第1章 LCAP療法の開発 1993年 | 旭化成メディカル株式会社
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UC WAVE | No. 13 | 2011 Autumn | 潰瘍性大腸炎の過去、現在、そして未来 ~セルソーバE 発売10周年記念 対談~ 日比紀文先生 & 澤田康史先生

LCAP療法の開発 1993年

第1章 LCAP療法の開発 1993年 ~最初のLCAP療法施行患者の著効によりセルソーバEの開発が本格化~

2011年10月、セルソーバEは発売から10周年を迎えました。これも臨床研究にご協力いただいた患者さん、そして先生方のご尽力のおかげです。まずは、世界で初めてUC治療にLCAP療法を用いた生駒内科・消化器内科クリニック 院長澤田 康史先生に開発当時の状況についてうかがいます。先生は、いつ、何をきっかけに、LCAP療法をUC治療に導入しようと思われたのでしょうか。

澤田 1989年、留学先の米国クリーブランド・クリニックの人工臓器研究所で、UCに対する白血球除去療法のヒントを得ました。クリーブランド・クリニックは、世界で初めて人工透析に成功したことで有名ですが、当時、世界各国から研究者が集まり、さまざまなアフェレシス療法の研究が行われていました。例えば、血漿中の自己抗体を除去する方法や血球成分をコントロールする治療の研究などです。血球成分としては、主に白血球をターゲットにした検討が行われており、セザリー症候群(T細胞由来の悪性リンパ腫)の治療が行われていたことをよく覚えています。

米国留学中に、“関節リウマチや全身性エリテマトーデスなど、副腎皮質ホルモン製剤(ステロイド)が効く疾患は、白血球を除去することで治療効果が得られる可能性がある”ということを勉強しました。そこで、消化器を専門としていた私は、UCに対しても白血球除去が効果を発揮するかもしれないと考えたのです。しかし、UCは下血を伴う疾患です。アフェレシス療法は抗凝固剤を使用するため、UC患者さんでは下血が増悪する可能性があると考えていました。ちょうどその時、日本ではナファモスタットメシル酸塩を使用することにより、出血性病変を有する患者さんでも問題なく透析治療を行っていることを知りました。そこで、ナファモスタットメシル酸塩を抗凝固剤として用いれば、UCに対してもLCAP療法が行えるのではないかと考えたのです。

帰国後、当時、兵庫医科大学消化器内科学講座の教授を務めておられた下山 孝先生にこのことを伝えたところ、“すぐにやってみよう”ということになりました。日本で最初にLCAP療法を行ったUC患者さん、Aさんのことは今でもよく覚えています。1993年のことでしたが、Aさんは臨床的にも重症で、Mattsの内視鏡所見分類もGrade 4でした。手術を検討していたAさんにLCAP療法について説明し、同意を得てLCAP療法を施行することになりました。

すると1、2回の施行で、Aさんの症状は劇的に改善したのです。LCAP療法5回終了後には内視鏡的にも寛解しました。 (図1)※1 “手術を検討していた患者さんが手術をせずに改善した”と、当時の教室でも驚きをもって受け止められました。これを厚生省(現:厚生労働省)の難治性炎症性腸管障害調査研究班で発表したところ、大きな注目を集め、これを機にLCAP療法の臨床研究が本格的に始まりました。

図1:初めてのLCAP療法施行例の臨床経過

プレドニゾロン60mg/日が約5週間投与されたにもかかわらず改善が見られなかった患者にLCAP療法を行ったところ、便回数の減少、血便の消失などの改善が認められました。5回のLCAP療法終了後の内視鏡検査では血管透見が見られ、寛解状態となりました。

内視鏡所見

K. Sawada, et al.:J Gastroenterology 30(3):322-329, 1995

当時のUC治療について、日本のIBD分野の第一人者である慶應義塾大学医学部内科 教授 日比 紀文先生にうかがいます。先生、1990年代のIBD治療の状況についてお聞かせいただけますか。

日比 UC治療は、大きく寛解導入療法と寛解維持療法の2つに分けられます。当時の寛解導入療法としては、5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤のサラゾスルファピリジンとメサラジン、そしてステロイドの3製剤による治療しかありませんでした。ステロイドは、経口や静注の他にパルス療法や動注療法など、投与方法の選択肢はありましたが、ステロイドで効果がなければ他に炎症を抑える手立てがなかったのです。だから、澤田先生がLCAP療法を最初に施行したAさんもステロイドが効かなければ手術しか選択肢がなかったし、そのような症例では大腸全摘術をしなければ命が危ぶまれる時代だったのです。 このような治療環境のなかで、澤田先生たちがLCAP療法の可能性を提唱されたことは、大変なインパクトをもって迎えられました。

当時ご研究を進めるうえでご苦労されたこと、また重点を置かれたことなどをお聞かせいただけますか。

澤田 当時使用したフィルターは他の疾患への適用製品でしたので、最初、目詰まりに苦労しました。UC患者さんは血液凝固能が亢進していることが多いのですが、体外循環で血小板が異物に接触すると凝固能がさらに亢進しやすくなります。そこで、フィルターの構造に工夫を加え、はじめはサイズの大きい粒子から除去し、徐々に小さい粒子を除去するように改良を加えました。これにより、目詰まりは以前に比べるとかなり改善され、UC患者さんでも目詰まりすることなく約1時間でLCAP療法を行うことができるようになり、このフィルターを使用して治験を開始しました。

1993年当時のLCAP療法施行の様子(澤田先生)

参照文献
※1: K. Sawada, et al.:J Gastroenterology 30(3):322-329, 1995

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