日本を代表するミニカーブランド「トミカ」。1970年に誕生した手のひらサイズのダイキャスト製ミニカーは、50年以上にわたり、世代を超えて多くのファンに愛され続けている。そんなトミカが考えるLONGLIFEとは何だろう?株式会社タカラトミー トミカ事業部 ブランドマーケティング課の田中さんに尋ねると、小さな車体に込められた想いを語ってくれた。
1960年代、子どもたちのあいだで人気だったダイキャスト製ミニカーのほとんどは、街で見かけることのない異国の車ばかりだった。
「日本の子どもたちに、国産車のミニカーを届けたい。」
そう考えた2代目社長の富山允就(とみやま まさなり)氏は、自ら海外の工場に足を運び、ミニカー作りのノウハウを習得。日本に持ち帰って生まれたのが初代のトミカだ。
クラウンのパトロールカーやトヨタ 2000GT、フェアレディZなど、当時の日本の街なかを走る憧れの6車種からスタートしたトミカは、1970年代のスーパーカーブームなども相まって、子どもたちを虜にしていった。そんな人気の裏には、子ども向け商品ならではのこだわりがあった。
「トミカの原点は『子どもたちの玩具』であること。だからこそ、子どもの手のひらに収まるサイズにこだわっていて、これは発売当初から変わらずに受け継がれています。外箱の横幅は78mmに統一していて、箱にあわせて車の縮尺を変えているんです」。
大型サイズの自動車玩具が主流だった時代に、小さなスケールのミニカーは革新的だった。手のひらに収まる親しみやすいサイズ感は、子どもたちに愛着をもって受け入れられ、人気を後押したのだろう。
現在は通常シリーズとして、乗用車や働く車など様々なモデルが常時120種ラインナップ。毎月2車種の新作を発売しラインナップを入れ替えることから、発売日を楽しみにしている子どもたちも多いはずだ。そんなトミカの車体には、子どものことを考えた特徴がある。
「トミカのミニカーにはサイドミラーがないんです。子どもが握りしめてもケガをしないように、デザインの段階で突起物を取り除いています。たとえばリアウィングなど、その車らしさを象徴するパーツでどうしても削れないときは、柔らかいプラスチック素材を使用したり、丸みをつけたりと、子どもの安全性を一番に考えています」。
ロングセラーのはしご付消防車も、はしごが折れて子どもがケガをしないように、あえて連結部分が外れやすい作りになっていると話す田中さん。
安全に遊べること、それはトミカが支持され続ける理由の一つだろう。一方で、ファンを魅了する理由は他にある。安全性とのバランスを見ながら追求する再現度の高さだ。
子ども向けの玩具といえばプラスチック製品が多いなか、トミカでは亜鉛合金を使ったダイキャスト(金型鋳造法)を採用。塗装方法は実際の車にも使用される静電塗装を採用している。
「車本来の魅力が伝わるように、重量感やリアリティをできる限り再現しています。多くの車種に取り入れているサスペンション機能もそうですが、車がどんな仕組みになっているのか子どもの興味や探究心を刺激して、車を好きになってもらうきっかけになったら嬉しいですね」。
発売から半世紀が過ぎた今、かつてトミカで遊んでいた子どもは大人になり、家庭を持つようになった。なかには子どもが生まれたことをきっかけに“トミカ返り”する人も多いという。2015年に発売された「トミカプレミアム」は、そんな大人世代をターゲットとしたシリーズ。往年の名車を中心とした憧れのモデルは、塗装や印刷、ホイールのデザインなど、細部にわたって可能な限り再現されている。
「SNSを見ていると、書斎にお気に入りのトミカを並べたり、コレクションボックスに飾ってもらえたりと、さまざまに楽しんでいただいています。投稿の内容を次のモデルを制作する際の参考にすることもありますね」。
消費者の声に耳を傾けることで生まれた商品は、他にも。 たとえば「おかたづけプレイパーク」は、遊んだあとにコンパクトに畳んで収納できるというもの。「片付けが大変」「バラバラにならず簡単に収納したい」という意見をもとに開発された商品だ。声をかたちにする真摯な姿勢は、トミカのLONGLIFEを下支えしているのだろう。
3歳の子どもの父親である田中さん。実家に帰省した際には、自分が子どもの頃に遊んでいたトミカでお子さんが遊ぶこともあるという。親から子へ、子から孫へ。世代を超えて受け継がれるトミカにとって、LONGLIFEとは何だろうか?
「ながく遊んでもらえるような“循環”をつくることだと思います。トミカは親世代から孫世代まで引き継がれる “三世代玩具”と言われることがありますが、そうあるために、デザインや安全性はもちろん、お客様の声に耳を傾けることが大切だと感じています」。
日本では三世代玩具となったトミカも、海外での歴史はまだ始まったばかり。
「日本と同じように海外でも、二世代、三世代と愛されるようになると嬉しいですね。大人子どもを問わず、世界中の人たちに遊んでもらえるシリーズへと成長させていけたら」と、田中さんは展望を語る。
大人になって久しぶりに手に乗せるトミカは、思ったより小さく感じることだろう。けれど、約7センチの小さなトミカには、懐かしさとワクワクがぎゅっと詰まっている。子どもをちょっぴり大人に成長させ、大人に子ども心を思い出させてくれるトミカ。これからも親から子へ愛情とともに受け継がれ、世代を超え、世界を超えて、愛され続けるはずだ。
トミカ : https://www.takaratomy.co.jp/products/tomica/
© TOMY
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