50’S RESEARCH PROJECT
疑問 QUESTION
50歳からの人生のためにもっと知りたいことはなんですか?
「50研 &Premium分室」では、『&Premium』読者のコミュニティ「&Premium iD」の会員に対して、50代からの生き方や住まいに関する調査を実施し、370人から回答をいただきました。その結果を元に今回は「50代に向けて、50代からの、知りたいこと」についての調査結果を取り上げ、考察します。住まいづくりや部屋の整え方、人間関係、お金のこと……。『&Premium』読者が、いま知りたいことは?
&Premium分室研究
調査結果 RESULT
『&Premium』読者が知りたいことの
ジャンルは幅広い。
その中でも
「住まい」と「暮らし」が
最大の関心ごと。
(グラフ)50歳からの人生のためにもっと知りたいことはなんですか?
- 住まいづくり、暮らしの整え方
- 家族や友人との人間関係について
- 余暇の時間の過ごし方
- キャリア・働き方
- 健康について
- お金のこと
- その他
最も多く回答が集まったのが「住まいづくり、暮らしの整え方」で33%、次いで「家族や友人との人間関係について」が17%、「余暇の時間の過ごし方」が14%と続く。非常に幅広いジャンルの回答が集まったのも、読者の皆さんにとっても50歳はまだまだハーフタイムであり、もっといろいろなことにトライしたい、知りたいという意欲の表れかもしれません。
考察 ANALYSIS

ブランディングディレクターの
福田春美さんに聞いた、
50歳からの暮らしのこと。
-
HARUMI FUKUDA
AGE 56
「家に飾るもの、使っている道具のすべてが私を形づくる、私の歴史そのもの」と語る福田春美さん。自宅マンションは収納が少ないため、しまいこまず、ほとんどを出しっぱなしにして暮らしている。「どれも気に入っているものだから、常に視界に入り、手が届く場所にあることがむしろ幸せです」
読者から集まった「50歳からの暮らしのためにもっと知りたいこと」の調査結果を受けて、「&Premium分室」の考える50歳からの素敵な暮らしの実践者であるブランディングディレクターの福田春美さんのもとへ訪ねてみることにしました。オンもオフも自分らしさをわすれず、アクティブな福田春美さんのライフスタイルから、これからの暮らしのヒントを探します。
50’S PEOPLE

福田春美さん HARUMI FUKUDA
56歳
ブランディングディレクターライフスタイルストア、ホテル、プロダクト、企業のプロジェクトなどのブランディングを手がける。趣味は料理と旅。著書に自身の生活の様を綴った『ずぼらとこまめ』(主婦と生活社)がある。Instagramで発信する日々のライフスタイルも人気。 instagram.com/haruhamiru
ブランディングディレクターの
福田春美さんに聞いた、
50歳からの暮らしのこと。
「50歳になろうとする頃、『ああ、いよいよ“向こう側”に行くんだな』という感覚になったことをよく覚えています」と、福田春美さんは話す。
「30歳、40歳になるときには、怯えなんて芽生えなかったのに、50歳ともなると、疲れが取れない、近くが見えにくい、どこかが痛い、白髪が増える……など、衰えに気づかないふりができなくなって。そうだ、人生にはゴールがあるんだったと思ったら、少し怖くなってしまって」
焦った福田さんは、編集者や陶芸家など、付き合いのあった人生の先輩たちの日々を観察してみたそうだ。
「皆、楽しそうでした。これまでに蓄積してきた周囲からの信頼や心のゆとりがあるから、新たな仕事を始めたり、週末ごとに旅をしたり。肩ひじ張らず、そんなふうに過ごす彼らを見るうち、1年が経って、51歳を迎える頃は、もう恐怖心で心がソワソワすることがなくなりました」
くだんの先輩たちは、「ほんとうに独特な人たちばかり」とか。
「『こうなりたい』『こう見られたい』といった欲とはだんだんと無縁になる世代だから、どんどん独特に。つまりその人らしいんです。さらにその先、60代に突入した先輩たちともなると、今度は自由すぎ!」
50代を歩み始めると、日本史や、もののつくり、背景、身近な、あるいは地方の風景など、これまであまり興味の湧かなかったものに心惹かれることが増えていった。
「海外よりずっと近くにあるのに、知らないでいるものをこれ以上増やしたくない思いがひとつ。もうひとつには、この年齢だからこそ、少しずつためこんだ知識で楽しめることが増えたということなんじゃないかしら。『夏至の日にはあそこの風景を見たいよね』『あの旅館で、その頃旬のあの料理が食べたいよね』『あの旅館のある土地は、その昔……』といったぐあいに、知識とともに咀嚼する感覚です」
何につけ、“成り立ち”を知ると、向き合い方も味わいも変わる。それこそが、50代からの景色。
「人生の自由度が増すけれど、その自由を謳歌するには、暮らしの筋力が問われる気はします。だから40代までは、自分を肥やす努力や体験を怠らないほうがいいですね」
50歳からの「知りたい」に
答えるQ & A。
Q1. 住まいづくり、暮らしの整え方のヒントが知りたい!
「家は“巣”。家に包まれ、何をするでもなく、ほっと羽を休められることがいちばんです。だから、自分にとっての『居心地のよさ』を大切にしたいですよね。私はあえて断捨離をほとんどしません。だから我が家は20代で買ったアートピースや、最近手に入れた道具もごちゃまぜの空間。それぞれまったくジャンルが異なるんだけど、それこそが自分の歴史で、私らしさの源なんだと思うと、楽しくて。50代に入って、さらにものが増えつつあるから、ますます巣っぽくなり、だからこそホッとできるんです」

Q2. ひとりの時間をどのように過ごすのがいい?
「私は、どんどん旅に出ています。人生がまだ半分もあって、でも半分しかありません。足腰も徐々に弱くなってきて、だからまだ自由がきくうちに、動かなくちゃ!って。旅に限らず、ひとりで何しようと考えこまないことが大切。ひとりの時間こそ、気軽に、ちょっと思いついたことでも試したり行動に移したりしたほうがほうがいいんじゃないでしょうか。50代からは、何につけ『いずれ』ととっておくのではなく『いまやる』をおすすめします」
Q3. 家族や友人との人間関係はこれからどうしていくべき?
「ひとりの時間がないと仕事や自分の心を整えることができないと思っているので、モットーは“つかず離れず”。座右の銘は“好かれなくても嫌われず”です。仕事の関係や友人、家族でも、近づきすぎると相手の良さが見えなくなったり……もあるので、年齢を重ねたからこそ、誰かに依存しすぎる必要もない。大切なのは敬い合う心。感謝やお詫びの言葉をしっかり伝える、そのおかげで良い人間関係を保てています」

Q4. 50代以降も働き続けるために、しておくべきことってありますか?
「『自分のスタイルとは違う』と仕事を選ぶことはせず、自分に回ってくる仕事は何でもやってみてください。誰しも、専門や得意分野以外には積極的になれないもの。知識ゼロならば、勉強が必要だし、変えなければならないことも少なくありません。でも失敗含め、経験すると、課題に向き合う力が培われ、知識の幅も奥行きも増します。それが周囲からの信頼や、新たな仕事にもつながる。どんなボールが来ても打ち返せるようになるのも、トライ&エラーを経た50代から!」

Q5. 自分の体とどう向き合っていく?
「ある仕事でリサーチをしていたとき、いまどきの30代以下の世代の子たちにとって、白髪の素敵な女性って憧れの対象になりうるんだって気づいたんです。老いに抗うのはナンセンスな時代なのかも。基本は自然体で、ちょっとの工夫、ときにズボらみたいな人間味のある人のほうが、若い世代にも共感してもらえそうです。だから私は白髪が目立たないようにと金髪にしていたのをやめました(笑)。ただ、体力は落ちていくし、健康を維持するためには、『なるようになるさ』ではだめ。朝5時に起きて1時間、ウォーキングすることを日課にし、無理のない範囲で体を動かしています。大きな仕事が終わると、ファスティングするのもルーティンに。知らずと溜まったストレスや疲労を流し去り、すべての巡りをよくするためにも効果的です」
Q6. やっぱり気になるお金のことについて。
「35歳ぐらいから、できる範囲で資産運用をしていますが、なんだか難しそうと尻込みしている知人も多くいます。私がよく話すのが、“クラフトNISA”。勝手にそう呼んでいるだけですが、つまり、好きな作家の作品を手に入れるだけです。自宅で眺め、愛でているうちに、何十年か後には、価値が高まっているかもしれません。特にアートやインテリア、道具などが好きな方なら、自身の見立て力を生かすのも一手。もちろん、必要最低限の準備はした上で、ですね」
photo_Shota Matsushima
text_Marika Nakashima
&Premium分室考 SUMMARY
50歳を見つめる先の、住まいの考え方
心身ともに落ち着ける
「家=巣」を大切にすれば、
後半戦もアクティブに
過ごせる。
福田春美さんの自分らしい生き方は、これから50歳を迎える人の背中を力強く押してくれるものです。30代、40代のさまざまな経験を経て、毎日をアクティブに、公私共に新しい可能性をどんどんと広げている福田さんの生活は、ハーフタイム以降の人生を豊かに過ごすためのヒントとなっていくでしょう。そんな福田さんが、心落ち着ける場所である家を“巣”と表現したのが面白い。心安らぐ、自分にとっての心地よい空間があるからこそ、日々さまざまなアクションを起こせる。それが50歳からの豊かなベターライフにつながっていきそうです。

&Premium
「THE GUIDE TO A BETTER LIFE=より良きより良き日々のための案内書」をコンセプトに、毎号、ファッション、インテリア、日用品、ビューティー、食、旅、カルチャーなど、日々を心地よく過ごすために役立つ「もの」や「こと」をお届けしている、"読むと機嫌が良くなる雑誌"です。

余白の在る家 RATIUSRD
50代が理想の暮らしを叶えるための、「間」を設ける
余白の在る家の特徴は、「シェルウォール」という一枚の壁から生まれる、外でも内でもない「間」。
プライバシーを守りながらリビングに広がりをもたらしたり、光や緑を取り込み、四季の移ろいを感じさせたり。50歳を見つめる先にたどり着いた、ゆとりある暮らしを叶える住まいです。