自分のルーツを探る!「戸籍」をたどって家系図づくり
今、家系図が静かなブームを呼んでいます。「うちは名家じゃないから、家系図なんてわからない」と思うのは早合点。“戸籍”をたどることによって自分のルーツを探すことができるのです。実際に「家系図テンプレート」などのソフトも市販されています。今、なぜ家系図づくりが人気なのか。そして家系図をつくることでどのようなメリットがあるのか。さらに“戸籍”がどのような意味を持つのかを探ってみましょう。
■そもそも“戸籍”ってどんなもの?
家系図をつくるために、どうしても必要になるのが「戸籍」です。日頃の生活では住民票が必要になるケースはあっても、戸籍を意識したり戸籍謄本を取り寄せたりするのは結婚やパスポート申請の時ぐらいで、なかには自分の戸籍謄本を見たことがないという人もいるかもしれません。戸籍謄本には「氏名」、「生年月日」はもちろん、「父母の氏名」、「出生地」などの記載があります。結婚している場合には「婚姻日」も記載され、「離婚歴」「養子縁組歴」など、まさに家族単位の歴史がつまっています。そして、この“家族単位”というのが日本の戸籍の大きな特徴になります。
家族単位で国民を登録しているのは、日本や韓国など東アジアが中心。個人主義が徹底しているヨーロッパやアメリカと比較すると、日本の戸籍の独自性がよくわかります。たとえばアメリカの場合、社会保障番号で国民が個々に登録される以外には、州が出生や結婚、死亡などの記録の管理を行っています。つまり国としての家族関係の把握はしておらず、先祖をたどるのはかなり難しいといえます。
一方、ドイツやスイス、フランスでは家族簿あるいは家族登録簿があり、それらを行政府が管理するなど日本とよく似たシステムを取っています。但し、日本と大きく違うのは、籍を入れない“事実婚”のようなケースでも家族登録簿には記載されることです。日本の場合、事実婚で子を認知すれば戸籍に記されますが、パートナーの記載はありません。結局、どちらかが今までの名字を捨て、配偶者の籍に入るしかないのです。スウェーデンの場合も、家族関係を把握できるよう国民が登録されていますが、それを主に管理しているのは教会です。このように戸籍には、歴史や社会背景、宗教観などが色濃く反映されています。
■除籍謄本をたどれば約200年前までわかる!?
では、この戸籍を使って家系図をつくってみましょう。まずは自分の本籍地のある役所で「戸籍謄本」を取り寄せます。しかし、ここに記されているのは父母の氏名まで。その先を遡るには「除籍謄本」が必要です。除籍謄本とは、死亡や結婚によって戸籍から抜けてしまった人を記したものです。健在の場合は戸籍謄本に記されたままですが、亡くなった人をたどる場合にはこの除籍謄本の取り寄せを繰り返していくことになります。父母の本籍地の役所で除籍謄本を取り寄せると、そこには祖父母の名が記されています。そして、祖父母の本籍地のある役所でさらに除籍謄本を取り寄せることで、曾祖父母をたどっていきます。ケースによって違いはあるものの、多くの場合この除籍謄本によって約200年前後まで先祖をたどることは可能といわれています。
ここで大きな注意点が二つあります。第一のポイントが「除籍謄本を請求できるのは直系の子孫のみ」という点です。直系というのは祖父母、親、子供、孫と、まさに直列で血がつながっている関係です。血がつながっていても、兄弟姉妹やおじ、おば、甥や姪は傍系になってしまいます。直系のみならず傍系にまでわたった広範囲な家系図をつくるのは、なかなか骨の折れる作業になるかもしれません。直系の子孫以外にも公務員や弁護士、司法書士などが職務上、除籍謄本を取り寄せることは可能です。
第二の注意点は「除籍簿の保管期間は80年」という期限です。この保管期間を過ぎると除籍簿が廃棄されてしまいます。これは戸籍法によって定められていますが、これも日本全国の役所に杓子定規で当てはまるものではないようです。例えば保管期間内であっても、戦災によって焼失したケースがあります。逆に80年前以上の場合でも、「行政証明」という形で保管している自治体もあります。行政証明とは、自治体が法律や行政慣例に従って法律要件や事実などを、市民の要求に応じて証明するものです。納税証明や固定資産税に関することで行政証明がよく利用されますが、市町村合併や電子化によって役所の体制が大きく変わっているため、各自治体に問い合わせる必要があるでしょう。
そして、他にも先祖をたどる隠れ技があります。それはお寺の“過去帳”です。お寺には法名の他に俗名や没年、続柄などを家ごとに記したものがあります。但し、今はプライバシー重視の時代。日頃、都会で暮らしている者が、急に田舎の祖父のお墓があるお寺に行って過去帳を見たいと言っても警戒されるでしょう。きちんと本人であることを証明できる書類や、お寺と懇意にしている親戚を間に立てるなどの配慮は忘れないようにしたいものです。
■家族のゆらぎが家系図づくりの原動力に
さて、家系図の根幹となる「戸籍」についてですが、かねてより「現実的でない」「時代にそぐわない」などさまざまな議論が巻き起こっています。おりしも選択的夫婦別姓導入の是非がニュースになっています。日本の戸籍の場合、先述したように現在は夫婦のどちらかが片方の籍に入り、その名字を継ぐことになっています。しかし少子化は改善されておらず、平成20年の合計特殊出生率は1.37人。いわゆる「一人っ子」が大勢います。一方、日本人の名字の数は約30万種といわれています。広大な人口を抱える中国の名字が約4100種程度ですから、日本人の名字のバラエティの豊富さはひとつの文化といえます。しかし現在の戸籍法に当てはめていくと、少子化も手伝って希少な名字がどんどん減っていくことになります。
他にも戸籍をめぐる問題はたくさんあります。性同一性障害で悩む人や性転換者については、最近になってやっと戸籍の変更が認められるようになり、平成16年からは婚外子についても、嫡出子と同様の記載にすることで婚外子差別を解消するなどの措置が取られ始めました。また、離婚後300日以内に生まれた子をめぐる無戸籍児の問題もクローズアップされています。
このように「戸籍」をめぐる問題が様々に取りざたされる中、なぜ家系図ブームが起こっているのでしょうか。それは単なる歴史ブームのひとつではなく、核家族化や少子化による“家族のゆらぎ”もルーツ探しの原動力になっているのかもしれません。
戸籍というと、相続時に使用するなど「厄介な手続き」というイメージもついてまわりますが、自分の先祖を知ることのできる貴重な手がかりでもあるのです。ぜひ一度、自分のルーツ探しの視点から戸籍を眺めてみてはいかがでしょうか。新しい発見があるかもしれません。





