制を構築することが重要な課題となっている」と税制改正大綱では問題視しています。
諸外国では、相続税と贈与税の税負担が一定となるようになっているとのことで、今後は「相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直すなど」本格的な検討を進める、としています。

コロナ禍による経済の低迷が続く限り、増税の方向には進まないと思いますが、デジタル化などについては、積極的に取り組みたいものです。

※今回のマンスリーレポートは「令和3年度税制改正大綱」(2020年12月10日に発表)に基づいて作成しています。正式には今後の審議を経て決定されます。場合によっては、内容が変更になる可能性もありますのでご注意ください。

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