川口先生のペットコラム
旭化成ホームズ株式会社
Profile
ゾウの先生 川口 幸男

1940年東京都伊豆大島に生まれる。上野動物園飼育課を定年退職後、エレファント・トークを主宰。講演や執筆をしている。講演依頼は、メール またはFax 048-781-2309にお願いします。
NHKラジオ番組夏休みこども科学電話相談の先生でもあり、本編では長年の経験を踏まえて幅広く様々な話題を紹介します。
わんにゃんドクター 川口明子

日本獣医畜産大学卒業、同大学外科学研究生として学び、上野動物園で飼育実習後、埼玉県上尾市にかわぐちペットクリニックを開業する。娘夫婦もそろって獣医師で開業しており、一家そろって動物と仲良くつきあっている。
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おもしろ哺乳動物大百科11(食虫目アズマモグラ) 2009.6.29

食虫目の仲間は、学者によって分類は違いますが、ソレノドン科、テンレック科、キンモグラ科、ハリネズミ科、トガリネズミ科、モグラ科の6科に分けています。肉食ですが、ライオンがシマウマを食べるように大型の動物を食べるわけではなく、昆虫やミミズ、小動物、小鳥、魚、甲殻類、などを食べて生活しています。今回はこれらの中からモグラ科について紹介します。

モグラ科
モグラ科については、今泉吉典先生は17属、32種類に分類していますが、その中には、ロシアデスマンをはじめいくつかの種類は川のそばで生活して、水にすむ生物を食べています。小型の種類としては、シナヒミズが6〜9cm、大型の種類では、ロシアデスマンが18〜20cmと大きな差があります。現在世界に生息しているモグラ科を、篠原明男先生たちの研究グループは、ミトコンドリアDNAから、8グループ(地下生活、地上、水陸両生、ほか5グループ)に分類しています。今回はモグラ科の中から、モグラ属、アズマモグラを見ていきましょう。

  アズマモグラ
  アズマモグラ 写真家 大高成元氏撮影
大きな手が見えていますね。この強力な手ですばやく地面に穴を掘ります。
11)アズマモグラ
なわばりをもって普通は単独で、一つのトンネルに1頭で生活しています。現在国内で広く生息しているのは、アズマモグラとコウベモグラの2種類です。この2種類は静岡、長野、石川県を境にして南北にわかれ、アズマモグラは北側に生息していますが、このほかにも紀伊半島、中国、四国の山岳地帯に小さな生息地があります。元来モグラは攻撃性に富んでおり、大陸からわたってきたコウベモグラは在来種であるアズマモグラより体が大きく、喧嘩が強いので、両者のテリトリーが重なるところではコウベモグラはアズマモグラのテリトリーを侵食してきました。しかし、長年日本のモグラについて研究されている阿部永先生によれば、体格差ばかりでなく、土壌条件もまた生息域の拡大に関わっている、ということなので一挙にアズマモグラが絶滅することはないでしょう。

すんでいる場所
2年前に自宅を引っ越してきて、庭に植木や石を並べると、一夜にしてモグラ塚がポコポコと盛り上がり、せっかくきれいに植えた植物や石までも陥没しました。森では豊富にたまった落ち葉の下に住み、庭のようなモグラ塚は少ないようですが、落ち葉の少ない庭などはトンネルを掘ってその中に落ちてきたミミズや昆虫などを食べています。モグラ研究で著名な今泉吉晴先生によれば、モグラは秋から冬にかけて毎日数個から数十個のトンネルを掘り、穴の中は底が平らの楕円形で、大きさは直径が5cmくらいということです。また、このトンネルをモグラ以外にヒミズも使っています。また、かれらは約4時間周期で眠りと捕食を繰り返すそうですが、4時間くらい間を空ければ、ちょうどミミズや虫が再びトンネルに落ち込んでいるのでしょう。

からだの特徴
体はネズミのようですが、長い口吻をもっています。毛は柔らかく、色は生息する地域によって変化があり、山岳地の個体は暗褐色、平野部では褐色です。モグラはトンネル掘りの名人ですが、掘るための体の特徴がいくつかあります。前後肢とも指は5本あり、親指の外側にはもう1本湾曲した骨(鎌状骨)が張り出し、手のひらの面積を広くすると共に、手の力を強化しています。トンネルの中では前進も後退も同じスピードで走ることができますが、この際、毛が垂直に生えているので、土が体につきません。また、上下の瞼がくっついているので目は見えませんが、明暗はわかるようです。耳介は発達していません。嗅覚と聴覚は良く、トンネルの壁に毛が触れていることで自分がトンネルの中にいることを確認しています。そのため広い場所で飼育すると、精神的に不安定になります。歯の数は42本で、上顎の門歯は計6本あって、浅いV字型かU字型に並んでいます。

えさ
えさは、ミミズ、昆虫のほかにジムカデ類、ヒル類、ナメクジ、種子なども食べます。1日に体重の半分くらいのミミズを食べると言われています。コウベモグラは、ミミズの頭を食いちぎり、体内の泥をしごいて出して食べるそうです。動物園では、ミルワーム、牛ハツ、冷凍バッタやコオロギを与えています。

繁殖
日本産のモグラの繁殖についてはまだ詳しいことがわかっていないようです。アズマモグラでは通常春から初夏にかけて1回に2〜6頭の子どもを産みますが、秋の出産例もあります。寿命は約3年ですが、多摩動物公園では2009年6月現在、5年9ヶ月飼育している記録があります。

天敵
人間のほかに、野生ではオコジョ、ケナガイタチ、イタチ、フクロウ、カラス、ヘビなどがいます。

アズマモグラ
分類   食虫目 モグラ科
分布   日本
大きさ   体長 12〜16� 尾長 1.4〜2.2� 体重 50〜130g
絶滅の危機の程度   国際自然保護連合(IUCN)発行の2008年版のレッドリストでは、現在のところは絶滅の恐れが少ないので、低危急種(LC)に指定されています。
主な参考文献
阿部 永 監修・著者   日本の哺乳類 東海大学出版会 2005
阿倍 永・横畑泰志 編   食虫類の自然史  比婆科学教育振興会 1998
    横畑泰志 著・モグラ科動物の生態
今泉吉典 著   世界哺乳類図説 食虫目・皮翼目 新思潮社 1966
今泉吉典 監修   世界哺乳類和名辞典 平凡社1988
今泉吉典 著   モグラの地中フレーベル館 2005
大泰司紀之・三浦慎吾監修   日本の哺乳類学�−小型哺乳類 東海大学出版会 2008
    篠原昭男 著・多様性と系統進化 モグラ類 
おもしろ哺乳動物大百科10(貧歯目アルマジロ) 2009.6.11

アルマジロ科
アルマジロのなかまは、8属に分類され、合わせて20種類が生息しています。最大種のオオアルマジロは、体長75〜100�、体重45〜60kg、尾長45〜60�もありますが、最小種のヒメアルマジロは、体長12〜15�、体重80〜100g、尾長2〜3�で、両者で大きな差があります。いずれの種類も、体の表面が硬いヨロイのような皮膚でおおわれていることが特徴です。今回はマタコミツオビアルマジロを紹介しましょう。

  アルマジロ
  筆者が上野動物園で撮影したものです。
  アルマジロ丸
  丸くなると、頭と尾が左右にうまくおさまっているのがわかりますか。
   
10)マタコミツオビアルマジロ
すんでいる場所とからだの特長
南米中央部のサバンナ、乾燥林、森林の周辺部に、母子以外は単独ですんでいます。昼も夜も活動し、めったに穴は掘らずに、やぶの中で15〜20時間寝ています。アルマジロといえば体の表面を頑丈なヨロイのような角質の板や鱗甲板をまとっていることで有名ですが、表面が角質で、内側は骨板からできています。このヨロイは、種類によって背中に3本、6本、9本の帯があって、その部分を折り曲げることができるものや、あるいは、全身に硬いうろこ状になっている種類などがいます。しかし、完全なボール状に体を丸めることができるのは、ミツオビアルマジロ属のマタコミツオビアルマジロとミツオビアルマジロの2種類だけで、丸くなることで内側の柔らかい部分を守っています。普通は名前のとおり3本の帯ですが、ときには帯が2本や4本の個体もいます。体を丸めるときは、ヨロイの中に、頭部、肢、尾の全てを入れることができ、外側は硬い甲板でおおわれます。指は前肢に4本、後肢に5本で、後肢の2、3、4指の爪は蹄のようです。歩行は前肢の爪を地面に突き刺さすようにして歩きます。(ちなみにオオアルマジロは前肢の爪を内側に曲げてナックルウオークのようにして歩きます。)被毛は鱗甲板の間に黒褐色の毛が生えています。歯はエナメル質と歯根部がなく伸び続け、上あごに9対、下あごに9対で、上下左右を合わせると36本あります。肛門腺がありいやなにおいを出して、個体間のコミュニケーションに使ったり、捕食する外敵からの防御に使ったりするようです。乳頭は胸部に1対あります。体温が33度から35.5度と低いのも特徴の一つです。

えさとからだ
6月から12月にかけての乾季には、強力な前肢で地面を掘り、あるいはアリ塚を壊してアリ、シロアリなどの昆虫を主食にしています。甲虫は一年を通して食べていますが、雨季になる夏は果物も食べます。動物園のえさは、根菜類やリンゴ、バナナ、ドッグフード、ゆで卵、ミールワームなどですが、繁殖期や成長期などで若干変えています。アルマジロは味蕾(みらい)がほとんどなく、発達した嗅覚を使って食べ物を探します。視覚も他の夜行性動物ほど良くありません。

繁殖
マタコミツオビアルマジロは、野生では10月から1月にかけて1産1子の子どもを産みます。シカゴのリンカーンパーク動物園の例では、10月から1月にかけて出産し、上野動物園の8例の出産例をみると、6月から2月までの間に生まれています。妊娠期間はリンカーンパークでは120日、上野の例では115日と116日でした。新生児の体重は70〜100g、目が閉じており、開くのは生後14日と22日の報告例があります。子どもは生まれて数時間以内で甲を丸めたり歩いたりすることができます。乳成分は他の動物に比べ脂肪分が多いのが特徴で、授乳はおよそ10週間続きます。生後しばらく甲板は柔らかく、親と同じ程度のような硬さになるには1年かかります。性成熟は生後9〜12ヶ月です。寿命はリンカーンパーク動物園で33年3ヶ月の飼育記録があります。

外敵
捕獲が容易なため食肉用として狩猟の対象になっています。野生の外敵としては、ジャガーやタテガミオオカミがいます。

マタコミツオビアルマジロ
分類   貧歯目 アルマジロ科 ミツオビアルマジロ属
分布   ボリビア、ブラジル、パラグアイ、アルゼンチン
大きさ   体長 22〜27cm  尾長 7〜9cm 体重 1〜1.6kg
絶滅の危機の程度   2008年の国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは、現在のところは絶滅の恐れが少ないが、近い将来そのおそれがあるので、近危急種(NT)に指定しています。
 
おもしろ哺乳動物大百科9(貧歯目フタユビナマケモノ) 2009.5.25

フタユビナマケモノ科
人間も含めゾウもイヌも多くの哺乳類の頚椎は7個です。ところがナマケモノは例外で、ミユビナマケモノは9個、フタユビナマケモノ7個、ホフマンナマケモノは6個とそれぞれ違うというからびっくりします。
ナマケモノの仲間は、前足の指が3本のミユビナマケモノ科と2本のフタユビナマケモノ科に大別され、フタユビナマケモノ科には、ホフマンナマケモノとフタユビナマケモノの2種類がいます。動物園では、食べ物のえり好みが少ないフタユビナマケモノ科のほうが飼いやすいので、多くの動物園でこちらの種類を飼育しています。

  フタユビナマケモノ
  写真家大高成元氏撮影
力をほとんど使わずぶら下がっています。
   
9)フタユビナマケモノ
すんでいる場所とからだの特長
南米の熱帯雨林の低地から高地にすみ、オトナはふつう単独か番(つがい)で生活しています。昼も夜も活動し、長い爪を木の枝にまるでハンガーのようにひょいと引っ掛けて、逆さにぶら下がっていることが多く、睡眠は15〜20時間といわれ、そのほか食事から出産まで木の上ですべてをこなしています。樹上生活に適応した体の特徴のひとつは、手首から先が細く、指の爪は長く頑丈で枝に引っ掛けて体力を使わず体重を支えることができることです。また、毛は腹部から背中側に流れているので、雨が降ってぬれても、逆さまにぶら下がった腹から背を伝わって水が流れ落ちます。
地上をすばやく歩くことはありませんが、かぎ爪を巧みに使って枝から枝へ移動し、泳ぎも上手です。おもしろいのはおよそ1週間に1度の排泄のときは木から地上に下りて、ほとんど同じ場所に排泄してからまた木の上に戻っていくことです。聴覚は良くありませんが、嗅覚が発達しており、肛門腺から分泌液される匂いを嗅いで情報交換していると考えられます。
被毛は灰色で、細かい内側の毛と15�もある粗い外側の毛の2重になっており、湿度の高い場合は体毛の中に藻類が生えて緑色となり、中に小さな虫やダニが数十種類もすんでいます。
尾は小さく毛で隠れて外からは見えません。外耳は小さく毛に埋もれ外部から見えづらくなっています。歯は上あごに5対、下あごに4対で、上下左右を合わせると18本あり、一生伸び続けます。乳頭は胸部に2つあります。

えさとからだ
ミユビナマケモノがセクロピア属の樹葉しか食べないのに対し、フタユビナマケモノは、木の葉や芽、果物から小動物までさまざまものを食べます。野生の食性調査によれば、かれらは合わせて約100種類の木の葉を食べているのが観察されました。このように多種類の木の葉をたべることや1日の採食量が7〜8g(ミユビナマケモノの例)と少量の葉で足りるため、餌不足になる率が他のたくさん食べる動物より低いことが、絶滅から免れている大きな要因の一つでしょう。胃の中はウシなどの反芻動物の胃のように複雑に分かれていて、中にいる腸内細菌がゆっくりと葉の粗繊維を分解したものを栄養としています。また、外気温の変動に合わせ、体温が24℃から33℃まで変わることでエネルギーの消耗を抑えています。その反面、気温の低い日が続くと、体温が低下し腸内細菌の活動が鈍くなり、胃の中に餌が充分にあっても未消化で残り、飢餓の状態となります。

繁殖
フタユビナマケモノは、4月、9月、11月以外は繁殖が報告されています。妊娠期間は約6カ月から
約1年まで(ホフマンナマケモノは11.5ヶ月)大変幅がありますが、これは精子貯留と着床遅延があるためと考えられています。1産1子で、子どもは全長約25cm、体重300〜400g、体は約1�の黒っぽい毛で被われています。目は開いており、歯は1年以内に生えそろいます。生後4週間くらいまで母親の毛の中に隠れています。生後約10週間で母親の食べている葉を初めて食べます。生後9ヶ月ころ自分で爪を木に引っかけてぶら下がろうとします。その後、母親はすんでいた木を離れ、子どもにその木をゆずり餌の心配から解放します。性成熟は、メスがおよそ3歳、オスは4〜5歳です。
寿命は飼育下では、スミソニアン国立動物園で36歳10ヶ月、ホフマンナマケモノはブロンクス動物
園で34歳3ヶ月の報告があります。

外敵
人間が一番の外敵で、生息域の開発、道路によるテリトリーの分断、高速道路での事故、狩猟対象となっているほか、空から大型猛禽類のワシやタカ、地上ではジャガー、オセロット、他のネコ科動物などから狙われています。

フタユビナマケモノ
分類   貧歯目フタユビナマケモノ科
分布   コロンビアからペルー北部、ブラジル
大きさ   オス体長55〜75cm 体重4〜9kg
絶滅の危機の程度   2008年の国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは、現在のところは絶滅の恐れが少ないので、低危急種(LC)に指定しています。
 
(番外編)バードウイークとペット 2009.5.8

  日本の代表的な野鳥メジロです。
  日本の代表的な野鳥メジロです。
写真家  大高成元氏撮影
   

毎年、5月になり愛鳥週間(バードウイーク・5月10日から16日)が近づくと、野鳥の雛を保護すべきか、そっとしておくか悩むことがあります。野鳥の雛が住宅の近所で地面に落ちて『ピーピー』と鳴いているのを見つけると、かわいそうだと保護し、どうすれば良いか問い合わせてくるからです。
現在、国内ではこの件に関して、鳥の生態に詳しい(財)日本野鳥の会や(財)日本鳥類保護連盟は、『野鳥のヒナは拾わないで』自然淘汰に任せてください、とポスターなどでキャンペーンをしています。

その理由は大きく2つあります。

◎ 野鳥は雛が親のように飛ぶまでには、飛行訓練期間が必要です。巣立ちをしても、体力のない雛は疲れて地上に降りてうずくまってしまったり、ひと休みしたりする雛がいます。しかし、親鳥は近くで心配しながら雛の様子を伺っているのです。このとき善意で人間が雛を拾ってしまうと、親は雛が人間に捕まったと思いあきらめます。人間の親切心が飛行訓練の邪魔をする結果になっているのです。

◎ ツバメやスズメ、ムクドリなどは1年に3腹(回)くらい産卵して、各1回に4〜5個の卵を産みます。これらがすべて成長すれば、一羽から1年で15〜20羽に増えて野山は小鳥だらけになるでしょう。ところがたくさん生む鳥はカラスやタカやヘビ、ネコなどの外敵も多く、彼らに捕まり成鳥まで生き残るのはわずか1〜2割です。ちなみに、海水魚のマンボーは数億の卵を産み、このなかで成魚まで残るのは数匹で、99.9・・・%はすべて海の生物の餌となっています。このように弱い動物たちは、死亡率の高さを数多く生むことで調節し、それらを餌にして生きている動物もまた多くいるのだ、と考えてください。

たとえば1羽の野鳥を保護すると、雛が成育したら飛行訓練を行い放鳥しなくてはなりません。しかし、人間が簡単に捕まえるような雛は、体力不足や怪我、先天的に欠陥がある場合が多いのです。放鳥できないときは寿命が尽きるまで10年から15年飼い続けなければなりません。以前本ホームページで紹介しましたが、保護しその個体の寿命が尽きるまで面倒を見るのはたいへんなことです。

(財)日本動物愛護協会では、主としてイヌやネコを対象にさまざまな保護活動を実行し、近年はこれらのペットに加えて多くの動物たちの愛護のために活動を繰り広げています。現在はペットが家族の中で占める役割はコンパニオンアニマルと称されるように高く評価されています。平成7年に(社)日本動物病院福祉協会が60歳以上の高齢者を対象に、ペットがどんな存在か、アンケート調査したところ約70%の人がペットを動物ではなく家族の一員としてみている、と回答しました。へーベルハウスの顧問をされている岡本利明氏は本協会の理事として活躍していますが、その中で「動物と共に住む住宅」を研究しています。この背景には、イヌやネコがこれまでの外飼方式から、室内で飼う方式が増加し、ペットもまた家屋の中でそれぞれの生態にあった部屋が必要と感じる時代が到来してきているからです。

さて、『野鳥のヒナは拾わないで』自然淘汰に任せてください、という主張とペットのイヌでは待遇が違うように思うかもしれません。しかし、およそ1万5000年前から人間はイヌの改良を重ね、今では家族の一員にまでその地位を上げたイヌと自然界で自由に飛び回っている野鳥では根本的に違うのです。高齢化社会、少子化傾向の進む現在、イヌやネコ、そしてその他家庭内のペットの存在は、家族の一員として重要な役割を担い、飼い主はそれなりの対応を彼らにする必要があるでしょう。

 
おもしろ哺乳動物大百科8(貧歯目オオアリクイ) 2009.4.27

貧歯目
初めてオオアリクイを飼育した人は、餌としてシロアリを集めてきたのだろうか?
みなさんの中にも同じ疑問を抱く方もあると思いますが、私もまたその一人でした。今からおよそ45年前動物園にオオアリクイが来たとき、餌をどうするのか興味津々でした。ところが餌を見ると、牛乳の中に卵黄と馬肉のひき肉を混ぜたもので、あっという間に食べてしまいびっくりしたものです。
貧歯目は、アリクイ、ミユビナマケモノ、フタユビナマケモノ、アルマジロの4つの科に分けられています。アリクイ科は4種類がいますが、一番大型のオオアリクイを紹介しましょう。本種はガテマラからアルゼンチンの低地に住んでいます。

8)オオアリクイ
すんでいる場所とからだの特長
ジャングルからサバンナ、草原、湿潤な森林、そして沼沢地などに生息し、泳ぎも巧みです。地上で生活し、育児期間以外は単独で生活しています。活動時間は昼夜を問いませんが、人間と接触する機会があるような場所では夜間が多くなります。
被毛は黒褐色、あるいは灰褐色で、のどから肩、背中にかけて黒い帯状で、そのふちは白色となっています。顔は細長く伸び先端に1〜1.5cmの口があり、舌は粘液にまみれネバネバしていてアリを付着しやすく、伸ばすと約60cmに達します。哺乳類の中で歯がない数少ない動物で、筋肉がよく発達した強じんな胃がシロアリの消化を助けます。目は小さく視覚はあまり発達していないようですが、嗅覚は発達しており肛門腺や唾液腺の分泌液の臭いをかいで相手を識別し、またシロアリの巣を探します。前肢の指は4本あって、とくに第2、第3指の爪は10〜15�もあり、アリ塚を壊すだけでなく強力な武器にもなります。後肢の指は5本あり、歩くときはクマのように足裏をベタッと地面につけますが、前足は長い爪を内側に向けてナックルのようにしています。尾の長さは70〜90cmあって長い毛が生えており、木陰や浅いくぼ地で寝るとき、体に巻きつけるようにして寒さやぬれるのを防ぎます。

えさとからだ
強力な前足を使ってアリ塚や朽木を破壊して、主食となるシロアリやアリ、甲虫の幼虫を食べます。1箇所の巣から食べることはなく、それぞれのアリ塚や朽木から少しずつ採って食べるので、餌のアリが全滅することはありません。1分間に最高約160回舌を出し入れして、一日におよそ3万5000匹のシロアリを食べると言われます。また地上の果物を食べることもあります。
近年、動物園では給餌の様子を入園者に見せていますが、基本的には、鶏肉、牛レバー、ドッグフード、粉ミルク、卵黄、ヨーグルト、蜂蜜、バナナなどをミキサーで混ぜ合わせドロドロにしたものです。このほか、動物園では生きているゴキブリを食べるところを数人が目撃しています。

  オオアリクイの背中に子どもがのっていますが、しま模様がお母さんと一体になってカモフラージュされています。
  オオアリクイの背中に子どもがのっていますが、しま模様がお母さんと一体になってカモフラージュされています。
写真家  大高成元氏撮影
   

繁殖
妊娠期間は180〜190日間で、出産期は飼育下の場合、通年でふつうは1産1子ですが、まれに双子が生まれることもあります。赤ちゃんの体重は1〜2kg、頭胴長約35cm、尾長約20cm、舌長が約20cmです。目は生後約1週間で開きます。赤ちゃんは出産後すぐに親の背にしがみついくことができます。
親の背中におんぶされると、親の背中の黒い毛と、子どもの背中の黒い毛が重なり、他からは1頭にしか見えなく保護色となっています。飼育下では生後2ヶ月半くらいで親の餌を少しずつ食べはじめるのが観察されています。離乳は生後約半年で体重はおよそ10〜20kgになり、1歳くらいまでは母親の背中に乗って移動します。性成熟は2.5歳〜4歳で、母親がつぎの妊娠をするか2歳くらいになると親のもとを離れて独立します。体重は野生では40kgまでとありますが、飼育下では50〜60kgになります。栄養価の高い餌を食べることができるからでしょう。寿命は、飼育下ではドイツのクレフェルト動物園で30年7カ月の記録があります。

外敵
人間以外では、大型肉食獣のジャガーやピューマです。敵が近づくと前足を広げて抱きしめて強力な爪を相手の体に突き刺します。この方法で人間も被害を受けることがあります。

オオアリクイ
分類 貧歯目 アリクイ科 
分布 中央アメリカから南アメリカ
大きさ 体長 100〜120cm  
体重 20〜40kg
尾長 70〜90cm
絶滅の危機の程度 2008年の国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは、現在のところは絶滅の恐れは少ないが、近い将来そのおそれがあるので、近危急種(NT)に指定されています。
 
おもしろ哺乳動物大百科7(有袋目コアラ) 2009.4.13

コアラ科
オーストラリアの先住民アボリジニは、コアラをコラー、カラワインなどと呼んでいたのが、コアラの名前の由来といわれます。意味は「水を飲まない」という説と、「かみつくもの」という説がありますが、真相はわかりません。いずれにしても、水をほとんど飲まないコアラのふんは、楕円形で1個が約0.4g、1回に50〜60個を一日3回するそうです。
コアラの種類は1種ですが、寒い南方系のほうが北方系に比べ体毛が密になっています。オーストラリアは南半球なので、南のほうが寒いのです。

  タロンガ動物園のコアラ
  オーストラリア旅行でとったかわいいコアラ。
   
  コアラの指
  手足の指の説明は、文章より絵のほうがわかりやすいでしょう。
   

7)コアラ
すんでいる場所とからだの特長
ユーカリの森林にすみ、巣は作らず日中のほとんどは低いユーカリの枝に体を丸くして休息し、ときどき起きて葉を食べたり毛づくろいしたりします。夕方から夜間になると、地上も歩き1mくらいならジャンプするなど、けっこう活発に動いています。飼育下の調査例では、約19時間を休息し、起きている5時間中、採食時間に3時間費やしたと報告しています。
からだの色は灰色で、あごから胸、腹部にかけて白色か黄白色で、耳は表裏共に毛が生えています。鼻鏡と呼ばれる部分は鼻先から目元まであって、嗅覚が発達しています。歯は30本あり、臼歯は四角で頑丈にできており、ユーカリの葉を咬むのに適しています。上あごの前歯は、6本で下あごの2本よりおおいのですが、この方が葉を食べやすいのでしょう。尾椎はありますが、外見から尾はほとんど見えません。
4肢にはそれぞれ5本の指があり、前足の第1指と第2指が他の3本と向き合い、木の枝を握るのに適しています。指にはするどいカギ爪がありますが、後肢の親指には爪がありません。後肢の第2指と第3指は融合し、指先で離れ爪はそれぞれにあります。オスの胸部には、鼻にツンと来るようなにおいを出す臭腺があり、胸部を木にこすり付けてなわばりの目印とします。

えさとからだ
オーストラリアの植物は90%以上をユーカリが占め、その種類は約600種あります。しかし、コアラが主食としているユーカリはこの中の約35種類、好んで食べるのは10数種しかありません。ユーカリの葉は、一般の動物には有毒となるユーカリオイルを含みますが、コアラは肝臓でユーカリオイルを解毒する機能があります。その上、哺乳類中最も長い、1.8〜2.4mもある盲腸にいる微生物がゆっくりと葉のかたい粗繊維を分解するので、栄養分として吸収することができます。

繁殖
交尾期は9月から12月で、ふだん大声を出さないオスも発情期になると、ブーブーやゴーゴーとブタかロバのような大声で鳴きます。また、胸の臭腺を頻繁に木にこすりつけなわばりを主張します。出産期は、12月下旬から4月上旬にわたり、樹上で生みます。妊娠期間は約35日間で、ふつう1産1子ですが、まれに2頭生まれます。
子どもは全長約1〜2cm、体重約0.5〜1gの未熟児で体に毛は生えていません。また、目や耳は発達していませんが、鼻孔は大きく嗅覚を頼りに、自力で育児のうまで這って行き、1対ある乳頭のひとつに吸い付き、その後約3ヶ月間は吸い付いたままです。育児のうは体の上方に向かって深くなり、出入り口は後方に開いています。
生後約3カ月後に目が開き、毛が生えてきます。生後約6ヶ月になると体重は300〜500gになり、親のように毛が生えそろって、育児のうから顔を出すようになります。このころ、母親の総排泄孔から盲腸で作られた緑黄色の軟便が出てきますが、これはパップと呼ばれコアラの赤ちゃんの離乳食になります。この離乳食は約1ヶ月間出ますが、この離乳食からユーカリを分解する腸内細菌を受け取ると共に、餌になるユーカリのにおいや味を覚えます。生後約7ヶ月で育児のうから出ますが、その後もときどき顔をいれて母乳を飲み、生後約1年で離乳し、体重は2kgを超えます。メスは約2歳、オスは4歳で性成熟に達します。寿命は、野生で10〜13年、飼育下では約15年です。

外敵
樹上では、オニアオバズク、オナガイヌワシ、ニシキヘビ、地上では、ディンゴ、キツネ、野生化したイヌやネコなどです。

コアラ
分類 有袋目 コアラ科
分布 オーストラリア東部
大きさ オス 体長 70〜80cm  体重 7〜13kg
メス 体長 65〜70cm  体重 5〜10kg
絶滅の危機の程度 2008年の国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは、現在のところは絶滅の恐れが少ないので、低危急種(LC)に指定しています。
 
おもしろ哺乳動物大百科6(有袋目ウォンバット) 2009.3.30

ウォンバット科
初めてウォンバットを見た人は、ブタやアナグマを連想するかもしれません。胴長でがっしりとしたからだで、歩く格好は鈍いようですが、意外に敏捷で、ケバナウォンバットの例では短距離ならば時速40kmくらいで走ることができるといわれています。オリンピックの100m走者より早いことになります。ふつうは夜行性で、繁殖期以外は単独で生活しており、他の個体と出会うのを避けています。自分からすすんで水に入ることはありませんが、泳ぎは上手でいわゆる「犬かき」で泳ぎます。
コモンウォンバット(ウォンバット)、キタケバナウォンバット、ミナミケバナウォンバットの3種がオーストラリアに分布しています。

  ウォンバット
  絶滅のおそれが少ないとはいえ、飼育下で繁殖させるのはむつかしいウォンバット。
写真家、大高成元氏撮影
   

6)コモンウォンバット(ウォンバット)
すんでいる場所とからだの特長
森林や沿岸の低木林の丘陵地帯、オーストラリアアルプスのヒース植物の生えている場所などにすんでいます。からだの色は、黒色からうすい黄褐色、灰色までバリエーションがあります。歯は一生伸び続け、あごを左右に動かして食べます。尾は短く、ずんぐりむっくりの頑丈な体型です。4肢にはそれぞれ5本の指があり、後肢の親指には爪がありませんが、他の指には頑丈な爪があって穴を掘るのに適応しています。巣穴は幅が1m前後、深さは3mくらい掘り、長さは3mから30mに及び、奥に草や樹皮で巣を作ります。彼らはそれぞれ10箇所くらいの穴を持っていますが、おもに使うのは3〜4箇所です。また、隠れるためにすばやく2mくらいの穴を掘ってそこにもぐりこむこともできます。汗腺が未発達で外気温が25度を過ぎる夏期には、暑さから逃れるため、日中は穴の中で過ごします。冬、外気温が4度くらいなると、昼間は外で草をたべたり、日光浴をしたりします。一日におよそ18時間を穴の中ですごし、リラックスして眠るときはいびきをかきます。

えさとからだ
主食は根、地下茎、イネ科の草、樹皮など繊維の多い植物でときにはコケ、キノコ、牧草も食べます。また沿岸に沿って食物を探すこともあります。飼育していた個体はサツマイモが好物でしたので、野生でも根菜類は好物でしょう。採食量は少なく、同じ大きさのカンガルーに比べると約3分の1で足りますが、その秘密は、腸にいる微生物が草の繊維を4〜9日間もかけてゆっくりと分解したものを、栄養分として取り込んでいるからです。えさは夜間3〜8時間かけて食べます。

繁殖
出産は1年中みられますが、タスマニア島では約50%が9月から1月に出産します。妊娠期間は20〜22日間で、1産1子ですが、まれに2頭生まれます。子どもは全長約1.5cm、体重約0.5gの未熟児で体に毛は生えていなく、自分で体温を維持できません。また、目や耳は発達していませんが、嗅覚がよく発達しています。自力で育児のうまで這って行き、大きな口と舌で1対ある乳頭のひとつに吸い付きます。育児のうは体の上方に向かって深くなり、出入り口は後方に開いています。生後約8ヶ月たつと完全に毛が生えそろい、育児のうから出て固形物を食べはじめます。生後12〜15ヶ月で離乳し、その後3〜8ヶ月で体重は倍になります。離乳後すぐに母親から別れるものや、完全に成長するまで母親と一緒に残るものなど個体差がありますが、ふつうは1歳半ぐらいまでには独り立ちし、約2歳で性成熟に達します。オーストラリア本土のコモンウォンバットの場合では、このころの体重は22kg程度です。飼育下の繁殖は難しく、繁殖の成功例はわずかです。
野生での正確な記録はあまりありませんが、10〜15年は生きるのではないかといわれています。飼育下ではドイツのハノーバー動物園で27年1ヵ月の飼育記録があります。

外敵
人間が一番の外敵で、ワナ、ハンティング、交通事故、森林の火事で死亡するほか、ディンゴ、キツネ、タスマニアデビルなどによって捕食され、子どもはフクロウにも狙われます。

コモンウォンバット(ウォンバット)
分類 有袋目 ウォンバット科 ウォンバット属
分布 オーストラリア南東部、タスマニア島とバス海峡のフリンダーズ島
大きさ 体長 75〜115cm  体重 20〜39kg  尾長 2.5cm
絶滅の危機の程度 2008年の国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは、現在のところは絶滅の恐れが少ないので、低危急種(LC)に指定しています。
 
おもしろ哺乳動物大百科5(有袋目タスマニアデビル) 2009.3.12

フクロネコ科
夜になると森の奥からウギャー、フーというぶきみな鳴き声とバリバリと骨をかみくだくなんとも恐ろしげな音が聞こえ、人々はこの声の主を「タスマニアの悪魔」と呼びました。しかし、鳴き声とはうらはらにこのデビルはかわいい子グマのようです。
かつてはオーストラリアにも住んでいたと言われていますが、現在はそこから南東部に約230km行った、北海道ほどの大きさのタスマニア島に住んでいます。今回はフクロネコ科の仲間からすばらしい悪魔を紹介しましょう。

  タスマニアデビル
  強い歯をもったタスマニアデビル
写真家、大高成元氏撮影
   

5)タスマニアデビル
住んでいる場所とからだの特徴
タスマニアデビルの体長は50〜60�で、海岸線から高山の森林まで広い範囲で生活しています。夜行性で昼間は岩穴や木の洞、やぶの中で休み、夕方から夜間が活動時間です。全身黒色か黒褐色で胸にはふつう白い帯があり、ツキノワグマの子どものようです。大きな獲物を食べるときや繁殖期以外は単独で生活しています。

体はがっしりとしていて、頭が大きく、あごには強い筋肉が付いています。歯は頑丈で硬い肉や骨を食べるのにむいています。頬には長いヒゲが生えていて、これらは触覚として働いていると考えられます。耳は毛でおおわれ、目は小さくて瞳孔は丸です。尾の付け根は太く、先端は細くなっていて全体に毛が生えています。前肢の方が後肢より少し長く、後肢の第1指はありません。鋭い爪は穴掘りのときに活躍します。育児のうの内部には4個の乳頭が付いています。

えさ
死肉から弱ったカンガルーの仲間、オポッサム、ウォンバット、鳥や昆虫類まで何でも食べます。餌を見つけると何頭もの個体が集まり、うなり声をあげてお互いに牽制しながら餌を食べます。とりわけあごの力は強力で、皮や硬い骨もバリバリかみくだいて食べます。死肉が腐る前には食べつくすので密林の掃除屋とも呼ばれ、食物連鎖の重要な役割を果たしています。

繁殖
タスマニアでは、3月に発情し、メスは首の周りに脂肪がつき、巣作りをはじめます。オス同士の戦いに勝ったものがメスとカップルになります。
妊娠期間は約31日で、産子数は1〜4頭(平均2.9頭)です。カンガルーと同様に、総排泄孔から体長が約1.2cm、体重0.18〜0.29gの未熟児で生まれた赤ちゃんは、自力で育児のうまで這っていきます。育児のうは、カンガルーとは逆に体の上方に向かって深くなり、出入り口は後方に開いています。子どもは母親の尻側から顔を出します。このために、母親が前肢で穴を掘っても土が育児のうに入りません。
赤ちゃんは生後約100日で体重が200g程度になると、育児のうから出てきます。カンガルーと違い、一度袋から出た子どもは再び戻りません。しかし、その後も授乳は続き、離乳は生後約8ヶ月たった11月〜12月ころです。1月にひとり立ちしますが、病気やワシやヘビなどに捕獲されて、生後1年目には半数になっています。生後2年で性成熟にたっし、2年目の3月には繁殖期を迎えます。野生のときの寿命は、5〜6年ですが、飼育下ではオランダのロッテルダム動物園で12年1ヶ月の記録があります。

タスマニアデビルの保護
ヨーロッパからの移民が1800年代に始まると、ヒツジやニワトリが殺されるので害獣として駆除してきました。フクロオオカミが絶滅すると、タスマニアデビルも保護しなければ絶滅すると考えられ、1941年に保護法が成立しその後は生息数も増加してゆきました。しかし、1996年ごろから伝染性のデビル顔面腫瘍性疾患が流行し、生息数は40%ぐらいまでに激減し、現在の生息数は4〜5万頭といわれています。
2008年の国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは、絶滅危惧種(EN)に、オーストラリア政府は危急種(VU)に指定して保護しています。

タスマニアデビル  
分類 有袋目 フクロネコ科
分布 タスマニア島
大きさ 体長 50〜60cm  体重 7〜12kg  尾長 20〜30cm
 
おもしろ哺乳動物大百科4(有袋目オポッサム) 2009.3.2

オポッサム科
有袋目といえば、オーストラリアを連想し、ほかの国には生息しないと思っていませんか。じつは、オーストラリア以外にも有袋目のなかまは分布しています。その中でも特にオポッサム科は種類も多く、分布もひろくて、カナダから中央アメリカ、南アメリカにかけて生息しています。その秘密は地球の地殻の変動に由来します。今からおよそ2億年前、アフリカ、南米、オーストラリア、南極はまとまって一つの大きな大陸でゴンドワナ大陸と呼ばれていました。やがてこの大陸は離散し、おおかたの有袋類はオーストラリアで独自な進化を遂げたのです。そして、もともと北米に現れたオポッサムの仲間はアメリカ大陸に留まったのです。

4)キタオポッサム
すんでいる場所とからだの特徴
キタオポッサムはおよそ40�の大きさで、おもに森林地帯を好みますが、草原なども利用し、広い範囲で生活しています。樹上生活に適応し、指は前肢、後肢ともに5本あり、後肢の親指が他の指と向き合っていて木の枝を握ることができます。爪は後肢の親指にはありません。また、尾は長く、根元には毛が生えていますが、その先は毛のない細かいウロコ状の皮膚で、木の枝に巻きつけることができます。歩行は人間やクマのように足の裏を地面に付けて歩きます。
下毛は羊毛のように柔らかですが、上毛はかたくて長くなっています。色は、灰色が多く、まれに白色もいます。耳は大きく聴覚や嗅覚がよく発達しています。育児のうは深さが2〜3�で、内部にはふつう13個の乳頭があり、中央にある1個を中心にして円を描くように付いています。

  キタオッポサム
  キタオッポサム
写真家、大高成元氏撮影
   

えさ
口は少しとがっていて上あごには鋭い前歯が5本あります。雑食性でネズミ、トカゲ、カエル、鳥や卵、昆虫、果実、木の根など何でも食べます。このように何でも食べることや多産であることが現在の繁栄につながっているのでしょう。

繁殖
ふつう単独生活をしていますが、1年に2回の繁殖期につがいとなります。妊娠期間は13日くらいで、8〜14頭を産みます。このように多くの子どもを生んでも育つのは7頭くらいです。カンガルーと同様に、総排泄孔から体長が約1cm 、体重0.1gの未熟児で生まれた赤ちゃんは、自力で育児のうまで這っていきます。この時の赤ちゃんは、まだ体には毛が生えていず、目も閉じていますが、前肢は比較的よく発達し、指には爪があります。育児のうに入った赤ちゃんは約2ヶ月乳頭に吸い付いたままです。離乳は生後100日くらいで、それからまもなくして独立します。子どもは母親の背中に乗って移動します。野生のときの寿命は2年程度といわれますが、飼育下では7年の記録もあります。

特殊な行動
敵に追い詰められ、逃げ場がなくなると、目がどんよりとして、口から舌がたれあたかも死んだようになります。死んだと誤解した敵がいなくなると、起き上がって逃げるといいます。肉食獣の多くは死んだ動物も食べるので、どの程度死んだまねで危機を脱することができるか疑問です。しかし、この現象は自分の意思に関係なく、体が勝手に反応して起こるようです。

キタオッポサム  
分類 有袋目 オッポサム科 キタオッポサム
大きさ 体長 37〜45cm  体重 1.9kg〜2.8kg  尾長 28〜37cm 
分布 カナダから中央アメリカ
絶滅危機の程度 LC(低危険種)
現在のところは分布も広く、生息数も多いので、絶滅危機種に該当しない種
 
おもしろ哺乳動物大百科3(有袋目アカカンガルー) 2009.2.16

有袋目
有袋目のなかまは、16科74属300種近くの種類がいます。哺乳類は一般にヘソの緒があると思っている方もいるかもしれませんが、前回紹介した単孔目と有袋目の仲間にはヘソがありません。ヘソの緒は母親の胎盤とつながっていて酸素、栄養、排泄などの作用を行っていますが、有袋目の仲間は胎盤がないかあるいは不完全なため、子どもは未熟な状態で生まれて、腹部にある袋(育児のう)や皮膚のひだに開口している乳首から直接乳を飲んで成長します。
それでは代表的な種類をいくつか紹介していきましょう。

3)アカカンガルー
動物園では、動物ごとに世話をする人・担当者が決まっています。担当者が休みのときに、代わりに世話をする係を代番者と言います。私がアカカンガルーの代番者として、初めて大きなアカカンガルーのいる部屋の中に入ったときのことでした。見慣れぬ人が入っていったので興奮したらしく、立ち上がると、突然私に抱きつき、あの太い後肢で思い切り蹴飛されました。あわてて振りほどいて逃げましたが、私の足にはみごとにアザができていました。翌日、その話を担当者にしたら、
『あ、そうそう、気をつけるように注意するのを忘れた!』の一言。

  アカカンガルー
  アカカンガルーは尾をあげてバランスをとってジャンプしている
写真家、大高成元氏撮影
   

生態
群れの基本は母と子の2〜4頭で、これが集まって100頭くらいの大きな群れをつくり採食や休息をします。昼間は木陰で休み、夕方から明け方まで活動します。汗腺が発達していないので、ネコのように腕や胸をなめて唾液が蒸発する気化熱で体温調節しています。旱魃(かんばつ)などで餌が不足すると200kmくらい移動しながら生活します。

からだの特徴
カンガルーの中で最大種のひとつで、直立すると2m近くになります。カンガルーといえばメスに育児のうと呼ばれる袋があることで知られています。オスメス共に後肢が発達しており指は4本あります。尾は長く体長と同じくらいの長さがあり、直立しているときは支柱のようになり、ジャンプして走るときはバランスをとるのに役立っています。耳は左右を別々に動かすことができて、周囲の音を良く聞き取ることができます。鼻鏡(鼻先の毛のない部分)の形でカンガルーの種類を見分けることができます。また、アカカンガルーの場合は、臼歯の生え変わりがゾウと同じように奥から前に移動して行われます。

えさとからだ
主食は草ですが、そのほかに木の葉や芽を食べます。胃は大きく湾曲し、反芻(はんすう)動物の第1胃のように、中に微生物がすみ粗繊維の消化を助けています。採食後に食物を口にもどすのが観察されていますが、その理由はまだ明確ではありません。ただ離乳のころに育児のうから出た子どもが母親の吐き戻したものを食べるのが観察されています。これは離乳食として、母親の体内にいる消化を助ける微生物と取り入れることになります。

繁殖
交尾期は決まっていません。発情したメスがいるとオス同士で争い、勝ったオスが交尾します。性周期は約35日で、分娩後に発情します。また、育児のうに子どもがいる場合、受精卵は胚盤胞の段階で着床しないで休止しますが、この現象を着床遅延といいます。妊娠期間は約33日でふつうは1回に1頭出産し、まれに2頭、あるいは3頭の記録もありますが、野生の場合は1頭しか育ちません。子どもは全長2〜3cm、体重約1gで体に毛は生えていません。発達した前足を使って、自力で袋まではって行き袋の中に入り、4つある乳頭のひとつに吸い付きます。生後60〜70日で初めて乳頭から離れますが、その後も同じ乳頭を使います。体毛は生後3ヶ月で生え始め5ヶ月過ぎで生えそろいます。そして約8ヵ月後、完全に育児のうから出ますが、1歳になるまで顔を入れて乳を飲みます。離乳後も生後15ヶ月頃までは母親と接触します。オスでは生後24〜36か月、メスで生後15〜20か月で性成熟にたっします。長寿記録では25歳が報告されています。

分類
アカカンガルー  
分類 有袋目 カンガルー科
分布 オーストラリア(北部、東部の海岸地帯、南西部を除いたほぼ全域)
大きさ 体長 オス95〜140cm  メス75〜110cm
尾長 オス70〜100cm  メス65〜90cm
体重 オス25〜85kg  メス20〜35kg 
絶滅危機の程度 LR (低リスク種。現在は絶滅危機ではないが、そのおそれがある種)
 
おもしろ哺乳動物大百科2(単孔目ハリモグラ) 2009.1.29

ハリモグラ科
ハリモグラとミユビハリモグラの2つの属に分かれ、合わせて4種類がいます。ミユビハリモグラはニューギニアに住んでいます。ハリモグラは約5cmの短い吻(ふん・口の部分)を持ち、ミユビハリモグラは約10cmもある円筒状の長い吻をもっています。ハリモグラは硬いトゲがありますが、ミユビハリモグラのトゲは目立ちませんし、体も一回り大型なので両種は簡単に識別できます。
ハリモグラ科のうち今回はハリモグラを紹介しましょう。

2)ハリモグラ

すんでいる場所
湿気の少ない森林から荒野, 乾燥地域までほとんどの環境で生活できます。ふつうは茂みの下、空洞になった丸太の中、石の下などにすんでいますが、繁殖時には1mぐらいの穴を掘って利用することもあります。夜行性で通常昼間は休み、早朝や夜活動します。走ったり、泳ぐこともできます。

  ハリモグラ
  ハリモグラは放飼場をトコトコと行ったり来たりしていました。
写真家、大高成元氏撮影
   
剥製
  私は博物館で剥製を撮ってきました。

からだの特徴
ハリモグラの体の表面は柔らかい体毛がびっしりと生えており、その間から太く硬い毛が全身を針のようにおおっており、一見ヤマアラシ風です。

オーストラリアのタロンガ動物園でハリモグラを見ましたが、行ったり来たり絶え間なく歩き、私の未熟な写真技術ではうまく撮影できませんでした。そこで博物館へ行って撮ったのがこの写真です。前後の足には5本の指があります。前足は太くて長い爪で、まるでモグラの足のようです。これでは穴掘りも得意と一目でわかります。オスの後ろ足のくるぶしのところには距(けづめ)がありますが、カモノハシの距(けづめ)とはちがい毒は分泌されません。
鼻孔は吻の先端の上部にあり、目は小さく視力はあまりよくありません。耳は楕円形の頭部のうしろのほうにあって、トゲと毛におおわれていて外部から見づらいのですが、縦に長い耳の穴があいています。卵のような形をした耳介はほとんど皮膚に埋まっています。聴覚は鋭いと言われます。

えさとからだ
トゲを持つアリクイとも言われるように、えさはシロアリ、アリ、ミミズなどで、地面や朽木、アリ塚からえさをとります。吻の先には小さな口があり、嗅覚と触角器官として使われます。舌は細長く唾液でぬれているためシロアリなどをうまく粘着できます。歯はありませんが、口蓋と舌の奥にある角質のひだでえさをすりつぶして食べます。

繁殖
距(けづめ)は外敵から身を守るときや繁殖期にオス同士が戦うときに使われます。メスは産卵期が近づくとふ卵のうとなるヒダが腹部にできます。抱卵期になるとこの部位の体温は上昇し、卵がふ化し、赤ちゃんが離乳すると元に戻ります。ふ卵のうの中でのふ化日数は約10日です。卵は柔らかい殻(から)で保護され、ふつう1個産み、大きさは直径約15mmです。赤ちゃんは体長約12mm、体重約0.4gで毛はなく目も見えません。赤ちゃんは毛が生えそろうまで育児のうに留まります。乳頭はなく乳腺からにじみ出る乳を飲んで育ちます。その後、約半年間授乳し、生後約1年で独立します。
飼育下では最高49年生きた記録があります。

ハリモグラ  
分類 単孔目ハリモグラ科ハリモグラ
大きさ 体長 35〜55cm  体重 2.5kg〜7kg
分布 オーストラリア、ニューギニア
絶滅危機の程度 ハリモグラ:LR (低リスク種。現在は絶滅危機ではないが、そのおそれがある種)
ミユビハリモグラ:CR (絶滅寸前種。絶滅寸前の状態にある種)
 
おもしろ哺乳動物大百科1(単孔目 カモノハシ) 2009.1.15

哺乳類のおおきな特徴は、体には毛が生えており、体温が一定であることや、子どもを産んで乳を飲ませて育てることです。ところが、これらの定義には例外があり、必ずしもすべてが当てはまるとは限りません。哺乳類の仲間は、現在20の目(学者によっては21)に分類されていますが、各目の特徴と代表的な種類を紹介しながら、おもしろい動物たちの生活ぶりを紹介していきましょう。

1 単孔目
哺乳類の中で例外は単孔目の仲間です。単孔目とは、トリと同様に排便、排尿、交尾と出産はすべて総排泄孔(そうはいせつこう)と呼ぶ一つの孔で行われ、哺乳類の中でもっとも原始的な動物です。
この目にはハリモグラ科とカモノハシ科との2つの科があります。他の哺乳類と大きく違うところは、この仲間はすべて卵を産んで、お乳を飲ませて子どもを育てることです。
それではとりわけユニークな哺乳類カモノハシを最初に紹介しましょう

泳ぐカモノハシ
  水中を行ったり来たりしているので、写真がうまく撮れませんでした。

1)カモノハシ
カモのようなくちばしを持つ奇妙な哺乳類を見るのは私の長年の夢でした。それと言うのもオーストラリア以外の動物園ではカモノハシを飼育しているところがないからです。2007年、私は生息地のオーストラリアに行き、この奇妙な哺乳類を見ることができました。
最近のDNAの解析によれば、哺乳類は3億1500万年前に爬虫類と共通の祖先から分かれました。そして、卵を産む哺乳類で知られるカモノハシは1億7千年前、人と共通の祖先から分かれましたが、オスの爪にある毒は爬虫類のヘビの毒に似ており、性の決定に関わる遺伝子は鳥類、さらに哺乳類の特徴である母乳を作る遺伝子があるなど、3者別々の特徴を合わせもっていることがわかりました。このようにまさに珍獣の代表とも言うべき動物が、オーストラリア政府による自国の動物を海外に容易に輸出せず保護政策をとってきたことで、野生のカモノハシが守られてきたのです。

すんでいる場所
カモノハシは池や湖、川岸近くの水がよどみ、日陰になった場所にすんでいます。巣はふだんメスがすむ巣と繁殖用に使うものがあり、たいていは斜面になったところにあります。出入り口は、斜面の少し高い場所にあり、少々の川の氾濫では巣に水が入りこみません。

カモノハシ剥製
  そこで博物館に行き撮ったのが剥製です。毛が柔らかくびっしり生えているでしょう。

からだの特徴
カモノハシのふしぎさは、口がカモのくちばしに似て平たい形をしていることです。このような哺乳類は他にいません。さらに、ビロード状でびっしり生えた体毛は水をはじき、足には水かきがあり、ビーバーのような平らで上面に短い毛が生えている尾をもっていて水中生活に適応しています。目は小さく耳介はありません。歯はありませんが、食べ物はくちばしの奥にある、角質板という洗濯板のような部分でかみくだきます。足は頑丈で、前後共に5本の指があり、鋭い爪は巣穴を掘るのに適しています。後足にある距(けづめ)は子どものときはオスメス共にありますが、成長につれてオスだけに残り毒液が出せます。

友人の中里さんに持っていただきました。
  友人の中里さんに持っていただきました。これなら大きさもわかるでしょう。

えさとからだ
えさは、ミミズ、カエル、水生昆虫、エビ、甲殻類などを捕まえて食べます。そのときくちばしの左側にある電気を感じる器官で、獲物が出すわずかな電磁波をキャッチするのです。水中に潜っているときは目を閉じていますが、獲物が出す10万分の1ボルトの弱い電気を数10cm離れていてもキャッチすることができます。そしてくちばしの触覚器官でさわり捕らえるのです。

繁殖
交尾期は8月から10月ですが、気候は日本と反対になるので冬にあたります。抱卵はハリモグラが腹部に発達するひだ(ふ卵のう)で行うのに対して、カモノハシは巣の中で行います。繁殖用の巣は15m近いものもあり、一番奥に木の葉や草を敷き、産卵後10日間抱卵します。卵の大きさは1.4〜1.7cmで、ふつう2個産卵します。赤ちゃんは体長約1.5cm、体重約0.4g、無毛で目も見えなく、くちばしもできていません。子どもは母親の腹部からにじみ出た乳を飲んで育ちます。授乳は4ヶ月続き、この間は排泄、採食、体をぬらす以外は育児に専念します。子どもは毛が生えそろい体長30cmくらいになると巣立ちします。

分類
カモノハシ  
分類 単孔目 カモノハシ科
分布 オーストラリア東部・タスマニア島
大きさ 体長 30〜45cm
尾長 10〜15cm
体重 0.5〜2kg
絶滅危機の程度 LR:低リスク種・現在は絶滅危機ではないが、そのおそれがある種
 
ウシに見習う 2009.1.5

新年明けましておめでとうございます。 今年もみなさまのご多幸を祈念しております。

『ウシの歩みも千里』ということわざがある。ウシはのっそりのっそりと歩くが、休みなく歩き続ければ千里(約4,000km)でも歩けると例えた。私たちの生活に言い換えれば一歩一歩少しずつ努力を積み重ねれば、やがて大きな目標に達することができると、教えたのだ。

そこで実際のウシの歩く速度について紹介しよう。

代表的な乳牛 ホルスタイン種
  代表的な乳牛 ホルスタイン種
写真家 大高 成元氏撮影

このことわざができた頃は、おそらくのんびりと草を食べて過ごす家畜のウシをみて、描写したのだろう。牧場で放牧しているウシは、1日に3時間から6時間程度歩くという報告があり、歩数に換算すると、3,000歩から18,000歩となる。ウシの歩幅は1.2mくらいなので、1日に4kmから22kmと歩く計算だ。そこで、千里(約4,000km)を歩くのに、どのくらいの日数が必要か計算すれば、1日に10kmならば400日、5kmならば800日なので1〜2年と言えよう。

このように考えれば、どんなことでも年単位で努力するのが理想的のようだ。今年の目標を定め、牛の歩みのように地道に一努力してみませんか。

さて、約1万年前に家畜化されたウシは、目的によってさまざまに改良を重ね、今ではその品種数は800に達する。国内で有名な乳牛はホルスタインだろう。原産地はオランダで、肩の高さが140〜160cm、体重650〜1,100kgになる大型の種類だ。年間の乳量は6000〜8000kgだが、最高記録では約28000kgというまさに驚異的な個体もいる。一方、ステーキやすき焼で人気の高い黒毛和種は日本の代表的な肉用種で、体重550〜900kgだ。

かつて日本人は肉食より魚や野菜を好んでおり、明治時代までウシは農業や牛車などのいわゆる使役動物として使っていた。牛肉として人気が出たのは1950年(昭和25年)頃からで、以来国民全体の肉食の需要が増え続け、とりわけ黒毛和牛の人気は高く現在に至る。家畜としてのウシは、肉や乳、皮、角とすべてを利用し、ほとんど捨てるところがない。私たちはウシをはじめ多くの飼育動物に感謝して生活しよう。

そうそう、家畜の牛はのっそりだが、ウシの仲間で水牛やバイソンの走る速度は時速55kmくらいという。人間の100mの世界記録を10秒とすると、時速にすれば36kmとなる。オリンピックの選手でもこんな程度なので、いかに野生動物が早いかお判りと思う。

今年は次回から、おもしろ動物大百科と題して、哺乳類のカモノハシから順次代表的な種類を紹介していきたいと考えている。

本年もへーベルハウスと共に、ゾウぞよろしくお願いします。

 
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