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暮らしのコツ

楽園写真家が語る「楽園のあかり2」vol.4写真家:三好和義

リゾートホテルでは心身ともにリラックスできて、ぐっすりと眠ることができた。そんな経験をした方は多いのでは。それは、リゾートホテルの「夜のあかり」と関係があるのかもしれません。世界のリゾートを写真に収めてきた「楽園写真家」の三好和義さんに、「楽園」の印象深い「夜のあかり」を語っていただくコラム「楽園のあかり」の第2弾がスタートしました。美しい写真と三好さんの言葉から、快適な暮らしの照明のヒントを見つけてください。第4回は那須高原の緑に抱かれた森のリゾート二期倶楽部の東館、「NIKI CLUB & SPA」の灯りのお話です。

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時を超えたバランスで理想の別荘をデザインする。二期倶楽部(那須/栃木県)わずか6室の小さなオーベルジュからスタートし、現在は4万2000坪の広大な敷地に41室のゲストルームを持つ那須高原の「にき倶楽部1986」。那須の自然に魅せられたオーナーが丹誠込めて育てあげ、今日では日本を代表する森林リゾートとして世界で知られるようになりました。今回、みなさんにご紹介するのは、2003年に完成した東館「NIKI CLUB & SPA」のゲストルームです。デザインを手掛けたのは、ザ・コンランショップの創設者で、ロンドンを拠点とするインテリアデザイナー、テレンス・コンラン卿のデザインチーム。そのデザインは日常と非日常の絶妙なバランスを保ちながら、森の光と一体になった心地良い別荘体験へと導いてくれます。

周囲と調和するバランスのとれた灯り

完成した東館を訪れた時、実験的な空間だなと思いました。面白いデザイン演出がいたるところにあって、デザイナーのウイットが感じられる設えも魅力的です。実験的とは言っても、最先端を体現するハイデザインの非日常空間ではなく、モダンとクラシックが溶け合うような、不思議な既視感を感じる空間でした。昔の海外のインテリア雑誌で見たような室内といった雰囲気でしょうか。ランドスケープ、建築、インテリアと見事に調律された統一感は気持ち良く、コンラン卿が考える美しい空間とは何かが伝わってくるようです。現実離れした空間ではないけれど、日常の空間でもない。日々の暮らしを離れ休日を過ごす別荘を持てるなら、こういう設えも良いなと思う人は多いはずです。東館の心地良さは、何かが先鋭的に突出するのではなく、建築家によって整えられた絶妙なバランスに由来するのだと思います。そのバランスは室内の灯りからも感じられます。

深い森に包まれるリゾートホテル

ゲストルームはそれぞれ独立した一棟で、さまざまなタイプのゲストルームが用意されています。写真の2階建てのパビリオン・メゾネットには、窓の掃除が心配になるほどの大きな開口部が設けられていますが、森の深い緑に包まれているので太陽の光も穏やかです。この大きな窓のおかげで、ゲストは室内にいながら自然との一体感を感じることができます。室内照明は何か特別な仕掛けは見当たらず、壁や天井に埋込まれた照明器具に、20世紀の名作照明器具が配されたインテリアの灯りは、気を衒うことなく、普段使いの光で空間を照らしています。しかし、その普通の照明も日常の暮らしの光とはわずかに違い、どんな器具を選び、どの場所に器具を置くのか、デザイナーは全体のバランスを整えながら、遊びをうまく組み込みながら独自の工夫を凝らしています。
2階のベッドルームには木々の間から朝日が差し込み、小鳥の鳴き声とともに森の朝が訪れます。日常から離れた特別な日常。私たちが夢みる理想の別荘を、二期倶楽部はデザイナーとともに実現したのではないでしょうか。

「楽園のあかり」が、みなさんの暮らしの灯りを考え直すきっかけになりますように。

Kazuyoshi Miyoshi
Kazuyoshi Miyoshi

三好和義

みよし・かずよし ● 1958年徳島生まれ。85年初めての写真集「RAKUEN」で木村伊兵衛賞を受賞。以降「楽園」をテーマにタヒチ、モルディブ、ハワイをはじめ世界各地で撮影。その後も南国だけでなくサハラ、ヒマラヤ、チベットなどにも「楽園」を求めて撮影。その多くは写真集として発表。近年は伊勢神宮、屋久島、仏像など日本での撮影も多い。近著は『死ぬまでに絶対行きたい楽園リゾート』(PHP)。日本の世界遺産を撮った作品は国際交流基金により世界中を巡回中。

ご紹介頂いた宿 : 二期倶楽部

栃木県那須郡那須町高久乙道下2301 tel. 0287-78-2215 http://www.nikiclub.jp/

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