川口先生のペットコラム
旭化成ホームズ株式会社
Profile
ゾウの先生 川口 幸男

1940年東京都伊豆大島に生まれる。上野動物園飼育課を定年退職後、エレファント・トークを主宰。講演や執筆をしている。講演依頼は、メール またはFax 048-781-2309にお願いします。
NHKラジオ番組夏休みこども科学電話相談の先生でもあり、本編では長年の経験を踏まえて幅広く様々な話題を紹介します。
わんにゃんドクター 川口明子

日本獣医畜産大学卒業、同大学外科学研究生として学び、上野動物園で飼育実習後、埼玉県上尾市にかわぐちペットクリニックを開業する。娘夫婦もそろって獣医師で開業しており、一家そろって動物と仲良くつきあっている。
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  おもしろ哺乳動物大百科
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 ・戌年にちなんだイヌの話(番外編)
 ・酉年にちなんだニワトリの話(番外編)
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 ・125 ハイラックス目 ハイラックス科
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 ・123 偶蹄目(クジラ偶蹄目)ウシ科
 ・122 偶蹄目(クジラ偶蹄目)ウシ科
 ・121 偶蹄目(クジラ偶蹄目)ウシ科
 ・120 偶蹄目(クジラ偶蹄目)ウシ科
 ・干支「申:サル」にまつわる話(番外編)
 ・119 偶蹄目(クジラ偶蹄目)シカ科
 ・118 偶蹄目(クジラ偶蹄目)シカ科
 ・117 偶蹄目(クジラ偶蹄目)ラクダ科
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 ・115 偶蹄目(クジラ偶蹄目)カバ科
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 ・112 偶蹄目(クジラ偶蹄目)キリン科
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 ・90 食肉目 ハイエナ科
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 ・66 食肉目 イヌ科
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 ・61 食肉目 イヌ科
 ・60 食肉目 イヌ科
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 ・57 霊長目 ヒト科 またはショウジョウ科
 ・56 霊長目 ヒト科 またはショウジョウ科
 ・55 霊長目 ヒト科 またはショウジョウ科
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 ・53 霊長目 オナガザル科
 ・52 霊長目 オナガザル科
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 ・48 霊長目 オナガザル科
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 ・46 霊長目 オナガザル科
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 ・41 霊長目 オナガザル科
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 ・13 ツパイ目ツパイ科
 ・12 食虫目ハリネズミ科
 ・11 食虫目アズマモグラ
 ・10 貧歯目アルマジロ
 ・9 貧歯目フタユビナマケモノ
・(番外編)バードウイークとペット
おもしろ哺乳動物大百科
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 ・4 有袋目オポッサム
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・ウシに見習う
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・足のはこび
・秋は食がすすむなー
・TBSラジオ『全国こども電話相談室』最終回に出演
・恋の季節
・ゴリラのドラミング
・ウンチの話 その3
・夏はスイカだ
・帰省するときのペット対策
・ウンチの話 その2
・魚のすみか
・ウンチの話 その1
・ビーバーのすまい
・テングザルのおなか
・焼酎一杯グイー
・おっぱいの魅力
・アブラコウモリの住まい
・お乳の成分
・樹上にベッドを作るオランウータン
・乳の話 その1 乳頭の数
・冬はホッキョクグマの季節だ
・手を使った動物のおねだり
・ネズミの嫁入り
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・手の話(2) いろいろな動物の手
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・バードウイーク
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・春 新入生の季節
・動物の鼻
・ヤドカリのすまい
・なんで眼(がん)つけているんだ!
・贅沢が好きな男
・ゴリラの頭とゾウの頭
・ブタもおだてりゃあ木に登る

ウンチの話 その1 2008.06.17

入梅の時期になると、気温の変動が著しく体調管理が難しい。昨日は外気温が29度、今日は19度では、その度に半そでに替えたり、長袖を引っ張り出したりして着ている。人間はこれでも良いが、動物は冬毛が脱毛して夏毛に換わったときなど寒いだろうね。

  野生ゾウのウンチ
  タイの野生ゾウのウンチ。このウンチから推定すると若いゾウのようだ。
  ゾウのウンチ 1個
 

こちらは動物園で私が採集したもの。1個で1.3kgある大きめのゾウのウンチだ。

ウンチの話をすると、汚い、臭いとあまり話題にしたくないものだが、動物は食物を食べて胃や腸内で必要な栄養分をとったあとウンチとして排泄する。すべての動物に共通することで、至極当たり前のことだ。

上野動物園にいたころ、ゾウのウンチをサンプルに少し欲しいと依頼があった。本来ならば動物のウンチは病気を誘発する原因のひとつでもあり、集めて焼却処分している。しかし、大学からウンチの目的が研究用であると、正式な依頼があり受理した。やってきたのは寄生虫の研究をしている女子大生で、ゾウのウンチを見ると満面の笑みを浮かべながら近寄り、匂いを嗅いで薄いゴム手袋をした手でウンチをバラバラにし採取していった。希望の動物のウンチが採取できることが嬉しかったのだろうが、それを若い女性が行っているところに、研究という確固たる目的が滲み出ているようでなんとも感心したものだ。

カイチュウ博士で有名な東京医科歯科大学大学院教授の藤田紘一郎先生と以前ラジオの電話相談室でご一緒した。先生は世界中の人たちのウンチを採集して回虫などの研究で大きな成果をあげている。著書も多い方だが、放送外の話がおもしろかった。たとえば、アジアの山間部でトイレが完備していない地方では、川の両側に民家が建ち、室内の一部が川にせり出しトイレになっている。ウンチが下に落ちると下では魚が群がりたちまち平らげる。夕方になると、その魚を釣ってきておかずにする、なんていう所もあるそうだ。

私はこんな民家に泊まった経験はないが、川沿いに家が建っている光景はたびたび見てきたがまさに水洗トイレだ。下流に行けば行くほど汚れるだろうと思うが、魚の食べ残しはもっと小さな生き物が食べるだろうし、工業排水や家庭排水で汚染されるより、はるかにマシかもしれない。

ミャンマーでゾウが丸太を引っ張るところを見たいものだ、と話をしていたら、じつに素晴しい人にめぐり合い案内してもらった。ミャンマー大好き人間の大西信吾さんとおっしゃる学者肌の紀行作家だ。彼の話によれば、ゾウの糞の脇を掘るとフンコロガシ(タマオシコガネの仲間)が下にひそみフンを食べているのだそうだ。現地の人々はそれを集め、油で揚げて食べるという。その味はやっぱり節足動物の仲間だけにエビやカニに似ており結構いけるそうだ。案内してもらったときは食べるチャンスがなかったが、多分私の口には合わないと思って、遠慮されたと思うが、良かった!

新聞をはじめ報道関係が最近とみにエコを強調しているが良いことだ。現代も食物連鎖をもっと活用して、残飯は細菌に分解してもらい、肥沃な土にして植物を育てる心構えを持ちたいものだね。

 
ビーバーのすまい 2008.05.30

6月になるとたわわに実ったビワの美味しい記憶がよみがえる。山におじいさんのビワ畑があり数十本のビワが実るが、一挙に実るので孫からおじいさんや両親、おじさんたちと一族総出でビワを取った。木で完全成熟したものは最高で、木の上で食べていると、「食べるのは後で」と注意されたが、これはとる人の特権だよね。

  1	ビーバーの赤ちゃんがおっぱいを飲んでいます。
  ビーバーの赤ちゃんがおっぱいを飲んでいます。 写真家 大高成元氏撮影
  ビーバーのすまい
 

ビーバーのすまいはこのように池の中にあり水中から出入りします。

北米の緑豊かな森で名物な動物といえばビーバーだろう。彼らは川のほとりに木を積み上げ、やがて川の水がダムのようにせき止められると、池ができ、はじめに作った場所も池の中となる。池の中の巣には、水中を潜って入る出入り口が作られ、外敵となるオオカミやヤマネコも入り込むことはできない。まさに水上の城のようなものだ。

かれらはこのダムの構築と水中を潜るために体の各部位が進化した。たとえば、前歯は、下の歯が上の歯の内側をこするようになっており、こするごとに上の歯が鋭くとがれていく。この鋭利な歯は直径10cm程度のヤナギやヤマナラシの木なら10分もあればかじり倒してしまう。
この鋭い歯が役立つのは、彼らが自分たちの住居とダムを作るときだ。せっせと木を倒し、適当な長さに切断するとそれを川の水位より高く立てかけ、根元の部分には石やかじった木の端、ドロなど手当たり次第にかけて漆喰い状にしている。山のように積み上げた横から木をかじって出入り口を作り内部に入る。
川をせき止めるほど大がかりな工事を行うので、単独ではできない。彼らはネズミの仲間では珍しく家族単位で生活しているのだが、その背景にはダム作りを共同で行うことが関連している。家族はふつう両親と子どもたちの4〜8頭で生活し、子どもたちは両親の巣作りを手伝うことで将来自立したときに、この面倒な巣作りができるようになっている。
やがて水量が増えてくるたびに巣は補強されてどんどん高くなる。しかし、巣が高くなればなるほど、巣の上まで小石や泥水をかけることは困難になる。

ここのところが自然の妙味だが、天井の一部にちょっとした隙間ができることで空気の流通を助けることになる。住宅で換気が必要なのは良くご存知だろうが、地下にすむ動物は換気口を開けようと意識せずに、長い進化の過程でこの方法を獲得したのだろう。
一般には、ビーバーのダム湖とも呼ばれる大がかりな池は、乾季になっても簡単には水が涸れないが、大雨で大量の土砂が押し寄せダムが決壊したり、土砂で埋まったりするとまた他の場所に移動して新しいダム建設に取りかかる。方々にダムを作ることで洪水のとき、一時水を蓄える貯水池の役割も果たしているので、大きな目で見れば自然を守っていることになる。

人間のやることは、どうも間が抜けていることが多い。ダムを作って電力を得たのは良かったが、環境破壊の引き金となり、新たな災害を招く要因のひとつとなっている。そこに山や谷があるのは長い年月を経てできたことを忘れていませんか、っていうことだ。
ちょっと偉そうなことを言いすぎかな。

 
テングザルのおなか 2008.05.15

大相撲ファンはまだまだ多いが、大きくせり出たお腹はビールで蓄積したお腹と違いぶよぶよとしていないそうだ。一度蓄積したお腹の脂肪は食事制限をするか、運動をしない限り容易には落とせない。ジムに行き適当に汗をかき、冷えたビールをグィと飲むときの心地よさ、ビールではなく水をグィっとどうかって、そんな殺生な!

  テングザルはこんなサル
  テングザルはこんなサル。お腹が大きいでしょう。
写真家 大高成元氏撮影

肉食獣のお腹がたっぷりと膨らんでいるのは、獲物にありついて腹いっぱい食べたときで、ふだんはスマートなものだ。肥満体のチーターやライオンがお腹をゆすりながらノソノソとシマウマを追いかけても捕らえることはできない。もっとも、餌を捕まえる必要のない動物園で飼育されている肉食獣は丸まると太り飼育係を困惑させている。
一方、草食動物は肉食動物にくらべると、栄養価の低い草を食べるので、大量の食物を食べるか、あるいはナマケモノのように、できるだけ動かず省エネで生活しているものもいる。

人間が改良した家畜のウシは、よく消化の仕組みも調査されている。草食獣と一口に言っても、消化という点から見れば、胃が複数あって、一度胃の中に入れた食物を口に戻しゆっくり咀嚼する反すう動物と、人間と同様に単胃の動物がいる。どちらも草を消化する消化酵素を持っていないから、そのままだといくら食べても栄養にはならない。そこで登場するのが、腸内細菌である。この腸内細菌は1cm3に億単位がすみ、その中にセルローズを分解できるものがいる。これらは口から入ってきた草を消化する酵素を持っており、彼らの力を借りて栄養を取り込み、最終的にはこの腸内細菌もたんぱく質として取り込んでしまう。またウシは一日100リットルものよだれをだすが、よだれも水分補給や、中から尿素を取り込み、たんぱく質を作る上で重要な働きをしている。

さて、表題のテングザルだが、テングザルの特徴はその鼻が天狗のように立派なだけではなく、じつはもう一つ大きな特徴、大きなお腹を抱えていることだ。はじめは妊娠しているのかと疑うくらい大きく、何のためにあのように大きいのか不明であった。しかし、死んだ個体を解剖し、内臓を検証したり、生態調査を進めたりするうちに、餌となる植物の消化方法と関連していることが分かった。セルローズを分解するために複雑で大きめな胃を持っており、ここでゆっくりと腸内細菌に消化させ、そのエネルギーをとっていたのだ。

お酒を止めるか、運動をするか、食事制限をするか、ウーンいつも一杯やりながら考えているからダメなのか。
まあ、今日は飲んじゃったから又明日この件については考えよう。

 
焼酎一杯グィー 2008.05.13

これは私が言っているわけではない。マレーシアなどから渡ってくるセンダイムシクイのさえずりが「チカレタビー」とか、「焼酎一杯グイー」と聞こえ、この声を聞いたら「おっ!センダイムシクイ」がいるな、とわかる。実際には、「チョチョビー」または「チョチョチョ」とさえずるようだが、先入観があると表記のように聞こえるらしい。

  メジロ
  庭でご馳走をついばむメジロ
写真家 鎌奥哲男氏撮影
  ヒヨドリ
 

ヒヨドリはピィッ・ピィッ、ヒーヨ・ヒーヨと大声で鳴き 、えさ台を独占する。
写真家 鎌奥哲男氏撮影

さて今年もバードウイークになるが、そもそもの始まりは、1894年5月4日、北米でバードデーとして始まった。日本では1947年(昭和22年)4月10日第一回バードデーが実施され、1950年以降、5月10日〜16日までとなった。期間を1週間と長くしたのは、多くの人に愛鳥の意義を知ってもらい、また5月にしたことで春の遅い北国でもヒナを育てるのでこの時期になった。

私が上野動物園に就職したころ、小鳥の飼育係は松本喬史さんとおっしゃる方で、私より4歳年長の鳥キチと呼ばれるほどの鳥が大好きな御仁だった。いつも高円寺から一番電車で動物園に出勤し、夜警が寝過ごしている時などたたき起こし喜んでいた。メガネを外すと人の顔の輪郭しか分からない、と言うほどの近眼であったが、田舎出の私はいろいろと面倒を見てもらっていた。鳥の天敵となるヘビやネコは大嫌いで、野良猫が小鳥舎の近くに来ようものなら、血相を変えて追い払い、ヘビは捕らえて爬虫類舎にもっていった。
彼は園内にいる野鳥が一声鳴くと、正確にその位置をつかみ、「あそこにいる」と指差した。もちろん鳥の種類から雌雄まで声で判別できた。
このとき鳥の鳴き声をたとえ話でこうやって覚えるんだと教えてくれたのが、聞きなし、と呼ばれる表題の例だ。他にもたくさんあるが、ホトトギスは、「てっぺんかけたか」「本尊建てたか」「借金とったか」となる。メジロは「長兵衛、忠兵衛、長忠兵衛」。コジュケイは、ピッピョポィ、ピッピョポィが「チョットコイ」と聞きなされる。地方によっては「母ちゃん怖い」「母ちゃんかわいい」となる。怖いとかわいいでは大分違うように思えるが、この聞きなしを覚えると、そのように聞こえるからおもしろい。

仲の良いご夫婦はオシドリ夫婦と呼ばれ、時には結婚式の祝辞に出てくる。たしかに鳥の90%以上は雌雄共同で子育てをするが、生涯同じつがいでいるとは限らない。多くの種類は年に数回繁殖をするが、毎回ちがう雌雄で子育てをすることもある。そして、オシドリの場合、なんとオスは子育て協力せずにメスに押しつけて何処ぞにドロンしてしまうのだ。人間だって、いや人間の話は皆さんご存知なので省略しよう。

松本さんは33歳で急逝されたが、鳥の飼育にかけては専門家も舌を巻くほどの名人であった。バードウイークが近づきメジロやウグイスの心地よいさえずりを聞くと松本さんのことが思い出される。

 
おっぱいの魅力 2008.04.21

上野のサル山は冬が恋のシーズンだ。いっとき喧騒に包まれていた山も落ち着きを取り戻した。観客がニホンザルの雌雄判別ができないので、若いオスが子ザルと遊んでいる様子を見て母子と勘違いして勝手にストーリーが展開している。ニホンザルの雌雄の見分け方の一つは、経産のメスの乳頭は1cmくらいピンク色になって見えることだ。オスでも乳首はあるが毛に隠れて見えづらく、これは正面から見たときの良い雌雄鑑別法となる。

  ゴリラのかわいい赤ちゃんとふくよかなおっぱい
  ゴリラのかわいい赤ちゃんとふくよかなおっぱい。猿人の頃は結構似た感じだったかもね。
写真家  大高成元氏撮影
さて、本題の動物のおっぱいだが、乳房は脂肪の塊だ。動物は妊娠すると乳房が大きくなってきて出産頃にピークになりお乳を製造してくれる。このお乳のおかげで、子どもは必要な栄養を得て成長していく。母親が充分栄養が取れない場合は、発情が来なく交尾意欲も出ないケースも間々ある。
栄養が行き届いたラクダは背中のこぶがはち切れんばかりに大きくなる。この脂肪の塊を水分が不足したときなど、水に還元して使う。また、尾に脂肪を溜め込む羊の脂尾羊は、いずれも栄養を脂肪の塊として1箇所に集中している。

ここでひとつ大きな疑問が生じませんか。
動物は妊娠すると乳房が大きくなると書いたが、私たち人間はどうだろう。女性たちは思春期になれば妊娠の有無には関係なく乳房が大きくなる。では何のために人間だけ特別このような変化をもたらしたか考えてみよう。 
私たちの祖先はサルの仲間として進化し、およそ600万年ころチンパンジーから袂を分かち、直立2本足歩行するようになった。240万年前ころ、ホモ・ハビリス猿人が進化し、脳が大きくなり知能が発達したが、女性にとって難産の原因のひとつとなり、新生児はチンパンジーよりも一層未熟児の状態で生まれるようになった。新生児は首がすわらず母親は両手で支え、育児しなければならない。そこで育児を手伝い、食事を持ってくる配偶者や血縁関係者が必要となった。
  人間の写真は差し障りがあるといけないので省略しました
猿人の女性たちは配偶者をヘルパーとして子供が成長するまで引き止めなければならなかった。そこでその手段として大きな役割を果たしたのが、ふっくらとした乳房だ。その後、数百万年の進化の間に、男たちはふくよかな乳房を魅力的な変化として捉え進化した。そして、ふくよかな乳房は、栄養供給源のみならず、男を性的に満足させる役割も併せ持った。もちろん、元来浮気性の男を長期間配偶者として留めるには、ほかの要因も多々あるのだが、それはいずれまたお話しよう。

現代でも依然としてボイン願望が残っているのも哺乳類たるゆえんかもしれない。しかし、結婚相手として男性を選ぶ場合、肉体的な要因よりも精神的な安らぎを求める女性が増加しているのは、子供をもうけて子孫を残すという動物本来の性質が、現代社会に適応して変わってきのだろう。

遊び相手はプレイボーイでも、結婚相手には子煩悩でやさしい人が良いのは、太古の昔から同じですよ。春は恋の季節、よい巡り合いを!

 
アブラコウモリの住まい 2008.03.31

  大島桜
  清楚な感じがする大島桜、花はサルもたべる。
   
  ユビナガコウモリ
 

ユビナガコウモリ・口から超音波を発射して獲物を確認して捕らえる。(写真家 大高成元氏撮影)

桜の花はいいねー。世界がなんか パー!と明るくなったようで、満開の花の下みんなで美味しいものを食べ、飲んで騒ぐのがまた良い。人間というのは仲間がいないと楽しく生きて行けない。一人で花見をするより大勢でガヤガヤとほこりにまみれながらやるのが良いんだ。

ネズミは良く知っているが、コウモリは見たことがないとおっしゃる方がいる。じつはそんなことはなく、見る気がないから見えない。これから夏にかけ蚊や蛾が出てくる頃になれば、今まで家屋に潜んでいたコウモリが夕暮れ時になれば辺りを飛び回る。鳥の飛行と明らかに違ってヒラヒラと飛ぶので、容易に気づくだろう。
お宅は上尾で田舎だからコウモリがいるんだろうって。そんなことはありません。南浦和に住んでいたときも、蕨にすんでいたときもいたもんね。

それではコウモリについて、簡単にお話しよう。
哺乳類の種類はおよそ4,800種類、そのうちなんと1,000種類近くをコウモリが占め、環境に適応してさまざまな種類が混在している。コウモリは超音波を出すことで知られているが、口から発射するものと、鼻孔から発射するものがいる。ユビナガコウモリや、冒頭で紹介した家の近所で飛んでいるコウモリは、アブラコウモリ、またはイエコウモリとも呼ばれる小型のコウモリで口から超音波を発射する仲間だ。
日本にはこのほか、合計38種類が生息して、日本の哺乳類中で最も多い。名前もユニークなものがあり、魚を食べるウオクイコウモリ、蛙を食べるカエルクイコウモリ、馬の顔に似たウマズラコウモリなどがいる。小笠原にいるオガサワラオオコウモリは果実や蜜を吸い、昆虫や小動物はほとんど食べない。

さて、動物園では、野生のときにどのような生活をおくっているか調査した論文を参考にして、動物園という特殊な環境に適応させて飼育している。それは生活環境から食事内容や回数等など全て考えて飼育方法を決める。
アブラコウモリは、昼間たいてい家屋に住んでいる。しかし、ヘーベルの家はアブラコウモリの住家には適していない。彼らは旧日本家屋のように多少隙間がある木造建築が好みだ。隙間は1.5cmほどで良く、この隙間から天井裏や板張りの内側に張り付いている。
飼育する上で、この1.5cmの隙間を作ってそこに住まわせると、彼らは安心して休むことができる。モグラの穴もそうだが、ほぼ体にぴったり合って、毛がちょっとふれているのが安心できる環境なのだ。山間部や森林より家屋が良いというのだから面白い。

  ヘーベルのゾウ風船と桜
 

新しくなったヘーベルのゾウ風船と背景の桜、春だね・・・

何とかと畳は新しいのが良い、と言ったものだが、ヘーベルハウスと同様我が家のシンボルとなったゾウの風船が1年を過ぎたら穴が開き新品と換えた。やっぱり新しいのはつやがある。

 
お乳の成分 2008.03.19

昔は乳離れをさせるために、乳首に辛子をチョット塗っておき、赤ちゃんが吸うと辛いのでびっくりして止める、と言うことを聞いたことがある。これでは赤ちゃんもびっくり仰天で、おっぱいを吸う気にならないだろう。さすがに現在はおっぱいが栄養面だけでなく、お乳をくわえることが赤ちゃんに安心感を与えるものであるから、もう少し上手に離乳食に移行するようになっている。

  人工保育のトラにミルクをあげる女性
  人工保育のトラにミルクをあげる女性。
   
 
ミャンマー・ヤンゴン動物園園内
 

ミャンマー・ヤンゴン動物園園内 樹木が多くいやされる。

さて、アジア各国に行くと、どこの国でもトラは最強の猛獣として畏敬の目で見られており、人気も高い。

ミャンマーのヤンゴン動物園に行ったときのことだ。以前友人がヤンゴン動物園に贈ったトラが出産していた。ところが、園長さんの話に寄れば、母親が育児放棄をしてお乳を飲ませないので、人工保育に切り替えているが、ちょうど授乳時間なので見学しますか、という一言に、喜んでついていった。そして、部屋のドアを開けて目に入った光景がこの写真で、ご婦人の両乳房にトラが吸い付いてお乳を飲んでいた。話によれば、トラがお乳を飲ませないというニュースを見たご婦人が、それではまだお乳が出るので私があげましょう、と申し出たそうだ。いやはや素朴でいい国だなーと思った。しかし、トラの乳成分と人間では、各栄養素の割合が違うことや、初乳を飲まなければ、子どもを病気から守る免疫を得ることができないので、充分その辺りも注意してください、と老婆心ながら獣医師の皆さんにお話しして帰国した。

上野動物園で勤務していた中で、1960〜1970年代は、野生動物の研究者が少なく、自然で生活する野生動物の行動が不明で、研究者が1種類ずつ生態を明らかにする度に、その報告書を読んで感動したものだ。当時は飼育環境も現在に比べれば良くなかったのか、母親が育児放棄し人工保育に切り替えたトラ、ライオン、ヒョウ、サルの仲間などがいて、新米飼育係の私などかっこうの仕事としてお手伝いした経験がある。その度に獣医師は乳成分をはじめ健康管理に神経を尖らせていたが、自分の胸にトラやライオンの赤ちゃんを初めて抱いたときの感触は、骨太でいかにも猛獣の中でも王者の子どもと言う感じがして今でも忘れられない貴重な体験だ。

人工保育で問題となる一つの点は、動物ごとに異なる乳成分である。たとえば、ヒトとネコ科のライオンで比較してみた。

  水分 脂肪 たんぱく質 炭水化物 灰分
ヒト 87.0 4.0 1.3 6.5 0.2
ライオン 63.9 18.9 12.5 2.7 1.4

この数値で一目瞭然のように、ヒトのお乳は水分が多く他の野生動物に比べ薄いのだ。人間にはちょうど良くとも、動物には脂肪分やたんぱく質が不足してしまう。ところが動物によっては、不足した乳成分を添加しても簡単に吸収されないことがあり、どうすれば吸収されるか研究を続けている。

それにしても、ミャンマーのご婦人ってほんとうにやさしんだなー。

 
樹上にベッドを作るオランウータン 2008.02.25

子どものころ、大きな椿の枝に棒を渡し、休憩できるようして得意になったことがあった。親からはそんなサルみたいな遊びは止めろ、と注意されたが高いところに上がるのは気分が良いものだ。さすがに子どもではプレイリードッグのように、地下に穴を掘ることはできないが、木の枝に2〜3本の棒を渡すくらいなら簡単だ。

  スマトラの川渡り
  オランウータンの保護センターに行くために、こんな小さなボートに乗って川を渡る。
   
 
オランウータンの保護区
 

いつの間にかオランウータンが我々のそばにきた。

スマトラのオランウータンを見に行ったときのことだ。
オランウータンの保護区は、川を挟んだ対岸にあったので、5〜6人しか乗れない小船に乗り渡った。川の流れの速さとその舟を見た一行は、本当に大丈夫?と心配する人もいた。川を渡ると、現地の人たちの集落があり、どこからともなく若者たちが現れて、我々を取り囲んだ。通訳の話によれば、荷物を持って一緒にオランウータンのいるところまで行ってあげる、と言うのだ。しかし、初めて見るゴム草履を突っかけた若者は正体が分からないので、「自分で持てますからいりません」と断固として断った人もいた。
高温多湿で足場が悪い急斜面を20分も登ると、たちまち滝のような汗が噴出し、青息吐息、気がつけば断固として断った御仁も、いつの間にか若者に荷物も持ってもらい手を引っ張られ、後ろから腰を押されながら必死で登っていた。
私は幸いなことに田舎育ち、山道は慣れていたがそれでもじっとりとした暑さには閉口しながら登って行った。するとガイドが袖を引きながら横を指差している。びっくりしたことに、私たちのすぐ横にオランウータンの子どもが歩いていた。山の中であまりにも自由にしているので、「これは野生のオランではないのか?」と聞いたところ、さまざまな事情で一度人間が飼っていた個体を保護センターで引き取り、山に戻す訓練をしているのだと言う。何のことはない、放し飼いのオランウータンといったところだ。
さらに登ると、木組みの台があり、そこが餌場となっていて、バナナや果物をもらっていた。野生のオランウータンは、イチジクやドリアン、ランブータンが好物だが、木の葉や昆虫、小動物なども食べる。

 
オランウータンの母子
 

樹上にはかわいい母子もいる。

野生のオランウータンは宵闇迫れば10〜25mの樹上で、周りの枝を引き寄せ集め自分でベッドを作りお休みになる。ベッドは数日使うこともあれば、1日で変わることもある。いづれにしても単に回りの枝を寄せ集めるだけなので簡単にできる。熱帯では、高い樹上は風通しも良いし、外敵に襲われる心配もなく、最高の場所となるだろう。
母子は子どもが独立するまで一緒に生活し、若者や子どもたちはしばしば一緒に遊ぶが、成獣のオスは単独でゆうゆうと生活している。もちろん、発情期には雌雄で一緒に生活するが、その期間も一週間程度である。森の中の果物の木々の場所や果実の熟す時期を良く知っていて、人間たちの侵略がなければ悠々自適だ。

同じ類人猿の中でも、群れで生活するゴリラやチンパンジーに比べると、孤独性が強いためか顔の表情は乏しく、現地では彼らを「森の人=オランウータン」と呼ぶ。

 
乳の話 その1 乳頭の数 2008.02.19

恐竜って魅力がありませんか?
専門がゾウなので大きな動物に惹かれるのか、それとも年を重ねるにつれてルーツに想いを馳せるのか分かりませんが、孫と一緒になって恐竜図鑑を眺めて楽しんでいる。しかし、子どもの質問は、なんで、どうしてなの、とテープレコーダーのようにエンドレスで尋ねられ返事に窮することがある。本当に参るなー。

さて、今回はそろそろ手の話から離れて胸の話をしよう。哺乳類には乳頭があり、動物の種類によって、乳頭の数や乳頭のある部位は異なる。
一番多く乳頭を持っている動物は、アカハラジネズミオッポサムで25個もあるから驚きだ。私たちの乳頭が左右対称に1対あるからといって動物が全てそうではない。有袋類は主にオーストラリアに生息するが、オッポサムの中には13個の乳頭があり、乳頭の位置がお腹の真ん中にある動物もいる。

10個も20個も乳頭があれば、腹部一面にわたり分布していると思うだろうが、よく見ると一定の基準があり、多くは正中から外れた脇にある。あまり多くの動物をあげると煩雑になるので、代表的な動物をいくつかあげよう。

ウシはご存知のように、腹部に4個の乳頭があるが、類人猿やニホンザル、ゾウなどは胸部に1対ある。ゾウは前肢の脇に1対あるが、ふつうは乳頭がぽつんとあるだけで、乳房が膨らんでくるのは妊娠後期である。子ゾウは脇の下に頭を入れて外側に出た乳頭から直接口で吸う。成獣のゾウの水の飲み方は、鼻で水を吸い上げ、吸い込んだ水を口に流し込んで飲むので鼻はコップ代わりとなる。口から直接飲むのは母親のお乳だけだ。

  ブタの授乳
  母親がゴロンと横になり、2列に並んだお乳を子ブタに授乳する。

ブタやイヌの乳頭は胸から足の付け根にかけて並んでいるが、これは授乳するときに母親が横になっての飲ませるときに好都合となる。お腹のどこに乳頭があるかと言う問題は、個々の動物の生態と体のつくりにより異なる。ゾウの場合腹部から地面までは約90cmなので、腹部に乳頭があった場合、体のつくりが変わっていただろう。さらに、野生で生活している動物は、外敵も多く、のんびり無防備な状態で横になり授乳していたら、たちまち肉食獣に見つかり餌食となってしまう。


 
ブタの授乳
 

ブタの乳頭は7〜9対ある。それぞれ左右の乳頭をくわえて一斉にお乳をのむ子ブタ。
友人の写真家 大高成元氏撮影

クジラも哺乳類ならば、お乳を飲むのですか、と質問されたことがある。クジラと一口に言っても、シロナガスクジラやシャチ、イルカなど種類は多いが、哺乳類なのでやはりお乳を飲む。今は退化して後ろ足はないがそのあたりに肛門と生殖孔があり、その両側に1対の乳頭がある。この乳頭はふだん乳溝とよばれる細長い溝に納められていて、授乳する時に乳首がとびだして赤ちゃんが飲みやすいようになっている。

なに、なに、恐竜にもおっぱいはあるかって。うーん、残念ながらないね。恐竜は陸上で生活していた爬虫類だから、卵を産んでかえしていた。鳥だっておっぱいを飲ませないだろう。同じことだ。なにせ鳥の祖先は恐竜だからね。
ちょっと怖いけど、チラノサウルスなんか見たかったね。

 
冬はホッキョクグマの季節だ 2008.01.28

  ホッキョクグマ
  放飼場の中に透明で頑丈なアクリル板で囲った場所があり、間近にクマが見える。いま人気のある旭山動物園。
世界規模で見れば、雪や氷の世界に生活する人たちも多いが、私は寒いのも暑いのも苦手で、春と秋のおだやかな気候の場所で住みたいと思う。お金持ちは、夏は涼しいところに避暑に出かけ、冬は暖かいところでのんびりと過ごすが、庶民の私ではそんな真似はできない。それでも専門がアジアゾウなので、タイにはたびたび出かけるが、この季節日本は真冬で寒いため防寒をしっかりして出かける。ところが、タイは冬でも30度以上になるから一番下に半袖を着、暑さに合わせて次々と脱ぎ飛行機を降りるころには半袖となる。動物たちは衣類を着ないからこんなに簡単には調整できない。人間はすごいね。

動物の世界共通の名前はラテン語で表記されている。ホッキョクグマの学名は、テラルクトス・マリティムス(Thelarctos maritimus )と表す。簡単に言えば、海に住むクマというところだ。一方、和名はシロクマとホッキョクグマどちらも使っているが、
動物園や学者の人たちはホッキョクグマと表記することが多い。
 
ホッキョクグマ
 

こちらは泳ぐ様子を見ることができる。水族館でクマが見えるようなもので、おもしろい。

ホッキョクグマの生息する地域の冬は、マイナス30℃から50℃にまで気温が下がる。地球の温暖化が進み暖かくなったとはいえ冬の寒さは想像を絶するものがあろう。この寒さを防ぐために、彼らの体の構造はいくつかの特徴がある。一つはもちろん脂肪をたくさん蓄えることで、その厚さは部分的には7〜8cmになり、防寒とエネルギー源となる。さらに毛に秘密がある。毛の内部は髄質が詰まっていて、暖かい空気がこの髄質部に溜まる。毛は下毛が5cm、上毛が15cmくらいあるので、何重にも暖かい空気の層があるため、マイナス50℃の外気に耐えられるのだ。

オスの場合、雪の上に丸くなり寝ていれば、雪が降ったときなど、雪に埋もれ外気温より暖かくなる。またメスは雪を堀ってその中で出産する。雪の中は暖かく中に入れば寒さ知らずで、その中で代謝を抑えて蓄積した脂肪で厳しい冬をやり過ごす。食事をとらないので、排便や排尿もしないから消化器官や腎臓も休止している。

冬ごもりをする前に、草・土・苔、自分の毛を肛門に詰め込んで塞ぐのを観察した動物学者もいる。にわかには信じがたいが長い冬を過ごすには、巣穴を清潔にしておくことも大切なのだろう。

ところで、クマの中で一番大型のクマがホッキョクグマだとご存知でしたか。

 
ホッキョクグマ

動物ギネスブックには、最大のホッキョクグマの体重が1002kgと出ている。この記録は人間で言えば、200kg以上ある大巨人のようなもので、普通は400〜500kgだがそれでも陸上で最大の肉食獣だ。北海度に住むエゾヒグマはふつうのオスで200〜300kgなのでいかに大きいかお分かりだろう。

ホッキョクグマがいかに寒さに強いか説明したが、暑さにはどうするかは、また夏に機会があればお話しよう。おお、さむ! やっぱり春が待ちどうしいなー。

 
手を使った動物のおねだり 2008.01.15

  ニホンザル
 

みんなで上を見上げておねだりや食べ物が投げ込まれるのを待っている。

孫はスイッチを押すのが大好きだ。各種オモチャのスイッチから果てはテレビや電気のスイッチまで押しまくる。孫に甘い私は、孫の自宅では決して許してもらえないことでも、我が家に来ればなんでもOK、どんどん押させて喜ぶ姿を見てお互いに楽しんでいる。3歳までは自由にが目標だが、3歳になったら「ダメだ!」と言えるかなー。

私は上野動物園勤務時代、サル山のニホンザルの担当も長く受け持っていた。40年前頃は入園者がお菓子をどんどんサル山の中に投げ込んでいたが、その餌を少しでも多く自分の方に投げ込ませようとして、彼らはそれぞれ独自の方法を編み出しアピールして入園者から食べ物を得ていた。

 
ニホンザル
  左手を手招のように振っておねだりしている。

 
ニホンザル
  見事にピーナッツをキャッチしたところ。指の先にピーナッツが見えるでしょう。

傑作なのは、ヒバリと名づけたメスで、ある日拍手すると、入園者が喜んで食べ物を投げ込んでくれることに気づいた。これは、お辞儀をするよりパチパチと音がするので効果的である。2頭で並んで食べ物をおねだりしても、拍手をするヒバリに向かって入園者は投げる。

ヒバリが拍手をすると自然と周りにほかのサルが集る。他のサルが横に並ぶと投げ込まれた食べ物を横取りされるので、彼女は場所を移動しながらおねだりをしていた。

サルの中には投げ込まれたピーナッツをパッと受け止めるものもいたが、ある日目の前を飛んでいたセミをすばやく手でキャッチし、あっという間に口の中にほうりこんでしまった。セミは好物の一つなのでとりあえず口の中に入れて仲間に取られないように安全な場所でゆっくり味わうのだ。

動物園のような狭い場所で飼育すると、ニホンザルも群れの中で強い家系と弱い家系が出てくる。野生では追いかけられれば逃げ場がたくさんあるが狭い放飼場ではたちまちつかまりよってたかっていじめられる。ハチドリという名のサルはメスで最強の家系の娘だった。おねだりするとき、一番良い場所に陣取り上を見ながら食べ物が投げ込まれるのを待っていたが、ある日、足の裏がかゆかったのか、ともかく足の裏を掻いた。するとその様子を見ていた入園者が大いに喜び食べ物を投げ込んだ。そこで彼女は時々足の裏を掻いては、アピールしてお目当ての食べ物をせしめていた。

このように手を使っておねだりする動物は他にクマがいるが、クマはせいぜい座って手招きをするくらいだ。それでも、何もしないでボケーとして待っているより、食べ物をもらえる率ははるかに高い。

現在は、飼育動物には食べ物を与えないようにお願いしている。理由は簡単、本来草食性の消化器官をもっているサルがお菓子ばかり食べていては肥満やさまざまな病気の原因となる。肥満はいけません。いやあなたのことではありません。サルの話です。

私の担当したインディラというゾウは、ある日背中のごみを払ってあげようと、竹ぼうきを振り上げたところ、鼻で巻き取られた。コラッと怒ったが、ゾウは悠然として竹ぼうきの柄を鼻でつかみ、背中をごしごしと掻いた。ゾウの鼻は手の役割を果たす。まさに孫の手だ。

 
ネズミの嫁入り 2008.01.01

新年明けましておめでとうございます。
今年もみなさまのご多幸を祈念しております。

ネズミの嫁入り

むかし、あるネズミ夫婦にぱっちりとした黒い目のそれはそれはかわいい娘がいました。両親はこの娘に世界一すばらしいおむこさんを迎えようとつねづね考えていました。そこで太陽のところにいき、あなたは世界中で一番輝いています、ぜひ娘のおむこさんになってください、と頼みました。ところが太陽は、私は雲が出れば照らすことができないから、と断られてしまい、次に雲のところに行き同じようにお願いしました。すると、私は風が吹くといともやすく吹き飛ばされます。私よりあのがんじょうな塀を見てごらんなさい。どんなに強い風が吹いても倒すことができません。今度は塀のそばにいき、同じようにお願いすると、ネズミさんあなたはなんということを言うのですか、この塀もあなたたちが穴を掘ればすぐに倒せるでしょう。ネズミさんこそが世界一でしょう。
そうかネズミは世界一か、と納得してきりっとして元気なネズミのおむこさんを迎え、多くの子どもに恵まれ幸せになったそうな。


  ハツカネズミ
 

今年はネズミ年、ハツカネズミのかわいい写真をどうぞ。
写真は友人の写真家 大高成元氏撮影

  カピパラ
  げっ歯目で最大のカピパラ・南米に生息し、体重は50kg前後の草食動物。

事実、現在の哺乳類およそ4.700種類中、約40%、1.800種類がげっ歯目(ネズミ目ともいう)で占められ、とりわけネズミ科が60%で1.100種類近くにのぼり世界中でもっとも栄えている動物である。まさに現代はネズミの王国である。

私たちの身近な家屋やビル、下水道に住んでいるネズミを見れば、合点すると思うが、地下から天井裏まで人目の付かない場所を占有している。かつては住居の屋根裏にヘビが住みつき、このネズミを餌としてネズミの被害から守っていたが、現代は人間がヘビを嫌い追いやったためヘビにネズミ退治はお願いできない状態だ。もう一つ、ネコもネズミにとっては天敵だったが、ペット化して十二分に餌をもらっているネコは、ネズミ狩りにあまり熱心でないように見える。

小型動物に共通していることだが、成長が早く都会のドブネズミは生後1ヶ月半から2ヶ月で早くも繁殖をし、1回に8頭くらいを1年間に6回前後出産する。むかしからネズミ算という言葉があるが、まさに驚異的な繁殖力を誇っている。野生にいる種類は多くの肉食獣の餌となっており、一定の数で留まっている。もう一つの強みは食べ物が雑食性で人間の食べ残したものは栄養価が高く大好きだ。夜行性の彼らは人間の耳には聞こえない超音波や敏感なひげを頼りに暗闇を自由自在に歩くことができる。伸び続ける前歯は上下に2本ずつあり、常にどこかをかじっていないと伸びすぎてしまう。それゆえ、天井や壁、床の隅に穴を開けるくらいいとも簡単なのだ。長い尾は電線を伝わって歩いたり、あるいは尾を棒に巻きつけて体を支えたりとバランス感覚は抜群である。人間のように科学的な進歩はしていなくても、私たちの生活の産物を大いに利用することができる適応力がある。

我が家にも大きなネズミ、いや干支の方がいるが、こちらはケーキが大好なところだけネズミと似ている。我が家のネコたちではネズミを見てもニャンともいうまい。

 
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