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暮らしのコツ

「世界のくらし時計」サンパウロ 夜編

夕暮れから夕食、ナイトライフまで

 日本人にとってはとても不思議なのですが、日中でも夕方でもブラジル人はボーッと外を眺めているのです。本当に文字通りボーッと。窓から外を眺めている人もいるし、田舎などでは家の前に椅子を出して、道行く人をボーッと見ています。夕涼みなのか、知り合いが通った時の社交の場なのか分かりませんが、本当に1時間でも2時間でもただボーッと外を眺めているのです。忙しい日本人にはなかなか理解できないのですが、ブラジル人の友人に言わせると「セコセコと忙しい日本人が理解できない」と言われてしまいました。昼でも夕方でも、外に出てボーッと風景を眺める。ここには電気やテレビといった人工物は一切ありません。ただ、そこにある陽の光の中で、暮れゆく夕日の中で、特に何もすることなく、ただ、時を過ごすのです。
 夕食については「朝のひかり」でも書きましたが、医者が「夜ご飯は食べるな」と言うくらい、21時以降の炭水化物などはご法度と言われています。そのため、夕食はサラダや軽食ですませる人が多いのです。街の通りの角々にはビールや定食を出す「バール」と呼ばれる定食屋のような飲食店が早朝6時頃から深夜0時頃まで開いて、そこでビールを飲み、語り合う市民も多いようです。
 スキルアップや再就職のために夜間、大学や学校などへ通う人もたくさんいます。ブラジルでは夜間でも昼間でも大学の卒業資格はまったく同じ。ですから、30~40代の大学生も多く、社会人大学生は昼間は働いて、夜、大学へ通っています。
 夕食後から就寝までは、家族でテレビを見たり、ショッピングセンターへ映画を観に行く人も多いようです。サッカーの試合がある日は、多くの人がテレビ中継でサッカーを見たり、また、お目当てのチームがある人はスタジアムまで応援に行く人もいます。応援するチームがゴールをすると、花火があちこちで鳴ります。そのほか、2月のカーニバルに向けて、カーニバル・チームに入っている人たちは、前年の12月頃から毎晩のように練習に行きます。

夜のあかりに欠かせないロウソク

夜のあかりに欠かせないロウソク

 ブラジルの電気は70%が水力発電です。乾季にダムのある地域に雨が降らないと、電力不足に陥りがちです。12年ほど前、雨不足のため、極端な電力不足になり、前年同月比より多く電気を使った家庭には罰金が課せられたこともありました。節電に協力せず、電気代が3カ月連続で前年同月比を超えた場合は、通電停止という強制的な節電方法でした。この時、照明を白熱灯から省エネ型の蛍光灯ランプに交換する人々が増え、蛍光灯ランプが一挙にブラジルに広まったような気がします。
 電力を供給するシステムが悪いのか、送電線の問題なのか、停電は年中、起こります。そのため家庭にロウソクが欠かせません。宗教(カトリック)的な意味合いからもロウソクを灯す家があり、ブラジルには一度点火したら1週間保つ太いロウソクや、お洒落なものもたくさん売られています。
 停電が日常茶飯事のため、皆、慣れたもので、交差点で信号機が止まっても、上手に譲り合って事故も起きません。夜の停電でも、皆、慌てることなく、ロウソクを灯し、早寝してしまいます。昼間の停電はオフィスの仕事に支障が出ますが、こんな時も皆、慌てずにゆったりしています。「神からもらった休み」とばかりに、陽の光のある道端に出て、タバコを吸ったり、カフェを飲んだりしながら、友人たちと歓談しています。

安眠のための習慣はありますか?

カモミールやレモングラスのお茶、パッションフルーツのジュースなどは精神を落ち着かせ、ゆっくりゆったりと眠れるので、夜に飲むお茶としては、とても良いとされています。

サンパウロ市民の休日の過ごし方は?

週末や休日は家族とのんびり過ごすのが一般的です。ファミリーや友人同士で集まって、誕生会やバーベキューパーティーなどをします。パーティーがとても好きな国民性です。国民の約75%はカトリック信者なので、土日には教会へ通う人も結構います。

ブラジル連邦共和国

人口

約1億9,100万人(2010年国勢調査)

面積

851.2万㎢(日本の22.5倍)

首都

ブラジリア

宗教

キリスト教(カトリック約74%、
プロテスタント約15%)

時間帯

BRT=UTC −3:00
(日本との時差は −12:00)

首都はサンパウロから1,190キロ離れた計画都市ブラジリアですが、商業・文化・ビジネスの中心地は実質サンパウロです。かつての首都で、風光明媚な観光都市リオデジャネイロと並び、商業・文化・人口・経済でブラジルを牽引する都市です。日本で例えるなら、リオが京都・大阪といった歴史のある産業都市なら、サンパウロは東京という感じでしょうか。サンパウロは人口1,100万人、サンパウロ市近郊を含む都市圏人口では2,039万人で、世界第8位、南半球では第1位の大都会です。域内総生産(GRP)も3,880億ドルで、世界第10位、南米では第1位です。

プロフィール

大久保純子●茨城県生まれ。1997年よりサンパウロ在住。東京で専門紙の記者を経て、ブラジル邦字紙に2年間勤務。現在はフリー。移民を取材に来ていたが、気づくと自身も移民になっていた。2005年には母も呼び寄せてシルバー移住にも成功。ライフワークとして、移民の諸先輩方の話を記録するインターネットラジオ「ブラジル日和」(http://www.100nen.com.br/ja/radio/)を不定期放送。「婦人公論」などへの執筆。著書に「女たちのブラジル移住史」(共著、毎日新聞社刊)。http://ameblo.jp/brako/

松本浩治●大阪生まれ。1994年からブラジルに在住。日伯毎日新聞社を経て、現在はサンパウロ新聞社会記者として活躍。ブラジル各地域の日系人移住地などの取材活動を行っている。http://www.100nen.com.br/ja/matsumoto/

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