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暮らしのコツ

「世界のくらし時計」バルセロナ 夜編
2004年に再開発されたフォーラム地区の公園にある時計。風に合わせて動き、時間、方位、湿度、風力などいろいろなデータを表示しています。真昼のような明るさですが、時刻は午後5時25分を指しています。

バルセロナのナイトライフ

ここ地中海バルセロナ、ひいてはスペインの生活時間は日本に比べると随分のんびりしているように聞こえます。朝食を8時から9時に取り、午前中の軽食を11時から12時頃に食べ、時にはお酒と一緒にランチを楽しみながら昼休みは14時から二時間。仕事を終えて夕食は早くても21時頃、週末の夜のパーティーは開始時刻が23時や24時、などということも珍しくなく、若い人たちは朝の6時、7時まで踊ったりおしゃべりしたりすることもあります。
 この街に暮らし始めた頃は、シエスタの習慣や人々の陽気な性格がそうさせているのだろうと思っていましたが、今は実はそれだけでなく、むしろこの国と太陽の関係によるところが大きいのでは、と感じるようになりました。というのも、夏のバルセロナの夜は本当に明るいのです。例えば夏至の6月23日、一年で最も昼が長く夜が短い日の日没は夜21時半。太陽が沈んだ後も薄明るい夕方のような空が22時過ぎまで続きます。9月上旬の現在、日没の時刻は20時頃。夏至に比べると日が短くなったのを感じますが、それでも夜の9時近くまで真っ暗にはなりません。

子供の夜更かしにはピクニック!

子供の夜更かしにはピクニック!

 こちらの学校の夏休みは、ちょうど夏至に始まって、新学期は9月12日から。2カ月半もある長い夏休みを過ごす子供たちの規則正しい生活をキープするのは容易なことではないのです。夏休み前には、なんとか21時半には寝ていた子供たちも、夏休みが始まってそれこそ時計ではなく太陽の光とともにのんびりと暮らし始めるようになると、夜空がまだ明るいのに「もう寝る時間だよ」と誘っても、「え~まだ夜になっていないよ!」といつまでも遊んでいたがります。当然19時過ぎに取る夕食のときも、その前後にお風呂に入るときにも空が明るいので、子供たちにとってはまだ夕方なのです。
 そんなわけで私達がこの夏に見つけた「夜の明るい夏に子供を早寝させる特効薬」は、なんと浜辺に夕食を持ってピクニックへ行くこと。夏の日中は日差しも強く外も30度を超える暑さなので、浜辺で遊ばせるのは日焼けや熱中症を考えると少し危険ですが、日が沈みかける頃は外気は涼しくなり、でも海水がほどよく温まって泳ぎやすくなっている海に、できたてのあつあつの夕食をお弁当箱に詰め、さめないうちにトラムに乗って海へと出かけます。
人の混雑も一段落した浜辺でひと泳ぎして海を見ながらのんびりご飯、そのあと夜になる前に21時頃帰宅して、シャワーをさっと浴びてベッドに入ると、泳いだ疲れが一気に出て子供たちもぐっすり眠ってくれるのです。
 というわけでこれから頑張って「夏休み時差ボケ」を治して、新学期のスタートです。

大人が夜パーティーを楽しんでいる間、
子供たちは?

子供ができると夜、パーティーへ出かけることはなかなかできなくなりますが、夫婦間で調整してどちらかだけが出かけたり、また皆に紹介するという意味も含めて子供たちを連れてパーティー出かけることもあります。その場合、他の皆より早めに帰宅しますが、小さな子連れの場合はベビーカーを持っていき、寝てしまったら寝たまま連れて帰ります。「小さな子どもを大人のパーティーに連れていくなんて!」と思われる方も居るかもしれませんが、大人と子供の生活や友人関係のバランスを広い意味で取りながら、「無理せず、でも我慢し過ぎないで」子育てをする態度が許容されているのはとても素敵なことだと思います。

スペイン王国
人口
約4702万人(2010年1月)
面積
約50.6万㎢(日本の約1.3倍)
首都
マドリード
宗教
キリスト教(約75%がカトリック教徒)
時間帯(バルセロナ)
UTC +1(夏時間は+2)

バルセロナ(人口約170万人)は、地中海貿易の拠点として栄えた、スペイン第二の都市。カタルーニャ州の州都です。19世紀後半から目覚しい経済発展を遂げ、今日ではスペイン一の商工業地域となっています。カタルーニャでは、「スペイン人である前にカタルーニャ人である」と言われるほど地方色が強く、地元同士の会話はカタルーニャ語も用いられ、表示や看板の多くはカタルーニャ語とスペイン語(カステヤーノ)で併記されています。1992年のオリンピック開催や強豪サッカークラブで日本でもお馴染みの街。古くから芸術活動が盛んで、ガウディに代表されるモデルニスム芸術誕生の地としても知られています。

プロフィール

坂本知子●スペイン在住14年目。早稲田大学工学部で建築を学び同大学院の修士課程を修了。文化庁派遣芸術家在外研修員として渡西し、2年間、建築家エンリック・ミラージェスの建築設計事務所EMBTに勤務。その後、出版社Actar Publishersで建築とデザインの書籍の編集、展覧会の企画製作などを手がける。2012年にグラフィックデザイナーの夫(David Lorente)と、ブックデザインとその周辺の業務を行う会社SPREADを設立。さらに活動の領域を広げている。「遊んであげない。一緒に遊ぼう!」をモットーに二人の男の子(6歳と3歳)を育児中。
http://www.chocolatmag.com/column/do-it-in-barcelona/   http://www.spread.eu.com/ja

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