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ゆとりのある暮らし

日常にゆとりをうむ、
共働き家族の「ワークライフバランス」

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仕事や家事・育児に追われ、せわしない毎日を送る共働き家族は少なくない。そんな家庭における課題を社会的な観点から研究し紐解くのが、家族社会学を専門のひとつとする筒井淳也氏だ。立命館大学で教鞭を執りながら「ゆとりうむプロジェクト」の理事長を務める同氏が考える、理想的なワークライフバランス、そして共働き家族が健やかに働き暮らせるLONGLIFEのための秘訣を語ってもらった。

夫婦で家庭の「仕事」を分け合う

農業をはじめ家族で仕事を営むことが主流だった時代が終わって工業化が進んだ結果、1970年代には、男性は会社に勤め、女性は専業主婦として家庭を守る「性別役割分業」が主流となった。その後、女性が家計をサポートするためにパートタイムで働きに出るようになったのは、オイルショックによる不景気や子どもの大学進学率向上による教育費高騰が背景にあったという。

「近年、共働き世帯が増えていると言われていますが、実際には女性は週に35時間未満の短時間勤務が多く、フルタイムで働く女性はほぼ横ばいです。二人で家計を支えているという稼ぎ手意識を持った“共働き家族”はまだまだ少数派に留まっています。その理由は長時間労働や勤務地・職務の変更など、いわゆる “男性的な働き方”が日本企業に根付いているから。このような働き方を夫婦そろって求められると、どうしても『仕事と家庭の両立』は難しくなってしまいます」。

ヘーベルハウスLONGLIFE IS BEAUTIFUL 共働き世帯数の推移グラフ

内閣府「男女共同参画白書 令和4年度版」より引用

もっとも、「仕事と家庭の両立」はワークライフバランスとイコールではないという。

「ワークライフバランスというと職場での仕事と家庭における家事育児のバランスと捉えられがちですが、私は職場と家庭に関係なく、やらなければいけないことが“ワーク”で、人生の楽しみにつながる時間こそが“ライフ”だと考えています。家事や育児に追われている時間は多くの人にとっては“ワーク”にあたるんです」。

仕事でも家庭でも“ワーク”に追われていては、“ライフ”を楽しむ余裕は生まれない。理想的なバランスを実現するにはどうすればよいのだろう。

「“ライフ”を充実させるには自由な時間が必要です。そのキーパーソンとなるのが男性。家事育児はまだまだ女性が担う割合が大きく、それゆえに男性は仕事に集中できています。働き先の企業の制度による部分は大きいですが、家庭におけるワークの負担を夫婦で分け合ってお互いの時間を確保することで、暮らしにゆとりがうまれるはずです」。

家庭を居心地のよい場所にするために

リモートワークが浸透し、働き方が変わりつつある昨今。理想的なワークライフバランスを実現するためにも、家の中の「空間」は重要な役割を果たすという。

「たとえば、アメリカの企業の多くはオフィス環境を整備し、居心地のよい空間づくりに力を入れています。ワークスペースをリラックスできる“ライフスペース”に寄せ、社員のクリエイティビティを引き出す環境を用意することで、優秀な人材を呼び込むことができます。家庭でも環境整備は大切です。どうしたら家事や育児などの家庭内ワークを楽しめるか、理想は家事も育児も楽しめることが一番ですからね。夫婦で話し合って、お互いが気持ちよく過ごせる空間をつくることがワークライフバランスを実現する上でのポイントですね」。

リモートワークは今後も増えていくだろう。ワークとライフの境界が曖昧になりつつある現代において、居心地のよい暮らしには何が必要となるだろうか。

ヘーベルハウスLONGLIFE IS BEAUTIFUL ワークスペースとキッチンを間仕切りで分けた様子

「まずは自分だけのパーソナルスペースを確保すること。お互いに干渉しない空間を持つことで、不必要な軋轢を回避できると思います。完全な個室ではなくても、場合に応じて間仕切壁を開閉できるようにした空間など、お互いの距離感を調整できると良いかもしれません」。

程よい距離感を確保できる自分好みにカスタマイズしたパーソナルスペースは、ワークにもライフにもいい影響を与えてくれそうだ。

試行錯誤を重ね、カスタマイズを楽しむ

ともに働きながら家事と育児を分担する共働き家族は、これからどう変化していくのだろう。

「共働き家族の世帯数は今後も増えていくでしょう。一方で家族のかたちでは『個別化』が進んでいます。自分の親の面倒は自分でみる、というように、夫婦間で相手の両親をケアする家族が減りつつあるんです。寿命が延び、子が成人してから親子として過ごす時間は30年以上になります。長い時間をお互いの両親とどう付き合っていくか。価値観を共有して話し合っていく必要がありそうです」。

価値観の多様化を背景に、幸せのかたちも変わってきた。

「暮らしにおけるノウハウやアイデアは世の中に溢れていますが、実践したからと言って必ずしも暮らしが豊かになるわけではありません。なぜなら家族ごと、夫婦ごとに幸せのかたちは違うから。ロールモデルがないこれからの時代は、家族それぞれに課題を解決しながら暮らしを作り上げる必要があると思います」。

ヘーベルハウスLONGLIFE IS BEAUTIFUL アイランドキッチンで家族で料理をする様子

人生100年と言われる時代に、筒井氏が考えるLONGLIFEな共働き家族とはどのようなものだろうか。

「ワークライフバランスの理想は、職場も家庭も居心地がよく、ワークとライフの境界線が曖昧になっていくことです。そのために、自分にとって、夫婦にとっての心地よさを模索し続ける。その過程を楽しむことがLONGLIFEな暮らしにつながっていくのではないでしょうか」。

ワークとライフの領域が溶けあうように、暮らしの心地よさを追求する。それには、家族それぞれが心地よく過ごせる空間づくりが重要な鍵になるだろう。

筒井淳也

立命館大学産業社会学部教授。ゆとりうむプロジェクト理事長。
主な著書に『仕事と家族』(中公新書)、『結婚と家族のこれから』(光文社新書)など、他多数。

 

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