1.社会背景-4つのメガトレンド
TECHNOLOGY
テクノロジー
「デジタル・ドリーム」
- 現実と仮想世界の境界線はこれまで以上に曖昧になり、両者が相互に影響し合うようになっている。
- これまでとは異なる方法で現実世界に暮らし、日々の幸福度を高め、想像力を刺激するためにテクノロジーが使われる。
- AIやテクノロジーと人間が互いの強みを活かす協力関係を築き、新たなアイデアを生み出すことが求められている。
COUNTERCULTURE
カウンターカルチャー
「アンチ同調主義」
- グローバル化や画一化が進むほど、個性や相違を支持する声がますます高まる。
- 異なるバックグラウンドや個性を尊重し、共感し合い、協力することにより、持続可能でより豊かな社会が築かれる。
- 多様性と個性は、社会や経済、文化、さらに個人の成長においても重要な要素となり、今後ますます重視される。
LUXURY
ラグジュアリー
「ネオ・エピキュリアン(新快楽主義)」
- 日々の生活や時間の中で、美意識を持って暮らしをより豊かに楽しもうとする傾向が見られる。
- スローダウンし、自分自身に充てる時間を増やし、本当に大切なものに焦点を当てる考え方が広がる。
- 本質回帰の流れを受けたタイムレスなエレガンス、高品質にこだわった控えめなラグジュアリーが求められる。
SUSTAINABILITY
サステナビリティ
「自然と人間の健全なバランスを再確立する」
- 世界の不確実性と地球資源の過剰な利用が続くなかで、消費の形を根本的に変えなければならない時代となっている。
- より意識的な消費と行動が、環境に優しい素材やよりサステナブルな生産システムの誕生へと繋がっていく。
- 自然との新しい関係を築く必要性。自然の搾取から、自然と手を携えて世界をよりよくする時代へ。
SPRING & SUMMER 2025
春夏2025年シーズンコンセプト
ORIGINAL BRILLIANCE (オリジナル・ブリリアンス / 個性の輝き)
新たなものが瞬く間に過去となる現代社会では、自身のビジョンと信念を持ち、他と異なる存在であることが重要である。
自身の価値を見出し、それを美しく磨き上げていく努力が求められる。自らの力を誠実に主張することは、現代の世界では不可欠であり、自分以上に自身の物語を語れる者はいない。多様性を単に祝福するのではなく、自ら発信すること、そして様々な発信源から学び、刺激し合うことが重要である。
2.カラー傾向
春夏2025年カラー全体傾向
春夏2025年は、色彩が持つ感情や感覚的な反応を呼び覚ます力に注目する。仮想空間を想像させる人工的で刺激のあるエレクトリックカラーや、喜びや陽気な気分をもたらす原色やビビッドカラー、スローダウンと心地よいくつろぎをもたらす官能性が加わったベーシックカラー、癒しをもたらすと共に環境への意識を高めるナチュラルカラーなどを展開する。
春夏2025年注目カラーとポイント (*印は最重要カラー)
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①グリーン系(C, T, W, X, Y)
- 今シーズンはナチュラルなグリーンから人工的な色合いまでグリーンのバリエーションが広がる。明るく清涼感のあるペパーミントグリーン、夏に癒しをもたらすアイス抹茶のグリーン、落ち着いたグレイッシュグリーン、ハーブグリーン、ややクール感のある人工的なグリーン。
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②ブルー系(A, F, J, b)
- ブルーは個性のある色みで展開する。バーチャルな雰囲気を持つ深く鮮やかなエレクトリックブルー、やや赤みを帯びたコーンフラワーブルー、ガッシュ絵の具のように不透明なセルリアンブルー、非常にダークなミッドナイトブルー。
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③イエロー、オレンジ系(G, H, Q, L, R)
- 明るさと陽気さをもたらすイエローとオレンジ。わずかに色みのあるペールイエロー、主張の強いブライトイエロー、夏の陽光をイメージしたアンバーイエロー、若々しさを表現するピンク味を帯びたオレンジ、エキゾチックなブリックオレンジ。
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④フクシア、パープル系(D, M, N)
- フェミニンさやエレガンスを表現するフクシアやパープル系。やや紫がかった大胆なフクシア、深みとしっかりとした色みのあるワインカラー、ライラックの花のような淡いパープル。
- ILLUSION(イリュージョン/幻想)仮想世界の詩的な美しさと刺激を表現するカラーパレット
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近未来的なエレクトリックブルーやホログラム、爽やかなペパーミント、大胆なフクシア、ダークグレー、コーンフラワーブルー、白に近い明るいペールイエロー。
- VIBRANCY(ビブランシー/活気)活力あふれる幸せなハーモニーを生み出すカラーパレット
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強さと輝きを感じさせるイエロー、緑青をおびたグレー、澄んだ空のようなブルー、インパクトのあるレッド、大胆なボルドー。 これらにソフトなオレンジやライラックを組み合わせる。
- GRACIOUS(グレーシャス/上品さ・優雅さ)温かみのある優雅な色合いの贅沢なカラーパレット
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オフホワイトやサンドベージュに、アンバーイエローやブリックオレンジなどの夏らしい暖色、落ち着きをもたらすダークブラウン、アイス抹茶、サテンを彷彿させるゴールドを組み合わせる。
- LANDSCAPE(ランドスケープ/風景)自然と人間の調和・結束をイメージしたカラーパレット
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エクリュ、グレイッシュなグリーンからハーブグリーン、人工的なグリーンまでの濃淡のグリーン系カラー、ナチュラルなグレージュ、明るさを添えるコーラルピオニー、夜空を思わせるミッドナイトブルー。
3.素材傾向
「 アイデンティティー (Identity: 独自性 )」
市場の飽和度が高まり、移り変わりが激しくなる中で、商品やブランドは自身のアイデンティティーを確立し、それをユーザーに明確に伝える必要がある。商品開発において、一貫性のあるアプローチや独自性、魅力的なストーリーを通じて、選択肢の多いユーザーを惹きつける力強い主張が不可欠となる。
アイデンティティー (Identity: 独自性)
- 原料が持つ唯一無二の個性を活かす
- オリジナリティのある触感や表情の表現
- 多様な文化のアイデンティティーに刺激を受ける
- 独自の提案、技術の独創性を追求する
原料
コンフォート・テック
- 夏の長期化で快適性へのニーズが更に高まる。清涼感やウォッシャブルなど日常の快適性を高める機能の充実が求められる。機能を感じさせるテクニカルな外観も注目される。
- スポーツとシティの要素のハイブリッド。春夏2025年はキュプラ複合などによるエレガントな表現に焦点を当てる。ストレッチファイバーによる快適性は不可欠。
- 旅や外出などの機会が増えることで、多用途、軽量感、UVブロック、イージーケアなどへの需要が高まる。
1. N2301-1B 帝人フロンティアDG Pe64Cu33Pu3
4. S9890-SK 福井経編 Ny31Cu55Pu14
クオリティ&リュクス感
- キュプラ100%など、単一の繊維のみを使用し、原料の特長や個性を強調したもの。仕上げやウォッシュなどで原料の多彩な魅力を表現する。
- クワイエット・ラグジュアリーのトレンドの継続を受けた、高品質だが落ち着いた雰囲気の贅沢感の表現。
- シルク × セルロース繊維、またはシルク × リネンやシルク × ヘンプの複合などの、ややカジュアルでコンテンポラリーな雰囲気のリュクス感の表現。
レスポンシブル(責任を果たす)
- 環境に対する責任は全てのプロセスに求められる。原料から 製造、仕上げ、流通まで持続可能な選択肢が更に広がる。
- 原料ではオーガニック、生分解可能な繊維、反毛繊維、環境配慮型のストレッチファイバー、バイオ繊維など多様な提案が広がる。様々なカテゴリーと価格帯への対応が必須。
- リサイクルしやすい素材設計、アニマルフリー、化学薬品や水使用を低減した染色や加工など、技術力を高めて環境への責任を果すことが今まで以上に求められる。
2. 22-356R 山信織物 Cu100 反毛糸使用
糸番手/組織
フィラメント糸の特長と魅力を活かす
- フィラメント糸らしい流麗でなめらかな手触りの表現。精密で完璧な雰囲気のサテンや、軽やかなデシンなど。
- ボイルやオーガンジーなどのシアーなエアリー感。軽やかでハリのある触感を表現するためのハイカウントのフィラメント糸。
- フィラメント糸とストレッチファイバーとの複合により、エレガントなスポーツ感覚や女性らしいボディコンシャス・シルエットを表現する。
ナチュラル且つシックなスパンの細番手から中番手
- 春夏2025年は綿や麻とキュプラなどのセルロース繊維の複合による、しなやかさを表現する細番手から中番手のスパン糸を提案する。
- これらの糸を使用したカジュアル・シックな綾織やプレーンな平織り。中番手の麻混糸を使用したリラックス感のある平織り。
- ウェルビーイングを高めるようなソフトで優しい触感の表現。 薄手ニットやジャージー用の細番手から中番手のスパン糸。
繊細なファンシーヤーン、杢糸、段染め糸
- 控えめではあるが他者との違いを表現するファンシーさわずかにイレギュラーな太糸やスラブ糸、ネップ系、強撚糸使いなど。
- 上品で穏やかな色調のカラー杢糸。ハイカウントの糸で繊細な表情効果を表現する。
- レトロなポップさを表現する段染め糸。多色使いと光沢感で陽気なムードを表現する。
3. KQ7391 KTC Li58Cu40Si2
テクスチャー/ タッチ
なめらかさ、端正さ
- 都会的なエレガンス感覚を表現するなめらかで端正なテクスチャー。シックなテーラリングに適したもの。
- 緻密且つ組織が明確にわかるキャバルリーツイルやサージ、またはサテンなどの綾組織。実体感のあるコンパクトな平織り。
- ストレッチファイバーを高混率で複合した弾力のあるスポーティなスムースやWジャージー、洗練感のある細畝リブニット。
控えめなラフさ、細かくファンシーなレリーフ
- リネン混の上品な粗野感。植物繊維らしさを表現するややルーズな組織や、軽いウォッシュによるイレギュラーなしわやしぼ。糸つやで粗さを相殺する。
- ジャカード組織による一見無地調の柄。マット / シャイニーの糸で描いたわずかな凹凸のある抽象柄や、太糸を使用した浮き彫りモチーフ風の無地柄。
- 細かいブリスター柄のWジャージー、シャーリング風やワッフル風などのファンシーなレリーフを表現したジャージーやニット。
丸みのあるドレープ、しなやかさ
- リラックス感のある流麗さを表現する丸みのあるドレープ。 キュプラなどのセルロース繊維やストレッチファイバーの複合でしなやかさを高める。
- 肌離れの良いサラサラとした表面感や質感と流麗感の組み合わせ。ボリューミーなスカートやワイドパンツ、オーバージャケットなどに向けた素材。
- 心地よいフィット感とくつろぎを併せ持つニットやジャージー。快適な着心地のシンプルでフェミニンなニットやジャージー。
エレガントなナチュラル感
- 春夏2025年のナチュラル感の表現は、自然らしさを表現する植物繊維の粗い表情とシルキーな質感の組み合わせなど、粗さと洗練の融合がポイントとなる。
- ナチュラルな触感 + フェミニンな淡色で展開するデニムなど、カジュアル感を抑えたデニム素材の提案。
- コットン / セルロース混の非常に薄手のハイゲージニットや、つや感のあるリブニットなど、エレガンスが加わったデイリー向けニット素材。
外観/柄
光沢: シャイニー & スパークリング
- パフォーマンスウェアからデイリーウェアまで、昼夜を問わず、輝きや光沢を求める流れが広がる。
- 近未来的な雰囲気を表現するホログラム風の輝き、ダークベースに強い輝きを組み合わせたギャラクシー風、繊細な柄を描くメタリック調のプリント。
- ジャージーやニットにも輝きを与える。ラメ糸を使用したプレーティング組織のニットやジャージー、グリッターやスパンコール装飾など。
軽やかな透け感、ファンシーな透け感
- 女性の体を賛美するボディプライズの流れが継続し、シースルー素材の需要が高まる。
- シンプルでエアリーなカラーオーガンジーや、見る角度によって色やきらめきが異なるオーロラ風に輝くオーガンジーやボイル。
- 透け感と不透明や、立体的な装飾を組み合わせたファンシーな半透明素材。ストレッチファイバーを複合したニットやジャージーでボディコンシャスなアイテムにも対応する。
1. MS8325B ミタショー Cu100
2. Y4719-1 帝人フロンティアDG Cu87Pe12Pu1
3. SM64506 中伝毛織 Cd39Cu28Co23Ny10
4. MS11744D-6700 ミタショー Cu51Ny26Pe23
5. MT12562 ミタショー Pe62Cu30Ny8
マルチカルチャー
- 世界の地域の伝統的な文化から、ストリートカルチャーやポップカルチャーまで、様々な文化の個性にインスピレーションを得た柄。
- カラフルな太糸を使用したエスニック風の幾何学柄や、多色使いのボーダー柄。
- 明るい色で刷新したマドラスチェック、アーティスティックなタイダイやグラデーション風の柄、多色使いの段染めなど。
新たな視点で見た自然
- 仮想世界の自然やエデンの園をイメージした幻想的な柄。動物、鉱物、植物などを題材に、近未来的な雰囲気の画像処理をした柄。
- 深海などの水の世界をイメージした、変容や動きを感じさせる視覚効果や、顕微鏡で覗いたような世界の描写。
- 想像上の花や架空の植物を描いた、詩的で空想的な柄。
4.ベンベルグ® による各社との取り組み
× 山信織物
ベンベルグ® 反毛糸使いファブリック
ベンベルグ® 裏地のC反を使用した反毛糸を活用しています。
緯糸にベンベルグ反毛糸(反毛20% バージン80%)40/- を使用し、なめらかな風合い・反毛糸ならではの絶妙な色合いが出ています。
山信織物では他にも、アパレルで余った生地を反毛し製品にする取り組みを行っています。
反毛ベンベルグ®糸の工程
キズなど欠点のあるベンベルグ®︎裏地C反の生機や生地みみを反毛、混綿し、再びベンベルグ®︎の糸に紡績します。
もったいない精神で、ベンベルグ®︎からベンベルグ®︎に。
形を変えながら、原料が長く使用されるよう循環していきます。
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①生地カット
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②反毛
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③混打綿
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④カーディング・練条
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⑤粗紡
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⑥精紡・巻糸
- ①使用できない状態の生地をタテ、ヨコ 約2cm〜3cmに細かくカットします。
- ②カット生地を梳(す)き、ほぐしワタの状態にします。
- ③反毛されたワタとベンベルグ®︎のバージンワタを均等に混ぜラップという中間製品にします。
- ④シート状のラップをカード(梳綿)機を用い、さらに櫛削り繊維一本一本に分離し、平行にし小さいゴミや短い繊維を取り除きます。残った長い繊維を平行状態に揃え収束し、紐状の「スライバー」にします。
6本から8本合わせ6倍〜8倍に引き伸ばしながら太さのムラが少なくなった「練条スライバー」にします。 - ⑤粗紡機で練条スライバーをさらに引き伸ばしながら、撚りをかけてボビンに「粗糸」を巻き取ります。
- ⑥通常紡績同様に、粗糸をさらに引き伸ばし、所定の太さに細くし、撚りをかけ糸をボビンに巻き取ります。
さらに何本か合わせて大きなパッケージに巻き返し、欠点(ネップやゴミの混入、糸むら)を除去し、一定量を最終形態のコーン(円錐状に巻いたもの)やチーズ(円筒状に巻いたもの)に巻き取ります。
× 滝善
SAIYAN CUPRO サイヤンキュプラ
1/25
Biodegradable Poyester 50%
Cupro 50%
生分解ポリエステル×Cuで環境に配慮した素材です。
光沢としなやかさを持ち合わせ、秋口に適したハイゲージ用のストレッチ糸。24色のオリジナルカラーを展開しています。
仕立ては、1kg/CONE (投入ベース) です。
× 丸萬
高い汎用性の機能ファブリック・キュアセル®
1.& 2. SP3547 Pe55Cu45 キュアセル®ソロ後染めストレッチ 3. SP2955 Cu 63Pe37 キュアセル®ツイル
4. SP-3781 Cu63Pe37 タテシワ加工
キュアセル®はキュプラとポリエステルの特殊な紡績糸を使用したハイブリッドテキスタイルです。
ご家庭でお洗濯ができるイージーケア性を兼ね備え、広いアイテムに使っていただけます。
キュアセル®(Cu63Pe37)ストレッチは高密度で、コンパクト。
シャープなイメージのオーバーシャツや軽めのスーツにも最適です。
また、プリーツ加工も可能です。
キュアセル®は株式会社丸萬様の登録商標です。
× カナーレ
Upcycling Bemberg®
尾州の匠の技で裏地をファンシーテキスタイルへ
1. 経、緯ともにテープヤーンを使用 2. フリンジを活かした製品 3. 出来立てのバイヤステープ 4. シャトルに巻く前のテープ
5. よい音が響き、シャトル織機が動く工場内
柔らかくしなやかなベンベルグ® 裏地を活かさない手はない。
残反や加工場で発生するC反等、通常の裏地用途として使用できないベンベルグ®裏地をバイヤステープにカットし、尾州産地のカナーレで昔ながらのシャトル織機を用い、匠の技術と感性でとてもシックなファンシーファブリックに生まれ変わりました。
経糸、緯糸にも使われたテープは、ベンベルグ® のしなやかさをそのままに、圧倒的な存在感の仕上がりです。
なお、この取り組みに関するご相談は内容によって承れないこともございますので、ご了承をお願いいたします。
生地についてのお問い合わせ先
旭化成株式会社 ベンベルグ事業部 ベンベルグ第一営業部
Tel:06-7636-3360