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D'URBAN ユニットマネージャー 志村裕之氏。日本を代表するスーツブランドで受け継がれる"ものづくりへのこだわり"とは

2020年に50周年を迎えるスーツブランド「D'URBAN」。ユニットマネージャーの志村氏に、盛夏ライン「MONSOON」開発時のエピソードや、ブランドの今後について伺いました。

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着る人の"誇りや自信の源"になるスーツ私は現在、ダーバン戦略事業部の企画商品部でブランドのユニットマネージャーとして、企画・デザイナーを統括しています。また、マーチャンダイジングコントローラーという、商品の発注と仕入れを行う仕事も担当しています。
D'URBANは1970年に誕生した日本のスーツブランドです。「正統派ビジネスマンにとって欠かせないブランドに」をミッションに、"本物だけが持つ、着る喜び、所有する喜び"を、日本ならではの丁寧なものづくりで提供し、着る人の誇りや自信の源になることを指針としています。
D'URBANのスーツは、全て自社工場であるダーバン宮崎ソーイングの高い技術で生産しています。最近は、中国などに外注する方がコストを下げられ、生産量もコントロールしやすいことから、業界内でも自社工場を持たないところが多くなっています。特にスーツにおいては、一見しただけではどこで作っても変わらないだろうと思われるかもしれません。しかし私たちがいつもお伝えしているのは、「出来上がったときの顔が違う」ということ。宮崎ソーイングでは日本人の細やかな感性に合わせ、僅かなシワやたるみも出さないよう何着もサンプルを作り、妥協することなく検討を重ねて作り上げていきます。例え同じパターンでも、外注工場で作ると違った顔に仕上がるのです。この品質を今後も継承していくために、「宮崎ソーイングで作ったスーツでなければ、D'URBANの着心地は味わえない」と知っていただき、自社工場の価値向上に努めることも、私たちの重要な任務だと考えています。

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格好良さの追求が、機能性につながる D'URBANでは "日本人が着て格好良く見えるスーツ作り"を常に追求し、窮屈感のないすっきりとしたシルエットにこだわっています。
日本人の体型を考慮したパターンは最適な重量配分がなされ、初めて試着されるお客様は必ずと言っていいほど「軽いね」と、その着用感に驚かれます。 今は多くの方がスーツに機能性を求められますが、このような見た目の格好良さの追求は着心地の良さにもつながり、それが長年ご支持をいただけている理由の一つになっていると思います。
また日本の気候に適した素材選びにもこだわり、裏地においては多くのスーツでベンベルグを採用しています。価格帯やラインによっては一部他素材のも使っていますが、裏地の素材によって着用時の快適性に大きな違いが出ることは、お客様の間でも徐々に認識が広まってきています。というのも、私たちは対面販売で素材の特性をしっかりとお伝えすることを重要視しているからです。スーツは見た目だけでは違いがわかりにくいため、お客様に見えない部分へのこだわりについて丁寧にご説明することで価値を感じていただき、値段にも納得していただいただいた上でお買い上げいただくことを目指しています。
そのため全国各地で行う店長会議には素材を手掛けてくださる企業の方にも同行していただき、販売スタッフに直接、素材の特性や背景などの説明をお願いすることもあります。「ここまでするブランドはなかなかない」と言われますが、おかげで店頭スタッフ一人一人が素材に対する豊富な知識を持ってセールスにあたれていると思いますね。

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進化し続ける盛夏ライン『MONSOON』D'URBANの盛夏ライン「MONSOON」は、まだ"クールビズ"という言葉も盛夏用スーツも存在していなかった1995年、当時の社長から「高温多湿な日本の夏を快適に過ごせる、なおかつ格好いいスーツをD'URBANから出そう」と号令がかかり、開発におよそ2年を費やして1997年に発売しました。開発当初から表地、裏地、芯地の各素材メーカーさんにも参加していただき、それぞれに通気性の追求を依頼。旭化成さんには、吸放湿性に優れ、かつ接触冷感機能のある裏地を別注で開発していただきました。ベンベルグの長い歴史の中でも、特定ブランド向けの無地裏地で別注開発を手掛けたのは、「MONSOON」が初めての試みだったそうです。また、旭化成さんには実証実験にもご協力いただきました。様々な観点からデータを採ることにより、感覚だけでなく科学的にもお客様に快適性を示すことができています。
MONSOON は2017年に20周年を迎えましたが、この間も絶えず改良を重ねてきました。MONSOON を含むD'URBANのスーツは、レナウンアパレル科学研究所という自社の試験機関の厳重な試験をクリアし、品質判定を受けなければ製品化することができません。その厳しさは業界内でも有名で、しばしば素材メーカーさんや生地屋さんから嫌がられるほどです(笑)。そんな難関を突破し、商業水洗い対応をキープしたまま表地にコットンや麻を入れてトレンド性を出したり、裏地なら点接触による高い肌離れ性を実現したりと、進化を続けています。今年はストレッチ性のあるベンベルグの裏地を新たに開発していただきました。今後も高品質かつ、より価値の高いMONSOONにできるよう、旭化成さんをはじめ素材メーカーの皆さんにご協力いただきながら取り組んでいきたいですね。

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この先の50年も選ばれるブランドであるために2020年、D'URBAN は50周年を迎えます。日本のスーツを中心としたビジネスブランドでこれだけ長く続けられているブランドは、おそらく他にありません。ブランド設立時、ターゲットを「35歳、都会人」としていましたが、今も変わらずに同じ年齢層の方からご支持いただけているのは、昔からのお客様が親から子へ、子から孫へと若い世代に繋いでいただいていることも大きいと思います。ここから50年先もブランドを繋いでいくために、今、ブランド内で「継承」への意識を改めて強くしています。
例えば表素材を決めるとき、必ず「マス見本」という大きな織物をつくり、色、柄、クオリティを細かく確認して厳選すること。時間とコストがかかる工程で、今はほとんどのブランドがこれを省き、テキスタイルメーカーが提示する既存の色柄を採用しています。確かにその方が合理的なのかもしれません。それでもD'URBANは、手間暇をかけて一からオリジナル生地を開発するという誇るべき伝統を今後も守っていきたいと考えています。 ファストファッションの台頭によりカジュアルウエア市場で価格破壊が起こり、その影響はスーツ業界にも及んでいます。そんな中、お客様に「本物のスーツの価値」に気づいていただくために、D'URBANはこれからもブレることなく丁寧なものづくりを続け、そのこだわりを広く発信していきたいと思います。

志村 裕之(しむら・ひろゆき)

2000年株式会社ダーバン(現・株式会社レナウン)入社。約2年間の店頭販売を経て、2002年より本社勤務となり、ビジネス、カジュアルブランドのマーチャンダイザーやディストリビューターを担当。入社以来、メンズブランド一筋で、ビジネスのMDは10年の経験を持つ。2013年よりダーバンのMDとなり、2017年より企画商品部ユニットマネージャーを担う。

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