スイス

おなじみの「チーズフォンデュ」のほか、
シンプルで素朴な味わいの料理の数々。

スイスの料理

スイスの食文化

国の中央を東西に走るアルプス山脈、氷河の侵食でできた深い渓谷や湖、これらのたぐいまれなる自然と冷涼な気候で、ヨーロッパを代表するリゾート地として長い歴史を持つ「スイス」。面積は日本の九州ほどの小さい国ですが、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語の、4つ公用語が存在する連邦国家です。そのため食文化の面でも、ドイツ語圏ではドイツ料理が、イタリア語圏ではピザやパスタなどイタリア料理がよく食されているという風に、それぞれの言語圏によって違った特色が見られます。

スイスと言えば何といっても、アルプス山脈。その山麓には「アルム」と呼ばれる広大な放牧地が広がります。厳しい自然環境の中、昔から酪農が営まれ、乳製品や乾燥食品などの保存食が発達しました。中でも特徴的なのがチーズです。深い山や谷に囲まれた山岳地域では、交通があまり便利ではないため、長期保存に向くハードタイプのチーズが作られてきました。スイス料理としておなじみの「チーズフォンデュ」ですが、「フォンデュ」はフランス語で「とかした」という意味。その名の通り、チーズをワインでとかしながら伸ばし、パンにからめていただく料理です。この料理によく使われるのがスイス名産の「エメンタールチーズ」。ナッツのような香りがあると言われ、現物は直径100㎝、重さは大きなもので100㎏以上にもなり、「チーズの王様」とも言われています。また「チーズフォンデュ」と並んで有名なのが「ラクレット」。直径40㎝ほどの「ラクレット」というチーズを半分に切り、その切り口を温めてとけてきたところを、じゃがいもなどにかけていただきます。どちらもチーズそのものを楽しむ食べ方で、もとはフランス語圏の料理でしたが、今ではスイス全土で食されています。一方、ドイツ語圏でスイスの名物料理は何かと聞けば、「レシュティ」と答えが帰ってくるでしょう。こちらはゆでてから冷えたじゃがいもを、目の粗いおろし器ですりおろし、パンケーキのように平たく伸ばして両面をカリッと焼き上げたもの。かつてはドイツ語圏で食べられていたもので、食べない地域との文化の境界を「レシュティの溝」とも呼んでいたとか。今では全土に広まったようです。

これらスイスを代表する郷土料理からもわかるように、スイスではあまり料理に手間暇をかけることがなく、調理方法は極めてシンプルで合理的です。特に農村部などでは食材の煮炊きは一度にまとめてし、それを幾日かかけて食べることが習慣となってきました。例えば、じゃがいもを大量にゆで、まずは「ラクレット」や料理のつけ合せとして利用し翌日以降の冷えたじゃがいもは、すりおろして「レシュティ」にして食べる、といった具合です。「チーズフォンデュ」も、元々は硬くなったパンをおいしく食べるために生まれた残り物料理だそう。手の込んだ食事よりも、素材の味を生かした素朴な伝統料理からは、アルプス山脈のもとで、大自然との共存によって培われた人々の温かみが伝わってくるようです。

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