「平成31年度文部科学大臣表彰 科学技術賞」の受賞について
世界初、金ナノ粒子を触媒成分として用いた化学品製造プロセスの実用化

2019年4月9日
旭化成株式会社

 旭化成株式会社(本社:東京都千代田区、社長:小堀 秀毅)は、このたび「コアシェル型金-酸化ニッケルナノ粒子触媒の開発」の業績を評価され、研究・開発本部 化学・プロセス研究所長兼 基盤マテリアル事業本部 技術開発総部長の鈴木 賢が、文部科学省が主催する科学技術分野の文部科学大臣表彰にて、「平成31年度文部科学大臣表彰 科学技術賞(開発部門)」を受賞しましたのでお知らせします。

1.受賞概要

  1. (1)受賞理由

     従来にないコアシェル型ナノ粒子構造の触媒を開発したことは独創性が高く、近年注目されている金ナノ粒子を触媒構成要素として用いた初の工業化プロセスでもあります。本技術はナノ構造制御により優れた実用的成果を得たものであり、他の触媒技術への波及効果も大きいと期待されています。

  2. (2)受賞技術概要

     触媒は人々の生活を支えるうえで非常に重要な役割を果たしており、環境、資源、エネルギー問題に関係した課題の解決にも寄与する重要な物質です。当社は、これらの課題を解決するため、新しい機能と革新性を有する高性能触媒の開発に取り組んでいます。
    本開発では、優れた性能を有するコアシェル型金-酸化ニッケルナノ粒子触媒を見い出し、メタクリル酸メチル(MMA)の製造プラントにて、世界初となる金ナノ粒子を触媒成分として用いた化学品製造プロセスの実用化に成功しました。

    コアシェル型金-酸化ニッケルナノ粒子触媒を用いたメタクリル酸メチル製造プラント
    コアシェル型金-酸化ニッケルナノ粒子触媒を用いたメタクリル酸メチル製造プラント
  3. (3)受賞者

    鈴木 賢(すずき けん)
    旭化成株式会社 研究・開発本部 化学・プロセス研究所長
    兼 基盤マテリアル事業本部 技術開発総部長
    プリンシパルエキスパート

    鈴木 賢(すずき けん)
  4. (4)コアシェル型金-酸化ニッケルナノ粒子触媒について

     コアシェル型金-酸化ニッケルナノ粒子触媒は、金を核とし、その表面が数原子層の高酸化型酸化ニッケルで被覆された球状のナノ粒子が、担体上に固定化されている触媒です。このような構造と特異な化学状態を有するナノ粒子の創製によって、単一の金ナノ粒子触媒や従来のMMA製造用パラジウム-鉛触媒とは異なった優れた触媒機能を生み出すことに成功しました。また、酸化ニッケルとシリカ系担体中の金属成分が複合酸化物を形成し、これが Si-Al架橋構造の安定化に作用し触媒の安定性を高めています。さらに、高強度シリカ系担体を開発し、触媒成分の分布を制御することで物理的な摩耗・はく離を抑制して、触媒の長期寿命を保証する工業触媒技術を確立することができました。

     本技術からなるMMA製造法は、イソブテンを出発原料とし、本触媒を用いてメタノールの存在下、温和な条件にて酸素によりメタクロレインを一段で酸化エステル化してMMAを合成します。本製造法は、省エネ、省資源、無公害プロセスであり、従来法と比べてMMA収率、エネルギー使用量、安全性、環境調和性、経済性など多くの点で優れています。

    コアシェル型金-酸化ニッケルナノ粒子触媒の透過型電子顕微鏡像とナノ粒子の推定構造(断面図)
    コアシェル型金-酸化ニッケルナノ粒子触媒の透過型電子顕微鏡像とナノ粒子の推定構造(断面図)
    メタクリル酸メチルの合成化学反応式
    メタクリル酸メチルの合成化学反応式
  5. (5)文部科学大臣表彰 科学技術賞について

     文部科学省では、科学技術に関する研究開発、理解増進などにおいて顕著な成果を収めた者について、その功績を讃えることにより、科学技術に携わる者の意欲の向上を図り、我が国の科学技術水準の向上に寄与することを目的とする科学技術分野の文部科学大臣表彰を定めています。

    文部科学省のHPはこちら
    http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/index.htm

2.社会的効果・実施効果

 本開発により、高活性、高選択性、触媒の長寿命化等の優れた実用的成果を得て、省エネ・省資源化と高い経済性を実現しました。またコアシェル型金-酸化ニッケルナノ粒子触媒は、基質適応性が広く、種々の酸化反応にも高効率に作用することから、他の反応への応用が期待されます。

 当社は、本開発が環境、資源、エネルギー問題を解決する新しい触媒技術として、化学および化学産業の持続的発展に寄与すると考えております。今後も画期的な触媒・プロセスの開発を通じて社会に新たな価値を提供してまいります。

以上