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暮らしのコツ

yellow 楽園写真家が語る「楽園のあかり」写真家:三好和義

リゾートホテルでは心身ともにリラックスできて、ぐっすりと眠ることができる。
それは、リゾートホテルの「夜のあかり」と関係があるのかもしれません。
世界のリゾートを写真に収めてきた「楽園写真家」の三好和義さんに、
これまで撮影してきた「楽園」の印象深い「夜のあかり」を語っていただきます。
美しい写真と三好さんの言葉から、快適な暮らしの照明のヒントを見つけてください。
第2回目は世界遺産の島、屋久島の「sankara hotel & spa 屋久島」。

屋久島の「サンカラリゾートホテル」

水面にゆらめく灯りと、壁面の表情を際立てる灯り。

灯りのゆらぎに呼び起こされる記憶

先にも書きましたが、「サンカラ」でひときわ美しい光景は、夜、カジュアルレストランに向かうプール沿いのアプローチではないかと思います。高台から海を見渡せる「サンカラ」のプールは、太陽が高い昼間の時間はもちろん、海風で水面がわずかに波立つ夜にも、心ときめく光景をゲストに提供してくれます。その楽園の景色の大切な要素は、「灯り」、そして「ゆらぎ」です。水にゆらぐ光を眺めていると、どこか懐かしい、深い安らぎを感じる、そんな経験を持つ人は多いのではないでしょうか。私も、ゆらめく灯りには、ただ均一に明るく灯っている照明とは違い、特別な感情を呼び起こす力があるように思います。これは私たちの記憶の奥底に、夜の危険の闇の中で、ゆらめく炎に家族や仲間が集まり、安らいだ、遠い祖先たちの心が宿っているからではないかと、想いを巡らすこともできるでしょう。「サンカラ」のレストランまでのアプローチでは、私たちの内なる自然を呼び起こす「灯りのゆらぎ」に包まれる、特別な時間を体験することができます。灯りは「明るさ」だけを提供するものではないのです。

割石の壁面を際立てる灯り

安らぎを求めるゲストたちは、リゾートホテルには、華やかで派手な明るさよりも、落ち着いた光の雰囲気を求めます。私たちは、自分が立っている場所は暗くても、視野に入る風景が明るいと「明るさ感」を感じるものです。例えば「サンカラ」では、建物の壁面が照明で照らされているので、外では手元や足元の灯りはわずかでも、暗さを感じることはなく、明暗のバランスのとれた環境が演出されています。「サンカラ」の建物は、石積み建築のような割石肌の外壁が特長です。入り口まわりの外壁には、上方から舐めるように照らす間接照明の灯具が付けられていて、点灯時には割石肌の自然な凹凸が美しい陰影を描き出していました。和紙や石、土壁のように平坦ではない自然素材は、間接照明と組み合わせることで、灯りだけで表情豊かな光景をつくりだすことができるのです。水盤と灯りの組み合わせ。壁の表情を描き出す美しい光。「サンカラ」の「楽園のあかり」は、私たちの日常生活を豊かにする、灯りの知恵が散りばめられた、示唆に富んだ例だと思います。 「楽園のあかり」が、みなさんの暮らしの灯りを考え直すきっかけになりますように。

「楽園のあかり」を暮らしに取り入れる

「サンカラ」のライブラリーラウンジには、部屋全体を照らすような大きな照明器具はありません。その代わり、小さな灯りがいくつも空間内に配されて、手元に必要な明るさを確保しているのです。例えば書棚の棚板の下にも、小さな間接照明が灯され、書棚をほんのりと照らしていました。本が置かれた場所だからといって、学校やオフィスのような照明を天井に付けたのでは、雰囲気が損なわれるばかりか、光がガラスに反射して夜景を楽しむこともできなくなります。大きな照明ひとつで空間全体の明るさをまかなうのではなく、小さな光を組み合わせて心地よい明暗のバランスをつくりだす手法。これは日頃の暮らしの中でも生かすことができるのではないでしょうか。

間接照明の手法について

Kazuyoshi Miyoshi
Kazuyoshi Miyoshi

三好和義

みよし・かずよし ● 1958年徳島生まれ。85年初めての写真集「RAKUEN」で木村伊兵衛賞を受賞。以降「楽園」をテーマにタヒチ、モルディブ、ハワイをはじめ世界各地で撮影。その後も南国だけでなくサハラ、ヒマラヤ、チベットなどにも「楽園」を求めて撮影。その多くは写真集として発表。近年は伊勢神宮、屋久島、仏像など日本での撮影も多い。近著は「京都の御所と離宮」(朝日新聞出版)。日本の世界遺産を撮った作品は国際交流基金により世界中を巡回中。

ご紹介頂いた宿 : sankara hotel & spa 屋久島

鹿児島県熊毛郡屋久島町麦生字萩野上553
tel. 0997-47-3488 http://www.sankarahotel-spa.com/

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